陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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8話

 あゆみさんと雄弥が知り合いって驚きだな。…いや、まぁ雄弥の人間関係ってよく分からないから、これからは驚くのやめとこ。案内された部屋で雄弥の横に座る。向かい側にいるあゆみさんは、何故かすごいニコニコしてる。

 

 

「ところであゆみさんって雄弥といつ知り合ったんですか?」

 

「うーん、いつだったか雄弥くん覚えてる?」

 

「覚えてない」

 

「えぇ。私は覚えてるのにー」

 

「あはは、雄弥ってこういう奴ですよ」

 

「らしいね。…出会ったのはAugenblickのライブの時かな。メインボーカル無しのバンドなんて他にいないから気になっちゃって」

 

「なるほど〜」

 

「ライブ終わってアポ無しで楽屋に来ようとする人も珍しいけどな」

 

「ええ!?」

 

「…覚えてるんじゃん」

 

「今思い出した」

 

 

 ライブ終わった後にアポ無しで楽屋にって、行動力があるというか、抜けてるというか。彩が憧れるのわかるなぁ。たぶん同種の人間なんだよね。

 

 

「それで雄弥がその時に通りかかったと」

 

「いや、その時に会ったのは疾斗だな。あいつは人の域超えてるから、トラブルとかすぐ気づくんだよ」

 

「あぁ〜。そういやたまにどっか走っていくもんね」

 

「それは大抵花音が迷子になるからだけどな」

 

「ふふっ、疾斗くんも元気そうだね。大輝くんと愁くんも元気?」

 

「そりゃ元気にしてるぞ。頭のネジが飛んでるやつしかいないしな」

 

「いや〜ほんとにみんなおかしいよね☆」

 

「お前もだからな」

 

「え?」

 

 

 私も同類?いやいやいやいや、そんなことないでしょ。私はAugenblick唯一の常識人だと思ってるから。私が心外だって顔をしてると雄弥が呆れたような視線を送ってくる。

 

 

「なに?雄弥」

 

「いや、結花がそう思うならそれでいいんじゃないか?」

 

「引っかかる言い方だね」

 

「さてな」

 

「ふふふっ、本当に仲いいんだね!仲良くなるの大変だったんじゃない?Augenblickって結成してから数年経っててイメージも固定化されてたし、メンバー同士の輪ってあっただろうし」

 

「案外すんなり仲良くなれましたよ。私もあゆみさんが言ったように悩んでたんですけど、みんなすんなり受け入れてくれたので。ファンの人は賛否両論って感じだったんですけど、そこはみんながそれぞれ折り合いをつけてくれるのを待つしかないって雄弥に言われましたし」

 

「へ〜」

 

「なんだよ」

 

「いや〜?雄弥くんは優しいなって思って」

 

「思ったことを言っただけだ」

 

「私は感謝してるよ?雄弥ってばなんだかんだで気にかけてくれるもんね」

 

「やっぱりそうだよね〜。疾斗くんが来てくれたあとに来たのが雄弥くんで、そのまま楽屋に案内してくれたんだよ」

 

 

 雄弥ってあんまり立ち話しないからね。それと話が長くなるかもって思ったんだろうね。そういえば立ちながら長話するのって女の人だけな気がしてきた。

 

 

「雑談はこれくらいでいいだろ。本題に入るが、本当にいいんだな(・・・・・・・・)?」

 

「…うん。みんなで話して決めたことだから」

 

「わかった」

 

「えっと…なんの話ですか?」

 

「結花ちゃんは知らないんだね…。私たちMarmaladeは次のライブで解散することにしたんだ」

 

「……え」

 

(解、散?え?Marmaladeが?)

 

「それで、最高のライブにするために俺たちがバックアップすることになったんだ。まぁ相談役みたいなもので、ほぼ全部Marmaladeで決めてもらうがな」

 

「"自分たちのライブは自分たちで作る"。それがAugenblickのやり方だもんね」

 

「そういうことだ」

 

「…この話って私聞いてよかったんですか?」

 

「言いふらさないだろ?」

 

「当たり前じゃん!」

 

「なら問題ないよ。結花ちゃんだってAugenblickのメンバーなんだし。女の子の意見も聞けるから私としても結花ちゃんには協力してほしいかな」

 

「もちろん協力します!」

 

 

 私はAugenblickに入るために、そしてAugenblickのボーカルとして立ち続けるために色んなボーカルの映像を見てる。取り入れられることを見つけて練習してる。その中にはあゆみさんも入ってる。つまり、あゆみさんは私からしたら先生の一人なんだ。そんなあゆみさんのライブに協力できるなら喜んで協力する。

 

 

「ありがとう!」

 

「それじゃあ予定合わせるか」

 

「そうだね!」

 

「それと、あゆみにちょっと頼みたいことがあるんだが」

 

「え、なになに?私にできることならやるよ?」

 

「簡単なことだ」

 

 

 …まさか雄弥がそんなことを頼むなんて。雄弥はどんどん成長してるんだね。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 私の憧れの人、あゆみさんが所属するアイドルグループMarmaladeが次のライブで解散することが発表された。麻耶ちゃんに教えてもらうまで知らなかったけど、自分でその情報ゲットしても落ち込んでたんだろうなぁ。

 

 

「雄弥くん…。……いないや」

 

 

 雄弥くんの部屋に行ってみたけど雄弥くんは部屋にいなかった。それもそうだよね。ここ最近の雄弥の予定はAugenblickで一番詰まってるって話だし。

 

 

「…帰ろ」

 

「なんか用か?」

 

「…あ、雄弥くん。…ちょっとね。けど大したことじゃないし、やっぱいいや」

 

「…中に入れよ。飲み物ぐらい出す」

 

「へ?いやいやいいよ。雄弥くんすごく忙しいって聞いたし、ほんとに大したことじゃないから」

 

「本当にそうなら彩がそんな暗い顔をするわけがないだろ。話を聞くぐらいの時間ならある」

 

 

 め、珍しく雄弥くんがちょっと強引。だけどその強引さがすごく助けになる。私は雄弥くんの部屋に入って、椅子に座らされた。…この椅子も目の前にある丸テーブルも前来たときはなかったと思うんだけど。冷蔵庫から飲み物を取り出した雄弥くんが食器棚からコップを2つ取り出して私の前に座った。

 

 

「…ここに住めるぐらいの環境整ってない?」

 

「泊まり込みができるようにしてるからな。部屋にキッチンはないから食事は食堂を使うか、テキトウに済ますかになるがな」

 

「お風呂も地下にあるもんね」

 

「ああ。だから今みたいにスケジュールが詰まってる時は泊まり込みになる。まぁ実際にやるのは2年ぶりだがな」

 

「そんな時にもやってたんだ…。この椅子とテーブルは新しく買ったの?」

 

「結花と日菜が欲しいってずっと言ってたから買った」

 

「そんなノリで買ったんだ…」

 

 

 これ結構な値段するやつなんじゃないの?なんかパット見た感じはシンプルなんだけど、近くで見るとオシャレな模様とかあるし。こんなのをそんなノリで買えるなんて…。

 

 

「それで、彩は今日どうしたんだ?」

 

「ぁ……。えっと、Marmaladeっていうグループが解散することになったでしょ?」

 

「…らしいな」

 

「私、そのグループのあゆみさんって人にずっと憧れてて…。私の目標だったんだ。…だから、解散するのがショックで、私これからどうしたらいいか分からなくて」

 

「そうか。…彩、俺はこの手の話が得意じゃない。日菜と同じだと思ってくれ」

 

「そうだよね。……ごめん」

 

「そんな俺の意見でもいいなら聞くか?」

 

「…うん」

 

「彩はその人を目標にしてたんだろ?今彩はその人にどれぐらい迫れてる?」

 

「私なんてまだまだ全然だよ」

 

「それなのにアイドルを辞めようとか考えてないよな?彩が目標にする人はどうやってこの業界を駆け抜けた人なんだ?彩はその人に恥じない行動を取れるか?」

 

「…私は……」

 

「今度のラストライブを見に行って自分の気持ちを確かめてこい」

 

 

 私の気持ち…。このぽっかり胸に空いてしまった気持ちを私はどうしたらいいんだろう。これからのことは、雄弥くんが言うようにライブを見に行ったら決めれると思う。私はアイドルを辞めるなんてことはしない。それは絶対。これから私が何を目指すのかを決めるんだ。

 気づいたらいつの間にか雄弥くんは私の隣に立っていて、優しく頭を撫でてくれてた。ゆっくりと、私をあやすように。

 

 

「彩。泣きたい時は泣けばいい。抱え込みすぎるなよ。俺だけじゃない、パスパレのメンバーにだって頼れ。仲間だろ?」

 

「うん…うん!」

 

「今回はここで泣けばいい。今回を機にそろそろ彩はここから飛び立たないとな」

 

「うん」

 

 

 いっぱい泣いた。涙が次々と出てくる。それを抑えることなく、いっぱい流し続けた。

 なんで日菜ちゃんやリサちゃんが好きになったのか今なら分かる。雄弥くんが優しすぎるから。分からないなんていいながら自然に心に寄り添ってくれるから。だからついつい甘えちゃうんだ。それでいて抜けてるとこもあるから一緒にいたくなるんだ。

 

 

(…いっぱい泣いちゃった。…雄弥くんの時間取っちゃった)

 

「え、えっと、雄弥くん時間大丈夫?」

 

「大丈夫じゃないな。とりあえず結花には連絡してあるからなんとかしてくれてるだろ」

 

「えぇ!?ほ、ほんっっとうにごめん!!」

 

「ま、相手側も話が通じる人だから注意ぐらいで済むだろ」

 

「それで済むのもすごいね!?」

 

「もう大丈夫そうだな。部屋出るぞ」

 

「う、うん」

 

 

 テキパキと荷物を纏めた雄弥くんと一緒に部屋を出る。私は今日はもう帰るんだけど、雄弥くんはまだ仕事が残ってる。二人で駅まで行って、別方面だから改札を入ったところで別れた。駅まで歩いてる時に雄弥くんに電話がきて、雄弥くんはひたすら謝ってた。今度お礼とお詫びをしなくちゃ!

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 あゆみさんのライブを見に行って、やっぱりあゆみさんは永遠の憧れなんだって思った。私が目指すアイドル像は、あゆみさんみたいな人なんだ。そう思ってたら麻耶ちゃんから電話がきて、ある場所に呼び出された。

 

 

「ここって…関係者用の入り口だよね」

 

 

 そこから入ると中には私以外のパスパレのみんながいた。なんでみんなここに入れてるの!?

 

 

「あ!彩さんが到着しました!」

 

「いいライブだったよね〜。あたしるんっ♪てなったよ〜」

 

「ふふっ、日菜ちゃんもMarmaladeが好きになったみたいね」

 

「み、みんな何でここに?」

 

「実は彩さんに会ってもらいたい方がいまして。そちらの部屋に来ていただいてます」

 

「へ?ここって楽屋だよね!?」

 

「いいからいいから!早く入っちゃいなよ!」

 

 

 ちょ、日菜ちゃん押さないでよー。ドアを開けて中に入ると、そこには私の憧れの人、Marmaladeのあゆみさんがいた。

 

 

「あ、あゆみさん…?」

 

「ふわふわピンク担当の丸山彩ちゃん、だよね?」

 

「ふぇ?な、なんで私のことを…」

 

「知ってるよ。デビューの時から知ってる。私たちもAugenblickとはちょっと交流があったから結成あたりから話は聞いてたんだ」

 

「ユウくんは言わないだろうから〜、大輝くんあたりかな?」

 

「ふふっ、うん大正解だよ」

 

「実は彩ちゃんを元気づけられないかと思ってスタッフさんにお願いしたのよ」

 

「ワタシたちが頼まなくても会わせてもらえるようになってたみたいですけど」

 

「けど彩ちゃんのためにこうやって動いてくれるなんて、みんないい子たちね」

 

 

 あう。もう何がなんだかわからないよ。と、とりあえず握手させてもらおう。…いいじゃんファンなんだもん!

 

 

「あ、あの、あゆみさんにこれをお願いしたのって」

 

「あ〜、気になる?」

 

「自分たちも気になりますね」

 

「あたしは予想がつくけどね〜」

 

「日菜ちゃんの予想通りの人だと思うよ?」

 

「ということは…」

 

「雄弥くんだよ。ライブの打ち合わせの初日にお願いされたんだよね」

 

「打ち合わせ、ですか?」

 

「うん。今日のライブは今までの私達じゃ考えつかないような演出になってたでしょ?実はAugenblickに協力してもらったんだよね。私達がこういう風にしたいって言ったら、それならこういうやり方があるって具合に次々と言ってくれて、その中から私達が選んでさらに洗練して今日のライブができたんだ」

 

「そうだったんですか」

 

「あゆみさん、本当にほんっとうに!今日のライブは、今までのもですけど、最高のライブでした!」

 

「ありがとう。そう言ってもらえて…本当に嬉しいよ。…ありがとう」

 

 

 この後もあゆみさんが打ち上げに行くギリギリまで話をさせてもらって、最後にはあゆみさん直伝のポーズを教えてもらえたんだ!みんなは微妙な反応してたけど、私はすっごく好き!絶対これから使うんだもん!

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