陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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※例の如く本編に一切関係ない前書きです
CLANNAD AfterStoryの12話(主人公の父親が逮捕された回)まで見ました。本当に、なんて心に突き刺さる作品なんだ!(T_T)
最後まで見て「CLANNADは人生」、この言葉を正しく理解する所存です!
(。>﹏<。)



9話

「もしもしリサ?今時間大丈夫か?」

 

『うん大丈夫だよ。今休憩中だから』

 

「そうか。今日ライブのチケット優遇してもらえたぞ」

 

『ほんと!?わざわざごめんね〜。それでチケットは郵送かなんかで受け取ればいいのかな?』

 

「いや直接渡すぞ。今日帰るから」 

 

『へ?……そういうのは前もって行ってよ!』

 

「…そんな怒ることか?」

 

『せめて前日には言ってほしいなー』

 

「そう言われてもな。帰れるってわかったのがさっきだから」

 

『あ…そうなんだ。…ごめん』

 

「気にしてないから。それに今日帰ってもまたライブ直前まで泊まり込みになるしな」

 

『…雄弥ってスケジュール組むの下手なの?』

 

「どうだろうな。仕事を貰えるうちに貰ってたらこうなった」

 

『バカ。……みんなからも言ってあげてよ』

 

 

 リサがスピーカーに変えたのか、音の聞こえ方が変わった。どうやらRoseliaのメンバーも近くにいたようで、すぐに声が聞こえてきた。

 

 

『雄弥さーん、あこライブ楽しみにしてますけど、無理はしないでくださいね!』

 

『疲労は…蓄積していくと……なかなか取れないらしいので…気をつけてくださいね』

 

『雄弥くん、どこまでやると無理をしてると言われるのかを把握してください。ちなみに今のあなたの状態は無理をしていると言えますので』

 

『あなた達雄弥に甘いわね。…雄弥、倒れるのは勿論ダメだけれど、ライブのパフォーマンスに影響を出すのもダメよ。もしそんなことしたら…覚悟しときなさい(・・・・・・・・)

 

「ははっ、…わかった。まぁライブまでの予定は決まってるから、その後のはもう少し減らす」

 

『どれぐらいかは私がチェックするから、その時は家に帰ってきなさい。お母さんがたまには顔を出してほしいと言ってたわ』

 

「そうなのか。ならライブの後にそっちに帰る」

 

『お母さんにも伝えとくわ。リサ、二人で話していいわよ』

 

 

 今度は友希那が操作したのか、リサの戸惑いの声が聞こえると同時にスピーカーが切れた。

 

 

「俺の用事は済んだが、リサの方は何かあるか?」

 

『あはは〜、実はあたしも特にはないかな〜。…けど、雄弥が元気そうで良かった。最近は電話もできなかったから、どうなのか分からなかったわけだし。日菜から聞いたけど他のグループのライブを手伝ったんだって?ホント何でもするよね〜』

 

「あれもリーダーの決定だがな。一番時間を作りやすい俺が打ち合わせとかするようになっただけだ」

 

『結花と一緒に?』

 

「…そうだな」

 

『当たってたんだ…。アタシも鋭くなったな〜』

 

「勘だったのか」

 

『もちろん!…そろそろ休憩も終わりだから切るね?』

 

「ああ」

 

『それじゃあ雄弥が帰ってくるの楽しみにしとくね♪』

 

『…今井さん、雄弥くんが今井さんの家に居候してることについて話があります』

 

『え、紗夜?…な、なんか怖いんだけど〜…ーー(ブツッ)』

 

「……切れた」

 

 

 てっきり居候の件は知られてると思ってたけど、知られてなかったんだな。…まぁ一々言うことでもないか。

 携帯を操作して画面を暗くして、近くに置いてあったペットボトルを後方に全力で投げる。後ろから鈍い音とうめき声が聞こえたということは、うまいこと直撃したのだろう。

 

 

「ぉ、お前、荒れてないか?」

 

「何の話だ?盗み聞きしてニヤニヤしてる奴がいたらとりあえず沈黙させたいだろ?」

 

「やり方が雑すぎるわ!」

 

「なんだ大輝元気じゃないか。やっぱペットボトルは限度があるな。…そんなどうでもいいことより、他のやつは?」

 

「どうでも…まぁいいか。結花は仕事、疾斗はどっか消えて、愁は後から合流だな」

 

「愁が来るぐらいには疾斗も戻ってくるだろ。…それまでは自主練か」

 

「そうだな。まぁ次のライブのメインである結花が今日いないんだけどな」

 

「それ以外の練習はできるだろ」

 

「それもそっか」

 

 

 話しながらチューニングを終わらせるとお互い集中し始める。さっきまでの雰囲気とはかけ離れた状態。ライブ本番さながらの空気を自分たちで作り上げて自主練を始める。

 しばらくしたら疾斗が戻ってきて疾斗もすぐに練習を始めた。愁が到着する前に10分程休憩を取って、4人集まったら音合わせをする。よりライブに近づいた空気になると、疾斗のテンションが上がり始めて勝手にパフォーマンスの練習も始まり、それに俺たちも即興で合わせて練習する。練習は事前にセットしていたアラームが鳴ったところで終了した。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 2週間ぶりぐらいだろうか、なんてことを思いながら今井家の玄関に入る。隣は湊家だから顔を出すぐらいできるのだが、ライブの後と電話で言ったのでやめといた。「ただいま」を言ってから脱いだ靴を揃えていると背中に人がもたれかかって来た。

 

 

「ただいまリサ」

 

「うん…。おかえり、雄弥」

 

「リサ一旦どいてくれないと立てないんだけど」

 

「おんぶしてくれたら立てるんじゃない?」

 

「…家の中でおんぶするのか」

 

「冗談じょーだん。ご飯できてるから食べよ?」

 

 

 俺の背中からリサが離れる。立ち上がってリビングがある方に向くとリサが寄り添ってきて、リサと手を繋ぎながらリビングへと向かう。

 

 

「お腹空いてたから助かる。リサが作ったのか?」

 

「そうだよ。母さんにお願いして今日は作らせてもらったんだ~。ちょっと手伝ってもらったりはしたけど」

 

「そうか。リサの料理って久々だな」

 

「張り切ったから期待していいよ〜?」

 

「リサの料理で期待しなかったことないぞ」

 

「ふぇ」

 

「…あなたたち本当に新婚さんみたいね〜」

 

「あ、ただいま帰りました。しばらく帰れなくてごめんなさい」

 

 

 玄関からリビングが遠い家なんてもはや豪邸なわけで、喋りながら歩いていたらすぐにリビングに着く。つまり、手を繋いでいることも会話の内容も全て筒抜けだ。俺はそのことを気にしないからとりあえず帰ってこなかったことを謝った。

 

 

「いいのよ。お父さんもリサが産まれる前は世界中に出張に行ってて、2ヶ月帰ってこないこととかよくあったもの」

 

「……母さんほんと、ごめんなさい」

 

「それで海外で女を作ってるって知った時なんてねー?」

 

「ゴメンナサイ!!」

 

「雄弥くんはそんなことしちゃ駄目よ〜?女を泣かせて許されるときは感動させたときか、恋愛で相手を振るときぐらいよ」

 

「…恋愛……」

 

「…あら、青春し始めたのかしら。いっぱい悩みなさい。一番駄目なのは、なし崩し的に相手を振ることよ」

 

「はい」

 

「雄弥…」

 

「さて、それじゃあご飯にしましょうか!雄弥くんが帰ってくるって知ってリサが作ってくれたのよ」

 

 

 話を切って食卓を4人で囲む。用意されていた料理は、栄養バランスを考えられたものだが、彩りもあり、この時期の男子が求めるカロリー量も十分に補えるものだった。

 

 

「みたいですね。リサから聞きました」 

 

「あらそうなの?じゃあ『雄弥って何なら一番喜んでくれるかなぁ』って相談してきたのも聞いた?」

 

「ちょっ、母さん!それは言わないでよ……」

 

「それは聞いてませんでしたね。リサ、俺はリサの料理ならどんなんでもいいからな。こんなに考えて用意してくれてありがとう」

 

「あぅ……バカ」

 

「なんでだ…」

 

「ふふっ、微笑ましいわね〜。今度はリサを食べてくれてもいいのよ?」

 

「な…なな…なにいって」

 

「リサは食べれないでしょ」

 

「…おじさんは偶に雄弥くんの天然さが羨ましいよ」

 

「へ?」

 

 

 天然って羨ましがられることじゃない気がするんだが、役立つことがあるのだろうか。リサが作ってくれた料理を美味しく食べながら今井家の会話に混ざるのだった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 母さんってば、なんですぐにアタシが恥ずかしくなるようなことを次々と言うのかな!しかも半分ぐらいは雄弥が理解できないことばっかりで、アタシが勝手に恥ずかしがってて変な感じになるし!

 

 

「はぁ。…けど、雄弥と一緒なのは久しぶりだったし、多めに見てあげたらいいのかな」

 

 

 …いやいや、こんなんだから母さんがやめないんじゃん。それにしても母さんは凄いや。雄弥の反応を見ただけで雄弥の悩みを理解して助言してたんだもん。きっと前から気づいてたんだろうけど、ある程度は自分で何とかさせようとしてたのかな。

 

 

(アタシも母さんみたいな大人になれるかな…)

 

 

 母さんの凄さを理解すればするほど母さんの背中が遠くに感じる。どうやったら追いつけるのかを考えながらアタシは湯船に浸かった。

 

 

 

 

 

 

「で、のぼせたと」

 

「うぅー。ごめんね雄弥。せっかく帰ってきてくれたのに」

 

「気にするな。のぼせようがのぼせまいがリサと一緒にいれることに変わりはないからな」

 

「…雄弥って恥ずかしいことを平然と言うようになったよね」

 

「前から思ったことをそのまま言ってたけどな?」

 

「言葉の内容が変わったの!」

 

「そうか?」

 

 

 無自覚って怖いね。日菜も無自覚な発言が多いけど、同性と異性とじゃ全然違う。しかもそれが意中の人となると何度も何度もドキッとさせられる。そうさせられるのも悪くないかな、なんて思うようになったアタシは雄弥にゾッコンなんだろうね。

 ベッドで横になってるアタシのすぐ横で介抱してくれてる雄弥の姿を眺めて、雄弥を好きになれてよかったと思う。アタシは素敵な人に出会えたんだって心からそう思える。

 

 

「ねぇ雄弥、ぎゅってして」

 

「今のぼせてるだろ。駄目だ」

 

「いいじゃん」

 

「リサが回復したらな」

 

「ぎゅってしてくれたらすぐに治るよ?」

 

「どんな理屈だ…」

 

「じゃあ寝る前!それならいいでしょ?」

 

「まぁその時なら大丈夫か」

 

「絶対だからね!アタシより先に寝ないでよ!」

 

「わかってる」

 

 

 2週間ぶりぐらいに雄弥とこうして会えてることが嬉しくて、ついついわがままを言っちゃう。もっともっと雄弥に甘えたい。雄弥に会うことでアタシの雄弥への気持ちに歯止めが効かなくなってくる。

 

 

(けど、アタシはこうやっていられるし、日菜も事務所で会えてるだろうけど紗夜と友希那は……)

 

 

 こんな同情なんて二人からしたら余計なお世話なんだろうけど、独占できて喜んでいる自分と、引け目を感じる自分がいる。二人も雄弥と会いたいはずなのに、それを言わずにいてくれる。本当に二人はすごいよ。

 

 

「…あ、チケットまだ渡してなかったな。忘れないうちにリサに渡すからちょっと取ってくる」

 

「うん。すぐに戻ってきてね」

 

「すぐそこだから時間かける方が難しいな」

 

「あはは、それもそうだね」

 

 

 雄弥がアタシの部屋から出てすぐに、雄弥の携帯に結花からメッセージが飛んできた。気になって表示されてるのを見ると、そこにはライブが楽しみだという内容と次の衣装がとっても可愛いものだということが書かれていた。

 可愛い衣装ってどんなんだろうなぁって思っていたら今度はその衣装の写真が送られてきた。

 

 アタシは見なければ良かったと後悔した。

 

 

 だって、写真に写ってる衣装は

 

 

 誰がどう見ても、

 

 

 

 

──ウエディングドレス(女性の幸せの象徴)なんだから。

 

 

 

 そしてアタシにとどめ刺すような最後のメッセージが…

 

 

『しっかりリードしてよ新郎さん(・・・・)

 

 

(しん…ろう?…誰が?)

 

 

 そんなのは決まってる。こんな内容を送ってくるってことは新郎は雄弥だ。

 

 けどなんで?結花は狙ってないって言ってたじゃん!ライブでやって既成事実でも作る気なの!?

 

 携帯をそっと元の位置に戻してアタシは呆然とするしかなかった。既読はつけてないから結花も雄弥もアタシが見たってことを知ることはない。部屋に戻ってきた雄弥がまだ寝ないっていうのにアタシを抱きしめてくれた。いつもならそれで幸せに満たされるけど、今日はそうならなかった。

 

 ただ虚しさが広がるだけ。

 

 

 アタシの心には埋めれる気がしない程の大きな穴ができた…。

 

 




ライブ衣装がウエディングドレス!?何を考えているんだ!
真相は次回です。
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