陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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自分でもたまに分からなくなるオリキャラの名字。
秋宮疾斗(リーダー)
梶大輝(いじられキャラ)
毛利愁(一応参謀役)

パスパレ2章「もういちどルミナス」昨日やっと全話解放しました。最高だよ!


10話

 

 Augenblickのライブ衣装を見たあの日からアタシの心はどこかに行ってしまった。みんなに心配されないように頑張って作り笑顔を作って学校生活を過ごして、練習にもバイトにも手を抜かなかった。けど、アタシの親友には通じないみたい。

 Augenblickのライブ日、ライブはいつも通り夕方からだからRoseliaの練習も午前中になる。練習が終わったところでアタシは友希那に呼び止められた。

 

 

「リサ、何があったのかいい加減教えてくれないかしら。雄弥と一体何があったの?」

 

「心配してくれてありがとう〜。けど…何もなかったよ」

 

「リサ。私にそんな嘘が通じると本気で思っているのかしら。練習にはしっかり取り組んでくれているし、授業も問題ないようだれど、気を抜いていい時のリサはずっと上の空だったわよ」

 

「そんなことないよ。今日だってクラスの子とも普通に喋ってたでしょ?」

 

「えぇ。リサが作り笑顔で無理に合わせていたわね」

 

「っ!!」

 

(嘘、絶対に嘘。アタシはちゃんと笑えてたはず。誰も気づかないように自然な笑顔だったはず!)

 

「本気で私が気づかないと思ったの?それは心外ね。リサのことは誰よりも見ているつもりよ」

 

 

 友希那…が?いつも興味ない、みたいな態度とってたくせに…。今そんなこと言うなんてズルいよ。ホントに姉弟そろってさ。……こんなの、堪えられないよ。

 アタシは俯いて涙を流した。両手で顔を覆ってはいるけど、こんなことしてもみんなにはバレバレだよね。友希那がそっと正面から優しく包み込んでくれて、みんなもアタシの周りに来てくれた。

 

 

「何があったのか教えて?」

 

「……ほんとにね、雄弥と何かあったわけじゃないの…アタシが勝手に雄弥の携帯見て…それで今日のライブが……」

 

 

 それ以上は言えなかった。秘匿情報であることもそうだけと、それ以上にアタシの心がそれ(現実)を口にすることを拒んだ。言おうとして口を開いても声が出ない。

 

 

「…リサ、無理はしなくていいわ」

 

「ごめん…ごめん」

 

「いいのよ。もっと私たちを頼ってちょうだい。仲間なんだから」

 

「うん…」

 

「……今日のライブの見方が変わりましたね」

 

「そうね。雄弥たちがどんなライブをする気なのか」

 

「見に行って確かめないといけないですね!リサ姉を泣かせるなんて、あこ許せないです!」

 

「けど…否定的な目線で見ても…仕方ありません。…公平な目線を心がけないと」

 

「燐子の言うとおりね。Augenblickは自分たちのやりたいようにするけれど、お客さんのことを大前提に考えているはず。その意図も把握しなくては」

 

「たしか各ライブにはテーマがあるのでしたね」

 

「はい。前回は転生。それで今回が」

 

「…幸福、だったよね。あこちゃん」

 

「うん!」

 

「幸福ね…」

 

 

 幸福、たしかに幸福がテーマならあの衣装なんだろうね。けど、あれはお客さんに向けてのメッセージだけじゃ済まない。それ以上のことが裏にはある気がする。

 

 

「なんにせよ今日のライブを見に行けばわかることです。今回もチケットは融通してもらってますし」

 

「前回同様また周りに人がいないところ…でしたね」

 

「一旦帰りましょう。時間には遅れないで」

 

「もちろんです!」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 ふんふふ〜ん♪ライブ、ライブ☆

 ライブ自体は2回目だけど、私が初めからステージに立ってるって意味なら今回が初めてのライブ!しかも今回は私をメインに考えたライブになってるから超楽しみなんだよね〜。

 

 

(私の夢の一つが叶うライブだしね)

 

 

 ライブが楽しみすぎて集合時間の1時間前に来ちゃった。まだ他のメンバーは来てないし、しばらく来ないだろうから私は先に会場に入ることにした。身分証明を見せてスタッフさんに通してもらって、真っ先に向かったのはもちろんステージ!

 Augenblickらしく色んな演出ができるように大量の仕掛けが用意されているけど、それは全て分からないようにうまく隠されてる。ステージの真ん中に立って客席を見る。きっとお客さんで埋まることになる客席。来てくれた人たちと盛り上がってる景色をイメージする。それだけで私は胸が高鳴ってくる。

 

 

「早くライブしたいなー」

 

「ボヤいても時間は変更しないからな」

 

「へ?」

 

 

 独り言のつもりが返事があった。そっちを見るとAugenblickが揃ってた。…みんななんでこんな早く来てるんだろ。馬鹿じゃないかな。

 

 

「結花のことだから集合時間の1時間前には来るだろうって予想したんだよ」

 

「愁の予想通りに結花が来てるとは正直思ってなかったがな」

 

「けど雄弥が僕らで最初に来てたんだよね〜」

 

「お前らが遅れただけだろ」

 

「僕は時間ピッタリだったよ。疾斗は寄り道してきて、大輝はそれに巻き込まれたんだよね」

 

「酷い目にあった…」

 

「人助けはいいことだろう」

 

「そこはな!ただお前の無茶振りが酷すぎんだよ!」

 

「普通だろ」

 

「自分を基準にするな!前から言ってるがお前は人外レベルだからな!?」

 

 

 私のやること読まれてたんだ…。理解されてるって思うべきか、単純だと思われているのか。

 私はステージにあるお立ち台から降りてみんなの方に駆け寄る。これ以上あそこに立ってたらマイク使って歌いそうになるからね。それを言わなくても伝わるようで、私が駆け寄ると自然と楽屋へと向かう。

 

 

「それにしてもライブ衣装がウエディングドレスか…。またぶっとんだライブになるな」

 

「いいじゃん可愛いんだもん。着てみたいって思うのは女の子なら当然のことだよ?」

 

「そりゃそうだろうけどな。…変な噂が立つだろうな」

 

「そんな心配するなよ大輝。俺たち4人は全員同じ衣装を着るんだ。熱愛云々には発展しないし、そういう情報が流れようと信じない奴は信じない」

 

「しかも僕らって色々やり過ぎてるから今回はコレか、ぐらいの反応の方が多いでしょ」

 

「ほんとみんな頭おかしいよね☆」 

 

「結花も今回で仲間入りを果たしたがな」

 

「…え?」

 

 

 環境に染まっていくって話はよく聞くけど、私も抗えないのか〜。まぁコレはこれでいいんだけどね?だってAugenblickに馴染んできた証なんだから。

 

 

「あの衣装の出番はラストだけどね」

 

「結花の持ち歌披露と新曲披露の時だからな」

 

「ミスったらフォローしてね?」

 

「任せろ!大輝が体を張ってフォローするから!」

 

「俺を犠牲にするなよ!」

 

 

 私の持ち歌…つまりは代表曲。Augenblickはそれぞれ1曲ずつ持ち歌がある。担当の歌とは別で、歌詞の方向性とか曲の方向性を自分で決めて、人によっては自分で全部作る。それを今回私も披露する。曲は方向性しかできなかったけど歌詞は自分で作った。もちろん添削されるけど、それでも私が詰め込みたいものは何一つ削られなかった。

 

 

「楽しみだな〜」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 ライブは順調に進んだ。練習してきた全てを出し切ってるし、お客さんの盛り上がりも最高になってる。今は最後の演出、私の持ち歌とあの衣装を披露する前のちょっとした休憩。

 お客さんには事前に収録したMVを見てもらってる。内容は練習中にふざけたことを纏めたもので、NG集というタイトルで流してる。笑い声が聞こえるあたり掴みはバッチリだね。

 

 

「おお〜。私がこれを着る日がくるとは…」

 

「結花が頼んだんだろうが」

 

「それでも感慨深いものなんですー!」

 

「そういうものか」

 

「雄弥のタキシード姿って結構様になるね!みんなもいい感じなんでしょ?」

 

「俺が様になってるならそうなんじゃないか?」

 

「いやお前が一番様になってるからな?」

 

 

 雄弥にツッコミをしながら大輝たちもこっちに来た。大輝たちも雄弥同様タキシードだけど、胸に指す造花はそれぞれのイメージカラーになってる。…なるほどー、たしかに雄弥が一番様になってるね。みんなカッコイイけど、順位をつけれるぐらいには差がある。ちなみに一番下は疾斗だね。疾斗は和服のほうが似合うから。

 

 

「結花が一番似合ってるけどな」

 

「どこにでも自信を持って送り出せるな」

 

「疾斗、保護者目線になってるよ」

 

「そろそろ時間だぞ」

 

「…雄弥」

 

「…はぁ、…お手をどうぞ、プリンセス」

 

「…ありがとうございます」

 

「…キザだな」

 

「ああ、キザだ」

 

「よくあんなこと言えるよね〜」

 

 

 なんでこんか恥ずかしいことを言えるの!!というか3人は先に出ないといけないでしょ!早く行きなよ!!

 

 

 

『それでは登場していただきましょう。藤森結花さんどうぞ!』

 

 

 疾斗のフリを受けて私は雄弥に軽く手を引っ張ってもらいながらステージに出る。楽しみだったけど、いざとなると恥ずかしい。雄弥は私をステージの真ん中までリードしてから自分の場所に移動した。

 

 

「「「カワイイ!」」」

 

「「「きれい!!」」」

 

「あ、ありがとうございます。…あはは、こんないっぱいの人に言われると凄く照れちゃうね。…この衣装は私のお願いで作ってもらったんだ〜。…とても大切で、みんなに受け入れてもらえてすっっごく嬉しい!それでは聞いてください。私の持ち歌で"Glühen"」

 

 

 ドイツ語で"輝き"という意味のこの歌は、私がみんなに希望を与えられるような人になりたいという思いと、みんなも輝けるよ!という思いを込めた歌。

 歌い終ると大量の拍手と「よかった」といった言葉がいっぱい聞こえてきた。成功したことを実感し、一度お辞儀をしてからマイクスタンドを移動させる。スタッフさんからインカムを受け取って、マイクを持たなくても歌が届くようにする。

 次が最後の曲で一番の見せ場、大輝がドラムからギターに変更して、ギターを引いてた雄弥が真ん中に歩いてくる。この新曲は一人では歌えない。二人での掛け合いがあって完成する曲。それを今回雄弥にしてもらうんだ。

 

 

「タイトルコールは一緒にね?」

 

「ああ」

 

「「Glück」」

 

 

 二人で歌いながら、二人でダンスをする。それがこの曲のやり方。ライブの最後がバラード風だけど、まぁメインだからいいよね?お客さんにも受けが良かったわけだし。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 なるほど、こういうことだったのね。リサはこの衣装が使われると知ってしまったから…。雄弥は本当にバカね!

 

 

「ちょ、待ってください。友希那さん!」

 

「待たないわ。私は雄弥に話があるから」

 

「あこたちも行きますからー」

 

「早くしなさい。私は今気が立っているの」

 

「宇田川さん、白金さん、はぐれないように付いてきてください」

 

「紗夜さん!…リサ姉行こ」

 

「……うん」

 

 

 …リサが沈んでいることが頭から抜け落ちていたわね。リサのペースで行かなくては、…雄弥たちの楽屋はあそこね。

 どうやって関係者用から入ったかって?身内なんだから通れるわよ。

 ノックせずに楽屋のドアを開けると、雄弥を除いたみんなが驚いた顔をしていた。私は周りには一切目を向けず雄弥に詰め寄って胸ぐらを掴んだ。

 

 

「ゆ、友希那ちゃん!?」

 

「あなた達は黙ってなさい。…雄弥、ライブのことに口出ししたくはないし、正直ライブはとても良いものだったわ。けれど、アレはないでしょう!!」

 

「なんのことだ」

 

「最後の曲よ!」

 

「っ!!」

 

「何が問題なんだ。俺たちが作った曲をなんで友希那に否定されないといけない」

 

「それ自体は否定しないわ。けれど、あなたを想っている人(・・・・・・・・・・)のことを考えなさい!!あんなことをしたら衝撃を受けるどころじゃないのよ!!心にどれだけ深い傷を負うと思ってるの!!」

 

「…俺は…」

 

「…日菜のおかげで考えるようになったと思っていたのに。甘やかすのは私の役割じゃないからハッキリと言うわよ。雄弥、あなた最低よ(・・・)

 

「……外で頭冷やしてくる」

 

「…そうしなさい」

 

 

 雄弥が部屋を出ていくと梶くんが追いかけていって、あこも様子を見てくると飛び出していった。そのあこを燐子が追いかけていったけど。

 静かになった部屋にすすり泣く音が響き始めた。その音源はこのライブでメインを飾った結花だった。毛利くんが寄り添ってあげて、秋宮くんが半歩前に立って私たちと結花の間に立っていた。

 

 

「…ごめん、なさい……わたし、…わたし、リサたちを…傷つけるつもりはなくて」

 

「っ!…ごめんなさい。あなたを責めたわけじゃなくて」

 

「けど、…だけど…私がこれをお願いしたから!……夢、だったから」

 

「…ウエディングドレスを着ることが夢なのはわかります。女の子なら誰だってそうですし、アイドルをしている以上結婚が難しいことも理解しているつもりです」

 

「紗夜…」

 

「ですが、あなたなら結婚できるでしょう?Augenblickは常識に囚われないバンドで、生きづらい環境を次々と打破しているバンドなんでしょう!?それならライブじゃなくても」

 

「無理なの!!…私は…絶対に結婚できないから…」

 

「何を言って!」

 

「紗夜落ち着いて」

 

「…今井さん」

 

 

 辛いはずのリサに静止を呼びかけられたことで紗夜も押し黙った。リサはまだ表情が暗いけど、それでも結花の話を聞こうとしている。それにならって私たちも黙るしかない。

 

 

「リサ……ごめん。ごめん!」

 

「うん。結花の理由を教えて?結婚できないってどういうこと?」

 

「私は…私の体はね、…子供を産めない体なの」

 

「「「……ぇ」」」

 

 

 結花の口から出た言葉は、私たちの思考を止めるには十分過ぎた。結花には結花の理由がある。それを、今回のライブに込められた思いを、私たちは考えれてなかったことを思い知らされる。

 




この回で話を収める予定だったのに!思いの外めちゃくちゃ長くなりそうだから区切ることにしました。
「自分のことを想う人のことを考えろ」は友人に怒鳴られて言われた言葉です。ほんと、いい友人ですよ。涙が出ましたね。
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