陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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このキャラの設定上(モデルにした人の関係上)誕生日は今日です。
※これは6月1日に書いて放置したものです。時系列はあまり気にしないでください。m(_ _)m


藤森結花 誕生日回

「次はあれ行きたーい!」

 

「よくそんな次から次へと要望が出てくるな」

 

「驚きを通り越して尊敬するよ」

 

「ええー、みんな欲がなさすぎなんじゃない?」

 

 

 今日6月24日は私、藤森結花の誕生日。今日は私が所属してるバンドAugenblickのメンバー全員で遊んでるんだ☆

 

 

「服屋でのファッションショーに映画鑑賞、休憩がてら食事に行って今度はゲームセンター。…ある意味ハードスケジュールだな」

 

「そうかな〜?でも私がやりたいことはまだまだ残ってるよ?」

 

「一応聞くけど他にやりたいことは?」

 

「えっとね〜、ゲームセンターの後は時間考えたら移動しないとだね。綺麗に夕焼け見えるとこあるらしいからそこに行きたい。今日中は無理だけど、みんなでテーマパークとか行きたいし、旅行とかも行きたいな〜。あとはねー、」

 

「結花そこまでだ」

 

「疾斗のケチ。言うぐらいいいじゃん。ね?雄弥」

 

 

 大輝と愁は疾斗と同じでお腹いっぱいみたいな反応してるから、三人とは違う雄弥に聞いてみる。雄弥は色んな子と予定合わせてるから1番忙しかったりするけど、それでも私の要望を聞いてくれる。

 

 

「予定を合わせれたら行けばいいだろ。それよりゲームセンターにいくぞ。夕焼けを見に行く時間を考えたら早く行かないとろくに遊べないだろ」

 

「それもそうだね。ほらみんなも急いでー」

 

「……結花ってパワフルだよね」

 

「天真爛漫ってやつだな」

 

「バンドやってる奴ってそういうの多いのか?」

 

「は?………かもな」

 

 

 いやいや、聞こえてるからね?まぁ天真爛漫って別に悪口ってわけじゃないからいいんだけどさ。悪口言うようなメンバーでもないけど。

 

 

「今日はやけに楽しんでるな」

 

「まぁね〜。今日は特別な日なわけだし☆」

 

「誕生日だからか?」

 

「…それ()あるかな〜」

 

「他にもあるのか」

 

「それは乙女の秘密だけどね☆」

 

 

 そう秘密。知ってるのはマネージャーさんだけ。みんなのことは大好きで、信頼してるけど、それでもやっぱり言えないかな。もしかしたら勘付いてる人もいるかもだけどね。

 みんなはすっごく優しい。だから人が秘密にしたいことは本当に踏み入ることなく距離を置いてくれる。それはありがたいことだけど、時に寂しさも覚える。…身勝手だけど、もっと接してほしいって時もあるんだよね。

 

 

「それで何からやる?」

 

「へ?……そうだな〜、じゃああれからやろ!」

 

「じゃまずは大輝を犠牲にするか」 

 

「犠牲とか言うなよな!」

 

「それでも最初にやる大輝って律儀だよね」

 

「それを無くしたら大輝には何もないからな」

 

「疾斗もたまに辛辣だよな!」

 

「あはははは!いいから早くやりなよー!」

 

 

 あ~ほんとに面白いな〜。Augenblickに入れてくれたマネージャーさんには感謝だね。

 大輝を生贄にどんな内容なのかを確認してから残りの4人で2人ずつに別れてシューティングゲームをした。先に私と雄弥のチームでやった。雄弥が滅茶苦茶上手くて、何度も雄弥にフォローしてもらった。

 

 

「あ~、ごめんね。ゲームオーバーなっちゃった」

 

「気にするな。俺ももう死ぬ。…ほらな」

 

「結花をフォローしてた分雄弥の体力減ってたからな〜」

 

「…ごめん」

 

「謝るな。ゲームなんだから楽しむことが目的なわけだしな。結花は楽しめたか?」

 

「うん!おかげ様でね♪」

 

「さて、じゃあ次は俺と愁だな」

 

 

 2人は最後のステージまでを見れてたおかげで楽々とラスボスまで辿り着いて、それはもう見事に倒してた。製作者が泣きそうだね。

 その後は5人でカートレースしたり、UFOキャッチャーしたり、リズムゲームしたりしてゲームセンターを出た。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「ベストタイミング!さすがは私だね☆」

 

「自分で自分を褒めるやつってろくなのいないよな」

 

「疾斗言われてるぞ」

 

「よし、大輝はそこらへんの柱に括りつけて置いて帰ろう」

 

「いいね。僕も協力するよ」

 

「ブルータスお前もか!」

 

「ブルータスじゃないから、しかも大輝がカエサルとかかけ離れ過ぎだから」

 

「ぐはっ」

 

 

 一連のやり取りに必ずと言っていいぐらいギャグを盛り込むよね〜。アレはアレですごく面白そうだけど、ちょっとノリについていけないかな。…男の子ってすごいなー。

 

 

「夕焼けを見なくていいのか?そのためにここに来たんだろ?」

 

「あ、うん。…みんなのやり取りが面白かったからつい」

 

「俺たち漫才師目指せるんじゃね?」

 

「大輝が毎回体をはった、死にものぐるいの漫才か。斬新だな」 

 

「辛い方向はナシだよ!疾斗もわりと俺にそういうことさせるよな!」

 

「それは失礼だよ大輝。僕も弄りたいと日頃から思ってるのに」  

 

「四面楚歌!?」

 

「ほらね?」

 

「なるほど。…無視しとけばいいんだよ」

 

「雄弥みたいにはできないかな〜」

 

 

 私にとってはこの夕焼けはもちろん大事なんだけど、こうやってこの5人でいるという事実が大事なんだ。一つ一つが大切な思い出になるから。

 夕焼けを見ながらも飽きずに盛り上がり続けるAugenblickのメンバー、私も途中からそのやり取りに巻き込まれて、さっきまでとは違う楽しさを味わえた。

 帰宅時間になって、私は雄弥に家まで送ってもらうことになった。他の三人はそれぞれやることがあるみたい。やっぱりちょっと無理して予定空けてもらってたみたい。

 

 

「あーあ〜、今日ももう終わりか〜」

 

「結花の誕生日、という日ならまた来年もくるだろ」

 

「うん。また来年もみんなで遊んでね?」 

 

「…解散してなかったらな」

 

「っ!?……物騒なこと言わないでよね〜。私が入ってまだ半年すら経ってないのに」

 

「そういやそうだったな。ただ、元々Augenblickはここまで活動を続けるつもりじゃなかったからな。…色々あったのもそうだが、俺たちは予定以上に大きくなりすぎたみたいだ」

 

「へー。また新しいこと知っちゃった☆そんなAugenblickの結成秘話、新メンバーとしては興味深いなぁ」

 

「話すほどのことじゃない。一言で言えばマネージャーがかき集めて作ったバンドだ」

 

「ざっくりしすぎだよ…」

 

 

 雄弥からしたら実際にそう思えるのかもしれない。私たちのマネージャーさんは他に類を見ないぐらい人の秘めた才能を見出すことができる。それに情報収集能力も分析力も高いからあの人に見出された人は将来を約束されたも同然、と言われるぐらいだ。

 そうこうしているうちに私の家に着いた。実は事情があって私は一人暮らしをしている。マンションの一室で、一人暮らしにしては少し大きめの部屋だ。玄関の鍵を開けながら後ろにいる雄弥に別れを告げようとしたら、扉の内側から(・・・・・・)クラッカーが鳴った。

 

 

「うわっ!な、なになに!?」

 

「結花ってそんなに驚くことあるんだな」

 

「わ、私だって驚くことあるよ!」

 

「「「結花ハッピーバースデー!」」」

 

「え、えぇ!!」

 

「サプライズ大成功だね」

 

「その話はあとで、とりあえず中に入れよ。外で騒いでたら近所迷惑だしな」

 

「疾斗、ここ結花の家だからな。…雄弥は固まってる結花連れてこい」

 

「そうだな」

 

(さ、サプライズ?みんなが?私に?)

 

 

 私が固まってる間に、本当に雄弥は私を抱えて家に入った。女の子なら誰でも憧れるお姫様抱っこで。それをメンバーに見られて私は恥ずかしさがこみ上げてきた。

 

 

「ゆ、雄弥。おろして!」

 

「大丈夫なのか?顔が赤いようだが」 

 

「すぐに治るから大丈夫!」

 

「わかった」

 

「ちぇー、もう少し抱えられてたら動画取れたのにな〜」

 

「疾斗さすがにそれは結花が可哀想だよ。お姫様に怒られるよ?」

 

「…それもそうだな。写真だけで我慢しよ」

 

「写真撮ったの!?」

 

「大輝がな」

 

「だ・い・き?」

 

「ごめんなさい!今消しましたから!」

 

 

 ふぅー、これであの恥ずかしいお姫様だっこは拡散されないね。……あ、口止めしとかないとダメなのか。

 

 

「みんなこのことは」 

 

「それより愁、料理の方はどうなんだ?」

 

「…雄弥」

 

「?どうかしたか?」 

 

「はぁ…、後でいいや」 

 

「あはは…。料理の方は大丈夫、頼んでおいたから出来たて状態だよ」

 

「完璧だな」

 

「え?え?料理?」

 

「結花の誕生日パーティを今からするんだとさ」

 

「大輝がパーティは必要だろって煩くてな」

 

「そういうお前らもノリノリだったろ!」

 

(誕生日、パーティ…。完全に予想してなかったなぁ。…そっか、みんなここまでしてくれるんだ。あたしなんかのために)

 

 

 用意されてた料理は彩りがある料理ばっかりで、どれから食べようか悩んでしまうし、そもそも食べてしまうのが勿体無いと思えるようなものばっかりだ。

 「食べないほうが勿体無い」って雄弥に言われてとりあえず軽めのサラダから食べる。私が食べたのを見てからみんなも思い思いに食事を始めた。

 成長盛りの高校生が5人もいれば用意された料理を全て食べるのにそこまで時間はかからなかった。食事中もみんなで色んな話をして、料理を食べ終わったらデザートとして最後に出されたバースデーケーキを愁が取り出した。…人の家の冷蔵庫勝手に使ってるね。まぁ今回はいいけど。

 

 

「…すごすぎない?」 

 

「なんかシェフが張り切ったらしくてさ」

 

「シェフ?」 

 

「俺の知り合いのおっさんだな」

 

「あ~、雄弥の知り合いならこのクオリティも納得だね」

 

 

 デコレーションケーキってのは聞いたことあるし、SNSで見たこともあるけど、このクオリティはそうそうないよね。私たちが演奏してる時のワンシーンをデコレーションで描くって、ほんと張り切り過ぎでしょ。これを食べるのって凄い勇気いるんだから。

 なんだかんだでケーキもすぐに無くなりました。はい。写真撮影をしたあとに疾斗と雄弥がサクサク切り分けていってすぐに平らげたからね。

 今はベランダで気分転換がてら夜景を見てる雄弥の横に並んでる。雄弥は別にロマンチストじゃないはずだから、日課の電話してそのままただ眺めてるってことかな。

 

 

「いや〜誕生日パーティをしてもらえるなんてね〜」

 

「大輝に感謝しろよ。あそこまで強引になるのって珍しいことだからな」

 

「うん。もちろん感謝してるよ。祝ってくれたみんなにもね☆」

 

「そうか」

 

 

 誕生日だからか、場の雰囲気がそうさせたのか、私は口にする気がなかったことをうっかり口にしてしまった。

 

 

「もしも、さ、もしも私がAugenblickを抜けることになったらどうする?」

 

「唐突だな」

 

「……あ、ご、ごめん!今の忘れて!抜けたりなんかしないからさ!あははっ…」

 

「結花がAugenblickを抜けたらAugenblickは解散だな」

 

「…え?…バンドなんだし、元々4人で活動してたんだから元に戻すなり、またボーカルを探すなりできるんじゃ」

 

「できるけどやらない。Augenblickは今のメンバーで完成されたバンドだ。ボーカルは結花以外ありえない。例え結花以上の実力がある奴でもいらない」

 

「な、なんで…。なんでそんな私を…」

 

「それは結花がAugenblickのボーカルだからだ。…いや、違うな。失いたくない人だからだ」

 

「なっ」

 

「だからもし結花がいなくなることがあればAugenblickは解散する。それは俺だけの考えじゃない。そこで聞いてる(盗み聞きしてる)そいつらも同じはずだ」

 

「え?」

 

 

 後ろを振り返ると窓が少し開いてるのがわかった。みんな今の話を聞いてたみたい。

 

 

「なにしてんの!?」

 

「盗み聞きだ!」

 

「すげーなこいつ、言いきりやがった」

 

「それよりさ。結花、雄弥が言ったとおり僕たちも結花がいなくなるならAugenblickを続ける気はないからね」

 

「仮の話だがな。そもそも俺たちがこんな長く活動する予定もなかったけどな」

 

「その意味でのAugenblick(一瞬)だしな」

 

「ま、そんな話はいいんだよ。…もし結花が抜けないといけなくなっても、その原因排除に全力を注ぐぞ!」

 

「疾斗なら解決しかねんな」

 

「いやいや雄弥も疾斗と同じ扱いだからね?」

 

「う…うぅ…」

 

 

 私は馬鹿だ。みんな私のことを大切な仲間として受け入れてくれてたのに、私はそのことに気づいてなかったなんて。

 

 

「大輝」

 

「俺何もしてないだろ!?」

 

「盗み聞き」

 

「それは2人も同罪だ!」

 

「ちがうの」

 

「結花?」

 

「みんなが…私を仲間って受け入れてくれてたのに……私がまだ信頼できてなかったのが…情けなくて」

 

「…気づけたならこれから変わればいい。俺たちはまだ出会って半年も経ってないんだ。まだまだ活動は続くし、もっと忙しくなる。これからは長いんだからな」

 

「うん…うん…」

 

「今は泣きたいだけ泣け。我慢するのは体に良くないらしいからな」

 

「うん…!」

 

 

 雄弥はほんとうに、なんで……。けど今はそんなのどうでもいい。今は雄弥に受け止めてもらえばいいんだ。あたしは全てをはき出すように雄弥にしがみついて泣きまくった。

 この日を境に私たちは更に結束力が強まった気がする。というか私がみんなとの距離を更に縮められたってとこかな。それもこれもみんなのおかげなんだけどね☆

 私が仮に辞めたら…なんて話をした原因はまだ残ってるし、雄弥たちに言えてないけど、私は自身を持って胸を張ってAugenblick(ここ)に居たいと断言できる。

 

〜〜〜〜〜

 

「あ、雄弥見っけ!……えいっ!」

 

「結花いきなり抱きつくな。日菜みたいになってるぞ」

 

「えへへ、いいの☆」

 

「何がいいんだよ」

 

「教えなーい」

 

(私はAugenblickが大好き。ずっとここにいたい)

 


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