陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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1章、2章ともに15話ごとでしたが、別にそこにこだわってませんので、3章は15話以上になります。
あ、「藤森結花 誕生日回」は時系列では3章の中のどこかなので、3章の中に入れます。


11話

「はぁ、はぁはぁ……雄弥」

 

 

 私は全力で走っていた。雄弥に謝らないといけないことが判明したから。雄弥がやったことは決して間違いじゃなかった。私は、雄弥の行動を頭越しに否定してしまった。

 

 

(何が最低よ!最低なのは……私だわ)

 

 

ーーーーーー

 

 

「子どもを産めないって…何言って…」

 

「…見てもらったほうが早いかな」

 

 

 結花は服をたくし上げてスカートを少しずらした。突然のことで秋宮くんと毛利くんは慌てて視線をそらす。

 

 

「ふ、藤森さんいきなり何を!」

 

「ここ、見えるでしょ?」

 

「っ!!」

 

 

 結花が指をさした場所は下腹部で、女性にとって大切な子宮がある場所の少し左。

 

 そこには痛ましい傷の後が残っていた。

──まるでナイフで刺されたような(・・・・・・・・・・・・・・)そんな傷だ。

 

 

「な、なんでそんな傷が…」

 

「…虐待?」

 

「…うん。リサの予想通りだよ。私は両親が愛し合って生まれたわけじゃないから」

 

「まさか…」

 

「私のお母さんは売春婦だった。それである日男との間に子どもができてしまった。それが私なんだ。私は望まれて生まれたわけじゃない。お母さんは日に日にストレスが増していって錯乱するようになった。それもそうだよね。相手の男は知らんぷりを決め込んで一切援助しなかったんだから。それである日私が寝ている時にナイフを突き刺してきた。『あなたをこんな惨めな大人にさせないため』なんて言って子宮を狙って刺したんだって。私の悲鳴を聞いたお隣さんがすぐに駆けつけてくれて私は助かった。お母さんはもちろん逮捕された。……私に残されたのはこの傷とお母さんが抱えていた多額の借金だけ。……こんな……子どもを産めないような人と……結婚してくれる人なんていないからさ。……だからせめてライブで夢を叶えたかった」

 

「そう、だったんだ」

 

 

 そんな事情があっただなんて…。私はなんてことをしてしまったの…。結花が話し終わると今度は秋宮くんが口を開いた。それで私は自分の愚かさに気付かされることになる。

 

 

「雄弥が今回新郎役をやった理由を話させてくれ」

 

「…何かあるんですね?」

 

「ああ。あいつなりに考えて決めたことだからさ。お前たちには聞いていてほしい」

 

「…聞く。だから教えて」

 

「リサ…」

 

「わかった。…日菜に出された課題をあいつが悩んでいたことは知ってるだろう?それで何か掴めることがないか悩んで出した結論が、結花の新郎役をやることだったんだ」

 

「どういうことですか?」

 

「新郎新婦、つまり結婚式と同じ形を取るということは、その時の気持ちを相手を愛することを理解するのに最適だと考えたらしいんだ。『そうすることで少しでも相手を愛することがどういうことか考えられると思うからやらせてくれ』ってそう言ったんだ」

 

「それじゃあ雄弥は…」

 

「お前たちのことを考えての行動だな。…まぁ問題があったのも事実だが」

 

「じゃあアタシは勝手に!」

 

「今井さん!」

 

 

 泣き崩れて倒れそうになったリサを、なんとか紗夜が支えてくれた。私はそのまま紗夜にリサのことを頼んで楽屋を飛び出した。燐子に連絡を取って、雄弥がいる場所に急いで走った。

 

 

(私は…また!)

 

 

ーーーーーー

〜〜〜〜〜

 

 

 俺は間違えてばかりだ。こういう時の行動が裏目に出てしまう。しかもより酷い状態になってしまう。会場から少し離れた場所のベンチに腰掛けて反省していると、大輝が駆けつけてきて、すぐ後ろにあこと燐子も来ていた。

 

 

「俺が言うのもなんだけどよ。雄弥って不器用だよな」

 

「…そうなんだろうな。自分じゃよくわからない」

 

「雄弥さん。ライブの背景を教えてください。雄弥さんはリサ姉たちを傷つけるためにやったわけじゃないですよね!?」

 

「当たり前だろ!なんで好き好んでリサたちを傷つけないといけない…」

 

「では……教えてください。あのライブの…背景を」

 

 

 俺は結花のことは伏せて、自分のことだけを話した。男女の幸せの状態を体験すれば恋愛について少しは分かるんじゃないか、そう思ってやったんだと話した。

 

 

「…ほんと不器用なやつ。せめてリサちゃんたちに軽く話しとけばよかっただろ」

 

「ライブの内容を話すわけにはいかないだろ」

 

「ですが…あの、ライブの演出で…自分なりの答えを出すためのことをする…みたいなことなら…大丈夫だったんじゃ」

 

「「あ…」」

 

「…あこちゃん」

 

 

 …あこもそこまでは考えれなかったか。いやまぁ、あこは別にいいんだ。俺がそれを考えれなかったのが問題なんだから。

 

 

「今からでも話して仲直りしてこいよ。…向こうも落ち着く頃だろ。疾斗がいるわけだし」

 

「…そうだな。行ってくる」

 

「……あ、ちょっと待ってください」

 

「りんりん?」

 

「友希那さんが…こちらに向かってるようなので。…ここで…待っていてください」

 

「姉に先を越されたな?」

 

「まぁ、俺の姉だしな」

 

「はははっ!言うじゃねぇか!ま、俺らは友希那ちゃんが来たら楽屋に戻るわ」

 

「ああ」

 

「それと雄弥さん。楽屋に戻ったらリサ姉と紗夜さんとも話してくださいね」

 

「…私からも…お願いします」

 

「ああ。当然だろ」

 

 

 それから友希那が来るまで俺は、特に誰かと話すことなく夜空を見上げていた。やはり都会の空は駄目だな。あの時みたいな星空を見ることができない。いくつか見える星を眺めながら、なんて謝るかを考える。

 謝らないといけない。俺はやり方を間違えてしまったんだから。楽屋を出る時にチラッとRoseliaのメンバーの顔を見た。友希那は当然怒っていたし、あこと燐子は友希那の行動に驚いていた。

  

 そして紗夜とリサは、表情がとても暗かった。あの顔を見ればいかに俺が間違えたのかが、俺でもわかる。友希那の言うとおり心に傷を負わせてしまったのだろう。

 

 

「あ、友希那さんが来ました」

 

「…雄弥、俺たちは戻るから」

 

「…お先に…失礼します」

 

 

 会場の方へ歩き出す三人とすれ違うように友希那がこちらへと歩いてくる。すれ違いざまに一旦足を止めて言葉をかわし、またすぐに歩き始めた。よく見ると友希那の肩が上下してる。さっきまでは走ってきたということだろう。

 

 

「…雄弥」

 

「友希那…。ごめん、俺がやったことは間違ってた」

 

「違う!謝るのは私の方よ。…秋宮くんから話を聞いたわ。雄弥が真剣に考えて行動したって。…今回のライブのもう一つの意味も結花のためなのよね」

 

「それも聞いたのか…」

 

「結花から直接。…ごめんなさい雄弥。あなたがやったことは間違ってなんかなかったわ。…最低なのは雄弥じゃない。何も聞かずに否定した私よ…」

 

「それは違うぞ友希那。俺がもっと器用に動けてたら良かったんだ。そもそも俺が感情を理解できていないからこうなったんだ」

 

「けどそれは!」

 

「もう仕方がないで済まされないんだ。…その時期はもう過ぎた。そうだろ?」

 

「……そうね。私もそう判断したから甘やかすのはやめると決めたんだもの。…たまには姉らしいこともしたいけど//」

 

「最後なんて?」

 

「独り言よ」

 

 

 少し頬を赤くしているから、自分で言っておきながら恥ずかしいことだったんだろう。何かは全くわからないが。

 友希那と二人並んで楽屋へと向かう。仲のいい姉弟らしく、昔みたいに手を繋ぎながら。リサとも紗夜とも日菜とも結花とも違う。友希那と手を繋ぐと不思議と気持ちが高まる。なんでもできそうな、そんな気持ちが湧いてくる。

 

 

「友希那」

 

「なに?」

 

「ありがとう」

 

「どうしたの?改まって」

 

「別に、言いたかっただけだ」

 

「そう」

 

「俺は不器用みたいなんだ」

 

「知ってるわ。私をなめないでちょうだい」

 

「ははっ、ごめん。…俺はこれからも何度も間違えると思う。だから、その度に叱ってくれ」

 

「…私だって間違えることが多いわ。人を叱れるほどの人間じゃない。…だけど、雄弥がそう言うなら私の基準で何度でも叱るわ。ただし、言っておくけど私は甘やかさないって決めてるから、容赦しないわよ」

 

「ああ。ありがとう」

 

「まずはリサと紗夜と話をしなさい」

 

「そうだな」

 

 

 お互いあまり表情を変えない者同士だが、長年の付き合いだ。声色でなんとなくわかる。きっと友希那には俺のことが筒抜けなんだろう。…俺はそうでもないが。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「リサ姉大丈夫?」

 

「うん…。もう大丈夫。心配してくれてありがと〜あこ。紗夜もありがとう♪」

 

「わ、私は別に」

 

「あはは、照れちゃって」

 

 

 あたしの思い込みで発展してしまったこの騒動は、真相を知ることでひとまず落ち着くことができた。結花のことを知ると、勝手に失望していた自分が腹立たしい。その反対に雄弥の考えを知れて嬉しくなっちゃったりしてるんだけどね。気持ちがごちゃまぜだよ。

 

 

「…リサ、本当にごめんなさい」

 

「い、いいっていいって!…アタシの方こそ、結花の夢を知らなかったからこんなことになっちゃったんだし、ごめんね!」

 

「リサは悪くないって!私が!」

 

「はいはいカットカット!!」

 

「疾斗、区切り方が雑すぎるよ」

 

「愁、いたのか」

 

「ずっといたんですけど!?」

 

「とうとう愁までイジラレ役か。同士だな!」

 

「え?大輝いつの間に帰ってきたの?」

 

「さっき三人で帰ってきてただろ!」

 

 

 あ、あははー。アタシもすっかり二人のこと忘れてたや。愁くんは大人しすぎたし、大輝くんは空気を読みすぎて端っこにいたし。…それにしてもノリが軽いな〜。雄弥が退屈しないって言ってたのがよくわかるよ。

 

 

「うちのメンバー面白いでしょ?シリアスなんて長続きしないんだから」

 

「その点Roseliaはメリハリしっかりしてるかな〜。練習中とそうじゃない時で全然違うんだよ?」

 

「いやいや私たちだって全然違うからね?ライブ見た後だからよくわかるでしょ?」

 

「いやいやあたしたちのほうが」

 

「いやいやいやいや」

 

「…今井さん、藤森さん。何をしているんですか?」

 

 

 紗夜に遮られたところで結花と顔を見合わせて笑う。前にあこが言ってた、アタシと結花が似てるっていうのを今なら理解できる。アタシ達はきっと、めちゃくちゃ仲がいい友達になれる。Roseliaのメンバーと同じくらいに大切な友達に。

 

 

「…二人が…帰ってきました」

 

「っ!?」

 

「よっす!おかえり雄弥」

 

「疾斗、お前ムードメーカーならぬムードブレーカーになってきてないか?」

 

「上手いこと言ったつもりか大輝ー?残念だが面白くないぞ。ってことでテイク2といこうか」

 

「やらねぇよ!!面白くないって言われただけでも傷つくんだからな!」

 

「二人とも静かにして」

 

「「ごめんなさい」」

 

「ったく。Roseliaみんなごめんね、うちのバカたちが空気読まなくて」

 

「だがまだ空気は読まねぇぞ!」

 

「疾斗いい加減にしなよ。いくらシリアスが嫌いだからって」

 

「いや愁。これだけはみんなに言わないといけないんだ」

 

「なに?」

 

 

 アタシ達も聞かないといけないみたいだね。さっきまでの雰囲気とは全然違って真面目な顔をしてるし。

 

 

「楽屋を出る時間を過ぎてる!」

 

『『………』』

 

 

 真面目な顔をして言われたのは、大したことじゃなかった。いや出ないといけない時間を過ぎてるのはまずいんだけどね。でもあんな真剣な雰囲気で言うことじゃなくない?ほら、楽屋の空気も固まっちゃってるし。

 

 

「ならとりあえず移動するか。幸い荷物は纏めてあるしな」

 

「話をするならやっぱファミレスとかか。週末のこの時間からだと焼肉は混んでるしな」

 

「この人数ならどこも同じだろ。……あ」

 

「……爺ちゃんとこ行くか」

 

「だな」

 

「いやいや待てよお前ら!」

 

「なんだよ大輝。急いで出ないといけないんだぞ」

 

「あの空気でよくそんな話進めれたな!」

 

「は?」

 

「……あー、お前らそういう奴だったな。もういいや」

 

 

 諦めたように荷物を梶くんが荷物を担ぐ。そこにさり気なく自分の荷物も押し付けるAugenblickのメンバーたち。結花は荷物が少ないからか自分で持ってるけど。

 

 

「お前ら結花を見習って自分で荷物持てよ!」

 

「え?私は大輝に私の荷物を触られたくないからだけど?」

 

「グハッ!……今までで一番傷ついた」

 

「場所は知ってるだろ?立ち直ったら来いよ」

 

「見捨てるなよ…」

 

「……ガチで落ち込んでるな。しゃーねぇ、荷物持つか」

 

「それが当然でしょう…」

 

「あはは、男の子のノリってアタシ達と全然違うよね〜」

 

 

 なんだかんだで梶くんに肩を貸しながら歩くAugenblickを見て、男の子って分からないものだなぁなんて思った。雄弥のことでもわからないことが多いし、女子校だから接点ないしね!

 

 

 




雄弥がリサ、紗夜と話をするのは次回に持ち越しです。…おかしいなぁー、なんでこんな長くなるんだろ。
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