イベント話する前に湊家の母親を登場させますかね。
時系列の整理をしてみます。Augenblickのライブ(ウェディングドレス)→今回の話→結花の誕生日→"Don't leave me リサ" ということでお願いします!
「雄弥、そこに正座しなさい」
「…母さん。そこに明らかに意図的に集めたであろう石が集まってるんだけど」
「正座しなさい」
「友希那」
「私にはどうしようもないわ。正座しなさい雄弥」
「…リサ」
「ごめん、無理」
「……仕方ないか」
いつまでするのか決めていなかった今井家での居候生活は、今日の朝終了することが決まった。その理由は母さんからの一本の電話だった。みんなで朝食を取り終えた時、見張っているのかと疑うタイミングで電話がかかってきた。
電話に出ると『今日帰ってきなさい。今井さんには伝えてあるわ』という一言だけで終わった。近くで聞いていたリサと友希那は、母さんがどれだけ怒っているか分かり震え上がっていた。
それで、家に帰ると玄関の前に母さんが立っていて、今に至る、ということだ。
「ライブの話聞いたわよ?」
「反省はしてる。ただ、あの演出をやめるなんて選択肢はなかった。だからあのライブ自体は後悔してない」
「…そう。このバカ!」
「…っつ」
「お母さん、なにも叩かなくても」
「友希那は黙ってなさい。…雄弥、あなた今井さんの家で何を学んだの?女の子を泣かせていい時はどういう時か言われたんじゃなかったの?」
「言われた」
「だったらしっかりやりなさい。男なら全部一人でやれなんて言わないわ。悩んだら周りに聞きなさいよ」
「…ああ」
「友希那とリサちゃんも同じよ!」
「「え?」」
「あなた達、自分では周りを頼れなんて言いながら、いざ自分になったら周りを頼らないでしょ?そんなことして周りがどれだけ辛いと思う?親である私達がどれだけ悩むと思う?その気持ちをあなた達もわかるはずでしょ?」
「「ごめんなさい…」」
「分かればいいのよ。リサちゃんは後で親御さんと話してね?」
「はい」
話題が俺からそれたな。これはもう解放されたということだろうか。黙って正座してるが、普通に石が食い込むから痛い。これの何倍もキツくしたやつって、たしか江戸時代の拷問の一つだよな。しかも処刑に使われることもあったやつ。
よし、そんなのはゴメンだから立つか。足に何か異常を出すわけにもいかないし。
「雄弥。立っていいって私言ったかしら?」
「言ってないな。けど母さん。このままじゃ足に悪影響だ。仕事に支障を出したくない」
「いっそそれで活動休止して、その間にひたすら悩んだらいいんじゃないかしら?」
「母さんそれは冗談がきついな」
「冗談だと思ってるのかしら?」
「え"っ」
母さんのあの目は本気だな。この人なら本当にやりかねない。特に友希那やリサを泣かせた時とか本当に容赦ない。罰を受けていたら逆に友希那とリサが泣いた時もあったからな。…あの時の母さんの動揺はすごかった。あれ以来基本的に罰はない。あ、虐待レベルとかじゃないぞ?
「あ、あの雄弥のお母さん!」
「…どちらさま?」
「結花」
「ついてきたのか?」
「うん。謝らないといけないと思って。もちろんリサの家にも謝りに行くけど」
「だから、そんなことしなくていいって」
「私なりのケジメなの!…だからリサ、止めないで」
「……」
「この子が雄弥たちのバンドのメインボーカルの子ね?
「母さん!」
ゆっくりと結花に歩み寄る母さんを追い越して二人の間に入る。母さんは結花のことを知らないからあのライブの真相も知らない。
「結花は何も悪くないんだ。全部俺が不甲斐ないから起きたことだ」
「何言ってるの雄弥!私が身勝手なことしたから!」
「ぷっ、ふふっ、ふふふ」
「お母さん…」
「なんで笑ってるんだ?」
「いえ、雄弥が勘違いするから面白くって。ふふっ、あなた本当に人の感情を読み取れないわね。私は別にこの子を叱ろうだなんて思ってないわよ?」
「…は?」
「友希那とリサちゃんはわかってたみたいだけど」
「わかるわよ。娘なんだから」
「息子はわかってなかったわよ?」
「…雄弥だもの」
…いや、もうまじでわけが分からん。だって、なぁ?あの流れなら結花を怒るとしか思わないだろ?え、違うの?
「お名前は?」
「えっと、藤森結花です」
「結花ちゃん……あー、あの人が言ってた子ね。Roseliaのライブで出会ったっていう」
「あ、はい!昴さんとは一度だけお会いしました!」
「そう。……うん、いい子ね!とりあえず家に上がりなさい。お昼も食べていきなさい。リサちゃんもよ」
「え?」
「へ?いやアタシは家に帰りますから」
「今日はお昼ご一緒にしましょうって話してたのよ。だからリサちゃんも来なさい」
「そういうことなら…。お邪魔します」
「私も…いいんですか?」
「いいのよ。もっとお話したいもの。ね?」
「は、はい」
「母さんって強引なとこあるよな。友希那にもそのへん受け継がれてたりするし」
「「何か言ったかしら?」」
「イエナニモ」
「こんな雄弥初めて見た…」
「あはは、雄弥ってば昔からお母さんに頭上がらないんだよね〜」
母さんには父さんですら頭が上がらないんだ。仕方ないだろ。友希那だってそうだし。…我が家のトップが誰か如実に表してるな。
〜〜〜〜〜
久々に自分の部屋に戻ったから掃除しようとしたが、その必要がなかった。俺がいない間、誰かが掃除してくれてたのだろう。…まぁ母さんなんだけど。
結花はリビングで母さんからの質問攻めを受けていて、リサは友希那に捕まって友希那の部屋へ。つまり俺は一人で部屋にいる。自分の部屋なんだから当たり前のことなんだが、ここ最近は自分の部屋に自分一人という状態が中々なかった気がする。なんだか不思議な感覚だ。
「…前まではこれが普通だったんだけどな」
変わったのは今年の春から。RoseliaやPastel*Palettesが結成されたあたりから、俺の部屋に人が来ることが増えた。家の場合はリサで、事務所の部屋の場合、日菜とか結花とか彩とかだな。
たった2、3か月しか経っていないのに遠い過去のように思える。それだけ過ごした日々が鮮烈だったということなのだろうか。
「雄弥、入っていい?」
「結花?…いいぞ」
「お邪魔しまーす。うわー、…何もないね」
人の部屋に入ってきて第一声がそれか。俺自身何もない部屋だと認識しているからどうってこともないが、…事務所の部屋に初めて来たときも同じことを言われたな。
「まぁな。最低限の物しかない。事務所の方でもそうだっただろ?」
「そうだっけ?最近は物が増えてるからわかんないや☆」
「誰のせいだと思ってる。誰の」
「日菜?」
「半分はな。もう半分は結花だろ。…ずっと立っててもしかたない。テキトウに座っていいぞ」
「椅子は雄弥が座ってるから〜、ベッドにお邪魔しまーす」
「…飛び込むなよ」
ベッドがきしんだように思うんだが、まぁ壊れてないようだしいいか。なんで結花は寝転び始めてるんだ。この部屋は初めてのはずなんだが、だいぶリラックスしてるな。というか遠慮がない。してほしいわけでもないが。
「雄弥の匂い〜…そこまでしないや」
「最近はこの部屋に全然帰ってきてなかったからな」
「事務所に泊まり込んでたのは知ってるけど、それ以外は帰ってきてたんじゃないの?」
「リサの家にいた」
「ん?」
「リサの家に居候させてもらってたんだ。成り行きでな」
「どんな成り行き…、なんとなく予想ついたからいいや」
予想がつくのか、凄いな。俺の周りの女子って鋭い人間多くないか?もしかして女子はみんな鋭いのか?…それなら女子の友情は怖いって話に納得できるな。
「ん?どうした結花」
「雄弥がなんか勘違いしてそうだな〜と思って」
「勘違い?」
「ま、そこらへんはリサに教えてもらうといいよ。リサって交友関係が超広そうだから」
「結花がなんのことを言っているのか、いまいちわからないんだが」
「さっき雄弥が一人で納得したことだよ」
「なるほど。……なんで考えてることがわかるんだよ」
「最近の雄弥はわかりやすいからね」
人の思考ってわかりやすくなるものなのか?もしそうなら、それって退化してるような気がするんだが。まぁなんでもいいや。別段気にする様なことでもない。
それよりさっきから結花の行動がエスカレートしてる方が問題な気がする。さっきまでは、ベッドに腰掛けて俺の枕を抱いていただけだった。けど今は布団に包まってベッドに寝転び、俺の枕に顔を埋め込んでいる。
「結花、そこまでやると一種の変態のようだぞ」
「えーー。…じゃあ雄弥専門の変態ってことで」
「ピンポイントに迷惑な変態だな。とりあえずその状態はやめろ」
「それなら雄弥がやめさせてよ」
やめさせるってなんだ。どうやればやめるんだよ。わからないし、ひとまず布団を回収してベッドから追い出すか。
会話するために仰向けになった結花だが、自分で簀巻状態になっているため、布団の両端を背中とベッドで挟んでいる。だからまず結花の状態を起こすところからだ。結花が自分で起き上がる気がないのはわかっている。だから結花を持ち上げやすいように上半身だけ覆いかぶるようにした。
「きゃーおそわれるー」
「棒読みにも程があるだろ。それと俺が結花を襲うってどういうことだ?」
「まさか通じないとは。気にしないでいいよ、言ってみただけだから」
「そうか。起こすぞ」
「どうぞ〜」
結花に負担がかからないようにするために後頭部と背中に手を回して上体を起こさせる。これで布団を引っぺがすことができる。その後はベッドからどかせばいいのだが…、椅子に座らせるか──
「雄弥ー。お昼ご飯の用意できたから結花と降りてこいって……なにしてんの?」
「雄弥にロマンチックなことをしてもらうとこだよ?」
「へー?」
リサが冷えきった視線を向けてくる。笑顔ではあるのだが、どう見ても笑ってない。特に目が笑ってない。俺は今までで経験したことがないほど焦っていた。別に何か人に指をさされるようなことはしていないのにだ。
「り、リサ。ひとまず落ち着こうぜ」
「アタシは落ち着いてるよ?むしろ珍しく落ち着いてないのは雄弥じゃない?どうしたの?アタシに見られてまずいことでもしようとしてた?」
「してない。これは結花のいつものおふざけであって」
「いつも?いつもそんなことしてるの?」
「そういう意味じゃない。結花もリサをからかうなよ」
「いや〜。思ってた以上のが見れたよ。リサって本当に乙女だよね☆」
「……へ?」
結花のケロッとした態度の変化に、リサはキョトンとした。そして事情を説明していくと、思い違いをしていたことに気づき、見る見るうちに顔を赤くしてその顔を隠そうと両手で覆ってその場にしゃがみこんだ。
「リサってば可愛い♪」
「やぁー!なにもいわないでー!」
呼びに来たリサもリビングに戻ってこない、となったため今度は友希那が呼びに来た。俺と結花は平然としていたためすぐに部屋を出て、顔を赤くしたままのリサを友希那が引っ張ってリビングに向かうのだった。
結花が独り暮らしをしていると知った母さんが、結花を家に居候するように説得したのは別の話。ちなみに、その時に俺の監視役として任命していたのはさすがに心外だった。
☆3評価 ケチャップの伝道師さん ありがとうございます!
やっぱり3章はグダってしまってますよね。ごめんなさい!m(_ _)m