陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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3章がいつ終わるかの目処がつきました。今月いっぱいで3章が終わって、7月から4章です。


15話

「すごいな。リサがいなかったらRoseliaってこんなことになるのか」

 

「感心してないで雄弥も手伝って!」

 

 

 雄弥がそう思うのも仕方ないけどさ。アタシ自身まさかこんなことになってるとは思ってなかったしね。

 

 

(ほんと、カオスだよね〜)

 

 

ーーーーー

 

 

 バイトは早めに上がることができたんだ。店長が戻ってきたのと、引き継ぎの人が事情を聞いて早めに来てくれたおかげ。アタシと雄弥が一緒にいるのを見た瞬間大声上げながら膝ついて崩れてたけど、どうしたんだろ?

 

 

「リサはこの後スタジオに行くのか?」

 

「そうだよ〜。あっちのことも心配だからね。練習はできないかもだけど…雄弥も来る?」

 

「いいぞ。予定ないしな」

 

「おっけ〜。じゃ先に着替えるからちょっと待ってて」

 

「急がなくていいからな」

 

 

 そう言われてもね〜。Roseliaのみんなが心配だから急いじゃうのは仕方ないと思うんだけど…。今日はめちゃくちゃ忙しかったけど、なんか雄弥がテキパキ動くからアタシが楽できたしね〜。

 バイトの制服を脱いで、学校の制服に着替える。脱いだ服をきれいに畳んで持ってきてた袋にいれて鞄にしまう。鏡でおかしなとこがないか確認してっと。

 

 

「大丈夫そうだね。お待たせ雄弥ー。…なんで着替え終わってるの?」

 

「ここで着替えたからだが?」

 

「なんで?」

 

「その方が時間短縮できるだろ」

 

 

 今この店に女の子はアタシしかいなくて、アタシが更衣室に入ってたから問題ないとか判断したんだろうね。たしかに時間を短縮できるけどさ、アタシの方が先に着替え終わってたらどうする気だったんだろ。

 

 

「スタジオ行くんだろ?」

 

「…あ、うん。…ちょ、荷物ぐらい自分で持つって!」

 

「気にするな。俺は大して荷物ないしな」

 

「そういう問題じゃなくて!」

 

 

 アタシの抗議を聞かずに雄弥は店を出た。こういうとこは頑固になるようになったのも、湊家の教育があったからなのかもしれない。二人のお母さんそういうとこ言いそうだし…。アタシは雄弥の後を急いで追いかけた。買い物の荷物とかを持ってもらうのはまだいいけど、自分の荷物を持たれるのは何だか恥ずかしい。アタシはその気持ちを誤魔化すように、雄弥と店の話をするのだった。

 

 

ーーーーー

 

 

「友希那はギターのシールドに足を引っ掛けてこけてるし、何故かホットミルクこぼれてるし、あこもこけてるし…ほんと何してるんだか」

 

「うわ、ホントだー。…話は後で聞くから片付けるよ!雄弥は」

 

「ほらあここのタオルで拭けよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「…言ってないのによくわかったね」

 

「言われなくてもわかるさ」

 

 

 パニックになってなかったら分かるか〜。あとは床を拭くのと、機材に影響でないようにしないと。その前に…。

 

 

「雄弥。あのタオルあたしすーーっごく見覚えがあるんだけどな〜」

 

「リサのタオルだからな」

 

「勝手になにしてんの?」

 

「悪い。けど貸してただろ?」

 

「まぁね」

 

「床をリサのタオルで拭くわけにはいかないしな」

 

「……もう。…あこ、タオルでとんとんって拭いて、そしたら水洗いしておいで。そうしたら匂いは残らないから。紗夜と燐子は機材を拭いてからケーブルとか纏めて」

 

「「わ、わかりました」」

 

「友希那と雄弥は、って雄弥は?」

 

「さっき出ていったわよ」

 

「へ?」

 

 

 雄弥ならこの状況をほったらかしにして帰るなんてしないだろうけど…。まぁタオルの予備はあるし友希那と二人で床を拭いとこうかな。そう思って鞄からタオルを取り出したのと同時に雄弥が戻ってきた。

 

 

「どこ行ってたの?」

 

「受付に行って雑巾借りてきた。拭くものが必要だろ?」

 

 

 そう言われてアタシは慌てて手に持ってたタオルをカバンの中に仕舞い込んだ。さっき雄弥があたしのタオルじゃ床を拭かないって言ってたのにタオルで拭こうとしてたからだ。

 

 

「ほら友希那雑巾。床拭くの手伝ってくれ」

 

「えぇ。もちろんよ。…ごめんなさい、わざわざこんなことをさせてしまって」

 

「気にするな」

 

(あー、これアタシだけ何もしてないってことになるんじゃあ)

 

 

 やることがないか辺りを見回してると、それに気づいた雄弥にあこの様子を見て来いって言われた。アタシはもう一度鞄からタオルを取り出して部屋を出た。新しいタオルがあったら水気も取りやすいよね。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「今井さんと雄弥くんが来てからすぐに片付きましたね」

 

「指示が…的確でした」

 

「ああいう時は冷静になることが最優先だ。じゃないとかえって状況が酷くなる」

 

「なるほど」

 

「リサ姉ありがとー!スカートの汚れキレイに取れたよ〜」

 

「あはは、どういたしまして」

 

 

 機材もちゃんと片付けれてるし、汚れもなし!あこのスカートも綺麗になったからこれで完了かな。

 

 

「あ、そうそう店長からいっぱいお菓子もらったんだ〜。急にバイト入ったお礼ってことで」

 

「リサ姉〜、ずっと待ってたんだよーー!」

 

「わわっ、急にどうしたの?抱きついちゃって」

 

「リサ姉の顔見たら、安心しちゃって」

 

「そんな大げさな」

 

「わ、私も落ち着きます」

 

「燐子まで」

 

 

 もう二人ともどうしちゃったんだろ?友希那と紗夜はいつも通りだよね……あれ?

 

 

「…なんだか熱い視線を感じるんだけど」

 

「気のせいです。それよりアルバイトお疲れ様でした。よかったらこれどうぞ」

 

 

 なんだか紗夜がいつもより優しい気がする。友希那も肩を揉んでくれるし、みんないったいなんなの!?

 

 

「なにか企んでたりするの?」

 

「してないよ!」

 

「じゃあ何なの〜?」

 

「リサ姉ともっと話したいから今からファミレス行く!いいですよね、友希那さん?」

 

「ええ。行きましょう」

 

「友希那が即答でOK出すなんて…色々あったんだね」

 

「単純にムードメーカーの不在で調子狂ったとかだろ?」

 

「あたしそんな大役じゃないと思うんだけどな〜」

 

「リサ姉!雄弥さんと一緒にいたいのは分かるけど早く行こ!」

 

「そ、そんなんじゃないから!」

 

 

 あこは大声でなんてこと言うの!?紗夜の視線が今度は鋭くなったし、周りの人の視線が集まって超恥ずかしいんですけど!

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 いつも行くファミレスに雄弥を含む6人で来た。雄弥がいることで席順がいつもとは違う。紗夜が奥に座って、その横に雄弥でその横にあたし。アタシが通路側にいるのはいつもの事で、注文しやすいから。アタシの向かい側に友希那が座って、その横があこで、紗夜の向かい側に燐子。

 

 

「まずは注文しよっか。みんな何にする?アタシはオレンジジュースにするけど」

 

「私はホットコーヒーでいいわ」

 

「私も…今井さんと同じで」

 

「あこはこの超特盛りお得ポテトで。紗夜さんも一緒に食べましょう」

 

「え?何故私が…」

 

「だって一人じゃ食べきれなさそうですし、半分こしましょうよ」

 

「…まぁそういうことなら」

 

内心喜んでるだろ

 

「雄弥くん?何か言いましたか?」

 

「別に。…紗夜足踏んでるぞ」

 

「あらごめんなさい」

 

 

 紗夜はジャンクフードが好きってことを隠したがってるからね〜。雄弥が呟いたのを聞かれたら嫌だよね。…それより足踏むのを口実に、さっきより座る位置を雄弥に近づけてない?距離縮めてるよね。わざとだよね。

 

 

「雄弥は注文どうするの?」

 

 

 アタシは雄弥にメニューを見せるために雄弥との距離を縮める。3人座ってるってのもあるし、荷物もあるから元からスペースはちょっと狭かった。だからこんなことをすると体が触れ合いそうになる。

 

 

「いつも通りリサが選んでくれるやつでいい」

 

「たまには自分で選んでみなよ。ほら軽食ならここに載ってて、デザート楢こっち、飲み物はここに書いてあるから」

 

「今井さん。そんな近くにいては雄弥くんが窮屈では?」

 

「それは紗夜も同じじゃない?」

 

「私は別に…」

 

「はぁ。あなた達、二人とも雄弥から離れなさい」

 

「「…はい」」

 

 

 アタシ達が雄弥を挟んで火花を散らせていると、向かい側に座ってた友希那に注意された。原因である雄弥はそんなことを気にせずメニューを選んでる。…あ、今ページをコロコロ変えてるってことは、やっぱり狭かったんだ。うぅ、反省。

 

 

「紅茶でいいや」

 

「雄弥さん。ホットかアイスかも選ばないと駄目ですよ」

 

「そういやそうだな。ホットにするか」

 

「それでは…店員さんを、呼びますね」

 

「よろしく〜♪」

 

 

 店員さんに注文をしたら、あこから今日あった出来事を教えてもらった。もうみんな面白いことしすぎだよー。

 

 

「あっはっは〜!!アタシもその場に居たかったな〜」

 

「今井さん。笑い事ではありません」

 

「そうだよー。あこたちすっごく大変だったんだから!」

 

「いや〜。みんなアタシがいないとダメダメだね〜」

 

「リサ姉が居てくれないと誰もツッコんでくれないんだよ?…もう今日みたいに急にいなくなったりしないでね。リサ姉がいなくなったら、あこ…」

 

「大丈夫大丈夫。アタシは居なくならないから」

 

 

 もう、可愛い奴め〜。アタシが急にいなくなるなんてそんなことないじゃん。アタシもRoseliaが大好きなんだからさ♪

 

 

「今井さんの存在がどれだけ大きいか、今日でよくわかりました」

 

「紗夜がそこまで言うなんて…」

 

「自分では気づいてないかもしれませんが、今井さんはRoseliaの雰囲気をより良くしています。今後は必ず練習に参加してください」

 

「うん。約束するよ」

 

「私…今井さんがいると、すごく安心するのが…わかりました」

 

「どうして?」

 

「今井さんが…楽しそうに練習してるのを…見るのが好きなんです。…たぶん、みんなも同じです。…だから…今井さんがいないと…変な感じがして」

 

「そっか…」

 

「みんなリサがいないことで、リサのありがたみが分かったのよ。Roseliaにはリサがいてくれないと困るわ」

 

「友希那…」

 

 

 み、みんなにこんなこと言われるなんて…。恥ずかしいけど、それ以上に嬉しいよ。

 

 

「そんなにアタシのこと思ってくれてるなんて…」

 

「あ、リサ姉泣いてる〜」

 

「だって嬉しいんだもん!バイト中も練習のこと気になってたし。…アタシがいなくてもいつも通り練習できてたらって思うと、寂しくて」

 

「そんなこと思ってたの?」

 

「バイト中は平気そうに見えたんだが」

 

「え?雄弥さんリサ姉のバイト先に行ったんですか?」

 

「一緒に働いてた。あそこの店長とは知り合いでな、頼まれたんだよ」

 

「こっちは大変だったのに。リサはお楽しみだったのね」

 

「え?ちょっ、違うってば!アタシだって雄弥がいるとか知らなかったし」

 

「その話は後でじっくりと聞かせてもらうとして。ともかく、今井さんはもっと自分の影響力を把握してください」

 

「私…今井さんにいてほしいです」

 

「う、うん。…そっかぁー。みんなの話聞いたらすっごくやる気出てきた!次からはちゃんと参加するからねー!!」

 

 

 いい感じに話が落ち着いたところに、ちょうど注文したやつが届いた。ポテトがあこの予想よりも多かったけど、みんなで食べればいいよね♪

 

 

「それで今井さん。雄弥くんと働いていたという話ですが」

 

「な、なんのことかな〜」

 

「今日の出来事だろ」

 

「…雄弥ってたまに伏兵になるよね」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 バイトでの出来事を根掘り葉掘り聞かれた。というか雄弥を口封じしなかったら、雄弥に髪を梳いてもらったりしてたこともバレてた。なんとかそれは隠せたけど。

 今は友希那と雄弥と三人で家の前まで戻ってきて、友希那から話を聞き終わったとこなんだ〜。あの場では言ってくれなかったことを言ってくれた。嬉しくってまた泣いちゃった。

 

 

「それじゃあまた明日。おやすみ、リサ」

 

「おやすみ〜」

 

「…雄弥はリサの話を聞いてあげなさい」

 

「話?」

 

「友希那にはバレバレか〜。…ありがとう」

 

「いいのよ。…それじゃあ」

 

「うん」

 

 

 ドアが閉まるのを見届けてから雄弥に抱きつく。突然のことだったけど、雄弥もそっとアタシの背中に手を回してくれる。…今から聞くことはこうしてないと聞けないから。以前あこが雄弥に聞いたことだけど、今でも怖くて聞けないから。アタシを奮い立たせるために必要なんだ。

 

 

(きっと日菜も紗夜もこんなことしなくても聞けるんだろうけどね。…アタシは弱いからできないや)

 

「リサ?」

 

「雄弥はさ、アタシのことどう思ってくれてるの?」

 

「リサのこと?何回か直接言ったことなかったか?」

 

「けどそれは友希那にも当てはめれることだったよね」

 

「…それでも俺はリサがいない世界を考えれない。そんな世界でも生きている自分を考えれない。まぁ、友希那に怒られながら生きてるかもしれないが」

 

本当に(・・・)?本当に雄弥はそう思ってる?」

 

「リサ?」

 

「日菜も紗夜も結花も友希那もいるんだよ?本当に雄弥はそう思うの?雄弥と一緒にいたい人はいっぱいいるんだよ?」

 

 

 アタシは断言してほしかった。雄弥が、「あたしが必要だ」とそうはっきり言ってほしかった。焦ってるんだ。今日の紗夜を見たら分かった。二人の距離は急激に縮んでいたから。今まで一歩引いてた紗夜がそうしなかった。つまり進展があったということ。考えられるのは、秋宮くんのお爺さんの喫茶店にみんなで行った時。アタシだけ先にテラスから店内に戻って、二人は遅れてきたから。

 

 このままじゃ雄弥がアタシから離れちゃうかもしれない。そんなのは嫌。だけどアタシはこれ以上雄弥との距離を縮める方法がわからない。日菜みたいにグイグイ迫ることができない。紗夜みたいに厳しさと優しさを兼ね備えてるわけじゃない。だから焦りに焦っているんだ。

 

 

 だから断言してほしかったんだ。

 

 

「どうなの?」

 

 

 そうだというのに

 

 

「答えてよ!お願いだから答えて!雄弥!」

 

 

 雄弥はアタシの問いかけに答えられなかった。

 

 




☆10評価 GREEEEEENさん 
☆9評価 リンドさん ありがとうございます!
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