陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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今日からのは話を詰め込んじゃってます。文字数が増えてしまいました。今日から月末までのを平均して6000字超えてます。m(_ _)m


16話

(デート♪デート♪ユウくんとデート〜♪)

 

 

 ユウくんならあたしがどんな服を着たら褒めてくれるか、そんなことを前日から考えてた。6月も終わりに近づいてきているけど、衣替えがまだ難しい。だから薄めの上着を羽織ることで対応した。これなら暑さも気にならないし、仮に気温が下がっても大丈夫。

 駅前の広場で待ち合わせをしていて、あたしは早めに家を出てきた。待ちきれないって思いもあるけど、集合場所で相手を待つ、なんだか彼女みたいでるんっ♪てするシチュエーション。

 

 

(ユウくんは集合時間よりは早めに来るから〜、もうすぐかな?)

 

 

 左手につけてる小さめの腕時計で時間を確認して、いつぐらいにユウくんが来るか予想する。ユウくんに想いを伝えてから初めてのデート。いつもと同じでワクワクしてるのと、なんだかドキドキもある。気持ちを紛らわせるためにあたしは、ユウくんの持ち歌を鼻歌で歌ってる。そんなあたしに興味もないチンピラ(ユウくんじゃない人)が近づいてきた。

 

 

「なぁ暇してるなら俺と遊んでいかない?」

 

(ユウくんまだかな〜)

 

「おい無視するなよ」

 

「興味ないから消えて」

 

「そう言わないでさー。パスパレの日菜ちゃんだろ?近くで見るとより可愛いな」

 

「聞こえなかったの?消えてって言ったんだけど。お兄さんって言葉通じないの?」

 

「チッ。ごちゃごちゃ言ってねぇでついてこいよ」

 

「ちょっ、離してよ!」

 

 

 強引にあたしの腕を強く掴んで無理やり連れて行かれそうになる。あたしは頑張って抵抗するけど、男の子とでは力の差がある。そんなあたしの所に待ち人(ユウくん)が来た。

 

 

「日菜。そいつは知り合いか?」

 

「ユウくん!ううん違うよ。勝手に言い寄って来て迷惑してるんだ〜」

 

「そうか」

 

「…なんだお前。この子の何なんだ」

 

「答える必要があるのか?」

 

「それもそうだな。お前が待ち人だっていうならお前をのして日菜ちゃんを連れてくだけだ」

 

「……日菜」

 

 

 面倒くさそうにしてるユウくんがあたしに視線を向けてくる。あたしはそれでユウくんがどう行動すればいいのか聞いてきたのだと分かった。だからあたしは、あたしの思いを伝えることにした。それはユウくんにスイッチを入れる言葉でもある。

 

 

「ユウくん、助けて(・・・)

 

「任せろ」

 

「ハッ!そうやってイキってられるのも今だけだぞ!」

 

「…力量を測れないなら仕掛けてくるなよな」

 

「がっ!……うぅ、て、てめぇ」

 

「じゃあな」

 

 

 本当に一瞬の出来事だった。ユウくんに向かって走っていったチンピラに対して、ユウくんも走って近づいた。一瞬ユウくんの体がブレて見えたんだけど…。

 何があったのかよくわからなかったけど、二人の距離がなくなったと思ったらチンピラが倒れて、ユウくんはそっちに目も向けずにあたしの側に歩いてきた。

 

 

「い、今何したの?」

 

「避けて殴った。それだけだ。それより日菜、掴まれたところ痛くなかったか?」

 

「あ、うん。大丈夫だよ」

 

「そうか。それじゃあ……日菜?」

 

 

 ユウくんのことだからすぐに移動しようとしたんだろうけど、あたしがユウくんにしがみついて動かないからユウくんも動けずにいた。ユウくんに助けてもらって、今になってさっき連れて行かれそうになった恐怖を実感した。あの時はまだ気丈に振る舞えてたけど、たぶんあのままだったらすぐに萎縮することになってたんだろうね。今も体の震えが止まらないや。

 

 

「ユウくん……怖かった」

 

「ああ」

 

「あたし、酷いことされてたかもしれない」

 

「そうだな。でも、もう大丈夫だ」

 

「うん……うん…」

 

「限度はあるが、それでもできる限り守るから。安心してくれ」

 

「…うん!…ありがとう、ユウくん」

 

 

 体が震えてるあたしをユウくんはギュッて抱きしめてくれた。抱きしめながらあたしの頭も優しく撫でてくれて、そのおかげで体の震えもいつの間にかなくなってた。

 気持ちが落ち着いたところで、あたしはようやく今の状況を把握できた。人通りが多い週末の駅前。漫画みたいなナンパからの救出劇。そしてその場でのハグ。

 何が言いたいかと言うと、この状況をいっぱいの赤の他人に見られてるということで。普段気にしないけど、慣れてないことの後だと恥ずかしい!

 

 

「もう落ち着いたよ」

 

「みたいだな。…今度は顔が赤いが大丈夫か?」

 

「大丈夫大丈夫!それより早く行こ!」

 

「わかったからそんな引っ張るな」

 

(ユウくんが羞恥心を覚える日って来るのかな?…永遠にこなさそうだね)

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「到着ー!」

 

「遊園地か」

 

「着いてから分かるってユウくん鈍感だよね〜」

 

「こっちの方は来たことなかったしな」

 

「そうなんだ。それじゃあ早速中入ろうよ!」

 

「そんな引っ張らなくても遊園地は逃げないぞ」

 

「むぅ〜。子ども扱いしないでよねー」

 

「なら落ち着け」

 

「それじゃあ、あたしじゃないよ」

 

「…そうだな」

 

 

 ユウくんの腕にあたしの腕を絡めつつ、反対の手でも引っ張る。ユウくんからしたら子どもっぽい行為らしい。あたしからしたらカップルっぽいやり取りだと思うんだけどな〜。

 ユウくんを引っ張りながら入り口の方に向かうとユウくんに「チケットは?」って聞かれた。まぁ普通はチケット買うよね。けど今日はすでにチケットを入手してるんだ〜。大くんと話した時にチケットも貰っちゃった。「予定を合わせられる相手がいない」らしい。

 

 

「何から遊ぶ?」

 

「日菜がやりたいやつでいいぞ。何があるかよくわからないしな」 

 

「一応パンフレット持ってるよ?」

 

「…待ち時間の間に目を通しとくから、1個目は日菜が選んでくれ」

 

「わかった!じゃあアレ!」

 

 

 あたしが指差したのは、この遊園地で一番迫力があると言われてるジェットコースター。一番迫力があるって絶対にるんっ♪てすると思うんだ〜。

 待ち時間は1時間ぐらい、大きい遊園地ならそれぐらいなんだっけ。ユウくんはさっき渡したパンフレットをじーっと見てる。ユウくんの目線を辿ってみると…、乗り物系じゃないとこだね。

 

 

(乗り物系苦手なのかな?……ん?…乗り物(・・・)?)

 

「ゆ、ユウくん。まさかこういう乗り物もだめだったりする(酔ったりする)?」

 

「…どうだろうな。まぁジェットコースターなら外の空気吸えるわけだし、大丈夫じゃないか?」

 

「それならいいんだけど…」

 

 

 一通り目を通し終えたのか、ユウくんはパンフレットを畳んで鞄にしまった。まだまだ順番は回ってこないから、あたしはユウくんに最近のパスパレのことを話した。

 

 

「日菜って本当に彩のこと気に入ってるよな」

 

「彩ちゃんがパスパレの中で一番あたしとは違うからね〜。一緒にいて楽しいんだ〜♪」

 

「遠回しに彩のことディスってるよな」

 

「あはは、バレた?けど彩ちゃんって凄いな〜って思うこともあるんだよ?」

 

「へぇ〜」

 

「む〜、信じてないでしょ」

 

「信じてないな」

 

「もう!」

 

 

 彩ちゃんはあの彩ちゃんだからこそパスパレの中心。彩ちゃんがいなかったらあたしはパスパレに残ってなかったかもしれない。それぐらいに彩ちゃんは面白い。面白いし、不思議と人を引っ張る人間。

 

 

「ユウくんだって疾斗くんと仲いいじゃん。それと同じだよ」

 

「疾斗と同じ?……わかるようなわからないような」

 

「彩ちゃんと疾斗くんが同じ人間って話じゃないよ?」

 

「…ああ、なるほど」

 

「もう〜。なんであたしが人を教えてるんだか…。あ、そろそろだね!」

 

「いつの間にか進んでたな」

 

 

 安全バーを自分で締めて、出発前にスタッフの人が最終確認する。しっかり締まってなかったら大惨事だからね。たまにニュースで流れてたりするし。

 

 

「ユウくん」

 

「ん?…あぁいいぞ」

 

「ありがと♪」

 

 

 別にジェットコースターとか怖くない。こういうのはむしろ大好きな部類。だけど、せっかくのデートなんだからユウくんと手を握ったっていいよね。

 

 

「お、進み始めたー!」

 

「…そうだな」

 

「…ユウくん大丈夫?」

 

「…たぶん」

 

(本当に大丈夫かな?)

 

〜〜〜〜〜

 

 

「な?大丈夫だっただろ?」

 

「ユウくんってある意味凄いね。乗り始めで顔が青くなって、一周したときには顔色良くなってる人ってそうそういないよ」

 

「やっぱ密閉されてなかったら大丈夫なんだろ。あとは振動か?」

 

「かもね。遅い方が振動が気持ち悪いもんね」

 

「そうだな。それじゃあ次行くか」

 

「うん!次はユウくんが選んでね?」

 

「ああ。ちゃんとさっき決めといた」

 

 

 この後ユウくんと時間いっぱい遊んだ。あたしが乗り物系を選んで、ユウくんは休憩がてらお化け屋敷とか迷路とかを選んだ。お昼ご飯も一緒に食べて、その時に食べさせ合いっこした。あたし達が堂々とするからか、周りにいたカップルも挑戦してた。

 遊園地でデートと言ったら最後は観覧車だよね?観覧車はゆっくり動くけど、密閉されてるけど、振動がないからユウくんも大丈夫みたい。顔色も悪くなってないし。

 

 

「……ん?どうかしたか?」

 

「ううん。ユウくん観覧車は大丈夫みたいだなって思って」

 

「そうだな。こういうのって実際に試さないとわからないものだな」

 

「そうだね」

 

「日菜は夜景見なくていいのか?こういうの好きだろ?」

 

「うん♪もちろん見るよ〜。……綺麗だね」

 

「ああ。都会は星空を見えなくするけど、こうやって遠くから見ると綺麗なものだな」

 

「ユウくんは星と夜景だとどっちの方が好き?」

 

「星の方が好きだな。日菜が見せてくれたあの空は忘れられない」

 

「っ!!……えへへ、そっかぁ」

 

 

 そっかそっか、ユウくんがそう思ってくれてたなんて嬉しいな〜♪…あの日にあたしが告白したから、だからユウくんはその後調子が悪くなったのに、きっと傷ついたりしたのに、それでもそう思ってくれてたんだ…。

 あたしはユウくんの向かいに座ってたけど、立ち上がってユウくんの目の前に移動する。両手でユウくんの頬を挟んであたしと向き合うように固定してユウくんと視線を合わせる。

 

 

「日菜?」

 

「ユウくんはさ、……恋愛が何かわかった?」

 

「っ!!……なにか掴めそうなところまでは来てると思う。だけどそこからはどうやって進めるかがわからない。疾斗に聞いても『感覚』としか言わなかったし、リサの問いかけには答えられなかった」

 

「そっか…。けど疾斗くんのその答えは間違いじゃないよ。ある意味確信かな。それはさておき、リサちーの問いかけはなんだったの?」

 

 

 ユウくんはリサちーに何を聞かれて答えられなかったのかを教えてくれた。あたしはその話を聞いてユウくんが恋愛を理解する寸前まできてるのがわかった。

 

 

「リサちーのその問いかけには、もうじき答えられるようになるよ」

 

「…どういうことだ?」

 

 

 理解ができないからか、ユウくんの瞳は揺らいでる。ユウくんは今まで周りの人の前に立ってないといけなかったから。友希那ちゃんとリサちーと三人でセッションするためにギターを練習しながらリサちーのためにベースも練習した。芸能界に入ってもファンの期待に答えるために血の滲むような練習をして、それでも周りを助けた。彩ちゃんのこともその時から支えてた。あたしやお姉ちゃんと会った時も、ユウくんは弱ってたけどそれを見せずに、逆にあたし達を気にかけてた。

 

 ユウくんは常に助ける側だった。間違えることもあるけど、頼りにされる存在で、ユウくんもそれに応えてきた。だからこそ自分の中身を分からない。自分を気にかけてこなかった。それがユウくんの弱さ。

 

 ユウくんはいっばい悩んでくれた。このままユウくんに考えさせてる間にもっとアピールしたらユウくんとリサちーの関係に待ったをかけれる。…だけど、それ以上にあたしは、ユウくんのこんな姿をもう見たくない。普段とのギャップがあって、るんっ♪てすることもあった。ユウくんの相談相手になれたのも嬉しかった。だけど、そろそろユウくんに大ヒントをあげないとね。頑張ってくれたお礼をしなきゃ。

 

 

「あのね、ユウくん。恋愛を理解する方法を教えてあげるね」

 

「…自分で答えを出せって言ってなかったか?」

 

「言ったよ。言ったけど、ヒントぐらいはあげようかなって。ユウくんは今一番の壁に当たってるみたいだし?それを突破したらリサちーに返答してあげてね?」

 

「…わかった」

 

「あのね…ユウくん、恋、愛を理解、する…のはね?」

 

 

 あれ?おかしいな…。ユウくんの顔をはっきり見れないや。視界が滲んでる。あはは…なんで、なんでだろう。

 

 

「日菜?辛いなら言わなくていい。俺がもっと悩めばいいことなんだから」

 

「だめ。…だめなんだよ。……これを…言わないと……ユウくんは、理解できないから」

 

「そんなの日菜が決めることじゃないだろ?」

 

「わかるんだもん!…あたしと…ユウくんは、同じ…だから。だからわかるんだよ。…ユウくんはこのままじゃ…理解できない。……理解できるって言ったのは嘘だよ。…ユウくんはわからない」

 

「決めつけるなよ!日菜が泣くぐらいなら俺はずっと悩み続ける。時間がかかるかもしれないけど、日菜たちの進級、いや今年中には必ず答えを出す!だから今泣いて言う必要はないんだ!」

 

「…優しいよね」

 

 

 ユウくんは本当に優しい。この優しさにあたしはずっと甘えていたい。今も甘えておけばリサちーに勝てる可能性が大きくなる。それぐらいはあたしでもわかってる。だけど、それでもあたしはずっと片想いでいるのは嫌だ。身勝手だけど、それでもあたしは今言う。ユウくんに恋愛を理解する方法を教える。それでどうなるかなんてわかりきってることだけど、それでも…。

 

 

「ユウくん…よく聞いてね?」

 

嫌だ(・・)。日菜を苦しませてまで教えてもらいたくない…」

 

「…ユウくん」

 

 

 あ、あはは……。なんなの…、あたし、ユウくんにそう言われるぐらいには…ユウくんの中にいれてるんじゃん。…うん、それがわかったからこそ、あたしはユウくんに教える。ユウくんに幸せになってもらいたいもん。

 

 

「恋愛を理解するにはね?…恋したらいいんだよ」

 

「こい?……むじゅん、してないか?」

 

「してないよ。してるように思えるけどしてない。人は人の気持ちを完全には理解できない。だけど共感することはできるはずだよね?あたしにもいまいち分からないけど、だけどそれは同じ状態になればいいんだよ」

 

「だから恋愛を理解するには恋しろって?」

 

「…うん。ユウくんはね、自覚するだけでそれがわかるんだよ?」

 

「自覚?どういうことだよ」

 

「そこを言ったらもう答えでしょ?それが最後の壁だから。今度こそユウくんの力で突破してね?」

 

「…ああ。約束する」

 

「うん♪」

 

 

 ユウくんと口を重ねる。観覧車はまだ一番上を通り過ぎたあたり。まだ時間はある。だから時間いっぱいユウくんにキスした。あたしの存在をユウくんの中に流し込むように。ユウくんが自覚した時に少しでも引っかかりを覚えてくれたら、なんて願いを流し込むように。…もう一つ約束してもらわないといけない。

 観覧車が残りの4分の1あたりになったところで口を離す。ただずっと口を重ねてただけだけど、それでもあたしは幸せに思える。きっと今のあたしの目はトロンってしてるんだろうね。ユウくん以外何も視界に入らないもん。

 

 

「ユウくん。恋したらあたしの告白に返事してね?これも約束だよ?」

 

「…ああ。必ず、必ず約束は守る」

 

 

 あたしが自覚したのはユウくんが元の居場所(友希那ちゃんの家)に戻ってから。ユウくんがいない生活になってからあたしはユウくんに惚れてたんだって自覚した。

 

 そしてそれは、一目惚れだった。

 

 もしも、もしもあたしがリサちー達より先にユウくんに出会えていたら、今のユウくんとリサちーみたいな関係になれてたかもしれない。そんなもしもの世界を想像するぐらい…あたしがしても…いいよね?

 

 

「日菜?」

 

「ん…ありがとう、ユウくん」

 

 

 本当に優しくて、頼りになって、カッコイイユウくん。あたしが初めてにして唯一異性にるんっ♪てした男の子。

 

 けどね、知ってるかな? 優しさって 時には相手を追い込むんだよ?




☆9評価 ブラックティガさん ありがとうございます!
日菜が献身的すぎて書いてる自分が辛いです。…最近思ったのが、いっそ登場人物はそのままでifストーリーみたいなのを書けるときが来たら書こうかなって。(オリキャラ考えるのをサボりたい)
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