陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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17話

「七夕まつり?」

 

『そう、七夕まつり。今度商店街であるらしいんだけど、雄弥来れる?』

 

「…まぁ、なんとかなるかな」

 

『あー、やっぱり仕事あるんだ。…それならやっぱいいや』

 

「いやだから行くって」

 

『また強引に時間作る気でしょ?そういうのは悪いからやめてほしいんだけどな〜』

 

「今回はそうじゃないんだよ。…仕事自体は夕方までだから、一緒に回るにしてもあまり時間作れないだろうなと思ったんだ」

 

『そういうことか〜。…じゃあお願いしていい?友希那も誘うつもりだから、三人で回ろ?』

 

「わかった。当日の仕事が終わったら連絡する」

 

『ありがとう♪それじゃあおやすみ!』

 

「あぁ、おやすみ」

 

 

 電話を切って廊下から部屋に戻る。…俺と友希那は同じ家に住んでいるから俺が誘うのが普通だ。だが、俺は今家にいない。疾斗と俺が出演する番組のロケで長野県に来ているからだ。部屋は疾斗と相部屋で、部屋に戻ると枕が飛んでくる。

 

 

「小学生かお前は」

 

「せっかくの旅館で枕があるんだぞ!枕投げをしないという選択肢がどこにある!」

 

「ハロハピメンバーとやれ。そして花音に怒られろ」

 

「…花音にやっぱ怒られたりするかな?」

 

「最初は笑顔で見守って、みんながエスカレートし始めて疾斗が本気を出したところで怒ると予想した」

 

「うわー、俺も簡単にその状況想像できるわー」

 

「んじゃ寝るぞ。明日早いだろ」

 

「だが断る!」

 

『ハッピー!ラッキー!スマイル!イェーーイ!!』

 

 

 寝転がった俺に枕を投げようとした疾斗だったが、携帯に着信が来たため投げるのを中断していた。

 

 

(着信音あれなのかよ、しかも電話に出なかったらループだろ?)

 

 

 どこかズレたような感覚を持っている疾斗を眺めていると、携帯を片手に電話に出ようとせずに固まっていた。電話に出ろと促すとこっちに画面を見せてからゆっくりと電話に出た。

 

 

(噂をすればなんとやらってやつか)

 

 

 画面に表示されていたのは、さっきまで話していた花音の名前だった。偶然なのかそれとも疾斗の行動を読んでのことなのか、どちらにせよベストタイミングで電話をかけてきている。…どうやら後者のようだ。疾斗が電話に出てすぐにひたすら謝ってる。

 子どもっぽいところを残している疾斗の、普段とはかけ離れた状態を楽しみつつこの間に寝ることにした。今度花音にお礼のクラゲグッズでもあげるとしよう。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 七夕まつり当日、アタシは友希那と一緒に駅前の喫茶店に来ていた。駅前なら雄弥が帰ってきた時にすぐに合流できるからね。

 だけど、アタシには別の気がかりがある。それは、日菜と紗夜のこと。この問題は当人たちの問題だから、アタシが首を突っ込むわけにはいかないんだけど、お節介なアタシは気にしちゃうんだよ。

 

 

「…リサもう少し落ち着いたらどうなの」

 

「あっはは〜、ごめんごめん。…けど気になっちゃって」

 

「私たちが口を挟むことなんてできないわ。結局二人の問題なんだから」

 

「そうだけどさー。…雄弥ならなんとかできるのかな」

 

「……さぁ。少なくともあの子なら多少口出しはできるでしょうね」

 

「二人とだいぶ仲いいからねー」

 

「リサは嫉妬深いわね」

 

「うっ、自覚してますー」

 

 

 アタシは別に雄弥と付き合ってるわけじゃない。ただ単に雄弥のことを大好きで、雄弥に他の女の子が近づくのが嫌なだけ。…友達とかならいいんだけど、あの二人の場合だと争奪戦の真っ只中だからね。

 気分を紛らわせるためにオレンジジュースを飲みながら最近の日菜とのやり取りや紗夜とのやり取りを思い返す。

 

 

(日菜は紗夜と七夕まつりに行きたがってた。アタシの方から紗夜に七夕まつりのことを話したけど、紗夜からいい返事はもらえなかった。…紗夜は日菜を嫌ってるわけじゃない。ただ距離感を掴めなくなっただけ。まるで2年前の友希那と雄弥みたいに)

 

 

 あの時はできることをしようと思ってたけど、母さんに止められたんだっけ。本人達で解決するのが一番だー、とか言ってた気がする。それがあるから、友希那は少し気にしてても何も言わない。きっと雄弥も口出ししないようにするんだろうね。

 

 

「あーあ、もどかしいな〜」

 

「何が?」

 

「うわぁっ!!結花!?驚かさないでよー!」

 

「あっはっは!ごめんごめん!驚かすつもりはなかったんだよ?リサが集中してたからいつ気づくかなーって遊んでただけ」

 

「驚かす気あったでしょ!」

 

「まぁね〜。友希那が止めなかったからいいかなーって」

 

「友希那?」

 

「問題だったかしら?そんなことより「そんなこと?」…雄弥が来てるから早く出ましょ」

 

「え?雄弥?どこ?」

 

「リサってば乙女モード全開だね☆」

 

 

 結花がなんか言ってる気がするけどひとまず放置。雄弥と七夕まつりに行くなんてなんだかんだで今までなかったから、今日という日をどれだけ楽しみにしていたことか。

 

 

「雄弥ならレジのとこだよ」

 

「…レジ?………あ、伝票!いつの間に」

 

「いつの間にも何も、さっきここまで来て支払いしとくって言ってたじゃない。むしろよく気づかなかったわね」

 

「いや〜、リサといると飽きなくていいよね〜。ねね!リサも芸能界来ない?私とコンビ組もうよ」

 

「何言ってるのかしら?リサはRoseliaの大切なベースよ。引き抜きなんて例え雄弥が相手でも許さないわ」

 

「ちょっ、ちょっと二人とも!お店の中だから!」

 

「結花」

 

「続きは店の外、だよね?」

 

「行くわよ」

 

「うん」

 

「喧嘩は駄目だってばー!」

 

 

 足早に歩く二人を慌てて追いかけてると、二人の肩が震えるのが見えた。それでアタシはやっと気づくことができた。結花の引き抜き話も友希那のあの対応もアタシをからかうためのことだって。

 

 

「からかうのやめてよね」

 

「ごめんごめん。けど、『アタシをめぐって争わないでー』って体験できて良かったでしょ?」

 

「よくない。もう二人とはしばらく口聞かないんだから」

 

「リサ。からかったことは謝るわ。ごめんなさい。だけどRoseliaのベースはリサだけよ。これは本心だから」

 

「……友希那のバカ

 

 

 そんなの言われたら嬉しいに決まってるじゃん。怒るに怒れなくなるじゃん。…ほんと、つくづく姉弟揃ってズルいんだから。

 

 

「…結局結花もついてきたのか」

 

「別にいいでしょ?私も七夕まつり楽しみたいんだから☆」

 

「雄弥代金は…」

 

「待たせたお詫び代わりってとこだ。商店街に行くぞ」

 

「うん!」

 

「…リサって雄弥がいる時といない時であんなに差あったっけ?」

 

「最近は抑えなくなったのよ。私は前から知ってたけど」

 

 

 なんか言われてるけど気にしたら負けな気がする!

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 結局七夕まつりをお姉ちゃんと回れなかったな〜。ユウくんはリサちーと友希那ちゃんと回るらしいし、どうしよっかな〜。あ、雨だ。

 

 

(雨宿りできるとこは…。あそこのバーガーショップにしよっと!)

 

「いらっしゃいませー。って、日菜ちゃん?」

 

「あ。彩ちゃんだ。彩ちゃんここでも働いてたの?」

 

「うん、そうだよ。日菜ちゃん今日は一人なの?」

 

「まぁね〜。お姉ちゃんは誘っても断られちゃったし、ユウくんはリサちーと友希那ちゃんと一緒だからね〜」

 

「そうなんだ…。日菜ちゃん濡れてるってことは外雨降ってきたの?」

 

「そうそう。だから雨宿りに来たんだ〜。いいよね?」

 

「もちろん!通り雨だろうし、ゆっくりしていって。注文はどうする?」

 

 

 何も考えてなかったな〜。相手が彩ちゃんだし、ここは困った時に便利なあの聞き方を使おうかな。

 

 

「なにかオススメってある?」

 

「あ、今ならポテトMサイズの料金でLサイズのポテトが食べれるキャンペーンやってるよ!」

 

「るんっ♪てくるキャンペーンだね!ならそれとコーラで」

 

「はーい!花音ちゃんポテトとコーラ入りまーす」

 

「は、はーい!」

 

「花音ちゃんもバイトしてたんだ」 

 

「うん!出来たてのを持っていくから席で待ってて」

 

 

 揚げたてのポテトはるんっ♪てするけど、今日一日はあんまりるんっ♪てしない一日だったなぁ。…帰ろっかな。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 雨がやんだから外に出てきたけど、あんまり七夕まつりを楽しむ気分にはなれないな〜。…あれ?あそこのやつなんだろ?

 

 

「へぇー、短冊に願い事、か〜」

 

 

 せっかくだしあたしもお願い事書いていこうっと〜。今日はお姉ちゃんと七夕まつり来れなかったし、来年こそは一緒がいいな〜。…ユウくんも一緒だったらどれだけ幸せなんだろう。

 

 

「書けた。あとは笹に結ぶだけ〜っと」

 

「日菜?ここで何してるの?」

 

「あ!お姉ちゃん!あたしは短冊にお願い事書いて今から結ぶとこ。お姉ちゃんは?」

 

「私はお母さんから買い物を頼まれただけよ。七夕まつりとは関係ないわ」

 

「そっか。……あのね、お姉ちゃん、っ!わわっ!」

 

「日菜!?」

 

「あー!あたしの短冊が鳥が取ったー!」

 

「書き直せばいいでしょ!」

 

「ダメだよ!大事なお願い事書いたんだから!待てー!!」

 

「ちょっと、日菜!」

 

 

 絶対にあの短冊は取り返すんだから!あの短冊には大事な、本当に大事なお願い事を書いたんだから。 

 いっばい走った。ひたすら鳥を追いかけて、周りなんて気にせずにひたすら。だけど鳥を見失っちゃった。辿り着いたのは公園。

 

 

「…このあたりに飛んでいった気がするんだけどな〜」

 

「鳥を追いかけるなんて無理があったのよ」

 

「えー!」

 

「まったく…。日菜、あそこに落ちてるの短冊じゃないかしら」

 

「えっ?…あ、ホントだー!あたしの短冊だ!あたしのお願い聞いてくれたのかな〜」

 

「…どうかしらね」

 

「いっぱい走ったから疲れちゃった。休憩しよ?」

 

「そうね。私も久しぶりにあんなに走ったから疲れたわ」

 

「じゃあじゃああのベンチで休憩ね!」

 

 

 ベンチに並んで座りながらぎこちなく会話を始める。…あたしらしくないってみんなは思うのかな。…あたしはお姉ちゃんが大好きだから、お姉ちゃんに嫌われたくないから慎重になるんだよね。

 ここは小さい頃にお姉ちゃんと二人でいっぱい遊んだ場所。思い出の場所なんだ。

 

 

「ユウくんと出会ったのもここなんだよ?」

 

「そうだったの?私初めて聞いたわよ」

 

「あはは。あたしも人に話したのはお姉ちゃんが初めて」

 

「俺がこのベンチに座ってるときに出会ったんだっけな」

 

「きゃっ!ゆ、雄弥くん?」

 

「ユウくんどうしたの?リサちーたちと一緒だったんじゃないの?」

 

「一緒だったんだがな。二人が慌てて走ってるのを見かけて、リサと友希那に追いかけてこいって言われたんだよ。あの二人、特にリサが二人のこと気にしてたみたいでな」

 

「そうなんだ…」

 

「…今井さんには気苦労させてしまってるわね」

 

 

 リサちーって世話焼きというか、お節介な性格というか。無理がたかって倒れることってありそうだよね。…まぁなんだかんだで友希那ちゃんがいるから大丈夫なんだろうけど。

 

 

「日菜休憩は終わりよ」

 

「え、もう?もっといっぱい話そうよ!」

 

「あなたね、短冊を飾るんでしょ?」

 

「あ…、うん!」

 

「短冊追いかけてたのか」

 

「まぁね。鳥に取られたんだよ!」

 

 

 ユウくんにここまで来た経緯を話しながら三人で商店街に戻っていく。短冊以外にもカササギの話をした。織姫と彦星の橋渡し役をするカササギの話を。今日の鳥は、まるであたしとお姉ちゃんを繋いでくれるカササギだね!そう思ったら鳥に感謝だよ♪

 けど、前からずっとその役をやってくれてたのはユウくんで、そう思ったらユウくんもカササギだね♪このカササギの話はこころちゃんから聞いたんだけどね〜。こころちゃんとはあの天体観測以外でも合同で部活してるから、その時に教えてもらった。

 

 

「屋台が出てるな」

 

「夜になったら見慣れた商店街もここまで変わるのね」

 

「ねぇお姉ちゃん!」

 

「…はぁ。ちょっとだけよ。お母さんからには私から連絡しとくわ」

 

「ありがとう!何食べよっかな〜。あ、お姉ちゃんも一緒に食べようよ!」

 

「えっ?私はいいわよ。こういう所の食べ物は…」

 

「たこ焼きがある!たこ焼きなら分けれるよね!」

 

「聞いてないな」

 

「あの子ったら本当に…」

 

「紗夜と一緒に回れて嬉しいんだろ。普段は元気に振る舞ってるが、寂しがる時もあったからな」

 

「…そう」

 

 

 むむっ、あたしがたこ焼き買ってる間にお姉ちゃんとユウくんがいい雰囲気出し始めてる!あたしとは違った雰囲気で、見てすぐにカップルってわかるやつじゃない。お姉ちゃんが落ち着いてるのと、ユウくんが口数少ないのが相まって、まるで『何年も付き合ってるからお互いのことわかってますよ』みたいなベテランカップルみたいなやつ!

 

 

「お待たせー!…お二人さんあたしがいないちょっとした時間で、いい雰囲気だしてない?」

 

「なっ!そ、そんなの出してないでしょ!」

 

「それよりたこ焼き食べるなら少し移動するぞ。ここだと他の人にあたるかもしれない」

 

「あ、うん」

 

「…そうね」

 

 

 移動してたこ焼きを食べ終わったら今度こそ短冊を飾りに行く。あたしはもう書いてあるから後は飾るだけ。

 

 

「お姉ちゃんとユウくんも書いたら?」

 

「私は別にいいわよ」

 

「あたしは飾ってくるねー!」

 

「日菜!…本当に話を聞かないんだから」

 

「ま、書くだけ書いてみてもいいんじゃないか?せっかくなんだし」

 

「雄弥くんまで…願い事なんて

 

「俺はもう書いてあるけどな」

 

「ええ?」

 

「リサたちと回ってる時にな。真っ先にここに来たからその時に書いた」

 

「…なるほど」

 

(そうなると書いてないのは私だけね。…仕方ないわね)

 

 

 あたしが二人の所に戻ったら、二人とも手ぶらの状態だった。ということはもう書いて飾ったのかな?

 

 

「お姉ちゃんたちもう書いたの?」

 

「俺はリサたちといる時に書いてた」

 

「私も書いて飾ってきたわ」

 

「どこに飾ったの?」

 

「日菜が絶対に見つけられないところよ」

 

「ええー。教えてくれてもいいじゃん」

 

「それより日菜はちゃんと飾ってきたのかしら?」

 

「あたし?あたしは飾るのやめた」

 

 

 お姉ちゃんが意外そうな顔してる。まぁあれだけ必死に追いかけた短冊を結局飾らなかったらそうなるよね。…ユウくんはどういうことか、なんとなく気づいてるみたいだけど。

 

 

「あたしのお願いは今日叶ったから」

 

「そうなの?」

 

「うん!『お姉ちゃんと仲良く過ごせますように』ってお願いしたんだ。そしたら鳥のおかげで叶ったから。だからいいの」

 

「…日菜」

 

「紗夜の願い事も叶うといいな」

 

「絶対叶うよ!あたしのお願いだって叶ったんだから!」

 

「…そうだといいわね」

 

(『日菜とまっすぐ話せますように』。この願い事も…いつか、きっと)

 

 

 ちょっと遅くなっちゃったけど、お姉ちゃんがお母さんから頼まれてた買い物を三人ですませて、ユウくんに家まで送ってもらった。お母さんもユウくんと会うのは久しぶりだから、ぜひ食べて行ってって誘ってたけど、先に家族と食べると約束してみたいでそれは叶わなかった。けど、今度家に食べに来てくれる約束をしてくれたから、それでチャラだね。

 今日は本当にいい日だった。お姉ちゃんと一緒に過ごせたし、ユウくんも一緒にいてくれた。今日は忘れられない一日になったよ!

 




せっかくの七夕イベントの話が…。もっと上手く書ければいいんですけど、魅力を減らしてしまいましたね。ご存知でない方はガルパの思い出のストーリーでご覧ください。ほっこりしますよ。
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