どうやらリサは友希那のバンドに加入することが決まったらしい。友希那のオーディションを受けた宇田川あこ、という子がドラムでリサは昔やってたベースをまた始めるとか。
ネイルを一気に剥がすなんてことしなきゃいいが、きっと思いっきってやるのだろう。釘を指しておいてもよかったのだが、『譲れない』とか言って聞かなさそうだしな。
俺の仕事の方はというと順調に進んでいる。予定どおり明日には帰れるだろう。何時になるかは知らんが。
〜〜〜〜〜
ー翌日ー
予定よりも撮影が早く終わり、早く帰れることになった。飛行機の予約は普通変えれないのだが、そこは愁の知り合いになんとかしてもらった。なんか影響力が大きい家なんだとか。
帰れると言ってもそのまま家まで帰るのではなく、一旦事務所に行き、今回の反省会などを済ませてからだ。カメラを1から確認していては時間がかかるため撮影したその日のうちに毎回行っている。つまり今から見るのは今日の撮影でOKが出された分だ。OKが出たとはいえそれ以上がないかと聞かれればそうではないという答えしかでない。限度があるなら人は成長できないからな。
(やっと終わったか。そうだ、友希那とリサに連絡入れるの忘れてた)
携帯を取りだしてそれぞれにメッセージを送っていると後ろから誰かに飛びつかれた。事務所でそんなことをしてくる人物は1人しかいないため確認せずともわかる。
「飛びつくなといつも言ってるだろ、日菜」
「嫌だってあたしもいつも言ってるでしょ?ユウくん」
氷川日菜、知り合ったのは中学の時。お互い相手の気持ちがわからないということで共感しあいそれから偶に連絡を取る程度の付き合いだ。
「なんでお前が事務所にいるんだよ」
「オーディションを受けに来たからだよ〜?」
「オーディション?」
「あれ〜知らないの?なんか新しいアイドルを結成するってやつ。るん♪ってきたから受けに来たんだ〜」
あーあれか。そういやそんな話が出てたな。日菜が受けたってことは日菜は合格したんだろ。この子はそういう人種だから。
「合格おめでとう」
「あははっ、ありがとう!よくわかったね♪」
「日菜だからな」
「えへへー。それでねそれでね!あたし
「よかったな」
日菜もギターをやるのか。ギター担当になったというよりかはギターのとこに応募して受かったってことか。……あの子が荒れなきゃいいけど。
にしてもこいついつまで背中に張り付いてる気だ?
「そろそろ降りろ」
「ええ、やだやだ!久しぶりに会えたんだしもっと一緒にいようよー!」
「合格したならこれから何度も顔を合わせる機会があるだろ。俺は帰る」
「ちぇー。じゃあ今度どっか一緒に行く約束してくれたらいいよ」
俺の周りの女子はなにかと約束事を増やしていくな。もしかして今の女子校生の間でそんなのが流行ってるのか?
有名なパンケーキ屋に一緒に行くということで手をうち、日菜から解放されてやっと帰路につくことができるーーはずだったんだが。携帯を見るとそこにはリサからの呼び出しの通知が来ていた。
(結局家に帰るのが遅くなるのか…)
〜〜〜〜〜
こんばんは、氷川紗夜です。ギターを弾きます。この度湊さんと今井さんと宇田川さんとバンドを組むことになりました。……誰に挨拶をしているのでしょう。
「紗夜どうかした?」
「いえ、なんでもありません。…それより宇田川さん、あなたが求めるカッコイイとはなんなのですか?それはただの『憧れ』なんじゃないんですか?」
「……そ、そんなこと」
「では答えてください。あなたが求める『カッコイイがなんなのか』」
「それは……」
「ま、まぁまぁ。あこはこう見えて自分のことをしっかり考えれる子だし、そんなつめないであげてよ」
「うぅ、リサ姉〜」
たしかに中学生相手に強く迫ってしまっていますが、そう甘くしていられません。私たちは『頂点』を目指すバンドとして集まったはずです。
「そういう今井さんもこのジャンルの知識はあるんですか?」
「へ?…あ、あたしはまぁ、昔やってたし。…友希那からこのジャンルの話は聞いてるわけだし…」
湊さんの親友なら話を聞くことがあるのでしょう。そこは疑いませんが、知識が足りているというわけでもなさそうですね。不安要素が多い、そう考えていると思いがけない人物の声が。
「なんだ?お通夜か?」
「雄弥来たんだ」
「リサが呼んだんだろ」
「あはは〜、まぁそうなんだけどさ。それとお通夜じゃなくて、今の課題の話してたんだ〜」
「課題、ね。……そうか、ギターは紗夜がやるのか」
「…お久しぶりですね雄弥くん」
中学の時、妹の日菜が急に家に連れてきたことで私たちは知り合いました。私が日菜にコンプレックスを抱いていることを知る数少ない人物で、ギターの指導もしてくれた人。
皆さんは私と彼が知り合いであることに驚いているようですが、私も今井さんが彼と親しいことに驚かされます。
「紗夜と雄弥って知り合いだったの!?」
「まぁな」
「教えてくれもよかったのに」
「話す理由がなかったし、聞かれなかったからな」
そうでしょうね。彼は周りへの興味関心がなさすぎますから。言われなければ自分から踏み込むことなど滅多にありません。
「…リサ、ネイルをはがしたのか」
「!!…あはは〜、まぁイメチェンってやつ?」
「手が荒れるぞ。せっかく綺麗な指してるんだから大切にしろ」
「…う、うん」
相変わらずさも流れ作業のようにさらりと恥ずかしいことを言いますね。聞いているだけの私でも恥ずかしくなります。…それより彼と知り合いならば彼に習ってしまえばいいのでは?一通りの楽器は弾けると聞いたことがありますし。
「雄弥くん、頼みがあります」
「演奏指導か?」
「はい、雄弥くんならできるはずです」
「…時間があるときならな。それにまずはリサとドラムの子を鍛えるのが先だ。全体の実力に差があると破綻するからな」
「もちろんわかっています。…ありがとうございます」
私が彼と話していると湊さんと今井さんが何か言いたそうな目でこちらを見ていました。宇田川さんは未だ混乱中のようですね。
「湊さん、今井さんどうかされました?」
「いえ別に」
「いや〜紗夜でも丸くなることがあるんだな〜と思って」
「な…!丸くなんてなってません!というかそれでは普段トゲトゲしいということですか?」
「あぁいやそれは、その〜」
「紗夜はトゲトゲしくなってるぞ?」
顔が赤くなっていることを自覚しながら今井さんを睨むと違う方向から攻撃を受けました。…雄弥くんは日菜と同じで相手の気持ちがわからないんでしたね。
それよりもそろそろ宇田川さんの意識を戻さなければ、中学生を遅くまで外に居させるわけにもいきませんし。
「宇田川さん、宇田川さん!」
「は、はい!なんでしょう紗夜さん!」
「そろそろ解散しますよ。遅くなるわけにはいきませんので」
「あ、わかりました!…はぁー、雄弥さんが目の前にいるという夢を見てましたー」
「……いえそれは現実ですよ」
宇田川さんの視線を誘導させると彼を見たところでまた宇田川さんは硬直してしまった。しかし今度は意識を保てているようですね。
「わわわわわ、ほ、本物だぁ」
「…そんな有名じゃないと思うんだが」
「ゆ、有名ですよ!4人バンドで全員が一通りの楽器を演奏できるなんて他にいませんから!」
「逆に言うとそれだけが売りだからな。そのために全員が死にものぐるいで練習したわけだし。メインボーカルがいないしな」
「そ、それでもあこはファンなんです!サインください!」
「いいぞ。なんなら今度他のメンバーからサイン書いてもらっとくがどうする?」
「い、いいんですか!?やったーー!」
宇田川さん浮かれすぎです、とは注意できませんね。彼女の満面の笑顔を見るとそんなことを言うのが野暮だとわかります。それに全員分のサインを貰えるなんてそうそうないことですし。
「ファンサービスがいいね〜」
「まさに大盤振る舞いね」
「誰かさんたちにそう教えこまれたからな」
彼の言葉にそっと視線を外す湊さんと今井さん。……あなたたちの入れ知恵なんですね。
宇田川さんにサインを書いて今日は解散となり、少し遅くなったため宇田川さんを家まで送ることになりました。宇田川さんのマシンガンのような質問に1つ1つ丁寧に雄弥くんが答え、その様子を私と湊さんと今井さんで後ろから見守る。宇田川さんを送ったあとは今度は私が送ってもらうことになってしまいました。
「紗夜みたいな可愛い子を遅い時間に一人で帰らせるわけにはいかないだろ」
「か、かわ……!」
彼の言葉に顔を真っ赤にした私は素直にその言葉に甘えることにしました。彼が何か気持ちがあって言ってるわけではないのですが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんです。
……彼は湊さんに小言を言われ、今井さんにつねられていましたが。
徐々に集まっていくパスパレメンバーとRoseliaメンバー。どっちのほうが先に結成なのか知らないのでだいたい同時期と考えて書いております。
それと主人公のバンドの名前は考えてません。そのうち決めます。