陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

52 / 123
テストが4つしかないのに、8月に2つあるという事実に萎えている作者です。
けれどもストックに余裕ができたから、本日2度目の投稿です。


3話

 

 アタシは病院の手術室の手前にある待合場所に座ってる。アタシの他にあの現場にいた秋宮くんと結花も一緒。けど、空気はとても重たいものになってた。いつも盛り上げ役をしてたアタシと結花が喋らないからだ。秋宮くんは電話で誰かと話してるし。

 何人分もの足音が聞こえてきて、そっちを見るとRoselia、Augenblickのメンバーだけじゃなくて、Pastel*Palettesと花音まで来てた。…花音は秋宮くんがいるからかな?

 

 

「リサ!雄弥の容態はどうなってるの?」

 

「ゆきな…」

 

「……秋宮くん」

 

 

 みんなの顔を見るとアタシはやっと安全になったんだって実感できた。そしたら張り詰めてたものが無くなって、また涙が出てきて友希那にしがみついた。友希那はアタシを優しく包み込んでくれて、この中で話せる気力がある秋宮くんに話を促した。

 

 

「死ぬことはないぞ。そこは安心してくれ」

 

「…そう」

 

「ただ、血を流しすぎてる。ここの病院は優秀な人が集まってるから大丈夫だろうが…、あの傷なら普通はしばらく目を覚まさないだろ」

 

「そんな…」

 

「ユウくんが目覚めるまで、どれぐらい時間がかかると思う?」

 

「さぁ、そこまでは。ただまぁ雄弥だからな〜、すぐに目を覚ますんじゃないか?」

 

「あなたは雄弥くんをなんだと思ってるんですか…」

 

「みんな、ごめんなさい!」

 

「へ?ど、どうして結花ちゃんが謝るの?結花ちゃんも被害者なんでしょ?」

 

「…表面上は、だからじゃないの?」

 

「日菜ちゃん!結花ちゃんに失礼だよ!」

 

「こういう時は彩ちゃんが羨ましく思えるよ」

 

「どういうこと?日菜ちゃんは何言ってるの!?」

 

 

 どう考えてもあの時のことを察せるのはAugenblickのメンバーぐらいのはず。むしろ誘拐の件自体さっきまで知らなかった人は、彩みたいな反応するのが当たり前なのに。…日菜は鋭すぎる。

 

 

「いいんだよ彩。…私が悪いんだもん。私のせいで雄弥がこんなことになったんだもん」

 

「説明してください。藤森さん。どうやらあなたには、その義務があるようですから」

 

「もちろんだよ。…この話を聞いて私に失望してくれてもいいよ。私を殴ってくれてもいいし、絶縁してくれていい。友希那も私を追い出していいから。それぐらいのことを私はしたんだから」

 

「馬鹿ね。どうするかは話を聞いてから判断するわよ」

 

 

 結花は全て話した。今回の首謀者との関係も、計画に手を貸したことも、雄弥が負傷する原因を作ったことも話した。…ただ、強制させられていたこと、雄弥が結花を赦したことだけは言わなかった。全ての罪を被る気だからだ。

 話を聞いているうちに、周りが結花を見る目が変わっていくのがわかった。結花もそれが辛いから途中から誰とも目を合わせようとしなかった。話が終わった瞬間結花は、紗夜に服を掴まれて壁に押し当てられた。

 

 

「あなたが!」

 

「紗夜さん落ちついてください!」

 

「そうです!…こんなことしても、雄弥さんは喜びません!」

 

「宇田川さん、白金さん…そんなのは分かっています。…わかっているんです。…ですが…」

 

「お姉ちゃん…」

 

「…ごめん。赦してくれなくていいから」

 

「あなたは…ほんとうに!」

 

「紗夜…結花を離してあげて」

 

「…今井さん?」

 

 

 友希那にもう大丈夫だとアイコンタクトをして、結花と紗夜の間に割って入る。アタシが紗夜の手に触れると、紗夜も結花から手を離してくれた。

 

 

「リサ…私は怒られて当たり前のことをしたんだから」

 

「ううん。結花はまだ話してないことがあるでしょ?」

 

「話してないこと、ですか?」

 

「違う!私が全部悪いんだから!さっき話したのが全部だから!」

 

「嘘でしょ?逆らえないようにさせられてたでしょ?一人で終わらせようとしないで。それは逃げと一緒だよ」

 

「リサ今度こそすべてを話して」

 

「うん。友希那も紗夜も、みんなもそれから判断して」

 

「やめてリサ!お願いだから!」

 

「やめないよ。…だって、友達が勘違いされて一人になるなんて、アタシ耐えられないから」

 

 

 アタシはさっき結花が意図的に話さなかったことを話した。借金の肩代わりをしてもらうために、薬物を服用しながら言いなりになっていたことを。そして、雄弥がそれでも結花を赦したことも。

 

 

「そう。雄弥はそう判断したのね」

 

「うん。アタシも雄弥と同じ気持ち。結花の味方でいるつもりだよ」

 

「ユウくんがそう言ったんならあたしもそれでいいやー。本人が赦してるのに周りが怒ってても仕方ないしね。お姉ちゃんは?」

 

「…そうね。…ごめんなさい藤森さん。あなたのことを責め立ててしまったわ」

 

「なんで紗夜が頭下げるの!頭を上げてよ、悪いのは私なんだよ!?」

 

「結花、もういいだろ?」

 

「疾斗…」

 

「みんな赦してくれたんだから、それでいいじゃねぇか。それでも罪を背負いたいなら、あとは勝手に贖罪するしかないだろ。…もちろんライブでな!」

 

「ライブで…?」

 

「ああ。近いうちにあるライブだけじゃない。海外ライブもやるって雄弥も言ってただろ?」

 

「う、うん」

 

「雄弥は結花のこと全部知ってたのに、雄弥なら避けれたはずの結花のスタンガンを避けなかった。なんでか分かるか?」

 

「そんなの…後ろからだからでしょ」

 

「そんなわけないだろ。雄弥は後ろからボールが飛んできても見ずにオーバヘッドで蹴り返す男だぞ。…あいつはな、避ける気がなかったんだよ」

 

 

ーーーーー

 

 

「それが結花に関わる話の全てか?」

 

『うん。だからもしかしたら結花から攻撃されるかも』

 

そんなのはどうでもいい(・・・・・・・・・・・)

 

「どうでもいいってお前…」

 

「俺たちは結花のことを全て受け入れると決めたはずだ。なら避けるなんてことはない」

 

『ほんと、馬鹿だよ』

 

「ま、それでこそ雄弥だけどな!んじゃあ愁、あとは海外ライブの段取りしといてくれ」

 

『了解』

 

 

ーーーーー

 

 

「避けたら結花を受け入れたことにならない。それがアイツの考えだ」

 

「ゆうや…ほんとに…ばかだよぉ」

 

「ライブをするしかないな!」

 

「…そう、だね。…もう雄弥を裏切れない、もんね」

 

 

 さすがAugenblickを束ねるリーダー。うまい具合に話を持っていくね〜。ライブとなると、ここにいるみんなも食いつくしね!アタシも便乗させてもらおっと!

 

 

「いいね〜。雄弥もライブで罰ゲームさせるって言ってたし?楽しみにさせてもらおっかな〜」

 

「あ~、いっつも大くんがやってるやつか〜。それいい!るんっ♪てしてきた!」

 

「彩ちゃんにも導入してみる?」

 

「本番に強くなるかもしれませんよ?」

 

「千聖ちゃん、麻耶ちゃん、冗談がきついよー」

 

「彩さん!ブシドーを磨けばどんな罰でも耐えられます!」

 

「え?やること確定なの!?」

 

「彩ちゃん。頑張ってね?」

 

「花音ちゃんまで!?」

 

 

 あはは、彩もなんか巻き込まれちゃってるね!さすがにアレは彩たちがやることはないと思うけど、グレードダウン版なら彩たちがやっても盛り上がりそうだね。

 

 

「罰ゲームに興味はないけど、あなた達のライブからはいつも学ばせてもらってるわ。失望させないでよ?」

 

「私も期待していますよ」

 

「あこは罰ゲームも楽しみにしてますよ!りんりんは?」

 

「わたしは…ケガがない程度なら…って、いつもハラハラしてるから。…できれば優し目のやつで」

 

「あはは!燐子、それって罰ゲーム自体は期待してるってことだからね?」

 

「…みんな、優しすぎるよ」

 

「まぁ雄弥に影響受けたりしてるしね〜」

 

「ほんとに、バカ」

 

「結花もそのバカの仲間だからね?」

 

 

 頬を染めながらプイって顔をそらす結花をツンツンつついていると、手術室のドアが開いて、中からお医者さんが出てきた。

 

 

「先生!雄弥は雄弥は大丈夫なんですか!?」

 

「リサ落ちついて」

 

「あ…すみません」

 

「いえ、あの傷を見ていたらそうなるのは仕方ありません。手術は無事に終わりました。ただ…」

 

「ただ?」

 

「何か後遺症などが出るんですか?」

 

「いえ、その心配はありません。…こう言ってはなんですが、彼は本当に人間ですか?」

 

「へ?」

 

「え?」

 

「「「ぷっ、はははは!!!」」」

 

「あの子は本当にもぅ…」

 

「え?え?どうゆうこと?」

 

 

 結花以外のAugenblickメンバーが爆笑し始めて、友希那は呆れたようにため息をついてた。アタシ達はなんで四人がそんな反応するのかわからなかったけど、すぐにその理由を理解することになった。移動式のベッドに寝転がされてる雄弥と目があったから(・・・・・・・)

 

 

「こんなに集まってどうした?」

 

「雄弥…ゆうやぁ!」

 

「ぐっ、リサ今抱きつかれると痛い」

 

「あ、ごめん…。けど、よかった〜」

 

「雄弥くん。約束破りましたね?」

 

「悪い紗夜。今度お詫びするから」

 

「ふふっ、いりませんよ。あなたが生きてくれてるならそれで」

 

「…ほんとごめん」

 

「ユウくん、時間作ってお見舞い来るからね〜」

 

「ああ、ありがとう。……すぐに退院するけどな」

 

 

 え?すぐに退院?あれだけの怪我をして、こんな大規模な手術しておいてすぐに退院?そんなの駄目に決まってるんじゃ…。

 

 

「君は何を言っているんだい?しばらくは入院に決まってるじゃないか。その傷ですぐに退院はありえないよ」

 

「傷の回復早いんで」

 

「駄目だ」

 

「まじか」

 

 

 雄弥が残念そうにしたのを見て、今度はこの場にいる全員が笑った。あんなことがあったけど、みんな笑えてる。いつもの状態に戻れたんだ。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 病室に運ばれた俺に、みんなが一言ずつ労いの言葉をかけてくれてから帰っていった。時間も遅かったから、色々と話すことがある子も後日ということになった。

 

 

(個室って暇だな。自分一人ってのは普段の生活と変わらないけど、しばらく仕事も無理だからスケジュールの確認とかもないし。体もあんま動かせないし)

 

 

 普通なら麻酔の効果で今もぐっすり寝てるはずらしいのだが、残念というべきか俺は寝れないでいた。病院に運ばれる前と手術の間をぐっすり寝ていたから、生活バランスが乱れてしまったようだ。ずっと目を瞑っていたら寝れるのか?

 そんなことをずっと考えていると、病室のドアがゆっくり開けられた。疾斗のバカが忍び込んだのかと思ったら全然違った。ウェーブがかかった長髪の人物。心当たりなんて一人しかいない。

 

 

「リサ。帰ったんじゃなかったのか?」

 

「…うん。帰ろうと思ったんだけどさ…」

 

「何があった?」

 

「あははー、…ちょっとね」

 

 

 乾いた笑いをするリサは、みんなといた時とは全く違う笑顔だった。無理に作ったような、そんな笑顔だ。リサを手招きしてベッドに腰掛けさせる。

 リサはポツリポツリと話してくれた。疾斗、大輝、愁と家の方向が同じメンバーは送ってもらうことになり、そうではないメンバーはタクシーで帰ることになったらしい。そして、リサも結花と友希那とタクシーで帰ろうとした時にソレ(・・)がわかった。

 

 

「今回の件でトラウマができたか」

 

「…うん。みんなでいた時とかは大丈夫だったんだけど、…たぶん人数が少ない時とか一人の時はダメかな」

 

「そうか。…それでなんとかやり過ごして忍び込んできたと」

 

「う、うん。ごめんね?寝るとこだったよね?」

 

「いや、あまり寝つけなくてな」

 

「そうなんだ…。雄弥、もっと近くに寄っていい?」

 

「いいぞ。リサもベッドに来いよ」

 

「お、お邪魔します。……雄弥といると、安心する」

 

「役立ってるならよかった。リサ、ゆっくり治していこう。俺も支えるから」

 

「ありがとう〜。雄弥…ずっと一緒にいてね?いなくならないでね?」

 

「ああ。絶対に一緒にいる」

 

「よかっ…た」

 

「……寝たのか、早いな。いや、あれだけのことがあれば当然か。…寝てる人が近くにいたら眠くなるって話もあるし、俺もこれで寝れるか?」

 

 

 麻酔の影響で動かすのがしんどい体をなんとか動かして、リサに布団をかけ直す。穏やかな顔で寝れてるリサを見て安心した俺も、目を閉じていたら意外とすぐに意識を手放すことができた。

 

 




普通手術後寝てるだろ!なんで起きてるんだか…。しかも起きてても普通体動かないだろ!
☆9評価 紅蓮羅刹の髑髏さん ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。