陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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そうでした!言い忘れてましたが、この4章からは"てれ"の描写で使ってた「//」をなしで挑戦してます。
それと、活動報告の方にオリキャラたち(Augenblickメンバー)のちょっとしたプロフィール的なの書きました。本当に今更ですけどね。


6話

「暇だ」

 

  

 昨日は平日にも拘わらずリサが来てくれたため午前中から退屈することはなかった。しかし今日からはリサも学校に復帰するため、暇を持て余すことになったのだ。放課後に弁当を持ってきてくれるらしいが。

 午前中は宮井さんが持ってきてくれた本を読むことで時間を潰せた。昼食後も残りの本を読むことで時間を消費していたが、読むペースは早い方らしいので今は退屈だった。

 

 

「……この病室ってパソコンあったのか」

 

 

 何かないものかと物色していたらノートパソコンが置かれていることに気づいた。今の時代携帯でもパソコンとほぼ同じことができるが、それでもパソコンでしかできないものもある。

 

 例えば、あこが言っていたオンラインゲームとか。

 

 

「いや待てよ、これ勝手にこのパソコンにインストールしていいのか?」

 

「いいですよ。退院する際にインストールしたものを削除していただければ」

 

「宮井さん。ノックはするものなのでは?」

 

「湊くんならしなくてもいいかなって」

 

「しなくていいですけど…。使用時間に制限は?」

 

「一日で三時間だけ。一時間ごとに休憩を挟んでください」

 

「了解です」

 

 

 パソコンを起動させて慣れない手つきで操作する。手探りの状態だが無事にインストールできたようだ。何をするか気になっていたのか宮井さんが画面を覗き込む。

 

 

「えっと、ねおふぁんたじーおんらいん?ゲームなんですか?」

 

「ゲームらしいですよ。リサと友希那経由で知り合った子がやってるんですよ。それで前に誘われたことがあって、ちょうどいいからこれを機にやってみようかと」

 

「へー。…わっ、自分のキャラクター作れるんですね。名前、性別、職業、あ、顔とかも作れるんですね」

 

「こういう細かいのも人気の一つらしいですよ。…それよりここにいて大丈夫なんですか?」

 

「へ?……あー!次行かなきゃ!」

 

 

 宮井さんは慌ただしく病室を出ていった。それでも走ってないのは、焦る気持ちを抑えられているからだろう。焦りを表に出さないのは、病院にいたら大切なんだろうな。

 

 

「名前は……そのまんまでいいか。見た目とかも似た感じでいいとして、あとは職業か。……なんなんだろうなこの職業って」

 

 

 名前から連想できるものもあれば、全くわからないものもある。というか職業が多すぎな気がする。…どの職業がどういう役割か調べてから選ぶか。

 

 

「一つ一つ完全に独立してるのか。どれが良いとういわけでもなく、時と場合で活躍する場が変わるって…よく考えてるな」

 

(まぁでも暇つぶしにってなると自分でダメージ稼げるのがいいのか?)

 

 

 そんな素人丸出しの考えで職業も決めてゲームをスタートする。本格的にやるとなると設定だけでもだいぶ時間使うんだろうな。

 

 

(ところでこれどうやって操作するんだ?チャットってなんなんだ?)

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「雄弥さーん!お邪魔しまーす!」

 

「あ、あこちゃん…病院は静かにしなきゃ」

 

「あ、そうだね。…雄弥さん?」

 

「今日はあこと燐子が来たのか。悪いがちょっと待ってくれるか?今忙しい」

 

「あ、お仕事されてたんですか?」

 

「…あこちゃん…もしかしたら…違うかも」

 

「え?」

 

「雄弥がゲームなんて初めて見たよ」

 

「えぇ!!」

 

 

 リサには見抜かれると思っていたが、燐子にも気づかれるとはな。やりこんでる人なら気付けるのかもしれないな。あ、でもあこはわからなかったか。

 

 

「あー!NFOやってるー!」

 

「あこちゃんそれほんと!?」

 

「わっ、燐子の食いつきすごっ!…NFOってたしか、あこたちがやってるやつだよね?」

 

「うん!」

 

「ふぅー、倒せた」

 

「雄弥さん。…その装備で…勝てたんですね」

 

「って初期装備のままじゃないですか!」

 

「装備ってこれだけじゃないのか?」

 

「「……」」

 

「あこ?燐子?」

 

「雄弥さん。今から講義をしますね」

 

「講義?」

 

「とりあえず椅子に座ろっか」

 

 

 椅子は二つしかないからリサはベッドに腰掛け、俺の向かい側に燐子とあこが椅子を移動させて座った。本気で装備は与えられたやつだけだと思っていたんだが、どうやら違うらしい。

 燐子の熱い講義が始まり、あこがちょくちょくサポートする。装備の説明だけで終わらず、そのままスキルの説明まで始まった。終わった時には軽く1時間たっており、さすがのリサも少し疲れていた。

 

 

「以上で基本的な説明を終わりますね」

 

「今ので基本説明だったんだ…」

 

「応用的な話はまだ早いですので」

 

「燐子ってゲームのことになると饒舌になるんだな」

 

「……ふぇ?」

 

「あ、それアタシも思った。いや〜燐子の新しい一面が見れた気がするよ〜」

 

「…は、…恥ずかしいです」

 

「あはは、燐子照れてる〜」

 

「あこはりんりんのそういうとこ好きだよ!」

 

 

 あこ、今それを言ってもおそらくフォローにはならないからな。それにしても新しい一面、か。Augenblickだとあまりプライベートでの関わりはないな。最近は結花の影響で知ることが増えてはいるが、知らないことの方が圧倒的に多い。

 

 

「と、とりあえず…雄弥さんの装備を…新しくしましょう」

 

「カッコイイやつがいいよねー!こう闇の力を感じさせるような…」

 

「性能がよければそれで良くないか?」

 

「「よくないです!」」

 

「えー」

 

「えっと、よくわからないけど、ファッションみたいな感じじゃないかな?雄弥だって動きやすさだけで決めてないでしょ?」

 

「そうでもないぞ」

 

「……そうだったね」

 

 

 リサが残念そうにため息をついて顔を逸らした。おそらくリサの中では、一番わかりやすい例えとして言ってくれたからだろう。あこと燐子からも冷たい視線が送られてくる。

 

 

「まぁでもリサが言いたいことはわかった」

 

「…ほんとに?」

 

「ああ。ライブ衣装がこだわって作られてるのと一緒ってことだろ?」

 

「あこ」

 

「はい。リサ姉の例えも雄弥さんの例えも合ってると思います。わかっていただいたところでさっそく武器屋に行きましょう!」

 

「今作れる武器と……ドロップアイテムで…手に入れた武器を比較して、雄弥さんの…好みのものにしましょう。選んだら…強化も…ついでにしちゃってた方が…楽だと思います」

 

「じゃあ燐子のアドバイス通りで」

 

 

 ノートパソコンは結して大きくはないから、小さい画面に四人で覗き込むことになる。正直やり辛さがあるが、それでもこの状況は初めてで新鮮さがある。しかも案外楽しかったりする。

 

 

「雄弥さんのレベルに見合った武器だとここらへんになるのかな?」

 

「そうだね…。ドロップ武器で言ったら…この2つかな…」

 

「結構見た目違うね」

 

「雄弥さんが選んだウォーリアーは武器の見た目の多さが人気だったりするんだ〜!もちろんダメージ稼ぎの代表格ってのも理由だけどね」

 

「へ〜。雄弥はどれかピンときた?」

 

「…どうだろうな。…防具の方も見てから決めるのもありじゃないか?」

 

「もちろんですよ!防具の方も色んなのがありますけどね」

 

「悩みがいがあるとも言えますし…場合によっては…見た目がアンバランスに…なることも」

 

「なるほど〜」

 

 

 なぜ実際にプレイすることになる俺よりリサの方が夢中になってるんだ?…あ~ファッションと同じ=リサが決めるってなるからか。いつもそうだったな。

 

 

「あ!この防具?ならさっきのお店の武器と合うんじゃない?雄弥の見た目とも合うし!」

 

「俺はそこにはいないんだけどな」

 

「雄弥のキャラクターってこと!…どう?あこ、燐子」

 

「そうですね。…雄弥さんが…今進めてるステージでも…十分通用しますね」

 

「リサ姉のコーディネートだから見た目もバッチリだしね!」

 

「やった!ねね、雄弥の決まったよ?」

 

「そうだな。リサ考えてくれてありがとう」

 

「どういたしまして♪」

 

「それとなリサ」

 

「うん?なぁに?」

 

「顔が近い」

 

「………っ、!!!ご、ごめん!!わぁっ!」

 

 

 どれぐらい近かったかと言うと、リサの吐息が俺に当たるぐらいには近かった。

 勢い良く距離を取ろうとしたリサだったが、リサが今いるのはベッドの上だ。そんなことしたらベッドから落ちそうになるのは当たり前なわけで、

 

 

「…ふぅ、危なかったな」

 

「ぁ、ありがとう

 

(雄弥の顔が近い!体自体もう全然離れてないし、あこと燐子もいるのに!)

 

 

 落ちそうになったリサの後方に右腕を伸ばして支えた。肘より先でリサの体を支えて、手のひらはリサの後頭部に回していた。俺はさっき自分で顔が近いと言っておきながらまた距離を縮めていることになるのだが、これは仕方がない。

 自分が落ちないように支えにしていた左腕に力を込めて俺自身とリサを引き上げる。あこと燐子の様子を見ると、あこはなぜか目を輝かせていて、燐子は少し顔を赤くしていた。

 

 

「よっと。…大丈夫か?」

 

「ふぁい。らいりょうぶ〜」

 

「リサ姉顔どころか耳まで真っ赤だし、舌まわってないよ」

 

「…あこちゃん…それは言っちゃだめだよ」

 

(燐子もそれ言わないでよー!燐子まで顔赤いし、やっぱさっきの見られてたよね!……恥ずかしぃー。ドキドキしたし、胸もキュンってしちゃったけど、見られると恥ずかしいー!)

 

「さてと、とりあえず装備は決まったことだし、今日はNFOもここまでだな」

 

「ええー!このままスキルの設定もしましょうよー!」

 

「パソコンは一日三時間って決められてるんだよ。スキルはまた今度教えてくれ」

 

「あこちゃん…無理言っちゃだめだよ。…雄弥さんは元気だけど…怪我人なんだから」

 

「はぁーい」

 

「そういや俺って怪我人だったな」

 

「雄弥?」

 

「もう動ける気がするんだけどな」

 

「ゆ・う・や?」

 

「…先生が許可くれるまでは入院かー」

 

「まったくもう」

 

 

 おかしいな、だんだんリサに逆らえなくなっていきそうだ。逆らう気はサラサラないが、多少の無茶とかもできなくなりそうだな。せめてライブのパフォーマンスとかは目を瞑ってもらえるようにしなくては…。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「それでリサ姉は今日ここに来る前にお弁当取りに家に戻ったんだ」

 

「うん。雄弥が食べたいって言ってくれたからね♪」

 

「よく…病院側が…許してくれましたね」

 

「担当医が軽い人でな。あと看護師の人がだいぶ頑張ってくれたらしい」

 

「あ、宮井さんにクッキー作ってきたんだった。今日会えないかもだから、雄弥から渡しといて」

 

「わかった」

 

「食べちゃだめだよ?」

 

「食べないに決まってるだろ。リサの手作り弁当があるんだから」

 

「…もう!そんなこと言っても明日のお弁当張り切るだけだからね?」

 

「張り切るんですね…」

 

 

 リサらしいラッピングが施されたクッキーをテレビのリモコンの横に起き、リサが作ってきてくれた弁当を開ける。今日もまた食欲をそそられるような作りになっていた。

 

 

「リサ姉のお弁当美味しそー!」

 

「あこちゃん…食べちゃだめだよ?」

 

「わ、わかってるよ。これはリサ姉が雄弥さんのために愛を込めて作ったやつだもんね!」

 

「あ、愛を込めたわけじゃないから!早く退院できたらいいなぁって思って作っただけだから!」

 

「愛だね」

 

「うん。…愛だね」

 

「ちーがーうー!」

 

「リサ。弁当を作ってくれてありがとう」

 

う、うん

 

「今日のも美味しいな。…ちょっと味付け変えたのか?」

 

「っ!!じ、実はそうなんだよね〜。やっぱり食材は似た感じになっちゃうから、味付けを変えて美味しく食べて貰おうかな〜って!気づいてもらえるとは思ってなかったから嬉しいや♪」

 

「リサの料理の変化に気づかないわけないだろ」

 

あ、ありがとう

 

「…りんりん。あこ、今ならブラックコーヒー飲める気がする」

 

「買いに行こっか」

 

 

 二人はブラックコーヒーを求めて病室から出ていった。鞄を置いていってるってことは、後で戻ってくるんだろう。なぜブラックコーヒーを求めだしたのかはよくわからない。

 

 

「雄弥ってさ」

 

「うん?」

 

「けっこう女の子が気づいてほしいことに気づけるよね」

 

「そうか?鈍感って言われたりするぞ?」

 

「それもあるけど、…女の子って意識的に変えたことって気づいてほしいんだよね。今日みたいに料理の味付けとかもそうだし、よくあるのは髪の毛を少し切ったとか」

 

「あ~。言われてみればそうかもな」

 

「たぶん、アタシ以外の子にも気づけちゃったりすよね」

 

「…かもな」

 

「やっぱりか〜。…アタシだけじゃないって寂しい、かな」

 

「全員に気づけるってわけじゃないぞ?それなりにお互いを知ってる子だけだからな」

 

「ふーん」

 

「リサ、俺は浮気とかしないからな?」

 

「口ではなんとでも言えるよね」

 

「そうだな。だからこれから証明する」

 

「信じさせてね?」

 

「ああ」

 

 

 肩に頭を預けてくるリサの腰にそっと腕を回す。俺はこの子を好きになったのだと心に刻み込むために。

 

 

「リサ姉ー、リサ姉パパが迎えに来てくれたから帰ろ〜………って思ったけどその前にあこもう一回コーヒー飲んでくるね。エレベーター前でりんりんとリサ姉パパと待ってるからリサ姉のタイミングで来てね」

 

「あ、あこ!!……また見られた

 

「普通に考えたら当たり前だけどな」

 

「そう思うなら言ってよ!」

 

「別に損するわけでもないだろ」

 

「アタシの心が荒れるよ!」

 

「そしたら俺が治してやるよ」

 

「……もぅ!」

 

 

 こんなやり取りを燐子やリサのお父さんが、あこと同じように呼びに来た時も繰り返した。最終的に宮井さんが出動するはめになっていた。呆れていたけど、リサお手製クッキーを渡したら機嫌を治すどころかハイテンションで許してくれた。




あこと燐子に来てもらいましたー。NFOの職業ってどんなのがあるんだろうと思ってイベントを見返しましたが、前衛は紗夜のタンク以外わかりませんでした!ってことで勝手に作りました。
この主人公、紗夜と日菜が来ないからってイチャつきすぎじゃね?
☆9評価 黒き彗星さん so13011111さん 天草シノさん ありがとうございます!
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