陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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全然お客さんが来ないから赤字になってる24時間営業の店で深夜バイト(副業)してる僕の心境
「客が来ないなら店開ける意味なくね?閉めて電気やらガスやら切ってる方が赤字抑えれるんじゃね?帰って寝たい」



9話

 外で出会った紗夜も一緒に病院の売店に行き、今日のおやつをみんなに買った。宮井さんへのお土産も選び、一番になったショウタには追加で買ってあげたのだが、ショウタは大きめのお菓子を頼んできた。「これならみんなで食べれるよね!」とのこと。優しい子だな。

 

 

「お姉ちゃんのお名前は?……あ、私はミカです」

 

「ミカちゃんですか。礼儀正しい子なのですね。私は氷川紗夜と言います」

 

「えっと、紗夜お姉ちゃん?」

 

「ふふっ、好きに呼んでくれていいですよ」

 

「じゃあ紗夜お姉ちゃん!」

 

「アイも紗夜お姉ちゃんってよぶー!えっと、はじめましてー。アイはアイっていいます!」

 

「はい。よろしくお願いしますねアイちゃん」

 

「うん!」

 

 

 女子同士だと仲良くなるのが早いな。年齢差があるからなのか紗夜もいつもより雰囲気が柔らかい気がするし、二人も懐きやすいのだろう。それに対して男子はというと、

 

 

「「……」」

 

「何固まってんだよ」

 

「雄弥くんこの子たちは?」

 

「自己紹介ぐらい自分でできるだろ?」

 

「は、はい。ケンって言います!よ、よよろしくお願いします氷川さん!」

 

「ぼ僕はショウタっていいましゅ」

 

「ガッチガチだな。売店行ってたときはそうでもなかったくせに」

 

 

 しかもショウタなんてかんでるし。なんでそこまで緊張してるんだ?別に紗夜は芸能人でもなければ有名人ってわけでもないぞ。

 ガッチガチになっている二人に対しても紗夜は、柔らかい雰囲気のまま接した。どうやら年下にはこういう雰囲気になるらしい。…あこに対しては別だが。

 

 

「こちらこそよろしくお願いします。ショウタくん、ケンくん。雄弥くんの相手をしてくださってありがとうございます」

 

「待て紗夜。なんかおかしくないか?」

 

「え?何がですか?おおかた暇だから出歩いて、その時に出会った彼らと一緒に遊ぶようになった。といったところでしょう?」

 

「紗夜、監視カメラでも仕掛けてるのか?」

 

「何を馬鹿なことを…。雄弥くんは予想しやすくなっただけですよ」

 

「それで的中させるのか…」

 

 

 いつもならこれで話は流れるのだが、今日はそうならなかった。子供たちがこのやり取りにツッコんでくるからだ。

 

 

「氷川さんすげー!もしかしてエスパーってやつ?」

 

「何言ってるのショウタ。紗夜お姉ちゃんがエスパーなわけないじゃん」

 

「ミカちゃんの言うとおりですよ。私は「お兄ちゃんの彼女ですよね?」……はい?」

 

「えぇ!?雄弥さん彼女いたんですか?…あ、でも雄弥さんなら彼女いてもおかしくないですね」

 

「お兄ちゃんの彼女さんってことはー、お兄ちゃんと紗夜お姉ちゃんはパパとママになるの?」

 

「なっ……!なりませんよ!そもそも私達は付き合ってません!従って私は雄弥くんの彼女ではありません!」

 

「えぇーー」

 

「アイはお似合いだと思うよー?」

 

「えぇーーではありません。…雄弥くんからも言ってあげてください」

 

「……そう、だな。…俺と紗夜はそういう関係じゃない」

 

「…雄弥くん?」

 

 

 俺と紗夜は決してそういう関係じゃない。リサとの関係ならゆくゆくはそうなっていくんだろう。それだけの覚悟はある。そうだというのに、なぜ俺はこの子たちの言葉を強く否定できないんだ…。この引っかかりはいったい何だっていうんだ。

 その後の追及を俺はのらりくらりとかわして、紗夜はハッキリと否定していた。俺がハッキリ否定しないせいだろうな。ミカとアイはなかなか納得してくれなかった。ケンとショウタは俺が一回違うと言ったら違うのだと納得してくれた。アイが同室のばあちゃんに呼ばれたことでその話は終わり、俺たちもそれぞれの部屋に戻ることになった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「……雄弥くんはなぜハッキリと否定しなかったの?」

 

「…紗夜?」

 

「雄弥くんがハッキリと否定すれば、あの子たちもすぐに納得したはずなのに」

 

「そうだろうな…」

 

 

 自分の病室に戻ると俺はベッドへ、紗夜は椅子に座った。別にベッドじゃなくてよかったんだが、紗夜に強く言われたからおとなしくベッドに座った。

 

 

「今井さんの様子を見れば私でもわかるのよ?」

 

「っ!!それは…」

 

「だからこそさっき雄弥くんが言葉を濁したのが許せないわ」

 

「許せない?」

 

「ええ。私だけじゃない。今井さんに対しても日菜に対してもあなたのさっきの態度は失礼よ」

 

「……そうだな。俺は最低なことをしてるな」

 

「分かっているのなら……ハッキリと否定してちょうだい。…私が諦められるようにしてよ」

 

「紗夜…」

 

 

 ああ、そうか。そういうことなのか(・・・・・・・・・)。なんで引っかかってたのかがやっと分かった。いや、やっと向き合えたと言うべきか。仮にここまで分かっていて『向き合え』と言っていたのなら、花音はとんでもない女の子だな。

 

 

「紗夜はあの頃の生活どうだった?」

 

「あの頃?」

 

「俺が日菜と出会って、そのまましばらく氷川家にいた頃だよ」

 

「…そうね。初めは何を馬鹿なことをって思ったわね。でも雄弥くんが帰る場所がないと言う以上私も受け入れなくてはって思ったわ。けど日菜が楽しそうに雄弥くんと話してるのを見て、私もすぐにそこに混ざりたくなったわね」

 

「そうだったな。日菜とずっと喋ってて、日菜が風呂に行ったときに急に紗夜が話しかけてきたんだったな」

 

「ええ。お父さんやお母さんとも話してなかったからちょうど良いと思ったのよ。それで雄弥くんのことがある程度わかった。その後はちょっと大変だったわね。日菜が雄弥くんと私が二人でいるのを嫌がってたもの」

 

「日菜に腕を掴まれてそのまま部屋に連行されたからな。なんであんな行動したのかは、今でもよくわからないんだけどな」

 

「はぁー。そこは理解してちょうだい。…まぁ今は置いとくとして、結局その日は私と雄弥くんの会話はなくなったわね。次の日になったら解決してたけど、雄弥くんが説得してくれたのかしら?」

 

「説得なんかしてない。なんで会話したらダメなのか聞いたら『嫌なものは嫌なの!』って言われて、その後その話はなくなったからな。日菜が自分で折り合いをつけたんだろ。日菜って紗夜のこと大好きって公言してるわけだしな」

 

「……そうね。あの子は私と同じことをしたがるもの。それで雄弥くんにはいっぱい迷惑をかけたわね。私達の問題なのに」

 

「迷惑でもないさ。あの頃は別に紗夜もまだ日菜から距離を取ってなかったからな。なんども相談を受けたってだけだろ?」

 

「…それでもよ。…私もきっと日菜も助けられたと思ってるわ。雄弥くんがいなかったら私と日菜はもっと関係が酷くなってたわ」

 

「紗夜が思ってるほどは悪くなってない気がするぞ。日菜は紗夜が大好きなわけだし、紗夜も日菜のこと好きだろ?」

 

「なっ!」

 

 

 図星、なんだろうな。ほんのりと赤面して顔をそらしてるけど、否定はしてこないんだし。俺は人のことを言えないと思うが、紗夜も紗夜で不器用だよな。

 

 

「俺はな…。あの生活が楽しかったんだよ。もちろん今の生活だって楽しい。どっちの方が上ってわけでもない。ただ氷川家にいた時も楽しかった。紗夜と日菜がいたから」

 

「…そういうことを言うから私も日菜も諦められないのよ」

 

「でも事実なんだ。二人に出会えてよかったってそう思えるんだよ」

 

「…雄弥くん」

 

「けどこれじゃあ駄目なんだよな?このままじゃあ誰も前に進めないんだよな?」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 できればそこは聞かずにいてほしかったのだれけど、雄弥くんなら仕方ないわね。こういうのが分からない人だもの。

 

 

「そうね。言葉で言ってくれないと駄目ね」

 

「…俺は二人を傷つけてばっかだな。貰うだけもらって何も返せない」

 

「そんなことないわ。日菜のことは日菜に聞いてもらわないと分からないけれど、少なくとも私はたくさん貰ってるわ」

 

「なにか返せたことあったか?なかっただろ」

 

「あったわよ。返してもらっただけじゃない。私だって雄弥くんからたくさん貰ったわ。言葉では表しにくい、雄弥くんが理解しにくい心の面でね」

 

「…そうならたしかに俺は返せたと思えないな」

 

「ふふっ、だから気にやまなくていいの。忘れられないというのなら心の奥にしまいこんで。完璧な人なんていないのよ。誰だって何かしら抱えて生きていくんだから、雄弥くんもそうしたらいいのよ」

 

「抱えて…生きていく、か」

 

 

 そう。抱えて生きていくしかない。教えるように言ってるけど、これは私に言い聞かせてることでもある。…きっとあの頃に仲良くなり過ぎたのね。

 雄弥くんが伏せていた顔を上げた。なにか決意したような表情をしている。私も向き合わなくては、辛そうにしながらも私を真っ直ぐに見てくれているのだから。

 

 

「紗夜」

 

「はい」

 

「俺は本当にあの時の生活が楽しかったし、好きだった。友希那やリサといる時とはまた違う。別の家族の形だった」

 

「ええ。私たちと彼女たちは違うものね」

 

「当然、だよな。前に入院してる時にリサと友希那に出会って、そのまま湊家に引き取られた。友希那とはそれで家族になったし、つきっきりでいてくれたリサも家族みたいな感覚だった」

 

「…彼女の距離の縮め方ならそう思っても仕方ないわね」

 

「だからさ、そういう意味で異性の子(家族じゃない女の子)と仲良くなったのって紗夜と日菜が初めてなんだよ」

 

「……学校の女の子は違ったのですか?」

 

 

 きっとこれは聞かない方がいいことなんだ。

 

 聞いてしまったら…、だけど雄弥くんは止まらない。私も止めることはできない。

 

 

「違った。何がとはうまく言えないが、学校の子たちとはたしかに違ったんだ」

 

「そう、ですか…」

 

「恋ってなんなのか、恋愛がなんなのか理解して、今日紗夜と会ってわかったんだ」

 

 

 

「俺はあの時、紗夜と日菜に惹かれてたんだ。紗夜のことも日菜のことも異性として好きだったんだって、今になってわかった」

 

 

 

 あぁ、私たちが惹かれていったのと同じだったのね。日菜にとっては初めて自分を理解してくれる人。

 

 私としても彼は初めての人だった。ずっと日菜の前にいようと頑張っていたから私は必然と誰よりも厳しく生活していた。誰にも弱音をはかず、誰とも一定の距離をとった。だけど彼の前では違った。出会いが唐突過ぎたから距離を掴んだ時には周りより近い距離だった。家族とも学校の人たちとも違う彼だけとの距離。

 それがとても心地良かった。今までにはなかったその距離での付き合いは、私に安らぎを与えてくれた。

 彼になら気をはらなくてよかった。彼になら何でも打ち明けられた。彼になら頼ることができた。彼になら弱音をはくことができた。彼にならありのままの自分を見せれた。

 

 だから私は彼に惹かれていって、出会って一ヶ月も経たずに恋に落ちた。

 

 

「ズルいわ…。あなたは……ほんとうに…ズルい人よ」

 

「…ごめん」

 

「わたし、だって…あの時から……好きだったのに…。日菜が…無自覚に雄弥くんを好きになっていたから……がまん…して…言わなかったのに」

 

「ごめん」

 

「雄弥くん…。今度こそ……返事して」

 

「……ああ。……わかっ、てる」

 

「…もう、なんで雄弥くんが…泣きそうになってるの」

 

「……うるさい」

 

 

 ほんとうに…不器用な人。誰よりも無関心で、誰よりも周りを見てこなかったくせに。誰よりも優しいんだから。

 

 ここでそんな顔されたら、後悔しちゃうじゃない。あの時に気持ちを伝えていればって思っちゃうじゃない。

 

 

「雄弥くん、あなたのことが好きです」

 

「…あり、がとう。……けど、…ごめん。……さよの…気持ちには……こたえれない。……リサを…うらぎれないから。リサが…大切だから」

 

「ふふっ、今井さんが……羨ましいわね。ありがとう雄弥くん。答えてくれて」

 

「これで、答えなかったら…最低な人間…だからな」

 

「そうね。……雄弥くん、あなたのことが好きでした(・・・)

 

「ああ。…俺も紗夜のことが、好きだった(・・・)

 

(これで、…いいのよ。これで)

 

〜〜〜〜〜

 

 

 私は病室を出て病院の外にあるベンチに座り込んだ。座り込んで顔を手で隠した。涙を堪えていたらそっと私の頭は包まれた。彼が追いかけてきたのなら怒ろうと思って顔を上げたら、そこには湊さんがいた。

 

 

「みなと、さん…?」

 

「紗夜、我慢しなくていいのよ。泣きたい時には泣きなさい。リーダーである私が、同じ姉である私が受け止めてあげるわ」

 

「みなとさん。わたし…わたし…」

 

「ええ。頑張ったわね。あなたはよく頑張ったわ。日菜を慰められるようにするために日菜より先に来たのでしょう?…雄弥の前でも泣かなかったようだし、あなたは本当によく頑張ったわ。だからここで全てはき出しなさい」

 

「ぁ…」

 

 

 彼女の言葉に、彼女の温かさに私の心は限界を迎えた。湊さんに抱きついて気持ちのすべてをさらけ出した。人目も憚らずに、いつもの壁をなくして、涙を流し続けた。その全てを湊さんは優しく受け止めてくれた。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「………ふぅー。…くそっ、ほんと恋って辛いな。……そう思いませんか?先生」

 

「…一応断っておくけど、ついさっき来たところだからね?」

 

「知ってますよ。紗夜が出ていってから5分後くらいに来て、俺が落ち着くの待ってたんでしょ?」

 

「そうだね。僕が来た時には君一人だったわけで、なぜか泣いてたからとりあえず待ってました」

 

「それで、来たということは研究が進んだということですよね。…使えないものだったでしょ?」

 

「……そう、だね。論文を出しても否定されるものだったよ」

 

「でしょうね。だって、寿命と引き換えに(・・・・・・・・)傷を塞ぐんですから」

 

「しかも怪我の程度に関係ないときた」

 

 

 そう関係ないんだ。まぁ、削れる寿命の数は変わるんだが、常人でも二日で治るようなものにも作用して、寿命を削るんだ。こんなものを医術には応用できない。入院するほどの怪我だけ作用する、なんてことができないんだ。研究を続けたらできるかもしれないが、可能性は限りなく低いし、周りから白い目で見られるだろう。

 

 

「…君のお姉さんが来ていたよ。どうやら彼女は気づいていたんだね」

 

「家族ですからね。膝を擦りむいても次の日には治っているのを見ていたら疑うでしょ」

 

「このことを今井さんは?」

 

「リサは知りませんよ。リサにだけは怪我をしてもそれ自体隠してましたから。知ってるのは結花を除いた湊家とAugenblickのメンバーですね。まぁ代償が寿命ってのは知らないでしょうけどね。……まさか友希那はそれを聞きに来たんですか?」

 

「そうだね。聞かれたよ。僕自身これが判明した時にはご家族に話すべきか悩んでいたから、話してしまったよ」

 

「……そうですか。もう誰にも言わないでくださいね。特にリサには」

 

「君がそう言うのならそうしよう。ご家族は知るわけだしね」

 

(まぁ疾斗とマネージャーあたりは知ってるんだろうな。わざわざ俺を監視してたわけだし)

 

 友希那に知られたのは別にいい。友希那なら言いふらすこともないし、言う相手も父さんと母さんだけだろう。これ以上は知られることはない。

 

 

「君は今回の怪我でも異常な程の回復力をみせた。もしかして速さを変えられるのかい?」

 

「先生は着眼点が良いですね。変えられますよ。といっても速くできるだけで、常人の速度に落とすことはできません」

 

「そうなのか…。そしてそれはさらに寿命を削ることでできる。そうだね?」

 

「当たりです」

 

「そうか…君は今まででどれだけの寿命を削ったんだい?」

 

「そうですね…まあだいたいですけど──」

 

 

 困ったな。どう考えてもリサを残して先に逝くことになる。最後の最後に泣かせるのは、………嫌なんだけどな。

 

 

 

 




中学生時代の話は…うーん、書くときがくるのかな?こない気がする。
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