陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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10話

 紗夜をふったあの日、実は先生と入れ替わるようにリサが来ていた。わざわざ面会時間ギリギリに弁当を持ってきてくれたようだ。話を聞かれたかとギョッとしたが、息を切らしていたことから聞かれてはいないのだろう。先生と真剣な顔をしていたのを見て、キョトンとしていたのがその証拠だ。リサはこういう時素直になるからわかりやすい。

 

 ただ俺が泣いていたことは見破られた。目が赤いから簡単にわかったらしい。そりゃあわかるか。話すことを渋ったらなんで泣いていたのかを言い当てられた。俺はもうリサに隠し事ができる気がしない。

 

 

「リサのことが好きなのに、他の子をふるときに泣いたのはきっと駄目なんだろうな。紗夜にも言われたし」

 

「一般論で言ったらそうなんだろうね。けど、雄弥がそういうの気にする必要ないと思うよ。アタシはそれだけ雄弥が優しい心を持ってる証拠だと思うし、むしろそういう雄弥だからこそ好きなわけだしね」

 

「…リサって俺の人間性を全肯定するよな」

 

「あはは、まぁね〜♪…雄弥と一緒だよ。雄弥がアタシの全部を受け入れてくれるから、アタシがマイナスに思ってることも好きだって言ってくれるから、だからアタシも雄弥のことを全部受け入れられるんだよ♪」

 

「ありがとう」 

 

「どういたしまして〜♪」

 

 

 こんな感じでリサに慰められたわけだ。

 なんとか気持ちを前に向けようと思っていたんだがな。この週末は俺の気持ちが動転しまくることが確定した。

 

 

 今日は日菜が来るらしい。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 昨日お姉ちゃんが帰って来た時、ちょっと目が赤かった。けど、どこかスッキリしたしたような、何かを超えられたような顔をしてた。お姉ちゃんのそういう顔って見ててるんっ♪てする。…いつもなら。

 だけど昨日はるんっ♪てならなかった。お姉ちゃんを見て全部わかったから。ユウくんとリサちーの関係が確かなものになったっんだってわかった。…こういう形で知りたくはなかった。だけど仕方ないよね。あたしが順番最後になっちゃったんだから。

 

 

「…わかってたことだし、そうなるようにアタシも動いたわけだけど。…やっぱり辛いな〜」

 

「?日菜ちゃん?」

 

「あれ?彩ちゃんどうしたの?花音ちゃんみたいに迷子?」

 

「迷子じゃないよ!…私は雄弥くんのお見舞いに行くんだけど、日菜ちゃんも?」

 

「そうだよ〜!それにしても彩ちゃんってまだ行ってなかったんだ。てっきりすぐに行ってるかと思ったよ〜。彩ちゃん暇そうだし」

 

「日菜ちゃん酷いよ!…たしかにみんなみたいにお仕事あるわけじゃないけどさ、その分レッスン頑張ってたの!」

 

「けどあんま集中できてないって言われてたような…」

 

「うぐっ。…雄弥くんのことが気になって。手術は成功したし、本人も元気そうにしてたけどやっぱり心配だし」

 

「ふ〜ん」

 

 

 そういえば彩ちゃんってアタシとお姉ちゃんよりもユウくんと付き合いが長いんだっけ。ユウくんの方が先にAugenblickのメンバーとして集められてて、その後に彩ちゃんが研究生として入った、とかだった気がする。…聞いてみよ。

 

 

「それで合ってるよ。雄弥くんたちがデビューライブに向けて猛練習してる頃に入ったんだー。あの頃のAugenblickって凄い必死だったんだよ?今じゃあ想像できないぐらいに」

 

「たしかに想像できないな〜。ユウくんが必至になってるとこってアタシも見たことないや」

 

「雄弥くんは焦りとかは見てても無さそうだったんだけどね。けど、集中力がすっごくてね、見てるだけでこっちもやる気になるんだよ!」

 

「へ〜、あたしも見てみたいな〜。ってか彩ちゃんやっぱりユウくんのこと好きなんじゃないの?」

 

「ええっ!?それは違うってば!…なんていうのかな〜。雄弥くんのことは好きだけど、憧れに近いんだよ」

 

「彩ちゃんの憧れはあゆみさんでしょ?」

 

「あゆみさんも憧れなんだけど、雄弥くんも憧れだよ。頼りがいがある人って格好いいでしょ?」

 

「それはわかるけどさ〜。彩ちゃんが頼りがいある人になる、っていうのは想像できないや」

 

「えー!」

 

 

 だって彩ちゃんだよ?ユウくんは何でもできる、みたいなイメージがあるけど、彩ちゃんのイメージは正反対だし。

 そういえばあたしってユウくんのことってあんま知ってないんだね。ユウくんと思考が近いから知ってる気でいたけど、知らないことのほうが多いや。彩ちゃんから聞くのも限界があるし、……リサちーたちに聞けばいいのかな。ユウくんってあんま自分のこと話してくれないから。

 

 

「彩ちゃんって入りたての頃にユウくんと仲良くなったの?その時のユウくんってたぶん話しかけづらい雰囲気だよね?」

 

「う、うん。…あの時はたしかに話しかけづらかったよ。だから最初はあたしから話しかけたわけじゃないんだ」

 

「え、ユウくんから話しかけたの?」

 

「そうだよ。あたしもビックリしちゃった。…なかなか上手くできなくて泣いてた時に声をかけてくれたんだ〜」

 

「あ〜、彩ちゃんってすぐ泣くもんね」

 

「それは言わないでよ!…とにかく、その時に話を聞いてくれて、練習を見てくれたりもしたんだ。それで雄弥くんの印象が変わったよ」

 

「なるほどね〜。ユウくんの気持ちもわかるな〜」

 

「なんで?」

 

「ほら、ユウくんってなんでもできるって分類の人じゃん?友希那ちゃんも歌がうまくて、リサちーだって練習したら着実に成長する。けど、彩ちゃんは練習しても同じミスを何回もする。だから興味持ったんだよ」

 

「きょ、興味だなんて…。そんな…」

 

「あ、そっち(・・・)じゃないからね?」

 

「だ、だよね!うん、もちろんわかってたよ?」

 

「ほんとかな〜?」

 

「ホントだよ!」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 彩ちゃんと一緒にユウくんの病室に向かう。ちゃんとユウくんの名前が書かれてることを確認して、あたしはいつも通り突入した。

 

 

「ユウくんやっほー!あたしだよ〜!」

 

「日菜ちゃん!病院は静かにしないと!」

 

「そんな入り方してきたこと今までなかっただろ」

 

「お姉ちゃんたちだぁれ?」

 

「あー!昨日の紗夜お姉ちゃんに似てるー!」

 

「へ?」

 

「ユウくん、この子たちは?」

 

 

 部屋に入ったら子どもたちに囲まれてるユウくんがいた。見たら簡単にわかるぐらいにユウくんはこの子たちに懐かれてた。

 女の子二人が言うにはどうやらお姉ちゃんもこの子たちに会ったらしい。…それにしてもお姉ちゃんに似てる、か〜。嬉しいこと言ってくれるね〜♪

 

 

「あたしは紗夜お姉ちゃんの妹の氷川日菜だよ♪よろしくね、ギュイーン!」

 

「あ、日菜ちゃんのそれ久々に聞いた。…えっと、私は日菜ちゃんと雄弥くんのお友達の丸山彩だよ。よろしくね?」

 

「紗夜お姉ちゃんはお友達じゃないの?」

 

「もちろん紗夜ちゃんともお友達だよ。クラスも一緒なんだよ!」

 

「いいなー。お姉ちゃんたちも可愛い!」

 

「あはは。ありがとう!君たちも負けてないよ〜」

 

「ほんとー?」

 

「ほんとほんと!」

 

 

 この子たちってみんな素直だね〜。なんかこっちまで明るくなってきた!

 この子たちにも自己紹介してもらって、何をしてたのか教えてもらった。最近はユウくんと一緒に散歩してたらしいんだけど、今日ユウくんは病室にいないといけないらしい。なんか先生に話があるって言われたんだって。だけど先生も忙しいからいつ時間作れるか分からないらしくて、ユウくんが待機することになったんだとか。

 

 

「それで今トランプしてるんだ?」

 

「そういうこと。二人も混ざるか?」

 

「やるやるー!彩ちゃんもやろうよ!」

 

「うん。いいよ!」

 

「となると、7人か。二組ぐらいペアを作るか」

 

「じゃあ、あたしはユウくんと組む!」

 

「いやいや日菜ちゃん、その組み方はおかしいからね!?」

 

「ええー」

 

「私は日菜お姉ちゃんと一緒にしてみたい。…駄目?」

 

「そうなの?それならあたしとミカちゃんがペアね!」

 

 

 う〜ん♪こんなちっちゃい子に一緒が良いって言われるとるんっ!てしてキューーンってなるね!この子のためにも本気出しちゃおっかな〜。

 一番年下のアイちゃんがユウくんとペアを組んで、彩ちゃん、ケンくん、ショウタくんが一人でやることになった。

 

 

「彩ちゃんが一番弱そうだよね〜」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

「え、彩ちゃん本気でやるの?」

 

「そこは様子見てやるよぉ」

 

「彩はそんな器用じゃないだろ。本気でやれ」

 

「雄弥くん!?」

 

「お兄ちゃん、彩ちゃんって下手っぴさんなの?」

 

「やってみたらすぐにわかるぞ」

 

「ぐさっ、…うぅ、やる前から散々な言われようだよ。こうなったら私の凄いとこ見せるんだから!」

 

 

 なーんてこと言って、彩ちゃんはメラメラとやる気を出した。年下相手だっていうのに真剣な顔するんだもん。あたしでも大人気ないって思ったよ。最初はね。

 

 

「うぅー。かてない…」

 

「彩ちゃんってやっぱり彩ちゃんだよね!それでこそだよ!」

 

 

 簡単なババ抜きとか7並べとかでも最下位って彩ちゃんは凄いね。大富豪でも絶対に大貧民なるし。これって彩ちゃんの才能かな?

 

 

「彩さん。元気出してください」

 

「その優しさがトドメだよ…」

 

「兄ちゃん。僕年上の人にかわいそうって思ったの初めてだよ」

 

「アイも」

 

「この子たちの純粋な言葉が辛い!」

 

「…はぁ。悪かったな、彩」

 

「へ?なんで謝るの?」

 

「…やっぱりユウくんがコントロールしてたんだ」

 

「コントロール?どうゆうこと?」

 

「流れからして彩ちゃんを最下位にしたら盛り上がるって思ったんでしょ?」

 

「日菜には筒抜けか。7並べとか大富豪の時は彩の妨害してただけだ」

 

「酷いよ雄弥くん!」

 

「ババ抜きは彩の実力だぞ?」

 

「……ぐすん

 

「あーあ、ユウくんが彩ちゃん泣かせたー。これはリサちーに報告かな?」

 

「勘弁してくれ。ごめんな彩。彩はメンタル強いから大丈夫だと思ったんだ」

 

「…退院したら一日付き合って」

 

「わかった」

 

 

 これって伝え方次第じゃユウくんがこっぴどくリサちーに説教されそうだよね。友希那ちゃんとか結花ちゃんに同じ言い方してもなんか見破られそうだけど。

 

 

「失礼するよ……改めて来たほうがいいかな?」

 

「今でいいですよ先生。それで、俺の退院(・・・・)はいつになりますか?」

 

「え?退院?兄ちゃんもう退院すんの!?」

 

「アイもっとお兄ちゃんといたい!」

 

「こらこら二人とも、退院するのはいい事なんだから。雄弥さんを困らせちゃだめだよ」

 

「でも…」

 

「ははっ、湊くんは随分と懐かれているね。…ありがとう、君のおかげで他の患者さん達も元気になった人が多いよ」

 

「そうなんですか?」

 

 

 ユウくんのおかげで?…うーん、ユウくんが直接動くことって滅多にない気がするんだけどなー。しかも先生の言い方からしてその患者さんの数は多そうだし、なおさらよくわからないや。

 

 

「俺は何もしてませんよ?」

 

「そうでもないさ。まず、ここにいる子達と同じ病室の人達が元気を貰えてるって言っているんだよ。しかもその人達と仲がいい患者さん達も同様にね。それだけじゃない、君たちが楽しそうに散歩しているのを見た人達も同じように外に出るようになったんだ。今まで塞ぎ込んでた人も影響された。ここまで活気づくとは思ってなかったけど、実際にそうなった。ありがとう」

 

「…それでも俺は何もしてませんよ。全部その人達自身がやったことです。礼を言われるようなことじゃないです」

 

「ユウくんらしいね。それでそれで!ユウくんはいつ退院できるのー?」

 

「早くて3日後、遅くても4日後には退院だね。その後の経過観測は必要だから、何度かは病院に来てもらうけど」

 

「はやっ!」

 

「よし、ライブには間に合うな」

 

「ライブ?お兄ちゃんライブするの?」

 

「するぞ。みんなにもチケットあげるから家族と一緒に見に来たらいい」

 

「ほんと!?やったー!」

 

 

 さっきから思ってたけどユウくんって年下の子たちの面倒見がいいよね。これがユウくんの素なのかな?

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 先生との話が終わったら子どもたちも部屋に戻っていった。みんなライブを楽しみにしてるって、笑顔で言ってた。ああいう笑顔って元気もらえるよね。あー、だから他の患者さんも元気になるんだね。

 

 

「…彩ちゃん、ちょっと外に出といてもらっていい?」

 

「日菜ちゃん?……、ついでに飲み物買ってくるね」

 

「ありがとう…」

 

 

 さすがの彩ちゃんにも気づかれるか〜。けど、気づかれた方がよかったのかもしれない。聞かれたくないからね。

 

 

「ユウくんはさ。答えが出たんだよね?」

 

「……ああ。おかげさまでな」

 

「そっか。…じゃあ聞かせてもらわないとね?」

 

「そういう約束…だったもんな」

 

「…あはは、…お姉ちゃんにも言われてると思うけど。…ユウくん、そんな顔しないでよ」

 

「…ごめん。…ふぅー。……日菜」

 

「うん」

 

「俺はリサのことが好きだ。リサしか愛せない。…だから、…日菜の気持ちには答えれない」

 

「うん。知ってたよ…。……しってた、ユウくんと再会して…リサちーと…一緒にいるとこ見て、二人の様子でわかった。…ユウくんもリサちーも…お互いに相手のことが好きなんだって」

 

「……日菜」

 

「けどあたしは諦められなかった。…あたしがユウくんのこと好きってわかったのが…ユウくんがいなくなってからだったから。…だから答えがわかってても…ユウくんを…」

 

「……」

 

「今も諦めてないけどね!」

 

「…は?」

 

「あたしをなめないでほしいな〜。あたしは今まで欲しいがままにしてきた日菜ちゃんだよ?…ユウくんのことだって好きでい続ける。この気持ちはどうしても無くならないから。だから、ユウくんは気をつけないといけないよ?リサちーとの間に隙間ができたらあたしが割って入るからね?」

 

「そんなことにはならない。絶対にな」

 

「ふふーん。そこは二人次第だね。…それじゃああたしは彩ちゃん回収して帰るね〜。ライブ、楽しみにしてるよ?」

 

「ああ。最高のライブを見せてやるよ」

 

(…俺の…ばかやろう。…結局最後まで日菜に甘えてんじゃねぇか)

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「彩ちゃん見ーっけ!」

 

「おかえり日菜ちゃん。…もう我慢しなくていいよ?」

 

「っ!?…なんのことかな〜?」

 

「いつもは分からないけど、今日はわかる。日菜ちゃん泣くの我慢してる」

 

「そんなこと……ないよ」

 

「日菜ちゃん」

 

「……ぁ」

 

 

 彩ちゃんはぎゅってあたしを包んでくれた。いつもは頼りないのに、いつもトチってるくせに。なんでこんなに彩ちゃんが大きく見えるんだろ。彩ちゃんのばか。彩ちゃんの……ばか。…彩ちゃんにこんなことされたら…。

 

 

「うっ、うぅー」

 

「よしよし。今日ぐらいは私を頼って?」

 

「あやちゃん、あやちゃん!あたし…あたしは!」

 

「うん。全部言っちゃって?」

 

 

 いっつも頼りないはずのあたし達のリーダーが、この時はとっても頼りがいがある感じがした。疾斗くんや友希那ちゃんみたいな引っ張っていくタイプの頼りがいじゃなくて、リサちーやそれこそユウくんみたいな…寄り添うタイプの頼りがい。好きな人と同じタイプの彩ちゃんに、あたしの我慢は限界を迎えて泣いて泣いて全部さらけ出した。

 

 家に帰ってからお姉ちゃんから話を聞き出した。そしてユウくんの初恋があたし達だったってことを知った。

 

 ほんとにユウくんのバカ。

 

 

 




紗夜の後に日菜ってことは決めてたんです。ただ…紗夜の話に気合い入れてたら日菜のことを書く時に大変困りました。その末生み出された話がこれです。
もっと想像力を働かせられたらー!(`;ω;´)
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