というよろしくないローテーションになりつつあります。
「キーボード役が見つからない?」
『そうなんだよね〜。アタシの周りでもやってる人全然いないし、友希那と紗夜が認めるレベルってなるとね〜』
あの二人は妥協を許さないからな。あとは意識が高いってのも条件に入ってるんだろうな。やる気がないやつといてもバンドは伸びないし。
「それで俺にどうしろと?言っとくが探す気はないぞ」
『あはは〜、まぁそうだよね。…なんというか近況報告ってやつ?』
「いつも会うだろ」
『そうだけど、それだけじゃ話しきれないじゃん?』
俺は特に話すことないからそんなことない気もするが……、あ~リサは話題が尽きないんだったな。
「ともかくキーボード探しはそっちの課題だろ?自分たちで見つけ出せ」
『うっ、…わかりましたー』
まったく、俺は全知全能なんかじゃないんだぞ。毎度助けを求められても限度ってのがある。……電話切らないのか?なんかブツブツ独り言言ってるみたいだが。
「リサ、まだ何かあるのか?」
『え?…う、うん!あと一個だけ!』
「なにをそんな慌ててるんだ。時間なら気にしなくていいぞ」
『そうだね…すぅー、はぁー。よし』
ほんとにどうしたんだリサのやつ。そんな重要な話があるのか?
『この前雄弥と、その、…デ、デート行くって話したじゃん?』
「ああ、したな。けど今は大変な時期じゃないのか?」
『そうなんだけど、さ。バンドのことが一旦落ち着いたら時間作りやすくなると思うから、その後でデートしたいな〜って』
「それぐらいならいいぞ。というかその話はキーボードを見つけてからでもよかったんじゃないか?」
『頑張る理由ぐらい作ったっていいじゃん!雄弥のバカ!』
そんなんで頑張れるのか、それなら世の中褒美だらけにしたら全員働けるんだろうな。……あー、給料が褒美なのか、それで頑張れるから日本人ってゾンビなのか。
「何を怒ってるのかわからないが機嫌を治してくれ。デートのときにリサの行きたいとこ全部行くから」
『それは最初からそうしてもらうつもりだったもーん』
「…行きたがってたカフェで好きなだけ奢ってやるから」
『………アタシを物で釣ろうとしてない?』
「今の間は釣られかけたってことだろ」
『こういうのは鋭いんだから…。はぁ、丸一日予定空けること!それなら許してあげる!』
「なんだそんなのでいいのか」
『そんなのって…』
「
『!!』
「詳細は落ち着いたらでいいだろ?今日はもう寝ろ」
『うん!おやすみ雄弥♪』
「ああ、おやすみリサ」
テンションの上がり下がりが激しいな。男の知り合いで一番激しいのは大輝だが、リサのはそれ以上に理由がわからん。
(なんでもいいか。明日は合同練習だったか…、その後にリサたちの指導に行けばいいか)
〜〜〜〜〜
「愁喉乾いた」
「飲み物がないなら買ってきなよ」
「愁はいつも買いに行ってくれるじゃないか」
「そんなパシリになったおぼえないからね!?」
疾斗のやつ動くのめんどくさがり過ぎだろ。それでよくあのパフォーマンスするよな。アイドルやめて体操選手にでもなればいい。金メダル狙えるだろ。
「雄弥からも言ってよ!」
「自分でなんとかしろ」
「見捨てられた!」
騒がしいな、人に振り回される時だけそんなうるささになるからドMなんて言われるんだろ。
「…大輝に行かせたらいいだろ」
「俺を売るなよ!?」
「それもそうか、よし、大輝行ってこい」
「なんでだよ!?お前が飲みたがるやつ全部駅の方まで行かないとねぇじゃねぇか!」
「だから行くのがだるいんだよ。行ってきてくれよ」
「俺もだるいわ!ってか事務所来る前に買っとけよ!」
「あーー、なるほど」
普通それがいいんだろうが…、残念なことに疾斗はそれができないって忘れてやがるな。
「けど俺バイクで来るから駅の方行かないんだよなぁ」
「…そういやそうだったな」
結局いつも通りジャンケンすることになり、案の定大輝がジャンケンに負けた。『ジャンケンなら愁で確定だろ』なんて自分でフラグを立てるからそうなるんだよ。
(待ってる間暇だな。外のソファで寝るか)
練習部屋からすぐ近くにある広間に置いてあるソファは無駄に材質がよく疲れにくい。というか疲れが取れるように思えるほどだ。
(次のライブまでまだ時間あるんだがな〜)
「あっ!ユウヤさん!」
日本人離れした声のほうに目を向けるとそこには予想通り知り合いのフィンランド人がいた。正確にはハーフなのだが、留学生としてこっちに来てモデルもしてるのだとか、素直で真面目な子だった気がする。あと変なこだわりがあった気が…。
「お久しぶりですね!」
「ソウデスネ」
「…もしかして、覚えてくださってなかったですか?」
むっ、この子さっそく涙目になってる。感受性高すぎないか?…で、えーっと、女の子は泣かせるなって言われるし、…名前を思い出せばいいんだよな。
「そんなことないぞ?久しぶりにあったから懐かしいなと思っただけだ」
「……ほんとですか?」
「ああ、俺は嘘つけないってのはイヴも知ってるだろ?」
「ほんとに覚えてくださってたんですね!嬉しいです!ハグしましょう!」
ふぅー、危なかった。ギリギリのところで思い出せた。まぁフィンランド人のハーフなんてイヴ以外知らないし、そのおかげで間違えることもなかった。
それとハグはやめておきなさい。日本人にはそんな習慣ないんだから。
「うぅ〜、ハグできないなんて残念です…」
「少なくとも女子相手になら大丈夫だから気にするな」
「わかりました!これからは同性の方にします!」
「ああそうしろ。それかイヴの恋人とかだな。いればの話だが…」
「こ、恋人」
……まさかいるのか?誰でもいいけどさ。変なやつじゃなければ。
「恋人できてたのか?」
「い、いませんよ!こ、ここ、恋人だなんて!」
否定するわりには顔がものすごく赤いんだが…。ことの真相は、別に知らなくていいか。知ったところでなんだって話だし。
「それで、イヴは今日撮影かなんかか?」
「ふぇ〜……、こ、こいびと」
「……おい」
「はい!…あれ?私さっきまで何を?」
「それは置いといて、今日はなんか用があったのか?」
「新しいお仕事がもらえたのでそれの打ち合わせです!それでユウヤさんを見かけたので声をかけました!」
新しいお仕事、ね。時期的に話題のアイドルのやつか?そういや大輝がアイドルバンドとしてどうのこうのって言ってたな。
とりあえずイヴもそれに加わるってことなのか。…うまくいけばいいが。
「ま、新しく仕事増えたんならそれも頑張れ」
「はい!ハヤトさんに追いつけるように頑張ります!」
そういやハヤトに憧れてるとか言ってたな。理由は……忘れた。
イヴを見送っていると大輝が帰ってきたので一緒に部屋に戻り水分舗をしてから練習を再開するのだった。…大輝の休憩?床にへばりついてたからそれで十分だろ。
〜〜〜〜〜
「悪いちょっと遅れた」
「いえ、こちらも準備を終えたところですので」
「それに雄弥には協力してもらうのだからそこまでとやかく言うつもりはないわ」
「そりゃどうも」
雄弥に演奏を見てもらい、改善点を教えてもらう。それの繰り返し…なんだけど、しばらくはそれがアタシとあこメインになるんだよね。だから雄弥の意識はアタシとあこ、つまりリズム隊の演奏に傾けられるわけで。
(雄弥に演奏見てもらうなんて久々すぎて緊張するな〜。呆れられたらどうしよ…)
「リサ」
「ふぇ?…なに?」
「固くなりすぎだ。深呼吸して肩の力を抜け。友希那と紗夜に認められてるなら今のリサの実力も問題ないだろ?」
「…すぅ、はぁー。うん、ありがと!」
アタシの技術を疑うことなくストレートに言われたら、アタシも出し切るしかないよね!練習終わりに体力なくなるってことは避けないとだけど…。
雄弥はアタシと同じようにガチガチになってたあこの横に言ってボソボソってあこにだけ何か伝えてた。その瞬間あこは緊張なんか吹き飛ばしてやる気全開になったんだけど…何を言ったんだろ。
「うー、もうクタクタだよ〜」
「久々にやればそうなるだろ」
雄弥の徹底指導のおかげで、だんだんと指摘される部分が無くなっていく…ということはなかった。指摘されたところを直すと次はまた違う部分を言われる。それは練習時間が終わるまで続いた。
(これでも多少はやり切る自信あったんだけどな〜)
「リサ」
「…ごめんね雄弥」
「なぜ謝る?」
「アタシの演奏、雄弥が思ってたほどじゃなかったでしょ?」
あこがいたから今日は昔ほど厳しくは言われなかったってのはあるんだけど、それでも雄弥は少しずつ指摘の仕方が変わっていってた。それは間違いなくアタシのレベルが…低かったからだ。それが嫌で、雄弥の顔を見ることができず、アタシは視線をさげる。
「バカか?」
「え…」
「リサにブランクがあるのは友希那と同じぐらい知ってる。それを踏まえての今日の練習での指導だ」
「うん。それでも後半は指導のやり方が変わったわけだし…」
「リサの
え、アタシのレベルが雄弥の予想を超えてた?そ、そんなはずない。雄弥が相手の実力を見誤るなんてことはないはず!…そうだきっとアタシに気を遣って──
「リサ、雄弥は人に気を遣えるような人間じゃないわ」
「そうです。彼は相手のことを考える人じゃありません」
「友希那さんも紗夜さんもそこまで言わなくてもいいんじゃ…」
「「あこ(宇田川さん)は黙って(ください)」」
「ご、ごめんなさい」
あこには後でフォロー入れとかないとな〜。
(友希那と紗夜の言うとおりだけど、それでもアタシが雄弥の予想を超えてたなんて信じられないわけで)
「信じる信じないはリサの好きにしろ。ただこれだけは覚えといてくれ、リサの実力はリサが思ってるほど低くないってな」
「…雄弥」
「それは私も同意見だわ。リサは自分のことを過小評価しすぎなのよ」
「謙虚さは人の魅力の一つですが、謙虚すぎてはもはや卑屈なだけです。気をつけてください」
「二人とも…」
「あこは難しいことわかんないけど、リサ姉の演奏はチョーカッコイイってのはわかるよ!リサ姉とリズム作る時ノリノリになれるもん!」
「あこ…」
(みんなにそこまで褒められるとなんだか恥ずかしいな〜)
けど、アタシも自信持っていいってことだよね!友希那と紗夜のレベルにはまだ追いつけてないけど、二人に並べるようになれるんだ!
「みんなありがとう♪」
「どういたしまして、リサ姉!」
「私は、リサにこんなところで止まってほしくなかっただけで、別に…」
「今井さん、浮かれすぎないようにしてくださいね」
「はーーい!」
「話ついたところでお前らキーボードのあては見つかったのか?」
「「「「…あ」」」」
キーボード誰かいないかな、そろそろ見つけないとコンテストに間に合わなくなっちゃうし。どうしよ〜。
「助けてりんりーん!」
あこはパニックになってよく話に聞く親友の"りんりん"に電話してるし、その子の知り合いに誰かいないのかな〜。
「そういえば、まだ日にちが決まってないがそう遠くない日程でライブするらしい」
「え、そうなの!?ちなみにチケットはくれたりとか…」
「ある程度は融通されるはずだ」
「やった!日にちが決まったらおしえ「ええーーー!?りんりん弾けるのー!?」へ?」
「見つかったみたいだな」
まじかー、あこの親友が弾けちゃうんだ。捜し物って案外予想外なところで見つかるものだよね〜。
☆9評価くださったアイリPさんありがとうございます!
評価貰えるって嬉しいことですね。モチベーション上がります。