陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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11話

 

「退院おめでとう雄弥」

 

「ありがとう結花」

 

「ところでさ」

 

「うん?」

 

「退院してすぐに事務所来るのはどうかと思うよ?リサに会ってきなよ」

 

 

 退院当日に事務所に行って、自分の部屋を掃除していたら結花が部屋に入ってきた。結花の言い分もわからなくはないが、平日だからリサは学校だ。花咲川なら入れるかもしれないが、羽丘の方は教師陣との繋がりがないから入れない。

 

 

「リサには夜にでも会うつもりだ。ライブまであまり日もないし、遅れを取り戻す必要がある」

 

「それで戻ってきてまずは部屋の掃除か。…一応私が掃除してたんだけど、できてなかった?」

 

「いやできてるよ。おかげでやることはほとんど無い。今やってるのも荷物の整理ぐらいだ」

 

「そっか。それならよかった」

 

「結花も練習か?」

 

「うん。午前中は仕事だったけど、午後からは仕事入ってないし、練習するつもりだよ☆」

 

 

 復帰早々に音合わせができるのか。今回は新曲がないらしいから既存の曲の練習だけでいい。だから音合わせできるのは正直助かる。

 

 

「雄弥って曲作らないよね。作れないわけじゃないのにさ」

 

「まぁな。俺よりも上手いやつがいるんだから、俺がやる必要はないだろ?」

 

「分からなくはないけど、雄弥の曲って人気高いじゃん?曲作りしてもいいと思うんだけどな〜」

 

「あれは自分でもできすぎたと思ってる。もうあれレベルのは作れないぞ」

 

「そうかな〜?…あ!じゃあさ合作しようよ!」

 

「合作?」

 

「うん!私と雄弥の二人で歌詞と曲両方やるの!どう?」

 

「…考えとく」

 

「うん!」

 

 

 結花のやつあんな喜んでるってことは、絶対に受け取り方が違うだろ。作るかどうかを考えとくって意味で言ったのに、曲を考えとくって意味で受け取られた。…考えないといけないのか。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 ふっふーん☆こういう風に受け取っちゃえば雄弥も考えてくれるはず。友希那から雄弥のこと教えてもらっといてよかった〜。

 さてさて、どういう曲にしようっかな〜。せっかく雄弥と二人で作るわけだし、二人だから作れる曲にしたいよね!私たちだからこそ作れる、私たちだけの曲。考えるだけでもワクワクしてきた!

 

 

「結花練習しに行くぞ」

 

「あ、うん!」

 

(とりあえず新曲は次のライブではできないし、ひとまずは頭の片隅においとこっと)

 

「セットリストって聞いてるか?」

 

「まだだよ。半分くらいは決まってるけど、調整が難しいってさ〜。雄弥が退院してることも伏せとくらしいから、そこも演出として最大限利用できるライブにしたいんだって」

 

「また凝ったこと考えるんだな…。そうなると…」

 

「お?珍しく雄弥から提案?」

 

「…全員が集まった時に言う」

 

「ええー!気になる気になる!おーしーえーてーよー!今日は全員揃うわけじゃないじゃん!」

 

「いいだろ別に」

 

「気になるからだめ!教えて!」

 

 

 私が小学生みたいなダダをこねると、雄弥が面倒くさそうにし始めた。雄弥って最近ほんとわかりやすくなった気がする。慣れてきたのもあるけど、それだけじゃないはず。雄弥自身に感情が芽生えてるんだ。

 

 

「練習するぞ」

 

「えぇ!?結局教えてくれなの!?」

 

「だから全員揃ったときだって。明日には揃うはずだろ」

 

「我慢しないといけないの?」

 

「これくらいは我慢しろ」

 

「…はぁ。わかったよ。雄弥の頑固」

 

「はいはい」

 

 

 これじゃあ本当に私が子供みたいじゃん。自分でも思ってたけど。ま、いっか。明日になったらわかることなんだし、練習に集中しようっと。次のライブは大切なライブ。私がやっと本当の意味でAugenblickになれるライブで、みんなに感謝を込めるライブ。

 

 

「……そういえばさ、罰ゲームあるんだよね?」

 

「当たり前だろ。そう言ったからな」

 

「何やらされるかって…」

 

「教えないに決まってるだろ」

 

「だよね〜…あはははは、はぁ」

 

「別に他の奴らがやってる時ほどのハードルじゃないからそこは安心しろ。ある意味結花にしかできないようなやつを考えてる」

 

「それはそれで安心できないんだけど!?」

 

 

 なにその私しかできないやつって!それって結局ハードル高いやつだよね!?雄弥って絶対にできないようなやつはやらせないけど、結構キツイの考えてくるからな〜。私の初ライブの時のなんて優しいレベルだったし。

 どんな罰ゲームになるのか気になる思いを吹き飛ばすように練習に打ち込んだ。久々に聞く雄弥のベースの音は安心感を覚える。他のメンバーのベースとは違う、雄弥だけが出せる音。本当に遅れがあるのかってぐらい雄弥の演奏は精度が高かった。

 

 

「ふぅ、ちょっと休憩しよ?」

 

「……そうだな」

 

「そういやさ、雄弥とリサってあの時にお互いの気持ち伝えたわけじゃん?」

 

「いきなりだな…。まぁそうだがそれがどうした?」

 

「彼氏彼女になったわけだよね?」

 

「………そうだな?」

 

「うん?……もしかして雄弥リサを彼女って思ってない?」

 

「それはない。リサは彼女だ…」

 

「ダメだね〜。そんなんじゃダメダメだよ。リサに彼女になってくれって言ってないの?」

 

「言ってない」

 

「やっぱりね。雄弥ってこういうのちゃんと言葉にしないとはっきり認識できないでしょ?今はなぁなぁになってるだけ。私はそれよくないと思うね」

 

「そうなのか?リサと離れる気はサラサラないぞ?」

 

「でも認識薄いじゃん?リサを彼女だって断言できなかったし」

 

「むっ…そうだな」

 

「まったくもう。そんなわけで、雄弥は今すぐに羽丘に行ってくること。行ってきてリサと放課後デートすること!その時にちゃんとリサに彼女になってくださいって言うこと!いいね?」

 

「リサはRoseliaの練習が「私から友希那に言っとくから!」…だが「いいから行きなさい!じゃないとリサが泣くことになるよ!」わかったすぐに行く」

 

(なんでそんなベッタリなのに彼女って言い切れないのよ)

 

 

 まったく、なんて世話の焼ける子なんだか…。あれ?私って雄弥の妹ってことになるのかな?それともお姉ちゃん?…うーん、友希那に決めてもーらおっと☆

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 HRが終わって正門に行くと人だかりができてた。アタシ達Roseliaはいっつも練習の時は集合していくから、正直この人だかりには困った。すごい盛り上がってるから誰か有名人でも学校の前通って生徒に囲まれたのかなって思って覗いてみたらズッコケた。

 だってそこにいたのは、有名人と言えば有名人なんだけど、アタシの想い人で入院してるはずの雄弥がいたんだから。

 

 

「ちょっ、なんで雄弥がここにいるの!?」

 

「おっリサ、来たか。リサに用があったから来たんだが、大変なことになった」

 

「ツッコミどころが多すぎるんだけど…」

 

「リサってば湊くんと仲いいんだねー。もしかしてリサたち付き合ってるの?」

 

「へっ?それは…そのぉ」

 

「いや別に」

 

「「えっ?」」

 

 

 え?どうゆうこと?今までアタシが思い違いしてたってこと?雄弥はずっと言ってくれてたじゃん。あれはなんだったの?遊びだったっていうの?全部演技で本当は紗夜か日菜と…。

 アタシの頭でグルグル思考がおかしくなっていく。周りの声が聞こえなくなって、アタシの視界も暗くなりそうになったところで、アタシの手が引っ張られてることに気づいた。いつの間にかあの人だかりから出てて、正門からもどんどん離れていってる。

 

 

「雄弥?」

 

「今からデートするぞ。約束してただろ?俺が全部考えてデートするって」

 

「……いい」

 

「リサ?」

 

「そんなのいい!どうせアタシで遊ぶだけでしょ!?」

 

「何言って」

 

「だってそうでしょ!?さっきアタシとの関係否定してたじゃん!なんなの!?入院してる時はアタシのこと気遣ってずっと合わせてくれてただけなの!?」

 

「違う」

 

「嘘つかないでよ!もうアタシの心を弄ばないで!」

 

「リサ!」

 

「っ!!」

 

 

 バンド練に行こうと思って雄弥の手を振りほどこうとしたら逆に強く抱きしめられた。逃れようとしても力で抑えられて、叩こうと思ったけど腕ごと包まれてるから叩けない。いっそ大声を出そうかと思ったけどそれより先に雄弥が口を開いた。

 

 

「言い方が悪かった。ごめん。リサとの関係を遊びだなんて思ってない。本気だ」

 

「嘘だよ。だってさっき」

 

「嘘じゃない。結花に言われて気づいたんだ。俺はリサに気持ちを伝えただけだって」

 

「……どうゆうこと?アタシはそれだけでも十分伝わってたつもりだったんだよ?」

 

「リサはそうなんだろうけどな。…俺って馬鹿だからちゃんと言葉にしないと駄目だろ?」

 

「雄弥?何が言いたいの?」

 

「リサ、俺の彼女になってくれ」

 

(……そういうことか〜。あーなるほどね…。雄弥はたしかにしっかり言葉で言わないとわからない人だもんね!)

 

「…リサ?」

 

 

 アタシが俯いて表情を見せてなくて、無言でいるから雄弥が不安そうに名前を呼んだ。アタシは自分が早とちりしてたことと、雄弥が可愛らしいギャップを見せてきてることで口元が緩くなってた。きっと今すっごいニヤけてるんだろうね。こんなの見せられないや。だから──

 

 

「えいっ!」

 

「っ!?」

 

 

 ニヤケ顔を隠すために雄弥の唇を奪った。雄弥がびっくりしてたけど、それでもアタシのことを離さなかった。本当にもう、びっくりするようになったくせに冷静さは残すんだから。本当にあわてふためくとこ見てみたいよ。

 

 

「…ぷはっ。雄弥、アタシは喜んで雄弥の彼女になるよ♪アタシのこといっぱい幸せにしてね?」

 

「リサ…ありがとう。約束だ。絶対にリサのことを幸せにする」

 

「うん♪それで?今日はどこに連れてってくれるの?…って言いたいとこだけど、今日は練習があるんだよね〜」

 

「知ってる」

 

「だよね。アタシが教えたんだし、退院のことは聞いてなかったけど?」

 

 

 アタシがジト目でそのことを責めたら、雄弥は「言ってないからな」ってあっけからんと返してきた。教えてくれたっていいじゃん!教えてくれたら昨日のうちに食材を買って目一杯ご馳走を作ってあげたのに。

 

 

「あれ?友希那からだ」

 

「友希那からはなんて?」

 

「『雄弥とのデート楽しんできなさい。今日の分は後日二倍の練習で補うこと』だってさ。友希那には退院のこと言ってたの?」

 

「言ってないぞ。退院のこと知ってるのは、その時に来てた彩と日菜と両親だけだ。結花には事務所で会ったから、結花から友希那に連絡が言ったんだろ」

 

「ふーん?なんで伏せてたの?」

 

「ライブの演出のため。あんま情報が出回らないようにしてるんだよ」

 

「なるほどね〜、ってさっき思いっきり囲まれてたじゃん!」

 

「内緒にしてくれって言ったらみんな内緒にしてくれるって言ってたぞ?」

 

「…ちゃんと内緒にできるのかなー」

 

「そこは信じるしかないな」

 

 

 軽いなー。大事なライブの演出の効果が左右されるようなことなのに、すっごく軽い。ライブか〜、またチケット貰えたらいいけど…。

 

 

「チケットならまたあげるからな」

 

「心読んだの?」

 

「読んでない。…あーそうだ。病院で知り合った子供たちとその家族も呼ぶから大所帯になる。そうなると前までみたいに特別席用意できないから、その辺のことは燐子に言っといてくれ。なるべく配慮してもらうつもりではいるがな」

 

「うん、わかった。大所帯っていっても子供たちがいるなら燐子もそんなに困らないはずだから、安心して♪」

 

「そうであることを願う。今日の練習分は俺も付き合うぞ」

 

「え?いいよいいよ。雄弥はライブがあるわけだし、そっちの練習で忙しいでしょ?ただでさえ退院明けで遅れを取り戻さないといけないのに」

 

「それぐらいどうとでもできる。…俺がリサとベースを弾きたいんだ。駄目か?」

 

 

 ほんっとうに雄弥ってズルいよね。アタシがそうやって聞かれたら断るわけないじゃん!ただでさえこれから雄弥といられる時間が減っていくっていうのに、雄弥からの誘いをアタシが断るわけないよ。…さっきのデート断ろうとしたのはノーカンだからね!

 

 

「しょうがないな〜。雄弥がそう言うならアタシの練習に付き合ってもらおっかな。もちろん二人っきりでね♪」

 

「しょうがないって言いながら、だいぶ顔ニヤけてるぞ」

 

「えっ、いやいやそんなことないよ」

 

「ある」

 

「ない」

 

「ある」

 

「ない!」

 

「はぁ、わかった。それで今度俺がRoseliaの練習に顔を出せば「二人っきりでね♪」……わかった」

 

「よし!それじゃあ今からはデート楽しまないとね♪」

 

「上機嫌だな」

 

「もっちろん!正式にカップルになったんだから!」

 

「そうだな」

 

「エスコートよろしくね♪」

 

 

 アタシの腕を雄弥の腕に絡ませながら手は恋人繋ぎにする。自然と雄弥との距離が縮むことになる。アタシは今間違いなく幸せな女の子だ。

 

 




二人フッておきながら彼女の認識が薄いだねんてなんて野郎だ!
リサとの関係の変化を僕の言い方で表しますと、
"無自覚夫婦"→"自覚してベッタリなカップル"です。
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