陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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13話

 

 早朝、いつもよりもさらに早い時間に設定した目覚まし時計に起こされた。できるだけ早い時間の飛行機に乗るためだ。荷物は既に纏めてあるため、着替えて軽く飲食を済ませたら出発するだけになる。

 だが、困ったことに予定がさっそく狂いかけている。リサの力が強い(・・・・・・・)。昨日の祭りの後に一旦家に帰って着替えを済ませた俺は、今井家で一夜を過ごすことになった。リサと話したいことは尽きることがない。俺もリサもずっと話していたいと思っていた。だが眠気に勝てなかったリサが先に寝始めて、俺はリサに布団をかけてあげてから寝た。

 そして起きたらリサに抱きしめられていた。しかもガッチリと、本当に寝てるのか疑わしいぐらいの力で。

 

 

「リサ起きてるのか?」

 

「……」

 

「起きてるな」

 

「……」

 

 

 人は寝てる時と起きてる時で呼吸のリズムが変わるらしい。そしてそれを知ってる俺はリサが狸寝入りしているのがわかった。さすがに飛行機の時間に遅れるのは洒落にならない。

 

 リサの耳元で囁くように

 

 

「リサ、愛してる」

 

 

 本心を伝えた。

 

 少し反応したが、それでもまだ誤魔化そうとするリサに次の手を打った。今までやったことがないし、リサも俺がこんなことするなんて思ってないはずだから狸寝入りもやめてくれるだろう。

 

 俺はリサの柔らかい唇に自分の唇を押し当てた。ここまでは何度もしてきたことだ。だから、軽く舌を入れた(・・・・・・・)

 

 

「〜〜〜っ!!??」

 

「やっと離してくれたか」

 

「な、ななな、なぁっ!?何したの!?」

 

「リサの口に舌を入れた」

 

「なんで!?」

 

「リサが放してくれないと飛行機に遅れるからな」

 

「……そうだよね。ごめん」

 

「まぁ、すぐに出ないといけないわけじゃないんだがな」

 

 

 間違いなく結花はまだ寝てるだろうしな。きっともうじき友希那が結花を起こすのだろう。何時に家を出るかは伝えてあるから、友希那も見送りのために起きるはずだ。

 

 

「着替えて、ご飯食べたらすぐに行っちゃうの?」

 

「集合時間ギリギリに行こうと思えばそれなりに話す時間はあるぞ」

 

「……どうしよ。空港までは行けないんだよね?」

 

「週刊誌の人に知られたら面倒だからな」

 

「だよね。…ギリギリはさすがにダメだから、10分だけゆっくりしていって」

 

「リサがそれでいいなら」

 

「10分でいーーっぱい甘えるからね♪」

 

 

 10分、まぁでも着替えとかを早く済ませたら多少は時間増やせるか。俺は空いてる部屋に移動して着替えを済ませ、リサと二人で朝食を作った。二人で作り、会話をしながら食事を取り、二人で食器を洗う。可能な限りの時短をして、ソファに座った。

 いつもなら横に並んで座るのだが、今日はリサが膝の上に座ってきたので、俺は後ろからリサを抱き締めた。リサの肩越しに顔を出してリサの頬に口づけする。すると今度はリサに同じように頬に口づけされ、微笑み合ってからソファの背もたれに体を預けた。

 

 

「雄弥、何個か約束しよ?」

 

「…浮気はしないぞ?」

 

「もちろんそれは守ってね。絶対に帰ってきてね」

 

「当然帰ってくる」

 

「うん。みんなで楽しんできてね」

 

「あいつらと一緒ならどこでも楽しめるだろうな」

 

「そうだね。最後に、無理しないでね。体を壊さないで」

 

「ああ。気をつける」

 

「約束破らないでね」

 

「必ず守る」

 

「うん♪」

 

 

 腕の中に収まっているリサを抱き締める力を強めると、リサも俺の手に自分の手を添えてくれた。リサの髪に顔をうずめてリサの存在を自分の内側に刻み込んでいく。リサはくすぐったそうにするが、それでも拒まずにいてくれた。

 

 

「…雄弥も甘えん坊だね」

 

「みたいだな。…しばらくリサに会えなくなるのが寂しいよ」

 

「…っ、アタシもだよ。だからさ、帰ってきたらいっぱい遊ぼうね。たくさんたくさん一緒にいようね」

 

「ああ。リサを連れて行ってない俺のお気に入りの場所がまだまだあるからな」

 

「そうみたいだね。彩はいっぱい連れて行ったらしいじゃん?」

 

「…聞いたのか。…中学時代にな。けど、今年見つけた所とかは連れて行ってないから、そこに行こうか」

 

「うん!」

 

 

 ただただリサと一緒に過ごしていた。特に何かしたわけでもないが、時間がすぐに来てしまった。名残惜しいがリサにどいてもらって、荷物を纏めて出た。ちょうど結花も家を出てきていたようで、家の前で合流した。

 

 

「それじゃあ行こっか☆」

 

「そうだな」

 

「気をつけて行きなさい。結花は周りに迷惑をかけちゃだめよ」

 

「わかってるってばー。子供扱いしないでよね〜」

 

「あはは、友希那は結花のことが心配なんだよ」

 

「あ、そういうことね!ありがとう、お姉ちゃん♪」

 

「なっ!…わ、私は別に」

 

「素直じゃないね〜」

 

「私のことはいいのよ。リサは雄弥に言うことないのかしら?」

 

「家でいっぱい話したからね〜。まだまだ話したいけど、ここはコレしかないかな」

 

 

 そう言って近づいてくるリサの意図を汲み取って俺もリサに近づく。リサの腰に手を回して引き寄せ、リサは俺の肩に手を添える。そのままお互いに顔を近づけて口を重ねた。結花が後ろで何か言っているが、俺の耳にもリサの耳にもそれは入ってこなかった。

 どれだけそうしていたのかわからない。だが、離れるタイミングも同じだった。俺と結花はリサの陽だまりのような笑顔と友希那の苦笑に見送られながら集合場所へと向かった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「暇だ!」

 

「飛行機の中はそうなるだろうな」

 

「体を動かしたいなー」

 

「諦めろ疾斗。エコノミー症候群にならないようにたまに立ち歩くしかない」

 

「くそ!俺も大輝と愁みたいにアイマスクを持ってきていれば!」

 

「お前のミスだな。それと騒ぐな」

 

「そうだよ疾斗騒がないでよ。こっちは楽しく外見てるのにさー」

 

 

 結花が窓側で俺が真ん中で疾斗が通路側に座っている。俺たちの前の席に愁と大輝が座っていて、『暇な飛行機を爆睡で乗り切る』とか言って徹夜していたらしく現在爆睡中だ。

 

 

「俺も寝れたらいいんだがなー」

 

「よし眠らせてやるよ」

 

「…優し目でお願いします」

 

「優しくしたらお前の意識を刈り取れないだろ」

 

「疾斗おやすみー」

 

「まじっすか。がっ。………」

 

「よし、一発でいけたな」

 

「はぁ。うまいこといったけど、周りの人ドン引きしてるからね?」

 

「知らん」

 

 

 俺が周りの目を気にするわけがないだろ。さて、暇なのは俺も同じなわけだし、結花と外でも眺めとくか。

 

 

「…雄弥って飛行機乗ったことあるの?」

 

「まぁな。仕事で北海道に行ったときとかな。……あとは昔にな」

 

「…そっか。私は飛行機も初めてだよ」

 

「初めての飛行機の感想は?」

 

「最っ高だよ☆雲の上にいるんだよ?テンション上がるしかないよ!」

 

「純粋だな」

 

「そうかな?雲の上ってのも楽しいし、たまに海が見えたり、島とか陸が見えたりするのも楽しいじゃん?」

 

「…やっぱり結花は純粋だな」

 

「褒め言葉として受け取るね☆」

 

 

 結花は会話してる間も目を輝かせて外を眺めていた。この喜びようを見るだけでも海外ライブを企画してよかったと思える。まぁ、もっと楽しんでもらうがな。

 結花は食事の時以外のほとんどの時間を外を眺めていた。そんな結花に俺も付き合って外を眺め、結花と会話を繰り広げるのだった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「ドイツに到着ー!凄いね!ドイツだよドイツ!」

 

「まだ空港の中なのに、よくそんなはしゃげるな」  

 

「えー、テンション上がるでしょ!」

 

「わかったから少し落ち着け」

 

「ははっ!結花のお守りは大変だな雄弥」

 

「大輝、そう思うなら少しは手を貸せ」

 

「周りへの警戒で手一杯だ」

 

「先導は僕がするし、後ろに疾斗がいてくれるからね。雄弥は僕らのお姫様の側にいてね」

 

「警戒しすぎだろ…」

 

 

 日本より治安が悪いとはいえ、それはあくまで比較的に、というだけのことだろ。そりゃあ軽犯罪は多いかもしれないが、ここまで警戒する必要はないはずだ。

 

 

「あれ?あそこの人たちこっちに来るよ?」

 

「んー?誰だろうな。この中に知り合いでもいるのか?」

 

「……僕に用があるみたいだね」

 

「なるほど。そういうことか、ならこっちはアイツラを足として使えばいいのか」

 

「雄弥お前人使い荒すぎだろ。愁以外初対面なんだから大人しく愁に任せるべきじゃないか?」

 

「大輝の言う通りにしてほしい。ややこしくなるとライブどころじゃなくなるからね」

 

 

 …少なくともあの人達はこちらに友好的だな。となると、愁の親が面倒なのか。…ライブに影響が出るなら極力大人しくするしかないか。

 

 

「お待ちしておりましたおぼっちゃま。お車を用意してありますので一度本邸まで」

 

「嫌だと言ったら?」

 

「旦那様の干渉がございます。一度来ていただければ旦那様も何もしないと仰せです」

 

「はぁ。跡継ぎの話なら僕より適任なのがいるのにね」

 

「ご冗談を」

 

「実際、ジークの方が今の家のやり方に向いてるでしょ」

 

「旦那様は変化をもたらす人材を求めています。それを達成するのは、わずか7歳で本国を飛び出し偽装工作まで行い我々にも所在を隠しきっているあなたしかいません」

 

「え、愁ってそんなことしてたの?」

 

「あはは、まぁね。…家にうんざりしてるからさ」

 

結花、これから俺の側を離れるな

 

「え?…う、うん。雄弥がそう言うなら」

 

 

 愁の家のことなんてどうでもいい。問題はライブを滞りなく行えるかどうかだ。初回からトラブルなんて起きたらこの後の予定が全部狂ってしまう。…そして愁の家は簡単に他を黙らせるぐらいに力がある。一切隙を見せるわけにはいかない。

 

 

「…まぁとりあえず本邸に行こうか。家の話も今回は無しにしてもらわないとね。ライブに影響が出るんだったら本気で家を潰さないといけないし(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「俺は手を貸してやるぞ」

 

「ありがとう疾斗。けどそうならないための話し合いをしてくるよ」

 

「じゃ、待ってる間は俺たち観光してるから」

 

「……え?愁を置いてくの?」

 

「こいつの家に興味ないからな。あとで連絡を取ればいいだろ」

 

「ははっ、うん。それでいいよ」

 

 

 さてと、観光でも始めますか。大輝がどこか行きたい場所があるとか言ってたし、そこから行くとするか。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 ほ、本当に愁を放ったらかしにしちゃった。雄弥はさっき言ったとおり興味ないんだろうね。疾斗も楽観的なとこあるから雄弥の意見に賛同したし、けどまさか大輝まで賛同するとは思ってなかった。だって大輝ってめちゃくちゃ仲間意識強いもん。

 

 

「これが本場のフランクフルトか!」

 

「こいつ地名叫んでやがるぞ」

 

「言ってやるな。馬鹿なんだよ」

 

「馬鹿はお前らだ!誰が地名叫ぶってんだよ!食いもんの方に決まってんだろ!?俺今手に持ってるだろ!?」

 

「そういやドイツって飲酒の年齢が日本より低いんだっけな」

 

「ドイツってかほとんどの国はそうだぞ」

 

「え、スルーですか!?」

 

「ドイツって私たちの年齢でもビール飲めるんだっけ?」

 

「飲めるけど飲まさねぇからな?」

 

 

 雄弥のケチ。いいじゃん、ドイツだとOKなんだからお酒飲んだって。今日はライブあるわけじゃないし。

 

 

「私ビール飲んでみたい!」

 

「ダメだって言ってるだろ」

 

「けどどうせ雄弥たちは飲む気でしょ?」

 

「水より安いからな」

 

「じゃあいいじゃん!」

 

「結花が酔ったらめんどそうなんだよな」

 

「介抱は雄弥がしろよー。家族なんだし」

 

「俺たちにはちょっと無理だわー」

 

「おい」

 

 

 やったー!3対1ってことであたしもお酒飲めるね!えっと、たしかドイツはビールとワインなら私でも飲めるんだよね。

 

 

「ほらご飯食べに行こ!早く早く!」

 

「ほんと子供だよな」

 

「むぅー、私のほうがお姉ちゃんだよ!」

 

「はいはい。それじゃあ行くか」

 

「うん!それでね雄弥」

 

「…はぁー。俺がビール頼んで、結花がワイン頼めばいい。それでどっちも味見しろ」

 

「さっすが雄弥☆」

 

「ひっつくな」

 

「えへへー♪」

 

 

 大輝が行きたがってたところに行って、私が興味持ったところに次々行ってからご飯を食べた。愁が合流したのはホテルに着いてからだった。どんな話し合いしたのか分からないけど、少しスッキリした顔してた。ライブも無事にできるみたい。よかった〜。

 私は雄弥の予想通り飲み始めたらめんどくさくなるらしい。限度が分からなかった私は、止められても無視して飲み続けて雄弥に背負われながらホテルに入った。雄弥がそのまま私と同じ部屋になって、ずっと介抱してくれてたみたい。

 朝起きて気づいたけど、泊まってた部屋がVIPルームだった。…ここにも愁の家の影響が出てたみたい。




海外編はすぐに終わります。だってヨーロッパなんて行ったことないし!
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