陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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今日でやっとテスト期間が終わるー!やっと夏休みじゃー!


9話

『湊くんにお願いがあるのだけれど』

 

「他を当たってください」

 

『まだ何も言ってないじゃない』

 

「あなたからの電話の時点である程度察せるんですよ。理事長(・・・)

 

『なら話は早いわね!』

 

「ですから断ってるじゃないですか…」

 

『けどやることないのでしょ?』

 

 

 妙な所をついてくるな。別段そこを指摘されてもなんとも思わないのだが、それをわかっているはずなのに言ってくるということは何かあるのか?

 

 

「…共学化…というわけでもないですよね?生徒数は変動してないはずですし、むしろ人気がある学校のはずです」

 

『そうだよ〜。けどまぁ共学化は全国規模で起きてる波だからね。女子校はそこまで多くないからまだ影響が少ないけど、名門の男子高は次から次へと共学化してる』

 

「それで、いずれは共学化するから今のうちにデータ集めですか?」

 

『そんなとこ。まぁこれから卒業までってわけじゃないよ?それに君の場合人気がありすぎて参考にならないからね!』

 

「ぶっちゃけましたね。つまりは学校に刺激を与えたいだけでしょ」

 

『正解。前は授業崩壊しちゃったみたいだけど、今度はそうしないでね?』

 

「望んでやったわけじゃないんですけどね…」

 

 

 むしろ巻き込まれた側だぞ。前に訪れた時なんて授業らしい授業を受けてない。こんな自由だったか?と頭を捻ったものだし、紗夜が頭を抱えてため息をついてたぐらいだ。

 

 

『そんなわけで、今日は学校(花咲川)に来てねー』

 

「行くなんて一言も…切れた。…はぁ」

 

 

 最近俺の周りの人たち強引すぎないか?気を使わせてるのだろうか…あ、理事長はあれが素だったな。…なんだろうな。また授業崩壊する気がする。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「むむっ!これは!」

「あなたも感じたのね!」

 

「え?みんないきなりどうしたの?」

 

「彩ちゃん、あなたはそれでも乙女なの!?」

 

「え?え?」

 

「この気配を感じられないだなんて…」

「女の勘をもっと鍛えないと」

「乙女を名乗れないよ?」

 

「そ、そんなことないよ!…え?ないよね?…」

 

 

 クラスのみんながため息をつくんだけど、私そんなおかしいのかな?…お仕事頑張り過ぎたらそういうのが遅れるって聞いたことあるし、アイドルだから当然なんだけど…。それでも乙女を捨てた覚えはないんだけどな…。

 

 

「丸山さん気にしないで。周りがおかしいだけよ」

 

「私も…わからないので…同じです」

 

「紗夜ちゃん、燐子ちゃん…よかったー」

 

「本当に三人ともわからないの!?」

「男逃がしちゃうよ!?」

「もっと敏感にもっと鋭くならなきゃ!」

 

「…あなた方の反応から推測することはできますよ?雄弥くんが学校に来てるのでしょう?」

 

「そうなの?」

 

「丸山さん…前の時は…最初…いなかったですから…仕方ないです」

 

 

 前の時……あ、お昼休みに屋上で会った時だね。たしか花音ちゃんを学校まで送ってそのまま雄弥くんも授業に参加したんだよね。

 

 

「今日湊くんが来てる!」

「つまり今日はパラダイスよ!」

「あぁ神様!ありがとうございます!」

 

「…皆さん授業中ですよ?」

 

 

 先生の緩やかなツッコミでクラスは授業に集中し直した。切り替えの速さに驚いたけど、きっと雄弥くんがクラスに来たらさっきのがさらにエスカレートするんだろうなってなんとなく察した。

 

 

『きゃあああーー♡』

 

「え?なに?」

 

「この悲鳴は…なんてことなの!?」

「まさかA組の方に!?」

「ジーザス!」

 

「皆さんこれで今回は授業ができますね」

 

「先生それは甘いかと」

 

「なぜですか?氷川さん」

 

「彼女たちの思考はまともではないので」

 

「今回も…授業が…崩壊します」

 

「何を言って…」

 

 

 先生が呆れていると委員長が立ち上がって先生から教卓を奪いを取った。それにあわせてクラスの子たちはその場に立ち上がって、みんな真剣な顔になった。…なんか嫌な予感がするんだけど。

 

 

「皆のもの!この結果に満足か!?」

 

『『否!』』

 

「湊くんはA組の一員か!?」

 

『『否!』』

 

「彼は我らB組の一員ではないか!?」

 

『『そうだ!』』

 

「いえ、それも違いますからね」

 

「これより我らB組はA組に勝負を仕掛ける!これは断じて傲慢な行いではない!奪還作戦だ!」

 

『『ウォーー!!』』

 

「はぁー」

 

 

 えー、なんか学園祭の時以上に熱くなってないかな?私と先生がポカーンってしてる間に紗夜ちゃんと燐子ちゃん以外のクラスメイトが教室から出ていった。怒号が飛び交ってるように聞こえるんだけど、喧嘩にはならないよね?…ね?

 

 

『授業中に失礼します。理事長でございまーす。…どうやら2年生が騒がしいようなので、緊急企画です!球技大会を行います!』

 

「球技大会?」

 

「また理事長は…」

 

「先生たちも…大変…ですね」

 

『サッカー、ソフトボール、バスケットボール、バレーボール。この4種目から選んでください。クラスで1種目にして優勝を狙うもよし、4種目全てに分散するもよし、そこもクラスの作戦としなさい!優勝数が多いクラスは総合優勝となりますが、一つずつの場合ドッジボールで総合優勝を決めます!その後最優秀選手に選ばれた人は、豪華な商品があるわよ!では、参加するクラスは次の授業でグラウンドに集合すること!』

 

「…また授業崩壊ですね」

 

「理事長が率先してどうするんですか…」

 

「あ、あはは…これ、私達も出ることになるんだよね…」

 

「そう…ですね」

 

 

 うぅー、ただでさえ芸能活動で授業についていけるのがやっとだったり、ついていけなかったりするのに…。また千聖ちゃんに怒られちゃうよぉ。…雄弥くんに責任をもって教えてもらお。うん、そうしよ。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「皆のもの!この戦いは負けられないものとなった!A組との勝負だが、優勝した方あるいはより勝ち進んだ方がこの戦いの勝者となる!A組に勝てば我々はまた湊くんと授業を受けられる!」

 

『『ウォーーー!』』

 

「…球技大会が終わってる頃には全部の授業が終わってるんじゃ…」

 

「しっ。丸山さん、それは言わないでおきましょう。さらにややこしくなるわ」

 

「そ、そうだね」

 

「…気づかないん…ですね」

 

「相変わらずだよな」

 

「私はこんなの初めて見るよ…って、え!?ゆモガっ」

 

「静かにしてください丸山さん。暴動になりますよ」

 

「ほがほげっ?(そこまで?)」

 

 

 というか紗夜ちゃん手を離してくれないかな?息苦しくなってきたんだけど!燐子ちゃんが気づいてくれたみたいで、紗夜ちゃんに言ってくれた。私は深呼吸して息を整えた。

 

 

「す、すみません丸山さん」

 

「ううん。いいよ」

 

「それで…なぜ雄弥さんが…ここに?」

 

「様子を見に来ただけだ。俺は適当に見て回るだけになるらしいからな」

 

「そっか。…そうだよね。さすがに雄弥くんは参加できないもんね」

 

「パワーバランスが崩れるものね」

 

「紗夜は俺をなんだと思ってんだ…」

 

「え?…自覚…ないんですか?」

 

「…意外と刺さるな」

 

 

 大人しい燐子ちゃんに言われたからか、思いのほか雄弥くんにダメージが入ってた。私達のクラスの作戦会議が終わる頃には雄弥くんも理事長のとこに避難してた。理事長室は居心地がいいらしいよ。

 

 

「それでは私達のクラスは波状作戦で決定よ!」

「急いでメンバーを決めなきゃ!時間がないよ!」

「けど仲間外れを作っちゃだめよ!クラスなんだから!」

「ひとまずは希望制にしましょ!」

 

「紗夜ちゃんと燐子ちゃんはどうする?」

 

「私はどれでもかまわないのだけど」

 

「私は…運動が…苦手なので…」

 

「うーん…それじゃあサッカーにする?サッカーって11人だからみんな助けてくれるだろうし」

 

「たしかに…それがいいかもしれないわね」

 

「サッカーで…お願い…します」

 

「うん!言ってくるね!」

 

 

 このクラスってこういうの本気になるのに、希望はちゃんと通るからいいよね。私達三人はサッカーにするって言ったら「おっけー」ってすぐに許可くれたもん。希望を通した上で優勝を狙う、か。みんないい人だよ。

 

 参加クラスはまさかの全学年の全クラス。体育の授業がないクラスもあるはずなのに、何故か全員体操服になってる。…なんで?

 理事長の話を聞いたら球技大会が始まるんだけど、うちの理事長ってこういうのザックリするからすぐに始まるはず。みんなもそれがわかってるからウズウズしてるんだけど…、理事長の発言で一気に空気が変わった。

 

 

「皆さん!早くやりたくて仕方ないでしょう。わかります!やる気があるのは素晴らしいことですが、相手に怪我をさせないこと!故意に怪我をさせたと教師陣が判断したらその時点でそのクラスは失格です!注意事項はこんなのでいいとして、豪華な商品というその内容を発表しましょう!それは──

 

 

──湊雄弥くんとの1日デートです!」

 

 

『きゃああーー!♡』

 

「…雄弥くん、大丈夫なのかな?」

 

「大丈夫じゃないでしょう」

 

「今井さんに…知られたら…」

 

 

 どうやら雄弥くんも聞かされてなかったようで、テントの下で頭を抱えてた。さすがの雄弥くんも本気で焦ってるみたい。あのリサちゃんがそんなの許すわけないもんね。

 

 

「こうなったら事情を知ってる私達の誰かが選べれるようにしなきゃ!」

 

「そうですね。なんとしても阻止しましょう」

 

「他の…バンドの方にも…協力して、もらいましょう」

 

「香澄ちゃん達には私からお願いしに行くね!」

 

「では私と白金さんは、松原さん達にお願いしに行くわ」

 

 

 開会式とも言えない開会式が終わったらすぐに私は香澄ちゃん達のクラスに行った。事情を話したら沙綾ちゃんがすぐに協力を受け入れてくれて、そのまま香澄ちゃん達を説得してくれた。はぐみちゃんがこころちゃんや美咲ちゃんにも話をしてくれて、協力者が増えた。…はぐみちゃんもだけど、こころちゃんって身体能力高いから強力な助っ人だよね。

 

 

「はぁはぁ、みんな協力してくれるって!」

 

「丸山さんお疲れ様です」

 

「松原さんたちも…協力してくれる…みたいです」

 

「よかった〜」

 

「味方が増えたのはいいことだけど、他人任せにはできないわ」

 

「私達も…頑張りましょう」

 

「うん!」

 

 

 私達が出場するサッカーの順番が来た。相手は3年生だけど、3年生は受験で忙しいから体が鈍ってる人が多いはず!

 

 そんな甘い考えをした私は馬鹿だった。試合にはなんとか勝てたけど、凄い苦戦した。元々運動は苦手だけど、パスパレの練習でそれなりに動けるようになってる。だけど、3年生たちの執念的なのが凄かった。恐ろしいぐらいだよ!

 サッカーの試合に優勝したのは私達のクラスで、ソフトボールは香澄ちゃん達のクラス、バレーは千聖ちゃん達のクラスで、バスケットはこころちゃん達のクラスだった。あとはドッジボールで決まるんだけど、最大の難点は最優秀選手にならないといけないこと。

 

 

「彩ちゃん、手を抜くことはできないわ。…この空気だし」

 

「千聖ちゃん…。うん、全力でやろ!そうしないと最優秀選手に選ばれないもんね!」

 

「ふふっ、そうね」

 

「千聖ちゃん、私どう動いてたらいい?」

 

「花音は何も考えなくていいわよ。いつも通りにしてたらいいわ」

 

「…なんか複雑だけど、わかった」

 

「彩ちゃんは頑張りすぎないようにね。空回りするわよ」

 

「うっ、わかってるけど言われるとくるものがあるよ!」

 

 

 千聖ちゃんとのクラスの勝負には勝つことができたけど、千聖ちゃんの予言通り私は空回りした。もうね、周りの温かい視線が逆に辛かったよ。優勝は結局こころちゃんのクラスで、美咲ちゃんのサポートがあったとはいえ全員をなぎ倒したこころちゃんは凄かった。文句なしの最優秀選手だよ。

 あ、でも紗夜ちゃんとの投げ合いは盛り上がったな〜。どっちも外野と連携してたけど、絶対に自分で狙いに行くっていう真っ向勝負。最後のこころちゃんのプレーが人間離れしてたから紗夜ちゃんが負けたけど。

 

 

「最後のあのプレーには驚かされました。よくできましたね」

 

「ふふっ!ありがとう!思いついたからやってみたのだけど、上手くいってよかったわ!」

 

「思いつきでできるのですね…」

 

「ええ!体をひねって避けるなら、いっそそのままボールを取ってグルーって回って投げ返したら面白そう!って思ったのよ!」

 

「…あなたもそちら側なのですね」

 

「そちら側?よくわからないわ!だって同じ人間じゃない!」

 

「っ!…そうですね。ふふっ、弦巻さんは凄いですね」

 

「そんなことないわよ!…それはそうと理事長!私は景品のデート権いらないわ!無効よ!」

 

「えー…まぁ獲得した人がそう言うなら仕方ないですね」

 

 

 よ、よかった〜。これで雄弥くんもリサちゃんに怒られる心配がなくなったね。…すっごいホッとしてる。そんな心配だったんだ。

 

「デート権の代わりに今日はこのまま学校でパーティーよ!うんと笑顔になれるものをやるの!」

 

「のった!」

 

「あ、理事長。俺は帰るから」

 

「え!?」

 

「姉からの連絡でな」

 

「…仕方ないですねー。ま、次回(・・)も頑張ってね〜」

 

「…また妙なことを」

 

 

 結局雄弥くんはそのまま帰って行っちゃった。最後に理事長と何か話してたけど、なんだったんだろ?その疑問は解けないまま、私はこころちゃん主催のパーティーに参加した。

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