バイト中にモカに作詞が進まないことを話したら、「それなら作詞してる人に聞きましょう」って提案されて、さっそく蘭に話を聞けることになった。今日は蘭に聞くけど、後日他のバンドの子にも聞いてみようと思ってる。
「モカー、わざわざ付き合わせちゃってごめんね?」
「いえいえ〜。蘭が緊張すると思うんで〜。それよりなんで結花さんもいるんですか〜?」
「帰りが遅くなるとリサが怖がって帰ってこれないからね☆」
「帰れます。いつもバイトの後一人で帰ってるし」
「えー。去年は今ぐらいの時期から雄弥が迎えに来てたって友希那から聞いたよ?」
「そうなんですか〜?なんでそれで付き合ってなかったんでしょうね〜」
「うぐっ、言いたい放題言っちゃって…。去年はちょっと物騒な事が起きてたからそれで雄弥に来てもらってたの。モカにはノーコメントで」
「え〜」
付き合ってなかったのなんて、まずアタシがその一歩を踏み出せずにいたっていうのと、雄弥がそういうの興味なかったからだし。ほんと、今思えば雄弥と付き合えてるなんて奇跡みたいなものだね。
「むむっ、モカちゃんセンサーが発動しました〜」
「蘭がどこにいるかわかるやつ?」
「そうです〜。近くに……あ、いた!」
「すごいね〜。日菜もこんなセンサーあったし、リサにもある?」
「ないから」
「蘭お待たせ〜」
「蘭久しぶり!元気してた?」
「お久しぶりです。まぁ、それなりに……ひゃっ!?」
蘭がいつも通りの返しをくれたんだけど、残念なことにこの場には結花もいるんだよね〜。結花がそんな返しに満足するわけないし、それ以上に結花からしたら蘭って絡みやすいんだろうね。
「ちょっ、やめ…リサさ、助けて」
「結花いい加減にしなさい!」
「ぐへ、…もう、リサってば力強いよ〜。ただのスキンシップなのに〜」
「スキンシップがボディタッチでどうなの?」
「え?イヴだってすぐにハグするでしょ?それと同じだよ」
「…さすがにそれは同列には扱えないんじゃ」
「それで〜うちの蘭の体はどうでした〜?」
「ちょっ、モカ!そんなの聞かなくていいから!」
「ちゃんとハリもあって健康的だったよ☆」
「おぉ〜、さすが蘭」
「答えなくていいから!」
蘭が顔を真っ赤にしながら結花に怒ってるけど、結花はまったく反省してないだろうね。同性だからまだギリギリセーフだけど、結花が男だったら通報ものだよね。
場が温まった(?)ところでファミレスに移動した。結花はドリンクバーに目を輝かせてはしゃいでた。オシャレなとことか高級なとこは慣れてるのに、逆に庶民的なとこには慣れてないみたい。使い方を教えたら次から次へとおかわりし始めた。
「…結花さんの意外な一面ですね」
「あはは…、友希那と雄弥から話は聞いてたんだけどね〜。こういうとこ全然来たことないらしくてね」
「可愛らしい笑顔でジュースおかわりしてますね〜」
「ま、結花はひとまず放置して、実は蘭に相談したいことがあってさ…」
「そ、相談ですか?リサさんがあたしに?」
「作詞のやり方を教えてほしくてさ〜」
「作詞?リサさんが?」
あはははー…、まぁ、やっぱりそういう反応だよね。覚悟してたけど、アタシが作詞だもんね〜。
「リサさんはなんと〜、お菓子と歌詞を作る『おかし職人』の道を歩むことにしたんだって〜」
「モカ〜、そんなこと言ってないじゃーん」
「おかし職人……ふふっ…」
「お、笑った〜」
「わ、笑ってない!」
「いやいや笑ってたよ〜。ほらいい笑顔」
「ちょっ、なんで写真撮ってるんですか!」
「そこに可愛い顔があったから!」
あんな一瞬で写真撮れるなんて、結花も常人を超え始めたね〜。というかコーヒー入れてきたってことは、ドリンクバーのジュースはもういいんだね…。
「それで?蘭の作詞ってどんなやり方?」
「なんで結花さんが興味津々なんですか…」
「真面目な話すると、作詞ってすっごい難しいんだね。なかなか言葉が出てこないっていうか」
「そうですね。でも、わかりますよ。その気持ち、あたしも歌詞が出てこない時は何やっても出てこないですから」
「蘭でもそうなんだ…。そういう時ってどうしてるの?」
「ギター弾くとか?」
「なんで当ててくるんですか…。結花さんの言った通りギターを弾きながら滅茶苦茶な歌詞で歌って、その中に『今のいいな』って思うのがあったりするんです」
「なるほど〜。なんか魂の叫びって感じでカッコイイね!」
「えへへ〜、なんたってAfterglowの歌は蘭の心の叫びですからね〜」
「モカ!余計なこと言わなくていいから!」
へー、そういう歌詞だったんだ。それで、蘭の歌詞の作り方は、言葉を飾らないでそのままなんだね。言葉を飾ると込めたい気持ちが減っちゃう、かー。そんな感性アタシにはないな〜。でも、そっか、パンケーキを作る時に上の飾りよりもパンケーキ自体を上手く焼くってことだよね。なるほど!
蘭にお礼を言って、会計はアタシと結花で払った。帰り道で結花と話しながら帰ったけど、蘭のやり方は愁のやり方と同じみたい。Afterglowができる前に愁と蘭が一緒に作ったこともあるみたいだから、それでやり方が同じなのかな。
〜〜〜〜〜
「やっほー香澄。お邪魔するよ〜」
「わぁーリサさん!お久しぶりです!あれ?そちらの方は…」
「初めまして…だよね?私は「あー!結花さんだ!」あはは、知っててくれたんだ。ありがとう」
「あたしすっごい好きなんです!歌ってる時のあのキラキラドキドキがすごくって!」
「キラキラドキドキ?」
「はい!」
「あーもう!それで通じるわけねーだろ!それと話が進まなくなるからそれは用事が済んでからな!」
あはは、有咲と香澄って何気にいいコンビだよね。有咲の言葉で香澄も一旦止まって用事の内容を聞いてきた。アタシ達の用事を伝えて、それを始める前に香澄の宿題を手伝うのを先にした。
「これはこの公式さえ覚えれば簡単だからね」
「はい!ありがとうございます!」
「勉強になったよー」
「いや結花は覚えてるでしょ、じゃないと今の授業ついていけないはずだし」
「あはは、まぁノリだよノリ!」
「まったく…」
香澄が片付けを済ませたところで、さっそくここに来た目的である歌詞作りのやり方を聞くことにした。結花は先に内容を予想しちゃってるのか、すごい楽しそうな顔で香澄が話し出すのを待ってる。
「私はどれだけキラキラドキドキを感じられるかを1番気にしてます!」
「へ?キラキラドキドキ?」
「はい!キラキラドキドキです!なんていうか、色んなところにキラキラドキドキってあると思うんです」
「それじゃわかんねーだろ!」
「あはは!香澄らしいやり方だよね〜。ポピパの曲ってそういうのばっかだし」
「なんで結花さんはわかるんですか…」
「私もどっちかって言うと感覚派だからね!」
「香澄、例えばどういうとこにそのキラキラドキドキがあるの?」
結花はもう分かったみたいだけど、アタシにはまだ分からない。だから具体的なことを聞かなきゃ。
「えっとー、朝起きた時に鳥の声が聞こえたらそれもキラキラドキドキだし、パンの焼けるいい匂いがしたらそれもキラキラドキドキだし…」
「だから抽象的すぎるって!」
「リサわかった?」
「うーん、もう一声欲しい」
「えっとー、なんて言ったらいいんだろ?…うーん」
「日常にある些細なことも見方を変えれば輝いて見える。みんながそれに気づいてないだけで、それを気づいてほしい!そんなとこかな?」
「あ!それです!」
なるほど、そういうことだったんだ。シンプルなパウンドケーキでも手作りな方が特別な感じがするってことだよね!最初は結花がついてくる意味が分かんなかったけど、結構助かっちゃってるね。
「歌詞の作り方ってそういうのもあるんだね〜」
「色んなのあって面白いでしょ?」
「そうだね。みんなやり方が違うから歌も変わってくる。…アタシのやり方を見つけたらアタシの歌もできるってことだよね」
「先は長いけどね〜。勝手に歌うならともかく、友希那に認めさせるとなるとこれ以上はない!ってやつになるからね」
「あはは、もちろんわかってるよ。アタシも友希那に半端なのを歌ってほしくないし」
「友希那先輩を認めさせるって無茶苦茶ハードル高いですね」
「その分やりがいはあるよ♪すぐにはできないだろうけど、必ずアタシの歌詞を歌ってもらうから!」
「楽しみにしてますね!それとこれから作るやつも完成したら見せてください!」
「もっちろん!」
さてと、香澄からも話を聞けたし、あとはこころから話を聞ければいいかな。こころの家って滅茶苦茶大きかったけど、あれっていきなり行っても入れさせてもらえるのかな?事前にアポが必要だったりしないかな?
〜〜〜〜〜
「入れたはいいけど…さっきの黒服の人達は?」
「私もわかんないです。たぶん知らなくていいことだと思います」
「なら深くは聞かないでおこうっと」
「こころんのお家って何回来てもびっくりするぐらい大きいよね!」
「日本にもこんなのあるんだね〜」
「いらっしゃい!よく来てくれたわね!香澄、有咲、リサ、それと結花だったわね?」
「うん合ってるよ」
「こんなに参加者が増えてくれて嬉しいわ!これは盛り上がること間違いなしね、美咲!」
こころに呼ばれた子、祭りのときに見かけた黒髪の子である美咲がこころに続いて部屋に入ってきた。こころとも美咲ともアタシってあんま交流ないなー。
「あ、奥沢さんもいたんだ?」
「どーもー」
「さぁ、それじゃあさっそくハロハピ会議を始めるわよ!」
「え?ハロハピ…会議?」
「いやいや、この人たちみんな別のバンドだから」
「あたしはそんなこと気にしないわ!きっとみんなでやった方が楽しいわよ!」
「ノッた!私は参加するよ!」
うわー、相変わらず結花はノリが凄いね。日菜と一緒にいる時とか収拾がつかなくなるし、たぶんこころと一緒でも似たことになるよね。
「会議って、なんかやってたとこなの?」
「いや、会議ってほどのことでもないですよ」
「そうなの?」
「はい。なんというか、次の新曲の構想を練ってたってとこですね」
「わっ、それならちょうどいいとこに来れたや!そのことでこころに相談があってさ!」
「こころに相談…。なんというかチャレンジャーですね」
「それ来るときに有咲にも言われたよ」
こころに相談するってだけなのに、なんでチャレンジャー扱いされるんだろ?というか結花!こころと一緒に遊んでないで戻ってきてよ!相談できないじゃん!
「リサ!あたしに相談したいことってなにかしら?なんでも言ってちょうだい!」
「ありがとうこころ。アタシが相談したいのは作詞のことなんだけど」
「サクシ、リサはサクシをするのね!どんどんしたらいいと思うわ!」
「…あの、今井さん。こころのやつ作詞のこと分かってないと思うんであたしが代わりに話しますね」
「う、うん。お願い」
なるほど、たしかにこれはチャレンジャーって言われても仕方ないね。こころって作詞してたんじゃないの?自分たちで作ってるって聞いたんだけどな。
「といってもうちの場合特殊なんで参考になるかは微妙ですけどね」
「特殊?どんな風に特殊なの?」
「あそこに大きい紙があるじゃないですか」
「うん。なんか色んなラクガキみたいなのがしてあるやつだよね」
「はい。…あれがあたし達の曲作りです」
「え、…ごめん、予想以上に意味分かんないんだけど」
「あ!今とてもいい感じの曲のイメージが浮かんだわ!ちょっと描いてくるわね!」
突然こころがクレヨンを持って大きな紙に色んな絵を描き始めた。アタシにはさっぱり分かんないけど、どうやらあれが曲のイメージらしい。
「あの絵からこころがイメージしてる曲を想像して形にするってのがハロハピのやり方ですね」
「すごい、こころんっぽいやり方だね!」
「っつかよくそれで今までやってこれたな!」
「あはは、あたしもそう思うんだけど、なんかだんだん分かるようになってきちゃって…」
「美咲はこころの理解者だね☆」
「ちょっ、そんなんじゃないですから。恥ずかしいんでやめてください」
頬を赤くしながらもこころが描いてる絵を見て曲の構想を練る美咲は、結花の言った通りこころの理解者に見えるよ。ライオンとゾウでロックっぽい曲調になって、かき氷を食べてるからそれで『涼しい風』って、いやいや普通の人は分かんないからね。
「とまぁ、うちはこんなのですね」
「な、なるほどね〜。曲作りも奥が深いね〜」
「リサ、ここは凄い特殊だからね?」
「や、やっぱり?」
「すみません、参考にならなかったですよね」
「ううん。そんなことないよ。こころがプリンの原液を作って、美咲が型に入れて固めるって感じ?」
「なんでプリン?」
「つまり、こころが曲のイメージを作って、美咲がそれをみんなに伝わるように翻訳してるってことだよね。リサが言いたいのもそういうことでしょ?」
「うん。そうだよ!」
「リサさんもリサさんだけど、結花さんも凄いですね…」
それにしても…そっかそっか。曲作りは何も一人じゃなくていいんだね。…あ、まぁアタシはもう蘭と香澄とこころに助けてもらってるか。よーし!みんなに聞いたことを参考にして作詞やってみようっと!
「あ、リサ。まだ作詞しないでね」
「え!?なんで!?」
「まだ
「あ…、教えてくれるの?」
「もっちろん!疾斗と愁を呼び出すから、私とリサとで四人で話そっか☆」
「ありがとう!みんなも手伝ってくれてありがとね!作詞できたら見せるから!」
「はい!頑張ってください!」