「リサー。ご飯できたから降りてらっしゃい」
「はーい」
母さんに呼ばれてリビングに行き、父さんも一緒に三人で朝ご飯を食べる。いつもの風景なんだけど、おかしいな、今日はなんでかアタシがご飯を食べるペースが遅いや。
「…リサ大丈夫?」
「へ?大丈夫だよ大丈夫!ちょっと疲れが残ってるのかな…、あはは」
「…そう」
「リサ、頑張ることを止めはしないが、頑張りすぎるのもよくないぞ」
「うん。わかってる。…ごちそうさま。学校の準備してくるね」
「お粗末さま」
いつもよりちょっと遅く食べ終えて、その後はいつも通りバンドの練習に行く準備をする。タオルと昨日作ったクッキーも入れてっと。
「リサ今日のお弁当と水筒よ。タオルも入れてある?」
「ありがとう♪うん。タオルもバッチリ入れてるよ。それじゃあ行ってきま……あれ?」
「リサ!?」
あれ?おかしいな…さっきまで平気だったのに。…玄関の床ってこんなに冷たいんだ。
〜〜〜〜〜
「雄弥大変!!」
「大変なのはたった今壊された俺の部屋のドアなんだが…」
「そんなちっちゃいことはいいの!!」
「小さいか?」
「リサが倒れたって!」
「は!?」
「ただの熱らしいんだけど、おばさん達は今日用事があるらしくって…」
「わかった」
「ちょっ!私も行くから!」
最低限の用意だけして部屋を飛び出した俺の後を結花が慌てて追いかけてくる。家は隣だからすぐに着くし、結花もすぐに追いついた。友希那?友希那なら練習に行ったよ。「任せたわよ」とだけ言われた。素っ気ないように思えるかもしれないが、あれは自分を冷静に保つためなんだろうな。
「雄弥くん。わざわざ来てもらってごめんね?」
「いえ。時間ならいくらでもありますから」
「…そうね」
「それで病院には?」
「連れて行こうと思ってるわ。けど私も主人も用事があるから送るだけになるの…」
「わかりました。心配しないでください。その後のことは全て請け負いますから」
「助かるわ」
リサの部屋に行くと、リサはしんどそうな表情で眠っていた。軽くリサの頭を撫でてからリサを抱き上げる。極力リサに負担がかからないように気をつけながら車に乗り込み、俺と結花の間にリサを座らせる。
「…この子、最近頑張り過ぎてたのね。…私達がちゃんと見ておけば…」
「いえ、…リサをここまで頑張らせたそもそもの原因は俺にありますから」
「いや、私たちもあのライブを見たが、あれは…」
「雄弥もお二人も…この話はやめましょうよ。暗くなるだけですよ?」
「結花ちゃん…そうね。こういう時こそ明るくいないといけないわね!」
「はい!」
「……結花は凄いな」
「ん?何か言った?」
「いや何も」
「?そう?」
キョトンと首を傾げる結花から視線を外してリサに目を向ける。寒くならないように毛布を掛けてあるし、リサにはパーカーを着させてある。…ところでこのパーカー俺のやつっぽいんだが、…結花のやつ何考えて持ってきたんだか。
「病院に着いたよ」
「診察券出してくるからあなたはここで待ってて。雄弥くん、結花ちゃん。リサをお願いね」
「任せてください!」
「リサ、持ち上げるぞ」
「…うん…」
病院に着く前に目が覚めていたリサに一声かけてからリサを抱き上げる。元気がいい時なら「恥ずかしいから下ろして!」って騒ぐだろうに、今はそんな元気もないようで体を俺の方に預けてくる。先に病院に入って診察券も出したリサのお母さんと入れ違うように病院に入る。「診察代は立て替えておいて、夜に請求して」と言われた。別に気にしないのだが…。
「はぁ…はぁ…ゆうや」
「どうした?寒いか?」
「…ううん。…手…握ってほし…い」
「わかった」
「…あった…かいね」
「リサが冷たいだけだ。熱あるのにな」
「末端は冷えるからねー」
「ゆかも…わざ、わざ…ごめん、ね?」
「気にしないで。私もリサのこと大切に思ってるから。それと目閉じときなよ。そのほうが楽でしょ?あと座ってるのもキツそうだから寝転んでいいよ。雄弥に膝枕してもらってさ」
「うん…」
結花は椅子から立ち上がって、空いたスペースにリサの足を置かせた。俺もゆっくりとリサの上体を下げていき、リサを楽な姿勢にさせる。リサは時折咳き込みながらも結花に言われたとおり目を閉じている。
「わりと早い時間に来れてるからそろそろ呼ばれるかな?」
「かもな」
『今井さん。今井リサさん。2番の診察室にお入りください』
「私の勘も鍛えられたね〜」
「恐ろしいやつだな」
診察の結果、特に何かの病気というわけではないことがわかった。予想通りと言っていいのか、疲労が蓄積した結果風邪をひいたようだ。薬も貰い、リサを背負って結花と今井家に帰る。結花がリサを着替えさせ、薬を飲ませてからベッドに寝かせた。リサが眠りに着くまで俺と結花はリサの側にいて、手を握っていた。
〜〜〜〜〜
「……ん…」
目が覚めてアタシは今の状況を確認する。ここはアタシの部屋で、たしか練習に行こうと思ったら倒れちゃったんだよね。それで…あ、雄弥と結花が付き添ってくれて病院に行ったんだった。
「これが薬で…飲み物も用意してくれてるんだ。…二人とも帰っちゃったのかな?」
部屋を見渡しても二人の姿はどこにもない。ぐっすり眠れたおかげで少し体が楽になったんだけど、まだ熱は残ってるし体もだるい。心細くなったアタシは雄弥に電話して、部屋に来てもらおうと携帯を手に取ったんだけど…。
「迷惑…だよね。…なにか予定があるのかもしれないし」
側にいてほしい。電話して呼び出したい。だけどそれをするのは気が引けちゃう。寂しいけど…、我慢…しなきゃ。
「がまん…しないと…でも…。……ゆうや、側にいてよ」
「お、リサ起きたのか。…どうした?」
「ふぇ?…ゆうや?」
「ちょっと雄弥そこで止まらないでよ。入れないじゃん」
「ん、わるい」
「もう…てあれ?なんでリサ泣いてるの?」
「へ?…いや、その、これは…あの…なんでだろ…止まらないや…あは、あはは…」
「リサ」
雄弥が持ってきてくれてるのってたぶんお粥だよね。結花が人数分の食器を持って来てて、あはは…アタシの早とちりか。二人ともちゃんといてくれたんだ。
お粥をテーブルに置いた雄弥にアタシは抱きしめられた。あやすように優しく髪を撫でられて、アタシはそれで安心して雄弥の背中に手を回した。
「お二人さーん。ご飯の準備できたからそろそろ離れてくれない?」
「お、悪いな結花。準備全部させた」
「いいよ。料理はほとんど雄弥だったんだし」
「あれ?結花も料理できるよね?」
「できるけど雄弥程じゃないよ。ほんと女泣かせなスペックしてるよね」
「リサと料理してたからこうなったんだが…」
「真の敵は身内だったか…」
まだ体がだるいアタシはそれでもベッドを汚したくないから一旦ベッドから出て、ベッドを背もたれ代わりにしてお粥を食べることにした…んだけど。
「リサ〜、背もたれにするならベッドじゃなくて雄弥にしなきゃ。そのほうがリサも落ち着くでしょ?」
「それ食べにくいだろ」
「何言ってんの。食べさせるのも雄弥だからね?」
「わけがわからないんだが…」
「リサもそのほうがいいよね?できるだけ楽しないとさ」
普通に考えて結花が言ってることはおかしいってわかるんだろうけど…、頭もボーッとしちゃってるアタシはまともな思考ができなかった。
「雄弥…お願い」
「…わかった」
「ありがと♪」
「リサ…食べるのもゆっくりでいいからな」
「けど、そしたら雄弥のが冷めちゃうよ?」
「温めなおしたらいい。リサは病人なんだから、しっかり食べて風邪を直せ」
「…うん」
雄弥にお粥を食べさせてもらいながら雄弥に甘える。最近甘えれてなかったその欲求も出てきて、アタシは時間が経てば経つほど雄弥にベッタリと甘えちゃってた。食べ終わったら薬を飲んで、雄弥が食器を片付けに行ってる間に結花に手伝ってもらいながら新しい寝間着に着替え直した。
「はいリサ布団かけるよー」
「ありがとう」
「うん!ちょっと元気になったリサに質問!」
「なに?」
「勝負下着はどれ?」
「ふぇぇ!?なぁ、にゃにいって…」
「あはは!リサ動揺しすぎじゃない?彼氏がいるわけだし、ずっと前から好きだったでしょ?それぐらい持ってたりしてもおかしくないよね?」
「お、教えない!おやすみ!」
「『教えない』ってことは
「〜〜っ!!」
「顔真っ赤にしちゃって〜。可愛いな〜もう!」
「うぅ〜。寝させてよぉ」
「…病人にそう言われたら威力でかいね。それじゃおやすみ。洗濯物片付けてくるから。何かあったら遠慮なく電話してね?」
「うん」
人をからかってくるのに、なんだかんだでそういうとこ見抜いてくるよね。今回の場合、さっきアタシが遠慮して電話しなかったっていうことに気づいて、今の発言したわけだし。こういうことを雄弥に見せないから姉とは思えないなんて言われるんだよ。
「あ、雄弥がご飯食べ終わったら部屋にこさせて」
「それまでには寝れてないんだね…」
「あ、あははー、たぶんね」
「ま、いいけどさ。それじゃあ雄弥をこさせたら私はRoseliaの練習見に行くね。みんな心配してるだろうし、電話よりも直接言ったほうが安心してくれるだろうしね」
「ごめんね。ありがとう」
「いいのいいの!友希那に会いたいしさ☆」
「…それが本音だったりしない?」
「さぁね〜」
今度こそ結花が部屋を出ていって、アタシはまた部屋に一人になった。けどさっきみたいな寂しさはない。だって二人がいるってわかってるから。結花は後でRoseliaの練習を見に行くけど、雄弥は残ってくれるもんね♪
「リサ、寝れないのか?」
「雄弥…。寝れそうで寝れないって感じかな」
「なるほどな」
雄弥はアタシに一言断ってからアタシの椅子に座ってすぐ横にいてくれる。そのことが嬉しくてアタシはもっと雄弥を求めることにした。
「雄弥、ベッドに入って?」
「一緒に寝ようってか?」
「…うん。……ダメ?」
「いやいいぞ」
「やった♪」
ベッドの真ん中に寝てたアタシは奥にズレて雄弥が入れるスペースを作る。そこに雄弥が入ってきて、アタシはすぐに雄弥に抱きついた。雄弥は優しく髪を撫でてくれて、アタシはそれが気持ちよくて目を閉じていたら、いつの間にかそのまま眠りについた。
起きたときも雄弥はアタシのすぐ横にいてくれて、携帯を見たらRoseliaメンバーや日菜を始めとした学校の友達からメッセージが送られてた。昼間には気づかなかったな〜。それを一つずつしっかりと返事していって、雄弥と一緒にリビングに行って母さんが用意してくれた晩御飯を食べた。
今回は母さんたちも用事で家にいなかったと油断してた。バッチリ二人で寝てるとこの写真を撮られてた。それと結花には、お粥を食べさせてもらってる時の写真を撮られてた。アタシは寝る前にそのことを知らされたせいで、恥ずかしさでなかなか寝付けなかった。
…ところで、夏の時とは違う雄弥のパーカーが部屋にあったんだけど、なんで?