「ちゃんとご飯食べてね?」
「わかってる」
「夜ふかししちゃだめだよ?」
「いつもしてないだろ?」
「そうだった。…それと無茶しちゃだめだよ?」
「仕事休んでるから大丈夫だ」
「あと、連絡はつくようにしててね?」
「ああ」
「リサー。それまだ続くのー?」
「あ、ごめん!すぐ行くから!」
「リサも無理するなよ?周りに気をかけすぎて自分を疎かにしないでくれよ?」
「うっ、気をつけます…。それじゃあ行ってきます」
「ああ。行ってらっしゃい」
リサと口づけを交わし、友希那と結花と三人で出ていくのを見送る。口を離したときに「浮気しないでね」って言われたけど、するわけないじゃないか。
風邪もしっかり治したリサは無事に修学旅行に参加することができた。3泊4日で京都に行くらしい。しかも
「雄弥、母さんたちも出張で海外行くんだけど…」
「そういやそんな話してたっけ。…ま、なるようになるだろ」
「美竹さんのお家でお世話になってね。話はしてあるから」
「…初耳なんだが」
「昨日の夜に決まったんだもの。用意ができたら放課後にスタジオに行きなさい。そこで合流してから美竹さんのお家にお邪魔するように」
「わかった」
放課後にスタジオね。Afterglowの練習を見ろってことなのか。それにしても、別に一人でも生活できるんだがな…。ま、こころのとこに世話になるよりはいいか。逆に窮屈そうだし。それまではどうするか…、爺さんとこにでも行くとするか。
〜〜〜〜〜
京都まで新幹線で行くんだけど、アタシと友希那と結花と日菜の四人で対面になるように座ってた。日菜は外を眺めてて楽しそうにしてるけど、それ以上に楽しそうにしてるのは結花だった。鼻歌を歌いながら足をリズムに合わせてブラブラさせてた。
「〜♪〜♫」
「機嫌いいね結花」
「だって修学旅行だよ?しかも京都!今から楽しみすぎだよ☆」
「結花はたしか京都に行ったことあるのよね?」
「うん!まぁ仕事で行ったからあんまり観光とかはできなかったんだけどね」
「そうなんだ」
「それでも雄弥がエスコートしてくれたおかげで楽しめたんだけどね☆」
「…へぇ〜?」
雄弥が、結花を、エスコート?京都で?ふーん。そっかそっか。そりゃあ随分と楽しめたんだろうね〜。雄弥って色んなとこ行ってるからオススメのとことか見つけてたりするし。
「もう〜。仕事で行ったんだってば!だから拗ねないでよ」
「別に拗ねてないもん」
「ほっぺ膨らませて言っても説得力ないよ?ね、友希那」
「そうね。顔に羨ましいと書いてあるわよ」
「あはは!リサちーってほんとユウくん大好きだね!」
「…うぅー」
3対1じゃ分が悪すぎるね。しかもメンバーがメンバーだし…。なんで違うクラスの友希那と結花と一緒にいるのかと言うと、今回の修学旅行もまた普通というのを捨ててるから。今いるこの四人と、後で合流する花咲川の生徒とで班を組むことになってる。まぁ向こうのメンバーも知ってる人なんだけどね。
「あーあ、お姉ちゃんも同じ新幹線ならよかったのに〜」
「仕方ないわよ。さすがに人数が人数なのだから」
「向こうと合流するのだって夕食からだしね」
「お姉ちゃんだけこっちに来てもらえばよかったかな?」
「紗夜は絶対そんなことしないでしょ…」
「はぁ、だよね〜。早く会いたいな〜」
「日菜も人のこと言えないよね」
「うん?あたしはお姉ちゃんのこと大好きだし、ユウくんのことだって負けないぐらい大好きだよ?」
「さすが日菜だね〜」
「公言できるのね…」
…アタシも日菜みたいに堂々とできたら雄弥に迫ろうとする女子もいなくなるのかな。でも、活動休止中とはいえ雄弥もアイドルなわけだし、堂々と公言できないよね。…アタシにその勇気がないのもあるけど。
「京都楽しみだね!リサちー♪」
「そうだね♪」
〜〜〜〜〜
「で、俺は何しとけばいい?」
「ん〜。モカちゃんにも判断つけれないですな〜」
「えと、練習をみてもらうってことでいいですか?」
「つぐちんは真面目だね〜。雄弥さんが来てくれてるんだし、もうダベってたいいんじゃない?」
「練習するから」
「蘭とつぐの言うとおりだよモカ!練習見てもらおうよ!」
「え〜」
モカはなぜか超絶だらけてた。いつも抜けてるような態度のモカだが、それはあくまで表面上のこと。実際にはやる気があるのだ。
「今日はどうしたんだよモカ。沙綾のとこのパンは食べてたはずだろ?」
「もち〜」
「モカちゃん。調子が悪いなら休んでていいよ?」
「つぐちんの純粋さが痛い…」
「え?」
「モカ」
「…なんていうか〜。ほら私と雄弥さんってマブダチでしょ?」
マブダチ…マブダチなのか?いや、まぁモカがそういうならそれでいいんだが。俺もモカのことを友人と思ってるわけだし。
モカは正直に蘭たちに話した。一言で纏めると恥ずかしいらしい。いつもの自分とは違う自分を見せるのが気が引けるのだとか。
「モカってそういうの気にするんだ…」
「なんか意外だな」
「その気持ちはさっぱりわからんが、モカ」
「はい〜?」
「俺Afterglowのライブ見たことあるから」
「……はい?」
「モカが演奏してるの見たことあるから、今さら気にしても仕方ないぞ?」
「…うわ」
「雄弥さんってSなんですね!」
「え?」
モカは、気にしてることが実はもう知られてたという事実に拗ねていた。そんなモカと俺のやり取りからひまりにSだと言われたのだが…、俺ってSか?ノーマルじゃな「雄弥さんがノーマルとかありえないんで」…。
「蘭も蘭で酷いよな」
「でも雄弥さ〜ん。蘭ってこんなトゲトゲしてますけど〜、実は寂しがり屋なんですよ〜?」
「なるほどな」
「モカ変なこと言わないでよ!雄弥さんも勝手に納得しないで!」
「…巴」
「あ、あはは〜、否定はしないですよ?」
「Afterglowの結成だって五人が集まれるように!ってつぐが考えたんですよ?蘭だけクラス違うので」
「意外と行動力あるんだな」
「つぐの発言がきっかけで始めることって多いんですよ」
「つぐちんが〜、蘭を思って作ったんですよ〜」
「み、みんな、恥ずかしいから…」
ほんとに仲がいいんだな。つぐみって凄い謙遜するけど、周りを巻き込む力が強いよな。それでいて本人が真面目で1番頑張るから周りも手を貸したくなる。そういや紗夜もつぐみのこと高く評価してたな。
…ところで三人の発言のせいで蘭とつぐみが顔を真っ赤にしてるんだが、ほんとに練習するのか?
「もうこの話は終わり!練習始めるよ!」
「そ、そうだよ!雄弥さんに悪いよ!」
「あ、逃げた」
「逃げたな」
「逃げたね」
「「逃げてない!」」
結局練習するらしい。この五人全員のを見るのか…、頑張りますかね。
〜〜〜〜〜
「あたし達の練習どうでした?」
練習が終わり、みんなで帰っていたが、それも途中まで。蘭と二人になったところで蘭は真剣な表情で聞いてきた。
「どうって…練習の時に言っただろ?」
「うん聞いた。けどそれは全体の評価と個々人へのアドバイスだけ」
「…個人の評価が聞きたいのか」
「うん」
なぜか蘭は緊張した雰囲気で話しているが、別にAfterglowのレベルは低くない。低い評価なんかになるなんてことはない。
「巴は十分みんなを引っ張るドラムを叩けてるよ。あこに教えてるから当然だろうが」
「それはあたしも思ってます。巴のドラムのおかげで思いっきり歌えますから。…巴もあこの目標であり続けようとしてますしね」
「だろうな。見ててそれはわかった。ひまりはまだまだ伸びしろがあるな。今のレベルなら十分ついていっているが、ひまりのベースが上達したらできる曲も増えるだろ」
「巴についていけてない?」
「そこまでじゃないが、巴のドラムとひまりのベースが調和できてない。ドラムに引っ張られ気味だ。リズム隊はどっちかだけでリズムを取るものでもないだろ?」
「まぁ、たしかに…でも」
「全体の調和を取るのはキーボードだな。…本人は自覚してるようだし特に言うことはないな」
「……」
…ちょっとキツかったか?事実を言ったまでなんだが、それに…本人が思ってる程レベルが低いわけじゃないんだがな。
「…つぐは、1番頑張ってる」
「だろうな。あの性格だ」
「だから、あまりつぐのことを…」
「別に貶す気なんてないぞ?つぐみのレベルだって別に低いわけじゃない。蘭たちや本人が思ってるほどな」
「え?」
「愁が時間作って練習見てるんだろ?演奏を見てたらわかったが」
「……そうなんですか?」
「…知らなかったのか。…ならこの話は内緒にしないとな」
「そうします。それで、モカとあたしは?」
これでつぐみの話は終わりということなんだろうな。…自分と親友のことだからか、蘭の表情はさっきよりも引き締まってた。
「モカは…そうだな。技術面で言えばまだまだ改善点があるが…、演奏の仕方には特に言うことはないな」
「どういうことですか?」
「演奏のクセ、とでも言えばいいのかな。うまい人ほど本人にしか出せない音を出すだろ?」
「はい」
「モカはそれができてる。基本を抑えてるし、自分のことをしっかり理解できてるからだろうな」
「…モカらしいや」
「全くだ。伊達に自分で天才と言ってるだけはある」
「…あたしは?」
「それは後で」
「なんで!」
「家に着いたから」
「…ぁ」
思ってた以上に真剣に話を聞いてくれてたみたいだな。ほんと、仲間思いというか…友達思いだな。そういうのをもっと知ってもらえば交友の輪も広がるだろうに…、人のことを言えないから何もツッコまないが。
美竹家に着いて、すぐに夕食ということになった。なんで俺が美竹家にお世話になることになったのかはその時にわかった。どうやらママ友繋がりらしい。娘同士はすぐに火花を散らせ合う仲なのに、母親同士は意気投合するほど仲がいいんだとか。ちなみにリサの母親とも仲がいいんだとか。
「急にお世話になって申し訳ないです」
「気にしないでくれ。君とは一度会ってみたいと思っていたしね」
「…俺のこと知ってるんですか?」
「ああ。愁くんから聞いているというのもあるが、…ニュースでもね」
「なるほど。…お騒がせしてしまいましたからね」
「あの件は…触れないほうがよさそうだね」
「そうしてもらえるとありがたいですね」
「ふふっ、この人あのニュース見て怒ってたのよ?『犯人はなんてことをしでかしているんだ!』って」
「おい」
「いいじゃない」
「…はぁ」
意外と熱い人なんだな。愁からは、蘭がバンド活動していることに反対してたって聞いてたんだが、今では応援してるらしいし。ライブにもこっそり行ってるんだっけ?
「…今日は蘭たちの練習を見てくれたそうじゃないか。…君から見て蘭はどうだった?」
「っ!」
「あらあら、蘭は恥ずかしいポジションね♪」
「母さん楽しまないでよ…」
「そうですね。…良い悪いで言えば良かったですよ。ギターボーカルとなると両立させるのに意識が向きがちですが、蘭はそこを難なくこなしてます。ギターを疎かにせず、それでいて気持ちを込めて全力で歌ってます」
「なるほど。…それでも『良い悪いで言えば良かった』、か」
「それはこれからの成長に期待してる、ということで」
「ふっ、うまいこと言うね」
言い逃れ、とかのつもりじゃないんだがな。本心からの言葉だが、そう受け取られても仕方ないか。蘭は…沈黙してるな。顔を真っ赤にして誰とも目線を合わせないようにしてる。ほんと素直に受け取れないんだな。
食事を終えれば後は風呂に入り、寝るまで蘭と話をして、客間に移動して寝させてもらった。リサたちが帰ってくるまでだから、俺も3泊4日というわけだ。この間別にハプニングもなかったぞ?ほんとに…無かった!