修学旅行の宿泊場所であるホテルの夕食は、ビュッフェ形式だった。この夕食の時から花咲川と予定が一緒になる。あたしは料理とか飲み物よりも優先することにした。
「お姉ちゃ〜ん♪」
「きゃっ!日菜いきなり飛びつかないでちょうだい!今は何も持ってないからよかったものの、お皿を持ってたら落としてたわよ?」
「ごめんなさ〜い。でもお姉ちゃんが何も持ってないの見てから飛びついたもん…」
「…はぁ。それで、何の用なの?」
「お姉ちゃんと一緒に食べたいな〜って思って。席は自由だから混ざっても問題ないでしょ?リサちーたちが席を確保してくれてるし!」
あたしがリサちーたちがいる所を指差したら、リサちーもこっちに気づいたみたいで手を振ってくれた。あたしは手を振り返してからお姉ちゃんの様子を見たんだけど、どうやら観念したみたい。やったね!
「班のみんなで食べようと話をしていたから、声をかけてからそっちに行くわね」
「うん!ちなみに班のみんなって?」
「丸山さんと白金さんよ」
「なら二人も呼んじゃいなよ!絶対そのほうがるんっ♪てするよ!」
「だからそのるんっ♪てなんなのよ…。まぁいいわ。呼んでくるから日菜は先に行っといてちょうだい」
「うん!」
先に飲み物だけ用意してから席に戻った。リサちーたちに誘うことに成功したって報告して、リサちーと結花ちゃんとハイタッチした。友希那ちゃんには「よかったわね」って言ってもらえた。
「日菜ちゃんやっほー」
「皆さん…お疲れ様…です」
「彩ちゃん!」
「燐子もおつかれー。ほら席取ってるからこっちおいでー」
「はい…」
あたしの隣に彩ちゃんを座らせて、対面にはお姉ちゃんに座ってもらった。結花ちゃんはもちろんのことながら友希那ちゃんの隣。姉妹って知らない人は、そっち系のカップルとしか思わないよね。
「お姉ちゃんたちとあたしたちが昼間に回ったとこって一緒?」
「そのはずよ。時間がズレているだけのはずだから」
「それならよかった♪」
「合同なのだから当然でしょう…」
「えへへ〜。あ!温泉も一緒に入ろうよ!」
「なんでそこまで一緒にしないといけないのよ」
「お姉ちゃんと一緒にお風呂なんて何年ぶりだろうな〜♪」
「決定したのね…」
「あはは、紗夜ちゃんドンマイ」
「彩ちゃんも一緒ね!」
「…うん」
どうせならみんなで一緒がいいな〜。あ、そうなるか。だってリサちーと結花ちゃんもいるんだし。
〜〜〜〜〜
「はぁ〜〜、いいお湯だね〜」
「そうね」
「もぅ、友希那もリラックスしようよー」
「してるわよ」
「そう?」
「えぇ」
「ならいいや」
私と友希那は一足先に露天風呂に来てた。他のみんなは中のお風呂に入ってから来るんだって。
「背中の流しっこなんてやったことなかったな〜」
「そうなの?…途中変なのも混ざってたけど」
「ただのスキンシップじゃん」
「あなたが男だったら通報ものよ」
「友希那は私が男だったら仲良くなってくれてないの?」
「…それはズルいわよ」
「ふふん。なんたって友希那と雄弥の姉弟ですから!」
「でも、親しき仲にも礼儀ありよ。そこは知っておきなさい」
「は〜い」
友希那ならオッケーってことだよね!…ポジティブに捉え過ぎか。ま、いいや。ほんとにダメな時はちゃんと言われるし。私は友希那の腕に抱きつきながら肩に頭を預けた。そうしながら景色を楽しんでたら他のみんなも露天風呂に来た。
「二人ともお待たせ〜☆」
「中のお湯どうだった?」
「あっちも結構よかったよ〜。ね?燐子」
「は、はい。…温度も…丁度よくて…入りやすかった、です」
「いいね〜」
「こっちもいい湯加減だね」
「おこちゃまの彩でも入れるもんね〜」
「お、おこちゃみゃっ!?」
おこちゃまって言う言葉に過敏に反応した彩は、お湯の中で足を滑らせてた。お湯に浸かってからでよかったよね。外だったら頭打ったりして危ないもんね。
「あはは!彩ちゃんなにしてんのー?」
「ぷはっ!もう、びっくりした〜」
「丸山さん大丈夫ですか?」
「う、うん。どこも打ってないよ」
「それはよかったです。…日菜何してるの?」
「お姉ちゃんにギューッてしてるだけだよ?」
「なぜ?」
「結花ちゃんが友希那ちゃんにそうしてるの見てるんっ♪てしてたからだよ!」
「離れなさい」
「やーだー!」
「日菜!」
「やだやだー!お姉ちゃんとお風呂なんてなかなかないんだもん!」
「抱きつくのなんていつでもできるでしょ!」
「じゃあ後で抱きつくね!」
「あ……」
「紗夜ちゃん…」
「丸山さん、何も言わないでください」
あはは、日菜の機転の速さは凄いよね〜。紗夜も別に今のが失言だったわけじゃないし。…あー、日菜相手には失言とも言えるのか。ま、私には関係ないからいいんだけどね!
「それにしても、眼福だね〜」
「結花。自重しなさい」
「ええー」
「もう一緒に寝てあげないわよ?」
「やだ!抑えます!」
「いい子ね」
友希那が頭を撫でてくれて、私はそれで目を細める。リサたちは私たちのやり取りに苦笑いしてたけど、雄弥に甘えてる時のリサもこんな感じじゃない?ちなみに私たちのやり取りを見て、日菜も紗夜に頭を撫でてとせがんでいた。
〜〜〜〜〜
アタシ達はお風呂に入ったあとそのメンバーで一つの部屋に集まってた。というか、アタシ達羽丘組が寝る部屋へ紗夜たち花咲川に来てもらったんだけどね。ちなみに紗夜は日菜に抱きつかれてて、それを甘んじて受けていた。お風呂の時の発言があったからね〜。
「さて、修学旅行の夜といえばー?はい、燐子」
「えっと…バンドの話…ですか?」
「違う!はい、友希那」
「音楽の話ね」
「それ燐子と一緒だよ!」
「はいはーい!彩ちゃんがトチった時の話!」
「違う!と言いたいけど、何それ面白そー!」
「そんな話しなくていいよー!」
「えー?盛り上がること間違いなしだよ?」
「ダメなものはダメ!」
紗夜にも諌められて、日菜は彩のトチリ話を断念した。正直なとこアタシも聞いてみたいと思ったのは内緒。…それにしても結花のテンションが高いね〜。四日間あのテンション保つのかな?だいぶキツイと思うけど、結花ならやりかねないね。
「では話を戻しまして、修学旅行ですし…京都の歴史や現代の問題についてですかね」
「お姉ちゃんそれ堅苦しいよ」
「日菜の言うとおり!そんなわけでボツ!」
「…そうですか」
「えっと、じゃあ…自由行動でどこ行くか話し合うとか?」
「それはするね!けど明日は自由行動ないからボツ!」
「自信あったんだけどな〜…」
「さぁ残りはリサだけだよ!雄弥と連絡取り合ってないで話混ざって!」
「やっぱそういう感じなんだ…。それと雄弥と連絡取ってたわけじゃないから。クラスの子だから」
「そうなの?まぁいいよそこは」
雄弥との連絡はもう済ませてあるからね。アタシだけ一足先にお風呂上がらせてもらったから、部屋でみんなが戻ってくるまで電話してたし。
それで、結花がやりたい話って、どうせ
「女子らしい話でしょ?」
「そうだよ!」
「なら可愛らしいスイーツの作り方だよね!」
「違う!わかってて外したでしょ!?」
「うん。友希那もそうしてたし」
「もうー!こういう時はコイバナでしょ!鉄板ネタでしょ!」
「えー、だってそれリサちーの惚気話で終わるじゃん。しかもあたしとお姉ちゃんはダメージ受けるんだけど?」
「惚気話なんてしないから」
しかも日菜の言うとおりだし、アタシも流石に気が引けるからね。花音と二人ならお互いに惚気話して終わりだろうけど。
「あ、千聖ちゃんからだ。…日菜ちゃん千聖ちゃんがヘルプって」
「なんでー?」
「花音ちゃんの惚気話が止まらないからだって」
「麻弥ちゃんがいるから任せたらいいんじゃない?わざわざそんな死地に行きたくないよ」
「それもそうだね。千聖ちゃんには明日謝っとこ」
日菜が行かないのは分かってたけど、彩もあっち行くのをすぐに断るのは意外だね。もっと悩むと思ってたのに…。
「前座ぐらい用意したかったけど、仕方ないか〜。本題いきますかね!」
「本題?」
「そうだよ!ね?友希那」
「ええ。…関係ない人もいるけど、時間も限られているから修学旅行中も話をしようと思ってたのよ」
「関係ない人…あー、あたしと彩ちゃんと結花ちゃんだね?」
「えぇ。今から話したいのは、私たちRoseliaの次のライブについてよ」
「練習の進み具合の確認ですか?」
「そこはあなた達を信頼しているわ。必ず間に合うと。…より細かに言うと、Roseliaのライブの話でもあるけど、リサのことよ」
「え?アタシ?」
アタシのことが話の中心?アタシがRoseliaの中で1番下手だから…じゃないよね。話したいのは新曲のことと、
「リサが書いたあの歌詞に曲をつけたわ。データはあこにも送ってある。そろそろあこから電話がかかってくるはずよ」
「…来ました。…あこちゃんから…です」
「出てちょうだい」
「はい…。もしもしあこちゃん?…曲…聴いた?…ううん。私達はこれから…。ちょっと待ってね。…スピーカーにするから」
『もしもし皆さん?聞こえてますかー?』
「ええ。聞こえているわよ」
「宇田川さんは新曲を先に聴いたのですよね?どうでした?」
『超かっこよかったです!でも歌詞はリサ姉が書いたからなんていうか…エモいです!』
「曲と歌詞のミスマッチは無かったということでいいのね?」
『はい!あこが聴いた限りでは無かったと思います!でもあの曲って…』
「それは今から聞いて話をするわ。スピーカー越しになるけど、あこも聞いてちょうだい」
『はい!』
友希那が携帯を操作してアタシ達の新曲を流した。アタシが書いた歌詞を友希那が歌い上げてくれている。ドラム、ギター、キーボード、そしてアタシが弾くベースの音も入っているんだけど…、これって。
「紗夜、燐子」
「私もこれでいいと思います。事前に聞いていたのと少し変わっていますが、十分修正が間に合います」
「私も…問題ないと…思います。…ただ」
「友希那ちゃん。これってリサちーの負担がでかくない?」
「私もこんなのできる人そうそういないと思うんだけど。それこそ
「…なるほどね。友希那の信頼は厚いね。リサ」
『リサ姉…』
これを…アタシが?アタシも紗夜や燐子と同じで事前にある程度のことは聞いていた。だから修学旅行前にも練習してたんだけど、完成版はここまでレベルが高いなんて。
「友希那、これは…」
「できないなんて言わせないわよ。あなたが書いた歌詞で、あなたの思いを込めやすい曲に仕上げたの。次のライブで雄弥にこれを届けてちょうだい」
「…無茶苦茶だよ」
「わかっているわ。私もリサへの負担が大きいと思う。けれど、これはリサがやるべきことなのよ。雄弥の演奏を取り戻すために練習してきたなら、雄弥のレベルじゃないとこなせない曲を演奏してみてほしい。私はリサならできると信じているわ」
「…わかった。友希那にそこまで信じられてるなら、アタシはそれに応えてみせる。間に合わせてみせるから」
「ありがとう。でも、無理はしないでちょうだい」
『そうだよリサ姉!この前のもあこすっごい心配したんだから!」
「あははー…、うん。自己管理はしっかりするから」
次のライブで全てをぶつけてみせる。友希那にここまで準備してもらったんだから、あとはアタシが雄弥にぶつけてみせるだけ。
──アタシが雄弥を取り戻してみせるんだ
「友希那ー」
「わかったわよ…」
「やった☆」
「丸山さん、白金さん、部屋に戻りますよ」
「うん」
「はい…」
「え?お姉ちゃん何言ってるの?」
「当然のことを言ってるだけよ。だから日菜も手を離しなさい」
「やだ!」
「わがままもいい加減に…きゃっ!」
「へへーん、お姉ちゃん逃さないからね〜。今日は一緒に寝てもらうから!」
「えっと、…紗夜ちゃんまた明日!」
「お疲れ様…です」
彩と燐子は急いで退散していった。当然紗夜は抗議してたけど、日菜が諦めないから結局紗夜が諦めてた。結花は当然のように友希那と一緒に寝てたよ。