俺はなんて愚かな人間なんだろうな。
何度も何度も間違える。正解を選ぶ人間だなんて評価されたこともあった気がするが、それは仕事面だけの話だ。
人間関係で言えば間違えてしかいない。
だから俺はとても大切で
〜〜〜〜〜
「Roseliaのライブ見るのっていつぶりだろ?」
「FWFの審査の時以来じゃないのか?」
「あー、かもね〜」
「俺は初めてかもな。疾斗と愁は?」
「僕は2ヶ月ぶりかな…。Afterglowのを見に行った時にRoseliaもやってたから」
「俺は………、忘れた!」
「じゃあ疾斗も初めてってことで!」
「いや見たことはあるんだがな?いつ見たかは忘れた」
あはは、疾斗らしいね。ハロハピとパスパレのだったら細かくおぼえてるんだろうけど。…それにしても、気のせいかな?雄弥がどこか張り詰めた感じなんだけど。疾斗が何も言わないし、ここは黙ってたらいいのかな。
「そういえばこうやって全員でライブを見に行くのって初めてじゃない?」
「たしかにそうだな。遊びに行くことはあってもライブを見るのは初めてだな」
「そうなの?てっきり四人の時とかに行ってたのかと思ってたよ」
「いや、あの頃は疾斗が声をかけなかったら遊びに行くなんて事自体なかったぞ。完全に仕事仲間って感じだったな」
「へ〜。なんか意外。ライブの時ってすっごい仲良さそうにしてるし」
「仲自体は悪くなかったんだよ。ただ遊びに行かなかっただけで」
「雄弥がドライだったからな」
「悪かったな」
絶対大して悪いって思ってないよね。まぁ今でも雄弥から遊びに誘うなんてこと滅多にないんだけどさ。
「もっとみんなで遊びに行かないとね☆」
「それなら結花が企画しろ」
「え?私がしちゃっていいの?」
「好きにしたらいいだろ」
「待て雄弥!結花に全部任せたら俺達がしんどい思いするぞ!」
「主に大輝が、だけどね」
「大輝ってそういう担当だしな」
「お前らも少しは手伝えよな!?」
「あはは、大丈夫大丈夫!今考えてるのは旅行ぐらいだから」
「旅行なら…まぁ大丈夫、か」
ふふん、私を考えなしみたいに言っちゃあ駄目だよ?ちゃんと考えるんだから。九州に行ったことないから九州一周とかでいいかな。
「あと20分ほどで始まるな」
「Roseliaはトリやるんだよね?」
「ああ。いつもそうなるらしい」
「で、最初がグリグリか」
「ところでみんな」
「どうした愁?」
「雄弥がどこ行ったか知らない?」
「……あれ?」
さっきまで私の横にいたのにどこ行ったの!?花音みたいなことしないでよ!…あ、でも疾斗のお人好しセンサーが働いてないってことは、迷子とかじゃないんだね。なら後で戻ってくるか。
〜〜〜〜〜
アタシ達の出番は最後。これはいつものことで、グリグリが最初にやることだって珍しいことじゃない。あの人達はレベルが高いけど演奏がポピパに近いから、お客さんも後に演奏する人もテンションが上がる。みんなをノリノリにさせる。
「リサ姉大丈夫?」
「へ?いきなりどうしたの?」
「だってリサ姉が緊張してそうだったから」
「そ、そうかな。…うん、正直に言うと緊張してるよ。練習してきたし、あの曲だって弾けるようになったけど、なんとか間に合ったってぐらいだからね」
「今井さん…」
「リサ。それでも演奏できるわ。私たちがあなたを引っ張ってみせるから、あなたの全てを引き出させてみせるわ」
「友希那…」
「あこも!いつもよりドドーンってやるから!」
「私も…精一杯…やります。だから…大丈夫、です」
「私たちならできます。今井さん、私たちだけができる、私たちの音を奏でましょう」
「みんな…。ありがとう!ぜーーーったいに成功させようね♪」
「当然よ」
あはは!Roseliaはやっぱり最高のバンドだよ!
緊張なんて無くなった。すごい落ち着けてる。大丈夫、これなら雄弥にアタシの、アタシ達の全てを届けられる。雄弥の演奏を、アタシの想いを、全てを込めて演奏できるよ。
「アタシ、ちょっと外の空気吸ってくるね」
「行ってらっしゃーい!」
スタジオの外に出て空気を胸いっぱいに吸い込む。今日は天気がいいし、気分も最高にいいから、いつもより空気が美味しく感じる。
「あれ?雄弥?…っと、誰かと喋ってるね」
あたりを見回したら自分の彼氏がいて、声をかけようと思ったけど誰かと話してるみたいだからそれが終わるまで待つことにした。誰と話してるんだろって思ってちょっと覗いてみたら、グリグリのゆりさんだった。…雄弥って結構交友関係広いよね。
「雄弥くんに会うのっていつぶりだろうね?」
「少なくとも今年は会ってないですよ」
「だよね〜。お姉さんは会いたかったよ?」
「冗談でしょ。あなたがノリで言ってるのは分かりますよ」
「あちゃー、分かられちゃったか。…でも、気にかけてたのはホントだよ?それにしても分かるようになったんだね。久々に会ったけど、成長してるようで何よりだよ。…今は空虚なところもあるけど、成長したものは消えてないからね?」
「……そうですか」
「それじゃ私はそろそろ戻らないといけないから、ライブ見てよ?」
「見ますよ」
「よろしい!それじゃあね〜♪」
ゆりさんは雄弥の頭を乱雑に撫でながらアタシの方を見てウィンクをしてきた。どうやらアタシが隠れてるのは気づかれてたみたい。ゆりさんがいなくなったところでアタシは雄弥の側に行った。
「雄弥」
「ん、リサか。どうした?」
「ちょっと外の空気吸いに来たら雄弥がいたから。…ねぇ、ゆりさんとはどんな関係?」
「ゆりさんとは別に大した関係でもないぞ。SPACEがあった頃にたまたま知り合って、歌詞の作り方を教えてもらっただけだ。…言うなれば師弟関係ってやつか?」
「雄弥ってゆりさんに教えてもらってたの!?」
「最初は軽く話すぐらいだった…というか話しかけられてたんだが。あの時は今以上に空だったからな。気にかけてくれてたんだろ。それで作詞しないといけないってなってたから頼った」
「そ、そうなんだ…。ゆりさんのこと…好きだったの?」
「は?なんで?」
「だってその時の雄弥が人に頼るなんて想像つかないんだもん!」
「そう言われてもな…。別にリサが思ってるような感情は無かったぞ。作詞だって悩んでるのを見抜かれて、それで話したら教わることになっただけだからな」
雄弥の目をジーッと覗き込む。どうやら嘘をついてるわけじゃなさそうだね。雄弥は嘘をつかないけど、夏祭りの時という前列があるからね。優しい嘘をつくかもしれない。
「リサ。俺はもう二度とリサに嘘をつかないから」
「…わかった。……ねぇ雄弥」
「好きにしろ」
「うん」
そっと雄弥に抱きつく。Roseliaのみんなのおかげで緊張なんてない。けど、雄弥にこうやって抱きつくことで不思議と力が貰えてる気がする。出番までずっとこうしていたいけど、雄弥はグリグリの演奏を聞きに行くからそんな長くはできないね。
「ん」
「リサ、気負いすぎるなよ」
「うん。ありがとう」
「それじゃあ、ライブ楽しみにしてる」
「楽しみにしててね!最高のライブをしてみせるから!」
「ああ」
〜〜〜〜〜
リサと別れてライブハウスの中に戻る。何も言わずに外に出たからか、結花に軽く注意された。人と会ってたと言ったら納得してくれたが、それでも少し不満そうにしていた。
「お、始まるな」
「グリグリのライブか。今日来て良かったな」
「私に感謝してよ〜?」
「ありがとーございますー」
「よし、疾斗は帰っていいよ。美咲に迎えに来てもらおうか」
「ごめんなさい」
「茶番もそこまでだ」
挨拶が終わったところで疾斗の茶番も終わらせた。グリグリの演奏はレベルが高い。Roseliaも負けてるわけじゃないが、会場全体を乗せるってことに関してはグリグリのほうが上だろう。
グリグリの演奏が終わり、他のバンドも順に演奏していく。グリグリが作った空気のおかげか、どうやらいつも以上の力を発揮できているようだった。しかし、その流れも長続きはしない。会場は温まっているが、グリグリが作った波はトリのRoseliaの時にはほとんど残ってない。実力が全て現れる。
だが、そんなものは元から関係ないだろうな。Roseliaなら自分たちでまた波を作れるから。
「友希那達が出てきたね!」
「さてさて、お手並み拝見といきますかね」
「成長具合を見れるってのも感慨深いな」
「そうだね」
リサと目が合う。リサは微笑みながらウィンクをしてきた。どうやら心配は何一ついらないらしい。
友希那の簡素なMCが終わってすぐに演奏が始まる。グリグリに引けをとらない演奏が会場をさらに盛り上げる。全員のレベルが高くなっているのはよく分かった。しかし、一番驚かされたのはリサだ。
「リサの演奏って…」
「完全に雄弥の演奏だな」
「本当にやってのけたのか」
「だから言ったじゃん!リサならできるって!」
「リサ…」
聴けば聴くほど驚かされる。リサが奏でる音は俺が出していた音と同じだからだ。俺が出せなくなった音をリサは奏でている。Roseliaで一番下手だと、自分のレベルは低いのだと言っていたリサが、俺のレベルに追いついたのだ。
リサが奏でる音は完全にRoseliaの演奏のリズムを作っていて、今までのRoseliaより断然レベルが高くなっている。おそらく全員が本来以上の力を発揮できているのだろう。だが、それでいて楽しそうに演奏している。きっとこっそり見に来てる日菜も大満足だろう。
「次で最後の曲になります。次の曲はベースのリサが書いた歌詞を基に作った曲です。私たちの可能性を広げられる。そう思える歌詞を彼女は書いてくれた。聞いてください"アングレカム"」
友希那のMCで、恥ずかしそうに頬をかいていたリサだったが、出だしはベースからのようで、友希那に目で訴えられていた。それに頷いたリサは深呼吸してからベースを奏で始めた。
ベースにギターが追いかけるように演奏を始め、その後にドラムが入り、そして最後にキーボードが入る。四つの音が奏でられ始めたらそこに友希那の歌声が乗せられる。
聴いていればよくわかる。これはリサが俺に送っている歌なのだと。リサの想いが全て込められているのだと。
サビに入ればリサはベースを巧みに奏でながら、友希那の声に自分の声を重ねて歌う。俺でも難しいと思うフレーズのはずなのに、それをリサは笑顔で弾きながら歌声を響かせていた。
ラスサビに入ったところで、リサがミスをした。たった一回のミスで、音楽に精通している人じゃないと気づかないようなミスだ。現に来ている客の9割はミスに気づいていない。
だが、そのミスに一番動揺するのはやはり演奏者のリサだ。周りの四人は大丈夫だと音で伝えるが、リサの動揺は消えなかった。気持ちが揺らげば演奏に影響が出る。ラスサビだけだったからまだ救いだった。リサの演奏の質が段々下がっていっていたが、観客に気づかれることなく終わった。
「……」
「雄弥…」
「リサのとこに行ってこいよ」
「
「お前…本気でそう思ってるのか?」
「なんて声かけろってんだよ」
「こんの馬鹿野郎が!!」
「がっ」
「ちょっ大輝!」
あの野郎、本気で殴りやがったな。体がふっ飛ばされたぞ。こいつの本気ってパワーだけならAugenblickで一番なんだが。大輝に視線を送ると、本気で怒っている大輝の姿が目に入った。
「お前はそれでも彼氏か!『なんて声をかければいいかわからない』だぁ?
「大輝の言う通りだぞ雄弥。リサを泣かせたくないなら。傷つけたくないなら側に居てやらないといけない。離れていてどうやって守る気だ?」
「今までリサにしてもらったことを今度は雄弥がする。それでいいんじゃないかな?」
「……それもそうだな」
「あ!ここにいた!」
「あこ?」
Roseliaの控室に行こうと立ち上がったところで、あこが慌てた様子でこっちに駆けてきた。…嫌な予感しかしない。
「雄弥さん!リサ姉が、リサ姉が!」
「リサがどうした?」
「リサ姉が
迷う必要なんてない。あこからそう聞いた瞬間に俺はライブハウスから飛び出していた。
アングレカムは花の名前です。花言葉は「祈り」「いつまでもあなたと一緒」です。