失敗した…失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。
なんで…、今日は間違いなく最高のコンディションだった。いっぱいいっぱい練習して、雄弥のレベルに追いついて、歌詞だって作った。雄弥に完璧に届けないといけなかったのに!
ライブが終わった後、とりあえず私服に着替えたけど、後悔が絶えなかった。友希那と燐子と紗夜はスタジオの人や他のバンドの人と何やら話しているらしくて、その時はあことアタシしか控室にいなかった。後悔が絶えなくて、あこに気を遣わせていることも耐えれなかった。だからアタシは、トイレに行ってくると嘘をついて控室から出て、そのままライブハウスからも逃走した。
雄弥に色んなところに連れて行ってもらったから、色んな人と知り合った。それが今じゃ煩わしい。今は誰とも会いたくなかったから。…誰もいないとこ、どこだろ?
アタシは禄に働いてくれない頭を使うことをやめて、気の赴くままに足を動かすことにした。
どこかわからない所でもいいや。とりあえず、どこかに行きたい。
〜〜〜〜〜
「クソッ、どこに行ったんだ……」
あこに言われてライブハウスを飛び出したが、その後はどうしたらいいかわからなかった。リサが行きそうなところは……。いや、今の状態から考えたらリサが
「人と会わないとこか?……変なとこに行かれてたらどうしようもないぞ」
こういう時は本能に従うはず。怖がりなリサなら路地裏とかはありえない。なら、リサが行きそうなとこと路地裏を選択肢から排除して…、人がいなさそうなところか。
「人がいなさそうなとこってどこだよ。……いや待てよ」
いくつか候補が頭にあがってきた。どこかなんて考える必要ない。全部回ればどれかにはいるはずだ。
〜〜〜〜〜
「ここって……あー、友希那が雄弥を拾ったところだ。…たしかあっちの木に雄弥がいたんだよね」
小学生の時に今井家と湊家とで花見に来て友希那が雄弥を見つけたんだ。小川が見える所だけど、草が茂ってて人が全然来ないんだよね。だから倒れてる雄弥を見つけたのも他の人じゃなくて友希那だったんだ。あの時友希那は退屈そうにしていたから、こういうとこに来たんだよね。
「…ここなら一人でいられるよね」
友希那が言っていた雄弥が倒れていたポイントに、今はアタシが座ってる。茂みに体が隠されて、誰かに話しかけられることもない。しばらくはここにいることにしようかな。落ち着くまでここにいよ。
じーっとしてたら、頭に思い浮かぶのはやっぱりライブのこと。失敗してしまって、その後段々と演奏が悪くなってしまった。ライブ自体はまぁ成功なのかな?お客さんは盛り上がったまんまだったから。
「でも、…そんなんじゃ駄目なんだよ。あんなんじゃ、雄弥には……ぐすっ」
涙が溢れ始めてきた。拭っても拭っても涙が止まらない。最高のライブをすると言った。楽しみにしててねって言った。それなのにアタシはあんな醜態を晒してしまった。
あこがいつもより頼もしくドラムを叩いてくれたのに、紗夜がいつもよりカッコよくギターを弾いてくれたのに、燐子がいつもより優しく包むようにキーボードを奏でてくれたのに、友希那がいつもより激しく、熱く歌って引っ張ってくれたのに!それなのにアタシは!!
「みんな……ごめんね。……ごめんね」
「謝るならちゃんとみんなの前で謝ってやれよ」
「え?」
声をかけられるのと同時に後ろからギュッと強く、だけど優しく抱きしめられた。アタシはそれを認識したらさらに涙が溢れてきた。
だって、だって、
──そうやって雄弥が優しくしてくれるから
「無事に見つけれてよかった。一発で見つけれたし、俺もリサのことを分かるようになってきたってことか?」
「…知らない」
「ははっ、…お疲れさま」
「…っ。…なんで」
「ん?」
「なんでそんなに優しくしてくれるの!?アタシ、失敗したんだよ!?雄弥に最高の演奏するからって、楽しみにしててねって言ってたのに失敗したんだ!?」
「それは俺も同じだろ?俺なんて演奏できなくなってライブ終わったんだぞ?」
「あれは雄弥のせいじゃないでしょ!ハメられたからじゃん!アタシは自分のミスなんだよ!?」
「…それでも俺は最高の演奏だと思ったぞ」
「嘘だよ!だって、アタシは失敗して…」
「嘘じゃないさ。リサが俺に追いついた。そして俺以上の歌詞を書いた。それを見せつけてくれたんだ。最高じゃないって言ったら何が最高なんだよ」
それでもアタシは納得できなかった。泣きじゃくりながら体の向きを変えて雄弥を押し倒して顔をビンタした。何度も何度も叩いた。アタシに怒ることがない雄弥に怒ってほしくて、アタシがライブを壊したのだと言わせるために。
だけど、それでも雄弥は何も言わなかった。ただただアタシに叩かれるのを受け入れた。アタシはもう叩くのも嫌になって手を止めた。そしたら雄弥がすぐに体を起こしてまた抱きしめてきた。頭に手を置かれて雄弥の胸に押し付けられた。
「リサ。全部吐き出せ。悲しみも後悔も何もかも全部だ」
雄弥にそう言われた瞬間胸が熱くなるのを感じた。そしてそれはアタシの我慢を押し切る原動力になった。全てを吐き出すように大声で泣いて、全てを出すように涙が溢れかえる。雄弥に抱きしめられて、雄弥の存在を感じれば感じるほどそれは続いた。今まで耐えてたことも全て流れるように体から出ていった。
〜〜〜〜〜
リサの髪を梳くように優しく撫でているとリサの寝息が聞こえてきた。涙を流しきり、疲れきったのだろう。動かす手はそのままに反対の手で携帯を操作して電話をかける。相手はもちろん友希那だ。
『もしもし雄弥。リサは見つかったかしら?』
「ああ。今は疲れて寝てるから、起きたら連れて帰る」
『そう。安心したわ』
「冷静なんだな」
『そう振る舞ってるだけよ。本音を言うと気が気でないもの』
「…ごめん」
『いいのよ。それで、あなた達は今どこにいるのかしら?』
「…三人の想い出の場所かな。俺は記憶にないが」
『…なるほど。リサらしいわね。今日はもう二人で好きなように過ごしなさい。リサの中で整理する必要もあるでしょうから、明日の午後にでも会いましょうと伝えといて』
「わかった。それと友希那」
『…ちょっと待ってちょうだい』
俺の声色でわかったのか、友希那はみんなに一言断ってから場所を移動してくれたようだ。やはり俺達の姉には頭が上がらないな。
『待たせたわね。それでどうしたのかしら?』
「リサが起きたらさ、……リサに全て話すよ。俺の体のことも寿命のことも」
『っ!……そう。
「ああ。紗夜と日菜にも向き合えって言われたし、何よりリサに見抜かれたからな」
『リサが?…そうなのね。でも気をつけなさいよ。タイミングを間違えたら取り返しのつかないことになるわ。それはあなたも分かってるわよね?』
「ああ。リサが落ち着いてからにする」
『それがいいわね。…それじゃあ雄弥、気をつけて帰ってくるのよ。リサも無事に家につれて帰りなさい』
「わかってる」
友希那との通話を終えて携帯をポケットに仕舞い込む。どのタイミングにするか、どういうふうに話すか。そういったことに頭を悩ませているとリサが目を覚ました。思ってたより起きるのが早いな。
「ゆうや?」
「おはようリサ。少しは落ち着けたか?」
「うん。おかげさまで」
「それはよかった。どうする?もう少しここにいるか?それとも家に帰るか、どこか寄り道するか…」
「雄弥」
「うん?」
「
「っ!?……今か?どこか移動してとかじゃなくて」
「うん、今。今なら周りに誰もいないでしょ?聞かれる心配がないから今の方がよくない?それに…ライブの後って約束してくれたでしょ?」
「そう…だな」
まさか今話せと言われると思ってなかった。果たして本当に今話して大丈夫なのか?リサは今落ち着いている状態なのか?
俺よりは強いリサだが、それでも相当応えていたはずだ。そんなすぐに回復できないはずなのに。…どうする。これで断れば約束を反故したことになる。しかし、言えばおそらくリサはまた荒れる。
「雄弥!」
「……わかった」
どうすれば正解なんだろうな。隠してきたことのつけということなのか。これが湊雄弥という人間が今までの行いで確定させてしまった道なのだろう。後戻りはできない。ならば、俺は今リサと向き合って全て話すしかないのだ。
「リサ落ち着いて聞いてほしい。
──俺は、長生きはできない」
「…ぇ?」
「俺の体は少し特殊でな。怪我の治りが異常なぐらい早い代わりに、寿命を削っていくんだ。たぶん50代後半とかで死ぬ。…だから、もしかしたらリサと一緒に孫を可愛がることができないかもしれない」
「…うそ…だよね?…からかってるの?」
「悪いなリサ。本当のことなんだ」
「嘘だよ…嘘だよ!!だって、…雄弥…ぁあぁぁ」
「ごめんな、リサ」
「うそ…嘘!ゆうやの…ゆうやのバカ!」
「なっ、…リサ!」
リサは俺を思いっきり突き飛ばして涙を堪えながら走り出した。突き飛ばされると思ってなかった俺は体勢を崩してしまい、急いで起き上がってリサを追いかけた。
(やはり、今は話すべきじゃなかったんだ!)
リサよりも俺の方が断然足が速い。だからすぐに追いつくことができる。だが、追いつく場所は決して良くなかった。
リサは無心で走っていて、そのまま横断歩道に侵入した。
信号は
赤色だった。
当然スピードを出してる車が迫ってきて、クラクションが鳴らされる。
「あ……」
「リサ!!」
俺が追いついた場所はちょうどそこだった。
リサと車の間に自分の体を入れて、リサの背中と後頭部に手を回す。車を避ける余裕まではなく、俺はリサに傷ができないように庇うことに専念した。
「ぐっ……」
「ぇ……ゆう、や……?ゆうや!…あ、…あぁぁぁぁ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ゆうや……あたしの……あたしのせいで…あぁぁぁ!うわぁぁぁぁ!」
(リサに怪我は…よかった、見た感じなさそうだ)
俺は薄れていく意識の中でそれだけを認識することができた。
この小説も終盤に入り始めましたね。たぶん、きっと、おそらく。