ゲート Awakening of Cinder Lord 作:溶けない氷
原初、世界は灰だった。
灰の大樹と岩、そして動くものといえば朽ちずの古竜のみの世界。
太陽の王グウィン
最初の死者ニト
混沌の魔女イザリス
そして名も知らぬ 小人達
彼らが王のソウルを見出し、世界が生まれた。
やがて気が遠くなるほどの月日が流れ…
「灰の方、まだ私の声が 聞こえていらっしゃいますか?」
最後に彼女の声を聞いたのはいつだっただろうか…
あれからどれだけの刻が立ったのだろうか?
万か億か…いずれにしろ貴方にとっては微々たる差だろう。
ファルマート大陸
灰神の神殿
かつて、古き世界を終わらせ今代を創りし偉大な神。
名も無き、ただ“灰のお方”と呼ばれた者を祀った神殿がこの大陸にはある。
古来よりこの大陸には多くの神が降臨し、その威光を持って信者を獲得してきた。
だがかの者はただ黙して語らず、“生きろ、ただ己のままであれ”
人に生きる力を与えるという地味な加護。
故にその信仰は薄く、されども古く強大な神であることには違いなく。
故に今もかの火の無い灰に仕える者は決して少なくない。
今日も神の座所としてはあまりにも質素な”灰の祭祀場”に仕える巫女が残り火を見守る。
その先には貴方が眠る無縁柩があるのみだ。
灰の巫女、あるいは火守女とはこの神に仕える巫女の古くからの呼び名である。
嘗て、本物の火守女は不老不死であったという。
使命に囚われ、その務めが果たされるまで繋がれたという。
今世においては人間の信者の乙女の中から選ばれ年度ごとに交代する。
目を隠す礼装も務めと灰祭りの時以外は使われない形式のみの物。
灰のお方はよその神のように形式張ったことが嫌いなのだ。
貴方が眠りより目覚めることなどない筈であった…
「灰のお方、私の声が 聞こえていらっしゃいますか?」
今日も巫女が世の事を貴方に伝えるべく柩の中に身を横たえる貴方へと語りかけてくる。
信者から巫女へ、巫女から信者へと
長い間伝わる彼らの風習だ。
たかが薪の王にこうまでも仕えるとは…
嘗てはただの人間でしかない貴方にしてみれば自信が神として崇められるなど苦笑以外の何物でもない。
王殺し、神喰らい、万物の虐殺者…
神が聞いてあきれる、ただの殺戮機械ではないかと。
真に神ならば全知全能、少なくとも地上の出来事を巫女に頼るなどという間抜けさは晒さぬ筈だ。
だが今日の知らせはいつもとは違うようだ…
「異界への門が開かれました…」
ああ、またハーディの愚か者が余計な事をしたのだと貴方は例の違和感の正体に気づいた。
どれだけ人の世にいたずらを仕掛けるのだろうか、あの神気取りの愚か者は。
嘗ての死の神といえば墓王ニトであったが、あの方はもっと慎ましく威厳ある存在ではなかったか。
貴方は柩の蓋をゆっくりとずらし、外に出た。
貴方が眠りから覚めるとき、世界は再び動乱の時を迎えるであろうという予言のままに。
「行かれるのですね…」
貴方はゆっくりと頷き、再び光の中を歩み始めた。
この世は人の子らのもの、例えそこにどれだけの悲劇があろうとも。
断じて神々が己の欲望のままに乱して良い道理があろうはずがない。
貴方は墓地から歩み始め、祭祀場を抜けてこの世界に再び足を踏み入れた。
「幸運を…灰のお方」
幸運、貴方には縁の無い言葉だ。
だが今から行おうとしている事には必要だろう。
「ハーディ…そしてそれに連なる人界の寄生虫ども…
死にたいらしいな…」
貴方の本来の務め、神殺しを全うする時である。
Cinder Lord
剣と魔法の世界の大量破壊兵器
死んでも死なない