9評価 こうすけ118さん、セメント暮らしさん
ありがとうございました!
また、週間ランキング107位
週間(その他原作)ランキング21位を頂きました。
皆様のおかげで、ここまで来ることが出来ました。今後ともこの作品をよろしくお願いします。
JOKER10
《神高クイズタッグ》予選マルバツ問題。今残っているのは俺と桜のチーム《古典部》を含めて五チームだ。
そして、最終問題。読み上げ嬢も乗ってきたのか、声が何処と無く抑揚している。
『問題、日本では青いルビーが見つかったことがあるか、〇か✕か!?』
青いルビーだって?そりゃもちろん。
五チームはそれぞれ分かれた。そして……
『正解はバツでーす!!!ルビーは赤い宝石のことを指します。それ以外はサファイアに分類されるのです!!!』
『そしてここで予選しゅーりょーー!!!!!決勝進出チームが決定しました!!』
「よしっ!」
「やったね南雲くん!」
しかし、やはりこいつらは生き残ったか。
チーム《二年F組》、チーム《インテリ女の子》……、入須と晴香のチームだ。
俺は晴香に視線送ると、奴は威勢のいい笑顔でこちらにピースを送ってくる。隣にいる十文字は表情が変わらない為何を思っているかはわからないが。
次いで俺は入須に視線を向ける。彼女も俺に気づいていたようで、俺の視線に気付くと軽く笑った。隣にいる江波は軽くお辞儀をしてくる。
『では、バツにいた出場者の方々はステージに上がってください!』
俺と桜は黙って頷くと、ステージ上に上がる。
順番に挨拶が終わり、最後に俺達の番となった。
『決勝進出最後のチームはなんと《古典部》!!昨日の《クイズトライアル》に参加していた生徒も古典部でしたが、古典部には知識人が揃っているようですね!!』
ほとんど答えたのは桜だけどな。
『それではチーム《古典部》、ご挨拶をお願いします!!』
俺はマイクを受け取る。軽く息を漏らし、すぅっと息を吸った。台本通りに進めよう。
「みなさん、《カンヤ祭》を楽しんでますか!」
柄でもないセリフを発する。しかし流石は文化祭効果、観客達は俺の期待以上の大声を出してくれた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
いい歓声だ。だったら俺も、期待以上の働きをしなくてはならない。俺は先ほどより大きく息を吸った。そして
『うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!』
「えぇぇぇぇぇ!!」
観客だけではなく、隣の桜、読み上げ嬢までも驚きの声を上げる。晴香はこの様子を愉快そうに笑い、入須は冷厳な眼差しをこちらに向ける。俺は続ける。
『お前らなぁ《カンヤ祭》の意味分かって使ってんのか!?二、三年は恥ずかしくないの!?こんな生意気な一年に
「知りたァァァい!!!」
威勢のいい声がどこからともなく飛んできた。普段はこういうやからは苦手だが、今となっては助かる。この一声を初めとし、様々な声が飛んできた。
「言われなくても知ってるしぃ!?」「嘘つけ!!」「そう言えば、語源なんて考えたこともなかったな」「教えてくれよ一年!!」「あいつ馬鹿だなぁ」
『カンヤ祭の語源はぁ……』
俺は溜める。観客も答えを待ち望んでいるかのように黙り込み、一瞬体育館中が静まり返った。そして
『秘密です!!』
「なにぃぃぃぃぃ!!!?」
『知りたければ、俺たち古典部の文集を買っていただきます!!文集《氷菓》!!特別等四階地学講義室、または訪問販売で絶賛発売中です!!!』
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
いよし、アピール大成功!!
♥06
す、凄いです南雲さん。今ワイルドファイアを終えた私、福部さん、摩耶花さんは、《神高クイズタッグ》が開催されている体育館に来ています。入ったら丁度南雲さんの《氷菓》のアピールが始まっていたのですが……、こんなに人を惹き付けるなんて……流石です!!
「あいつ、結構やるじゃない」
「僕の目に狂いはなしだね。」
お二人共嬉しそうです。
さぁ!南雲さん、あとは優勝目指して頑張ってください!!
JOKER11
この盛り上がりを逃すわけには行かないと思ったのか、俺からマイクを奪うようにひったくると、読み上げ嬢は言った。
『さぁ!!場も盛り上がってきたところで、決勝戦のルール説明を行います!
問題形式は早押しクイズ、二人一組ですので片方が押して、片方が答える、一人で押して一人で答えるかは自由です。各チームには最初にそれぞれ五ポイントが配布されます。一問答えるごとに三ポイントを手にすることが出来るのですが、ここがこの決勝戦の見どころ!!
その三ポイントをどう使うかはそのチームの自由です!!三ポイント全て自分のポイントにしてもよし、三ポイント全てをつかって
俺たちはそれぞれの台に上る。
『それでは《神高クイズタッグ》、決勝戦!!チーム《古典部》VSチーム《二年F組》VSチーム《インテリ女の子》!!!』
『開始です!!!!』
ちょいと難しいルールだなこれは。最悪の場合二問目で失格になる可能性だってありえるわけだ。桜がいるとはいえ、相手は晴香、十文字、入須、江波だ。油断はできない。
別に《氷菓》のアピールは出来たわけだけど、なぜだかこいつらには負けたくない。桜にも協力してもらってるんだ。全力を尽くして……
俺は入須を見た。あの時の借りを返させてもらいますよ。
ぶちのめす!!
読み上げ嬢が問題を口にした。
『問題、ナポレオン、高砂、佐……』
ピーン!!
桜、入須、晴香の全員が一斉にボタンを押した!!はえぇ……。
『早かったのはチーム《二年F組》、入須!答えを!』
入須は顔色一つ変えずに言った。
「さくらんぼ」
『正解です!!三ポイントをどう使いますか?』
「そうだな……チーム《古典部》からマイナス三ポイントだ。」
チーム古典部五ポイント→二ポイント。
「んな!?」「ええ!!」
俺と桜は同時と言っていいタイミングで声を上げた。なんの迷いとか躊躇もなく俺らを潰しに来たぞあの女……!!
しかし、こんなことを考えている場合ではない。
『問題、栄養価の高いことから、「海のミルク」とも……』
ピーン!!
『またもや早いぞ!押したのは!!チーム《古典部》、南雲!!答えを!』
これは知っている。俺は答えた。
「牡蠣」
『正解です!!三ポイントをどう使いますか?』
「チーム《二年F組》からマイナス一ポイント。俺たちに二ポイントで。」
チーム《二年F組》五ポイント→四ポイント。
チーム《古典部》二ポイント→四ポイント。
「ほう、やってくれるな」
「ふん!」
『なんだなんだ!!?チーム《古典部》南雲とチーム《二年F組》入須の間に火花が飛び散っている!!これは熱い!!つづいていきます!問題、ホテルや旅館に食事などをせずに泊まる……』
「あたしらも忘れてもらっちゃ困るよ!!」
ピーン!!
『押したのはチーム《インテリ女の子》、勘解由小路!!答えを!』
晴香はグッと胸を張り、答えた。
「素泊まり!!」
『正解です!!三ポイントをどう使いますか?』
「どうする、かほ?」
「私たちに入れよう。不毛な争いはダメ」
「おーけー。《インテリ女の子》に三ポイント」
チーム《インテリ女の子》五ポイント→八ポイント
♠︎07
《神高クイズタッグ》の実況が聞こえてくるが、クイズ大会となると《ワイルドファイア》のように俺からは手助けは出来ない。他の奴らも戻ってこないし、《省エネ》に勤しむとするか。
すると、地学講義室の扉から一つの影が現れた。
その影を見て俺は軽く驚いた。
伊原程の背丈に茶髪がかった髪が肩ほどまで垂れ下がっている。頭には黒いカチューシャを着けており、白いワンピースを着ている。
明らかに小学生だ。
そしてその少女は俺に向かって小悪魔のような笑みを浮かべながらこう言った。
「やってます?」
「ああ、でもお前は小学校に戻れ」
冗談めかして答えると、少女は一度ムッとした。
「失礼だなぁ。私はこれでも中学生ですよ!中学三年生です!」
「どちらにしても帰れ。学校はどうした?」
「サボってきちゃいました!」
……
苦手なタイプだな。千反田や伊原とも違うタイプだ。どっちかって言うと姉貴や勘解由小路先輩に似ている。
これ以上の説得は不可能と感じた俺は、言った。
「文集《氷菓》、一部二百円」
「一部くださーい!」
「ん」
少女から二百円を受け取り、代わりに《氷菓》を渡す。少女は振り向くと立て掛けてある椅子を引っ張り出し、俺の横に座った。
そして《氷菓》を読み始める。
「何をしている」
「読むところがないんですもん」
「休憩スペースがあるだろ」
「んもー、《折木先輩》って意外とめんどくさいんですねぇ……」
ん?
「お前、なんで俺のことを知っている」
「知りませんよ?」
「嘘をつくな。今お前は俺のことを《折木先輩》と言ったぞ」
「あー、バレちゃいましたか」
少女は椅子から立ち上がると、再び俺の前にたった。不敵な笑みを浮かべ、座っている俺を見下ろす。
「お前、何者だ……」
少女はわざとらしくその場でクルット回転し、ピースサインを作った後に、口を大きくはっきり動かしながら答えた。
「私の名前は、《
「よろしくお願いしまーす!」
開いた口が塞がらないとは、このことだろう。
♣︎09
熱い。なんて熱い戦いなんだ!!!
知識と知識のぶつかり合い。これこそがクイズ対決だよ!!昨日の《クイズトライアル》なんか比べ物にならない。
今の記録を発表しよう。
チーム《古典部》十七ポイント
チーム《二年F組》十五ポイント
チーム《インテリ女の子》十八ポイント
現状は二位だけど、あの《女帝》がこのまま大人しくしてるとは思えない。でも、次《古典部》か《インテリ女の子》が答えたらほかのチームを邪魔をする理由は見つからないから、《二年F組》が逆転勝利する為には次の問題を答えるのは絶対条件だ。
それにしても、桜さんの知識量は半端じゃない。出だしは遅れていたけど、その後のチーム古典部の獲得得点の七割は桜さんだ。
ハルも読書家なだけあって、押し負けてはいるけど案外答えられる問題もあるみたい。
でも、二人ともまだ一年なだけあって、《神高のローカル問題》に弱い。
次ローカル問題が来たら、確実に取られる。
『問題、総務委員会委員長のフ……』
まずい!!
ピーン!!
『押したのはチーム《二年F組》、江波!!答えを!!』
「田名辺治朗……」
『正解です!!三ポイントをどう使いますか?』
「全部うちに」
チーム《二年F組》十五ポイント→十八ポイント
あっぶなーい。命拾いしたね。勘解由小路先輩に取られてたらここで《神高クイズスクエア》は終了だ。でも……
次で決まる。《神高クイズスクエア》の優勝者が!!
会場の熱気もさらに高まり、隣の千反田さんと摩耶花も緊張してるみたいだ。
『問題!』
最終問題!!
『「小市民シリーズ」など、様々な推理小説を……』
これは!!!全員が動いた!!ハルも桜さんも入須先輩も江波先輩も勘解由小路先輩も十文字さんも!!
ピーン!!!
『お、押したのは、チーム《古典部》、南雲!!答えを!!!』
「米澤穂信!!」
会場が一気に静まり返る。読み上げ嬢は溜める……そして、大きな声で結論を下した。
『正解でーーーす!!!!!ここで《神高クイズタッグ》決勝戦しゅーりょーー!!!!!勝者……』
ハルは勢いよく腕を高々と挙げた。
『チーム《古典部》!!!!』
「いやったァァァァァ!!!!!」
「やりましたね摩耶花さん!!!」
「うん!凄いよ南雲!!!」
千反田さんと摩耶花はハイタッチをすると、視線をステージに戻した。あれ?僕とは?
JOKER12
「やったな桜!!」
「うん!!南雲くん!!」
ばちぃん!!!!
「焼き芋二つ下さい」
《神高クイズタッグ》終了後、園芸部が焼き芋を焼いている場所までやってきた俺と桜は、昼食の焼き芋を購入する。
園芸部の部員は俺に向かって、言った。
「お前運がいいぞ。今日の分の最後の二つだ。お待ちどうさま」
「ありがとうございます。ほい、桜」
「えっと、いくら?」
「ん?いいっていいって、《氷菓》も一緒に売ってもらったし、《神高クイズタッグ》も、お前のお陰で優勝出来たんだ。これくらいしないとな」
「うん、ありがとう」
桜はクシャッと笑った。時折見せるこの顔が、俺は嫌いじゃない。
「んじゃ!消火だ消火!!あれ?」
先程俺に焼き芋を渡してくれた園芸部の部員が、何か困っている。
「どうしたんすか?」
「あぁ、いや。焼き芋を作るのに使った落ち葉を消火するのに、水鉄砲を使ってるんだが……。それが無くなってな。小銃型の奴なんだが」
とりあえず辺りを見渡すが、それらしきものは見つからない。
だが、俺の目にはある一つの、いや、二つのものが写った。これはグリーティングカード。
俺がそれを拾い上げると、不思議に思った桜と園芸部の部員が覗き込んできた。
【園芸部から、AKは既に失われた 十文字】
そして、近くにおいてあった《カンヤ祭の歩き方》は三十三ページを開かれたまま、無造作に置かれていた。
【氷菓完売まで あと百二十部】
次回《十文字事件》