【十二月二十四日 木曜日 十八時十五分】
《神高ホーリー・ナイト》が始まり、田名辺が開会の辞を言い終えたところで、ステージにはアカペラ部が登場した。
参加者全員の視線が体育館のステージに向き、拍手喝采が巻き起こる。
体育館の中も装飾が施されており、工作部と園芸部が合同で作成したプラスチック製の俺と同じ程の背丈のクリスマスツリーがポツポツと飾られている。
サンタクロースやトナカイのコスプレをした生徒達を横目に、俺は歩き出す。
作戦通りなら今頃千反田、里志、伊原、桜、陸山や《協力者達》は《奴ら》の場所にいるだろう。陸山と里志以外には作戦の全てを話してはいないが、まぁあいつらなら上手く立ち回ってくれるはずだ。
俺は目当ての人物の肩を叩き、《そいつ》を体育館外へ誘導する。
体育館から校舎の普通棟に移った。人の気配は一切なく、体育館で行われている《ホーリーナイト》のざわめきのみが微かに聞こえる。俺は普通棟一階の階段に登った。俺は一階と二階の踊り場で立ち止まり、《そいつ》に向かって振り返る。
《そいつ》は階段下で立ち止まっており、階段を登ろうとしない。《そいつ》は笑いながら言った。
「おいおい、勘弁してくれよ。助けなしで階段登れる状態じゃ無いことくらい分かるだろ?」
「そうだったな、悪い」
俺は無言で階段を降り、《そいつ》の目の前まで移動する。そして……
がん!!!
カランカラン……。
という音を立てて、
しかし当の本人は、松葉杖が腕から無くなったのにも関わらず、その場に立ち尽くしていた。本来なら松葉杖が無ければ立てないはずなのに。
そして、
俺は静かに《そいつ》を眺める。冷酷な眼差しと言ってもいいだろう。
《そいつ》は一瞬だけ驚きの顔を見せたが、次の瞬間に薄く笑った。
「いつから気づいてたんだ、俺の足が治ってるって……」
「一昨日だな。俺の知り合いに医者の娘がいてな。その人にお前のカルテを見させてもらった。最初からおかしかったんだよ。お前が骨折したのは夏休みが開けてすぐの九月初旬。四ヶ月も経ってるのに、運動部のお前が松葉杖をまだついてるほど、治療が遅れてるなんてな。加えて、その医者の娘はこう言ってたんだ。『あの程度なら病院に来る必要は無い。薬を飲んで、完治を待て』ってな。おかしくないか?松葉杖をついている状態だって言うのに、そんな言い方は。つまり、
《そいつ》は未だに笑っていた。
「くくく。入須先輩か……第三者に人のカルテを見せるなんて、お医者様の親御さんが聞いたら悲しむだろうな。それで……それがどうした?」
「とぼけるな。お前が《月夜の背教団》のメンバーだって事はもう分かってる。お前らが何をするつもりかはわからんが、ここで終わりだ。大人しく学校側に自首しろ。今なら処罰は軽くなるぞ」
「歩けないふりをしていた事で、俺が《月夜の背教団》のメンバーだと証拠付けるのか?そりゃ不十分だ。生憎、俺は《月夜の背教団》とは無関係だ。歩けないふりをしていたのだって、今日の《出し物》のサプライズって奴だよ。それに……」
《そいつ》はわざとらしく両腕を広げた。
「《月夜の背教団》は何人もいるんだろ?もし俺がそうだったとしても、ほかのメンバーも捕まえなきゃ意味が無いんじゃないか?」
《そいつ》は煽るように俺を見つめるが、俺は至って冷静だった。
「あぁ……そうだな。だからちゃんと、他の奴らもマークしてるんだよ」
《そいつ》の顔からは少しだけ余裕が消えたきがした。
「なに?」
「結論から言おう。《月夜の背教団》のメンバーは合計で十二人。主要メンバー、つまり学校に侵入していたのはその中の五人。だから俺達は、その五人を一人ずつで抑えることにした。一人一殺って奴さ。あとの七人は、そうだな。今頃取り押さえられてんじゃねぇか?」
「お前……なにを……」
《そいつ》は一歩、二歩と後ろに下がる。俺はそれに続き、一歩、二歩と詰め寄る。
「お前が《月夜の背教団》のリーダーだったんだな」
俺はそいつの視線に、自分の視線をぶつけ合わせながら、ゆっくりとその名を口にした。
「黄瀬隼人」
side奉太郎
普通棟二年C組前
「木原青佳先輩」
side天津
普通棟一年B組前
「朱宮優斗」
side入須
特別棟美術室前
「白石明来」
side田名辺
特別棟パソコンルーム前
「小黒朋樹」
side晴
「さぁ……」
「「「「「推理を始めよう」」」」」
《月光下のアベンジャー》編完結まで、あと二話。
次回《月光下のアベンジャー》