投稿が遅れてしまってすみません……、現在就職活動中でプライベートの時間が取れていない状況です。
亀更新にはなりますが、どうぞこの作品をよろしくお願いします!
夏休み開始まで、あと四日
side 桜
退部届けを渡された。
もしかしたら新しく入部した一年生の中で、私が一番仲が良かった子なのかもしれない。
好きな小説の作者が似ていて休みの日にプライベートで遊ぶ時もあった。
私からすれば後輩と言うより友達と呼ぶ方が関係性を現せる。
前期期末試験が終わり、ようやく部活動も再開され文芸部も文化祭に向けて動き出そうと意気込んでいたその矢先、彼女が退部届けを出して部を去った。
理由は分からない。
部員達は淡白だった。
まぁ正直、勢いで入部した部活と合わなかった生徒が本格的に動き出す夏休み前に退部するなんて話は、部活動が盛んな神山高校では珍しくない。むしろそこで自分に合う部活を見つけて、そこで楽しんでくれればそれでいい。それに活動をつまらないと感じる部員と一緒に活動を続けても、お互いにいい利益を産まない。
けど、神代さんからはそんな感じはしなかった。去年の文化祭で文芸部の文集を読んでくれたらしくて、それに惚れ込んで入部してくれた彼女が、なんの連絡もなく部活を辞めるなんて、正直信じられない。
「でもそれって、結局文芸部が自分と合わなかったんじゃないの?」
今私は、同じクラスのナギちゃん。本名、倉沢渚と近くのファミレスに入っていた。
神山高校では前期期末試験が終わってから、そのテストの返却週間が一週間設けられる。一昨日に期末試験が終わり、昨日神代さんが退部届けを提出した。私はその事をナギちゃんに相談していた。
「でもでも、試験前の活動でそんな素振りは一切見せなかったんだよ?それなのに突然辞めるって……なんだかショックだよ」
「本心を隠してたって考えるのが普通でしょ。『私は試験が終わり次第この部活を辞めます』って態度で現すやつがいるもんかさ」
「それはそうだけどさ〜、それに部員のみんなも酷いよ……。せっかく入ってくれた一年生が辞めちゃったのに、惜しい顔をしてる人はあんまりいない」
「来る者拒まず、去るもの追わず。いい事じゃん。あんまり一人に執着してもいいことないよ。その神代って子は、自分の意思で文芸部を辞めたんでしょ?過干渉はするもんじゃない」
「分かってるよ……分かってるけどさ……そう簡単に割り切れる問題じゃないんだ。仲が良かった後輩が理由も説明されずに辞めて、その訳を知りたいと思うのは、いけないことかな?」
「そうは言ってない。簡略化しすぎだ。理由もなしに辞めたってことは、その理由を言いたくないんだよ。それをほじくり返すのはよくない」
「……」
私はメロンソーダが入った結露で濡れたコップを見る。それを軽く拭いて、私はメロンソーダを口に含んだ。
ナギちゃんの言っていることは全て正しい。でもやっぱり、私の中では割り切れない何かがあった。
もし文芸部に問題があったのなら、それを治したい。
そして今度こそ、神代さんが過ごしやすい部活にしたい。
「珍しいね、楓がこんなに引き下がらないなんて。……気に食わないけど、南雲に相談したら?」
その名前が出た途端、私の顔全体が一気に紅潮し、熱くなるのが分かった。なな……!!
「ななな!!!なんでそこで南雲くんが出てくるのかな!!?!?」
「うわ、出たよ南雲オタクバージョン。南雲の名前出すと動揺する癖治しな」
「だ、誰が南雲オタクよ!!」
「あんたよ、あんた。……あいつ、変な所で頭が回るじゃない?去年のクリスマスの《月夜の背教団》の正体もあいつと折木が見破ったんでしょ?もし神代さんが退部した理由を本気で知りたかったら、南雲なら分かるんじゃない?告白の返事待ちなら、半分彼氏みたいなもんじゃん!」
「か、か、か、か……!!!南雲くんは別に彼氏じゃないって!!!バカバカバカ!ナギちゃんのバカ!!」
「ものの例えよ」
でも確かに南雲くんなら、神代さんの退部理由を推理してくれるかもしれない。前に福部くんが言っていた。南雲くんや折木くん、天津さんは神高のホームズだって。
彼らが推理する所を見てきた数は少なくはない。あの三人は凄い。けど……
「ううん、南雲くんには頼らない」
「……なんで?」
私は穏やかな表情で胸に手を当てた。今年の春休みの、月光に照らされた青い桜の景色が、私の脳裏に浮かぶ。
そしてそっと目を開けた。
「言ったんだ、告白した時。『私の隣にいて欲しい』って。私は、南雲くんの隣に居れるようにしなくちゃならないの。……だからの件、私は南雲くんに頼らない。私が推理して、神代さんが退部した理由を突き止める。それが先輩として……桜楓として出来ることだから」
ナギちゃんは、私の言葉に笑みを浮かべた。