氷菓 〜無色の探偵〜   作:そーめん

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お久しぶりです!!
氷菓 〜無色の探偵〜 更新再開します!!

お待たせしてしまい申し訳ありません……!!またボチボチ書いていきます。

また更新まで期間が空いてしまった為、1個前の《You're My Love Story起》から読んでいただけるとストーリーを理解しやすいかもしれません。

ぜひ作者モチベーション向上のための感想、評価をよろしくお願いします!

(ハーメルンのバグか、アップデートかで段落を落とせなくなってしまいました。ご存知の方は対策を教えていただけると嬉しいです)


第三話 You're My Love Story 承

 

夏休み開始まで、あと三日

 

「また明日ね。バイバイ、南雲くん」

「おう、また明日な。桜」

 

次の日の放課後、帰りのホームルームが終わりいつも通り南雲くんに挨拶をした私は、一目散に文芸部の部室、パソコンルームに向かった。

神代さんの退部届を受け取ったのは私ではなく、紛れもない部長だ。その部長から話を聞ければ、神代さんの退部理由を直接聞けるかもしれないし、そうでなくともヒントを得られると私は思っている。

連絡通路を通り普通棟から特別棟に入ると、校舎内は活気に満ちていた。

それもそうだ。前学期期末試験が終わり、夏休み前に与えられた一週間のテスト返却期間は神高全ての生徒が学校にいる。夏休みが開け少し経てば文化祭も盛大に開催されることから、部活動に所属する私達にとっては重要な期間なのだ。

 

廊下や階段で作業を進める生徒の波を縫ってパソコンルームに辿り着いた私は、そのドアを開けた。

ゴオっと冷たい空気が私の顔にぶつかった。夏場のパソコンのオーバーヒート対策で付けられているクーラーの風だ。外から直接部室に訪れた時は天国のように涼しいけど、さっきまで教室で授業を受けていた私にとっては少しだけ肌寒かったので、二の腕を両手で擦りながら部室に入った。

部室にいるのは全員で三人。一人、私と同じ二年E組で文芸部の須藤界人(すどうかいと)くん。一年生の大畑由希(おおはたゆき)さん。三年生の部長、大鹿島彩華(おおかしまさいか)先輩だった。

三人ともパソコンと向き合っており、それぞれが文化祭で出版する予定の文集に掲載する小説の作成に取り掛かっていた。須藤くんは私が来た事に気付かないほどに熱中していたけど、大畑さんは私に気付くとペコりと照れくさそうにお辞儀した。

そして、部長も私に気付く。

 

「やぁ、楓か」

「部長、お疲れ様です!小説の進み具合は順調ですか?」

「んー、私はちょっと手詰まりってとこかな……。今は気分転換に一年生が書いてる小説のプロットに目を通してる。全く、今回の一年生はレベルが高いねぇ!」

 

大鹿島部長は嬉しそうに掛けているメガネをカチャカチャいじった。

 

「ちょっと部長、それ、去年一年だった俺達にも言ってたッスよ」

 

いつの間にかパソコンから視線をこちらに向けていた須藤くんが、伸びをしながら言った。

 

「あれ、そうだったっけ。覚えてないや」

「テキトーな部長だな〜」

「なにをおう!!!」

 

須藤くんと大鹿島部長のやり取りを苦笑いで見ていると、大畑さんが私の方を向きながら言った。

 

「あの、桜先輩。座らないんですか?」

「え?あっ、そうだった。部長、少し聞きたい事があるんです」

「どうした?」

 

視線を須藤くんから私に移した部長は背もたれに身体を預け、腕を組みながら聞いてきた。

 

「神代さんの退部理由って何か分かりますか?一昨日退部届を渡された時、何か言ってませんでしたか?」

 

そう聞くと、大鹿島部長の顔は怪訝なものに変わる。

 

「どうしてそんな事聞くんだ?」

「だって、期末試験前は普通に部活に参加してたのに、突然やめるなんておかしいと思って……」

「あっ、それは俺も昨日から気になってたわ」

 

横から須藤くんが言った。

 

「神代さん。真面目に部活やってたし、去年の俺達の小説を掲載した文集読んで入ってきたんでしょ?辞めるにしても、カンヤ祭までは居るもんじゃないのかな?」

 

須藤くんの言う通りだ。神代さんの入部理由は、去年、私達文芸部の文集に心を打たれたからだと言っていた。そういった理由で入部した神代さんが、どうしてこれから本番である文化祭準備期間前に部活動を後にしてしまったのだろう。

 

どうして、あんなに仲が良かった私に相談せず……。一言くらい、言ってくれても良かったのに……。

 

「そうか、楓は神代と仲良かったもんね」

 

部長が言った。私の方に椅子ごと向き直る。

 

「楓、正直いうと、私にも分からないんだ。夏休み前に部活を辞める部員も少なくは無いけど、テスト期間前までは神代も普通にしてたし、辞めるなんて思いもしなかった。でも、突然の退部届けだったから話し合ったよ。二時間もだ。でも、神代の返答は「ごめんなさい、辞めます」の一点張りだった。なんとか折り合いをつけようと思ったけど、辞めるって言ってる奴を無理に引き止める訳にもいかないしね」

「そう、だったんですね……」

 

神代さんは、大鹿島部長にも退部理由を言っていなかった。

けど、益々分からなくなってきた。退部届が受け渡された一昨日、大鹿島部長と神代さんが長い時間話し合いをしていたのは知っていた。大鹿島部長はおちゃらけた人かもしれないけど、誰にも相談しなかった退部理由を吹聴する様な事はしない。大鹿島部長は、誰よりも部員の事を大事に思っている。

どうして……。

 

「大畑さんは何か知ってる?同じ一年だし」

 

須藤くんが黙って話を聞いていた大畑さんに聞いた。

しかし、大畑さんは目をぱちくりさせながら首を振った。大畑さんはあまり言葉が堪能じゃない。

 

「あっ」

 

大鹿島部長が声を上げた。

 

「楓、ちょっとこれを見てくれ」

 

大鹿島部長に手招きをされたので、部長が向き合っているパソコンを覗き込む。pdf化された様々なデータが並んでいる中、大鹿島部長は一つのデータにマウスカーソルを合わせた。

 

「神代の、テスト期間前に提出された小説の途中経過のデータだ」

「神代さんは小説のデータを提出してたんですか!?」

 

私は素っ頓狂な声を上げる。

テスト期間前、文芸部の文集に小説を掲載する部員は、途中経過を部長に送信するように指示されていた。これが提出されているという事は、神代さんはやはり、文化祭に文芸部部員として参加する予定だったのだ。

 

それに、この小説の途中経過は、文芸部に残っている神代さんの唯一のモノ。もしかしたら、もしかすると、これに退部理由の手がかりがあるかもしれない。

 

「開くぞ」

 

部長言う。私は

 

「ああっ!!ちょっと待ってください!!」

「なんだよ、気になるんじゃないのか」

「まだ心の準備がというかですね!!」

「うるさいな、どうせ見るんだから押すぞ」

「ひいいいい!!!」

 

なんの躊躇いもなく、困惑する私を無視して部長はファイルをダブルクリックした。

いつの間にか私の後ろには須藤くんと大畑さんがおり、私達四人は開かれたファイル、神代さんの小説の途中経過を目にした。しかし……

 

「えっ!」

 

私は再び、素っ頓狂な声を上げた。

 

()()()()白紙だった。

 

神代さんの小説は、途中経過というにはあまりにも進んでおらず。一言二言ほどしか文字が書かれていなかった。

何も情報がないファイル内に僅かに書かれた文字は、《小説のタイトル》、《小説のテーマ》の二つだった。

 

私は、それをそっと読み上げる。

 

「タイトルは……《You're My Love Story》。テーマは、《決して叶わない恋》」

 

『あなたは私の恋の物語』……か。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「決して叶わない恋って言えば、やっぱりロミオとジュリエットなんかが有名どころだよ。いや、人魚姫とかもあるね。まぁ僕は、どっちも趣味じゃない」

 

福部くんは持ち前の巾着袋を肩に背負った。

 

部長から話を聞いたあと、お手洗いで部室を出た私は、ちょうど総務委員会の会議が終わり地学講義室に向かう福部くんと遭遇した。

私は少しだけ神代さんの話をしてみた。神代さんの小説、《You're My Love Story》に書かれていた小説のテーマ、《決して叶わない恋》。それについて連想されるものを福部くんに聞いてみたのだ。

 

「ロミオとジュリエット……人魚姫……。うん、どっちも好きな人と結ばれてない。他にはあるかな?」

「うーん、思いつこうと思えばいくらでもあるけど」

 

福部くんはそういいながらバツの悪い顔をした。

 

「桜さん。悪いけど、《決して叶わない恋》なんてものをテーマにしてる創作物はこの世界にありふれてる。僕は今、思いつこうと思えばいくらでもあるって言ったけど、いくらでもありすぎるんだ。このテーマから君の後輩の小説の内容、それに退部理由を考えようってのは悪手だよ。連想ゲームをするには、埒が明かない」

「うっ!」

 

私は思わず身じろぎしてしまった。福部くんの言う通りだ。そもそも、《You're My Love Story》が神代さんの退部理由に繋がっているという考え自体、私の希望的観測だった。神代さんが文芸部に唯一残したものだったから。

 

やっぱり、上手くいかないなあ……。

今まで、南雲くんの推理を見たり聞いたりした事は少なくない。彼は凄い。誰も思いつかないような考え方をして、物事に真相に誰よりも早く辿り着く。

今回の事も、南雲くんに相談すれば、もしかしたら私を事の結末まで連れてってくれるのかもしれない。神代さんの退部理由を、考えてくれるかもしれない。

 

でも……南雲くんに頼りっぱなしなら、私は南雲くんの隣にいる資格は無い。

 

「僕らも」

 

黙っていた私に向かって、福部くんは口を開いた。

 

「僕らも、大事な後輩を失ってる」

 

福部くんの顔にそっと影がかかった気がした。

きっと、大日向さんだ……。

 

「ハルとホータローはなんとか引き留めようと頑張ってくれたけど、無理だった。二人とも意外と落ち込んでたみたいだから、僕はさっぱりしたような顔で言ったさ。「しかたない」って」

 

福部くんは廊下の窓の外を見る。

 

「でも、やっぱり、僕も辛かったよ。大日向さんは一人で悩んでたんだ。二ヶ月も一緒にいたのに、僕ら五人は誰一人、大日向さんが苦しんでる事に気付かなかった。辿り向いた真相も、気持ちのいいものじゃないって聞いてる」

 

私も、大日向さんが古典部を去った理由を詳しくは聞いていない。

 

「でも、君はまだ間に合うかもしれないんだろ?」

 

福部くんはいつの間にか、こちらを向いていた。

私は頷く。

 

「うん、私は、神代さんを文芸部に連れ戻したい。何かわだかまりがあったなら、それを解きたい」

 

福部くんの目を見据える。そして、言った。

 

「神代さんは……私の大事な後輩だから」

 

福部くんは薄く笑った。そして

 

「そうか、それは素晴らしい事だよ、桜さん。じゃあ、僕から一つだけアドバイスをしよう。大日向さんの時、ハルとホータローは過去の出来事を振り返っていた。もしかしたら、こういう考え方は役に立つかもしれない」

「ありがとう」

 

福部くんは振り返り、手を振った。

 

「じゃあまたね、桜さん。……でも」

「どうしたの?」

「もし……推理を続けていく中で真相に近づいて、その真相が()()()()()()()()()()()()()()()()なんだとしたら、すぐにでも推理を辞めるべきだ。真実を明らかにするのが、良い事とは限らない。もしかしたら、()()()()()()()()()()()()()()()()もある。あと……」

 

福部くんは一度躊躇った。そして

 

「ロミオとジュリエット、人魚姫。さっき僕があげた二つの物語、《決して叶わない恋》をテーマにあげた作品の結末は……」

 

 

 

 

 

 

「そのほとんどが悲劇だ」

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