氷菓 〜無色の探偵〜   作:そーめん

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このような駄作をお手に取って頂きありがとうございます!

これからもよろしくお願いします。

時系列的には遠垣内を騙す数日前のお話。


第八話 乙女と探偵

 こんにちは。桜楓(さくらかえで)と申します。

 

 え?南雲晴はどうしたって!?ごめんなさい、ごめんなさい!今日は私が語り手です。

 

 今日は私と南雲くんのお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あのモッサリ頭のどこがいいの?」

 

 モッサリ!?酷いこういうなぁ、ナギちゃんは……。

 昼休み、私の前の席に座っている私の高校初めてのお友達の倉沢凪咲(くらさわなぎさ)、通称ナギちゃんは南雲くんの方向を眺めながら言った。

 

「別にそういうんじゃないよ、ただ気になるだけで……!」

「それを《恋》という感情の他にどう表現すんのよ」

 

 うーん……なんだろう。南雲くんに対して浮かぶ感情が私にもわからない。今まで人を好きになったこともないし、これがなんの感情なのか……

 

「連絡先くらい聞いたら?」

「と、突然話したこともない芋女に連絡先なんて聞かれたら引かれるに決まってるでしょ!?」

「自分で言うんだ……」

 

 うん。私も悲しくなってきたよ。ナギちゃん。

 

「行くぞお前らァァァァ!!」

 

「「「「「「男気ジャンケン……ジャンケン……」」」」」」

 

 南雲くんの方向から声がする。南雲くん、折木くん、福部くん、その他に男子三人が何やら集まってジャンケンをしてる。

 

「「「「「「ほい!!!!」」」」」」

「よっしゃァァァァァいちぬけぇぇぇぇぇえ!!」

「はい!!南雲喜んだ、おまえのまけぇぇぇぇぇぇぇえ!!!てか、折木の顔がかわってねぇぇぇぇぇぇすげぇぇぇぇぇぇ!!」

「人を感情がないみたいに言うな、ポーカーフェイスだ」

 

「なんで男子ってあんなんで盛り上がれるんだろうね、ナギちゃん」

「バカだからでしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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 放課後。

 

 さて、早速部活だ!私が入っているのは文芸部。元々文章を書くのが好きで、部活動が盛んな神山に入ったらこの部活にしようと入学前から決めていた。

 部活でも新しいお友達出来たし、楽しみだな〜!ルンルン 

 

「桜さん!」

「はい!!」

 

 と、ととととと突然南雲くんが話しかけてきた……!落ち着くのよ楓!!テンパっちゃ駄目!!!

 

「お、おぉ。脅かしちゃったみたいだな」

「なななななななな南雲くん!?どうしたの?」

「実はさ、俺たちの部活で文化祭に文集を書くんだけど、バックナンバーが見つかんなくてさ……。桜さんって確か文芸部だよね?もしかしたら紛れてたりするかもしれないから部室を調べさせてくれない?」

 

 文集?南雲くんも文集を書く部活に入ってるのかな?なんだろう…読書部?漫研?

 

「う、うん。今から部活行くから一緒に来る?」

「あぁ、頼むよ」

 

 私は南雲くんと一緒に教室を出ると、いつも通り部活棟へと足を運ばせる。私はこの放課後の静けさが好きだ。

 かすかに聞こえる運動部の掛け声、文化部達の楽しそうな笑い声、これぞ青春、《薔薇色》だ。

 私は横を歩く南雲くんをチラッと見る。背は私より十センチ程高いが、全体的に体の線が細くいかにも文化系って感じだ。目にまでかかる前髪が廊下の窓から侵入してきた僅かな風で揺れる。

 私はなんでこの人に興味を持っているんだろう。特別顔がかっこいい訳でもないし、言ってしまえば関わったこともそれ程多くない。性格もどちらかと言うと私と同じ地味めだし……普通の男の子だ。

 

「えっと……俺の顔になんかついてる?」

「えぇ!?いや、なんでもないよ!!?」

 

 気づかれてた……!!変な子だって思われた……絶対思われた!!

 ダメよ楓!男の子と二人で歩いた事ないからって動揺しちゃ!ん?放課後の廊下を男の子と二人で歩く……?

 うわぁ……青春だぁ……!

 

「おっす!晴!」

「晴香……」

 

 部活棟への連絡通路で南雲くんに話しかけてきた女子生徒。綺麗な人だな……。学章の色をみるからに三年生、南雲くんのお姉さんかな?

 

「晴〜、なんだこの美少女は〜、彼女か〜?」

 

 か、彼女!?

 

「なぜお前は俺が異性と歩いていると恋人認定になるんだ。ただのクラスメイトだよ」

 

 ゴーン!!

 ただのクラスメイトかぁ……。そうだよね、南雲くんから見れば私なんて……。

 すると、美人さんは私に近寄り肩に手を置いた。

 

「じゃ、晴をよろしくね。かわい子ちゃん」

 

 そのあと、美人さんは普通棟に歩いていった。

 

 私たちはまた足を動かし、部活棟に入りました。そして、部室がある三階までの階段を登ろうとした時……

 

「南雲」

「伊原」

 

 また女の子。知り合い多いのかな?

 

「収穫はどう?」

「今から文芸部に行くとこだよ。お前は?」

「全然……占い研究部も文集を出すって言ってたからもしかしてって思ったけど、私たちの文集はなかったわ。えっと……あなたは?」

「あっ、……文芸部の桜楓です」

「あぁ、だから文芸部に探しに行くのね。じゃぁそっちは頼んだわよ。南雲」

「おう、任された」

 

 伊原さん?ともすれ違い私たちは階段を上る。

 左に曲がって三つ目の教室が私たち文芸部の部室、パソコンルームだ。

 すると……

 

「あら、南雲さん?」

「千反田、お前も来てたのか」

「はい、文集と言ったら文芸部だと思いまして」

 

 また女の子!?しかもこの子もさっきの二人と同じくらい美人……!

 

「僕もいるよ、ハル」

「里志もか……奉太郎は?」

「部室で省エネ中」

「相変わらずだな」

 

 三人が交わす会話の一言一言は短かったけど、そこの会話から三人の仲の良さが垣間見れた気がする。

 三人とも同じ部活?

 

「それよりハル」

「どうした?」

「頭を働かせる気は無いかい?今ならチョコ付きだよ!()()()()()()だけどね」

「は?」

 

 私にも、福部くんの話している意味が分からなかった。

 

 

 

 

 

 

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 福部くんの話の全貌をまとめます。

 

 私と南雲くんが部室に来る前に福部くんと千反田さんは文芸部に訪れて文集を探させて貰っていたようです。

 その途中に文芸部の部員達が頭を悩ませている事に気づいたそうです。

 

 それこそが福部くん作《仲間はずれのチョコ事件》。

 

 昨日の()()()に今年の卒業生が差し入れでブランド物のチョコを差し入れで持ってきてくれました。でも一日で食べるのが勿体なくて、私たちは日に分けて食べようと、部室にチョコを置いて帰りました。

 

 そして今日も食べようと一個ずつ袋分けされているチョコを一個開けたところ……チョコが溶けていたそうです。もう固まっていたらしいので、溶けてから時間がたっていたんだと思います。

 でも、溶けていたのは何個かある内の一つだけ……。こんなことってあるのかな?

 

「あのなぁお前ら……最近なんでもかんでも謎謎言い過ぎなんだよ。人間不信になるぜ?」

「いいじゃない。君やホータローの謎解きは見てて楽しい。それに今回は一年B組唯一の文芸部、桜楓さんも助っ人だ。質問は彼女に聞けばいい」

「ったく、仕方ない。少し考えてるか……そうだな、チョコが溶ける理由は《熱》以外に考えられない、だとすれば簡単じゃないか?パソコンルームの窓は黒いカーテンで覆われてるし、このパソコンルームで熱を発生させられるのはパソコンしかない。パソコンの上、もしくはパソコンの近くに置いてあったんだろ?」

 

 確かに、それくらいしか考えられないよね。私はウンウンと頷く。

 

「すみません南雲さん。その説は残念ながら立証できません……」

 

 千反田さんが申し訳なさそうに口を開く。

 

「チョコが置かれていた場所は《ここ》なんです」

 

 千反田さんが指を指した場所はパソコンが置かれていない机。書き物がある時に使う机だ。確かに………あそこに置かれてちゃパソコンの熱じゃ溶けないよね。

 

「それにパソコン熱で溶けたっていう理由だと、文芸部の皆さんが帰ってからもパソコンは起動していたことになる。シャットダウンされていたのは確認済みさ」

「む。桜さん。昨日パソコンルームでいつもとは違うこと、なにかおかしな点とかなかった?」

「それなら」

 

 答えたのは私ではなく、私より早く部室に着いていた部長だった。

 

「昨日はパソコンのバッテリー交換で用務員さんが入ったらしいよ。ノートパソコンだからね」

()()用務員さん関連ですか」

 

 千反田さんが不意につぶやく。また?前も用務員さん関連で何かあったのかな。

 

「それにしても楓、あのチョコ美味しかったね〜」

 

 同じ部員の一年生が話しかけてくる。

 

「ううん、私は勿体なくてまだ食べてないだ……。だから()()()()()()()()()()()()()()

 

 あれ?だとしたらなんで昨日私が使ってたパソコンの上にチョコが置いてないんだろ?

 

「ん?桜さん。パソコンの上にチョコ置いたの?」

「あ、いやいや。シャットダウンしたあとのパソコンの上だよ!だからパソコンの熱は関係ないよ!」

「ふむ……」

 

 南雲くんが顎に手を置く。なにか考えてるのかな? 

 

「その他になにかありませんでしたか?」

 

 南雲くんは部長に問うと、部長は少し考えたあとに答えた。

 

「そうだなぁ。あー、でもさっき君たちが来る前に用務員さんが部室にやってきたよ。『君たち危ないよ』って言ってきてさ、何のことかさっぱりだったけど」

 

 『君たち危ないよ』……?なんだろう、私もさっぱり……。

 

「あぁ、そういう事か」

 

 え?

 

「おっ、なにか思いついた顔だね」

「南雲さん!!謎が解けたんですか!?」

 

 グイッと南雲くんに千反田さんが近寄る。ち、近すぎない!?

 

「あぁ!この一つのチョコはやっぱり触れてたんだよ。パソコンに」

「南雲くん、それってどういうこと?」

「このパソコンルームのパソコンは全部ノートパソコンさ。シャットダウンが終わったあとに最初にする行動はなんだ?」

「えっとパソコンを閉じる」

「もしその時にパソコンがシャットダウンされていなかったとしたら?」

「だからさっきから言ってるだろハル。パソコンのシャットダウンは確認済みさ。」

「そりゃそうさ。バッテリーを入れ替えたんだからな。用務員さんがバッテリーを入れ替えたのは文芸部の皆んなが帰ってから、すべてのパソコンのバッテリーを交換していたのなら、シャットダウンされていないパソコンに気づいても不思議じゃない」

 

 なに……?

 

「そして、用務員さんが文芸部の部長さんに言った『君たち危ないよ』というのはシャットダウンされていないパソコンが熱くなっていたから。誰もいないパソコンルームのパソコンがシャットダウンされずに発熱してたら、そりゃ注意するだろ?言葉足らずだったみたいだけどな。」

 

 なんなの……?

 

「そして、桜さん以外の部員は昨日のうちにチョコを一つずつ口にした。しかし桜さんだけは食べるのを躊躇ってパソコンの上にチョコを置いて帰った。用務員さんはバッテリー交換時にシャットダウンされていないパソコンの上にあるチョコに気づき、余ったチョコが置かれている書き物机に溶けたチョコを移した。つまり……」

 

 南雲くんは私をビシッと指差し、バカにするように笑いながら言った。

 

「犯人は君だ。桜さん!」

 

 なんなの……この人〜!!!

 

「そういう事だったのね、楓〜……!!!」

 

 部長の顔が怖い。まずい!

 

「パソコンの電源はちゃんと切りなさ〜い!!!!」

「ごごごごごごめんなさ〜い」

 

 

 

 

 

 

 

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 はぁ、酷い目にあったよ……。

 まぁちゃんとシャットダウンしなかった私が悪いんだけど…部長もあんなに怒んなくてもいいじゃ〜ん。

 

 教室に忘れ物をした私は、夕日に照らされる教室を眺める。

 夕陽、綺麗だなあ。

 

 私はポケットから携帯を取り出すと、カメラモードを起動する。そして携帯のカメラ越しに夕陽を眺めると……

 

「うっす」

「南雲くん!?」

 

 カメラ越しに南雲くんが映っていた。

 

「お前も反応が大袈裟だな。さっきはコテンパンに怒られてたな。はは、ご愁傷様。」

「うぅ……。それで文集は見つかった?」

「ん?あぁ、なかったわ。だからお礼だけ言いに来た。連れてってくれてありがとな桜」

 

 あれ?今まで「さん」付けだったのに。

 

「それで何撮ろうとしてたんだ?」

 

「え?ああ!なんでもないよ!!ほんとになんでもない!メールを返してたんだって!そ、それはそうと南雲くんってなんの部活なの?文集ってなんの?」

「言ってなかったっけ?古典部だよ。まぁ最近まで部員ゼロだったらしいし、知らないのも無理ないか。奉太郎も里志も千反田も伊原もそうだぜ」

 

 古典部……へぇ、日本文学に興味があるのかな?なんか意外だ。

 

「んじゃ帰ろうぜ」

「あっうん。お先にどうぞ」

「え?」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

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 あわわわわわわわわわわわわ……!!!

 お、男の子と一緒に帰ってる。青春だぁ、薔薇色だぁ……!!

 

「じゃぁ俺こっちだから」

 

 あれ!?校門出て右と左で速攻お別れ!?

 はぁ、ツイてない……。もう少しお話してみたかったなぁ……。

 その時、昼休みにナギちゃんが私に言った言葉を思い出した。

 

 『連絡先くらい聞いたら?』

 

「あのさ!!南雲くん!」

「なんだ?」

「れ、連絡先…聞いてもいいですか?」

「いいぜ」

 

 即答!?

 

「ほれ」

 

 南雲くんは携帯電話を私の方へ向ける。

 

「あ、うん、宜しくね!」

 

 私は自分の携帯を南雲くんの携帯に重ねた。

 

 ピロン、《新しい連絡先 南雲晴》

 

 私が南雲くんに抱いてる感情が《恋》なのかは分からない。それはこれから見極めればいい話だ。

 でも、今日は南雲くんの色んな面を見れた気がする。なんだかそれが、とてつもなく嬉しかった。

 

 南雲くんは、やっぱり面白い。




文集《氷菓》を見つけた俺たちだったが、三十三年前の謎はまだ明かされないままだ。

俺たちは、《氷菓》を古典にするため、事件の真相を探ることに…

次回《それぞれの色》

僕は人を貶す時は、君は無色だっていうよ。
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