アズールレーンカッコカリ   作:文系グダグダ

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「はーい指揮官、あーんして」

 

 ある昼下がり、応接机でローンがお弁当のおかずを指揮官に差し出す。

 今日の秘書艦はローンが担当しており、昼食を取りに食堂に向かおうとした時に、ローンに呼び止められた。

 

『指揮官。今日は私、お弁当を作ってみたんです。いかがでしょうか?』

 

 指揮官が断る理由もなく、その場に居た、ベルファストと高雄にはそのまま食堂に行ってもらい、本日はそのまま執務室での昼食になった。

 

「指揮官、お味の方はどうでしょう?」

 

「ああ、美味しい」

 

「よかったぁ」

 

 指揮官の言葉にぱぁ、と笑みを浮かべ嬉しそうにするローン。

 今この場には指揮官とローンの2人しかおらず、他の艦船達は出払っており、二人きりのランチタイムとなっていた。昼食時のローンは指揮官の隣に陣取り、楽しそうに指揮官の様子を眺めている。

 

「ごちそうさま、ありがとう。ローン」

 

「フフッ、お粗末さまでした。

 一服、如何ですか?」

 

 昼食が終わり、お弁当箱を片付けたローンは自分のカバンから缶を取り出し蓋を開ける。

 どうやら中身は紙巻きたばこであり、ぎっしり詰まった中から器用に1本を取り出して指揮官に差し出した。

 職業柄、タバコも嗜む必要があった指揮官は拒否するそれを理由もなく受け取る。

 

「はい、どうぞ。すぐコーヒーをお持ちしますね」

 

 指揮官が口に咥えた所で、ローンは懐からイムコライターを取り出し、ずいと指揮官に肩と肩が触れ合うような距離まで近づき、指揮官が動くまでもなく火をタバコに近づける。

 その後、部屋の片隅においてあるコーヒーメーカーからコーヒーを持ってくる。

 

 指揮官はゆっくりと息を吸い、タバコの火が燃えすぎないようにそっと息を吐き出す。

 タバコの香りの他にもウイスキーらしいほんのりとした風味を指揮官は感じた。

 

「はい、コーヒーですよ。タバコ、わかっちゃいました? 良いウイスキーがあったんで、ブレンドしたんです」

 

「へえ、どこのタバコなんだい?」

 

「手作りです。今は昔と違って、色んな物がありますね」

 

 2つのコーヒーカップにコーヒーを注ぐローン。

 彼女がここに来て、すこしばかり大変なこともあったが、今ではこの母港に欠かせない存在にもなってきた。

 

「しかし、まさか私がこんな事をするなんて思っても見なかったです。

 戦場で敵を切り裂き、命を刈り取る事も好きですけど、他にもっと充実感を得られるなんて……」

 

「そう言ってもらえると、引き止めた甲斐があってよかったよ」

 

 指揮官がそう言うと、ローンは肩を寄せて指揮官にくっついた。

 

「確かに指揮官の言った通りでした。ただ戦場で殺すだけなら機械にだって出来ますし、感情なんて必要ありません。

 自らで考え、感情を持ち、色んな物に興味を持つからこそ……創造し、より満足した充実感を得られる……それが生命

 今では指揮官のそばにいると私、戦場で本能の赴くままに殺し、切り裂いて、灰燼に帰し、踏み躙るそれらよりも充実感を感じるんです」

 

 指揮官の言葉の端々にも現れてはいたが、開発直後はローン自身の独特な価値観に手を焼いていた。

 赤城や加賀の例もあり、何らかの改善をする必要があった。指揮官個人の思惑としては、艦船少女達に内心でどう思われていようと構わない。が、それが戦闘時のパフォーマンスにまで影響してしまってはたまったものでない。

 

 指揮官に与えられた役割は、彼女たちを使い、作戦を遂行させる。それが役割であるが故にだ。

 人の理を超えた彼女たちの存在に対して、信用と信頼を得ることはたやすいことではない。

 勿論、同じ同業者の指揮官や大本営等、別の軍の管轄に対しても言えることなのだが……。そこには見える努力も見えない苦労も多分に含まれている。

 相手が感情のない完全なAIでも無い限り、如何に過酷で荒んだ環境であっても、時間をかけて地道に整えていけば、やがては自分にとって居心地の良いものへと変容させることができる。

 指揮官はそういった事を理解し、実行できる程度には学を修めていた。

 

「指揮官、実は私指揮官に謝らければならない事があるんです」

 

「? どういう事だ」

 

 一本目タバコが短くなり、灰皿に置いた指揮官に対して、流れるようにローンは追加のタバコを差し出す。

 そのまま吸口を咥えると、さっと火をつけ、紫煙を吐きだす。

 ローンはそのまま指揮官の腕をとり、そっと抱きしめた。

 

「実は私、建造途中であってもある程度は意識がありまして。開発中私の元に足繁く通う指揮官のお話を聞いているんです。だから指揮官のあの態度には私も心動く物があったのです。今まで黙っていて、ごめんなさいね」

 

 

 

   ■   ■   ■

 

 

 

「開発ドック?」

 

 指揮官の疑問に工作艦明石は元気良く答えた

 

「そうにゃ! 諸事情によって建造されなかった子を現代へと蘇らせる。それが開発ドックにゃ」

 

 指揮官は明石の熱弁を聞きながら、カタログを見る。

 個人的には、鉄血のヒンデンブルグやロイヤルのライオンみたいな艦が気になったが、現時点ではカタログに載っておらず、少しばかり残念であった。

 

「それで、指揮官はどの艦を選ぶのにゃ?」

 

「ん~、カタログスペックを見る限りはどれも魅力的だなぁ」

 

「むむむ、早く決めてくれないと他の指揮官に出遅れるよ」

 

 夕張に急かされるも指揮官は顎に手を当て思案するばかり。このままでは当分決まらないだろうと明石と夕張が思ったその時であった。

 

「指揮官? 何見てるの?」

 

 プリンツ・オイゲンが指揮官が見ていた開発感のカタログスペックを取り上げる。

 

「ふーん……指揮官、私この娘が良いわ」

 

 暫くそれを読んだ後、指揮官にあるページを見せた。

 

「鉄血の重巡洋艦、ローンか」

 

「そう。指揮官、見た感じ誰かを選ぶのに悩んでたようだし、どうせ急かされてサイコロで決めるくらいなら私が決めるわ」

 

「ぬぅ……そう言われては仕方がない、じゃあそれにしよう。

 明石、夕張。これから忙しくなるだろうが、よろしく頼むよ」

 

 

 

 ――それから数日後、母港の工廠に開発ドックが新造され、ローンの研究と開発が始まった。

 

 

 

「指揮官、ここが開発ドック。

 突貫工事で作ったばかりだから散らかってるけどごめんね」

 

 夕張に連れられた指揮官が案内されたのは新設された開発ドックに指揮官が足を踏み入れる。

 中は見たことがない機材で埋め尽くされており、電源ケーブルや配管が壁や天井付近に張り巡らされていた。

 

 LEDに照らされた中、人が入れそうな容器の前に明石がいた。

 

「指揮官、待っていたにゃ」

 

「これが開発ドックか?」

 

「そうにゃ、開発に必要な項目はコレにまとめておいたにゃ」

 

 明石は指揮官にバインダーを手渡す、バインダーには必要な物資と戦闘データ等が書かれていた。

 

「そうか、キューブ及び資金は構わん。倉庫から出せ、改造図も今持っている位なら問題ないな。全部持っていくといい。

 所で、戦闘データとは……?」

 

「早い話、巡洋艦で戦闘を行ってほしいのにゃ。記録機材はこっちで用意しておくから思う存分暴れてきてほしいのにゃ」

 

「なら、ケーニヒスベルク級と、ドイッチュラント級、アドミラル・ヒッパー級を使うとしよう。彼女たちには私が説明しておく」

 

「それはありがたいにゃ。収集データによってかかる時間は左右されるけど、頑張って見るにゃ」

 

「ああ。そっちも苦労をかけるが、開発を頼む」

 

――次の日

 

 明石が戦闘データを入力していた頃だ。

 開発ドックの扉が開く。明石ははて?と疑問に思った。夕張は先程外出したばかり、忘れ物でもしたのかと明石は考えた。

 

「明石か。済まんが邪魔をする」

 

 中に入ってきたのは意外な事に指揮官であった。

 指揮官は地面に這われたケーブルを跨ぎながら、ローンが入っているであろう容器の前に立った。

 

「進捗の方はどうだ?」

 

「指揮官が戦闘データ以外の物資を全部使わせてくれたおかげで肉体はバッチリにゃ。多分眠ってる状態にゃ

 後は艤装の構成と調整くらいにゃ」

 

 指揮官はそうか、と返してじっと容器を見る。

 

「指揮官? 流石に容器は透けさせたら強度の問題があるから姿はまだ見れないにゃ」

 

「ああ、そうだな……」

 

 明石の言葉に指揮官は同意するも、翌日にはまた開発ドックの様子を見に行く指揮官が目撃された。

 

「杞憂であるのはわかってはいるが……」

 

 明石も夕張もいない開発ドックの中、指揮官は思わず一人呟く

 

「あるツテを使って、君の事は調べさせてもらった。いい話も、悪い話も。

 だが、私は方針を変えん、このまま早急に建造する。今から貴様は私の指揮下に入る。今後は前衛部隊の一員として行動して貰う事になるだろう、覚悟しておけ。」

 

 この次の日も指揮官は様子を見に行き、だれもいない開発ドックの中で、母港の状況や運用方針を淡々とつぶやく。まるで目の前のローンに言い聞かせるように。

 

 指揮官本人としては、早めのコミュニケーションのつもりであり、あるいはシミュレーション代わりではあったが、幸か不幸かその言葉はそのままそっくり彼女に聞かれてたとは、思ってもいなかった。

 

 

 

   ■   ■   ■

 

 

 

「そうか。開発ドックはそのような感じになっていたのか」

 

「はい、指揮官はサン・ルイの後にもモナークを建造途中だとお聞きしております。

 その時もたまには開発ドックに足を踏み入れてあげては如何ですか?」

 

「わかった。ありがとう」

 

 指揮官は時計を見る。今日は明日の大本営での会議があるので、昼から母港を発たないといけなかった。

 吸いかけのタバコを灰皿に置き、立ち上がる。

 

「あら、もうこんな時間。お昼休みの内に早くここから出発しないといけませんね。

 私、見送りたいです。いいでしょうか?」

 

「ああ、かまわないよ」

 

 指揮官は出張用のカバンを取りに執務机へ、ローンは指揮官の上着を取りに棚に向かう。

 

「まだこの季節は外は暑いでしょうから、上着はお持ちしますね」

 

「わかった。ありがとう

 母港内の滑走路の搬入口付近でブルックリンが待っている筈だ」

 

 二人は執務室を出て、滑走路に向かった。

 滑走路と言っても別に何のことはない、小規模の管制塔の無い簡素な物である。

 今は大本営から遣わされた小型機がぽつんと待機しており、指揮官が搭乗次第、いつでも発進できる態勢でいた。

 

「すまん、待たせたか?」

 

「いいえ、問題ありません」

 

 ブルックリンの姿を見つけると、指揮官は足早に彼女の元に向かう。

 彼女の左手には誓いの指輪が嵌められており、ローンにとってはそれが不愉快であった。

 少しばかりの打ち合わせを彼女と行い、問題がなかったのか指揮官は再びローンの元に戻った。

 

「はい」

 

「申し訳ないな、ここまで見送って貰って」

 

 ローンにから上着を受け取った指揮官に対して、ニコリと彼女は笑みを浮かべた

 

「秘書艦も中途半端な時間に終わらせてしまった」

 

「大丈夫です、指揮官。コレは仕方ないことですから。

 お仕事、頑張ってくださいね」

 

 ローンが手を振る中、大本営での会議の為に指揮官はブルックリンと共に飛行機に乗り、母港を出る。

 扉が閉じ、見えなくなろうとした頃、ローンは静かに呟いた……

 

「こういうのって……許せないよね」

 

 

 

   ■   ■   ■

 

 

 

 会議が終わり、帰路につく指揮官とブルックリン。

 会議の内容としてはこちらが軽んじられる事も無く、程々だと指揮官は思う。他の母港の人間とも有意義な話をすることも出来たし、個人的にはここ数日の母港を空けての遠征は成功だとも言えた。

 

 隣には席にはすやすやを寝息を立てるブルックリンが居る。人手の都合上、慣れない人の世界に彼女を連れ出して負担をかけてしまった事には少しばかり申し訳ないが、彼女はこの遠征で大きく役立ってくれた。

 

「ブルックリン、そろそろ母港に着く。起きておきなさい」

 

 自分の母港が指揮官の視界に入ってきた。

 彼はブルックリンの方を掴み、軽く揺さぶる。

 

「ん……指揮官、すみません」

 

 本人も寝ていたことに気づいておらず、意識が戻った時にはハッとした表情を浮かべている。

 

「かまわないよ」 

 

 がくんと小型機が滑走路に着陸し、ぐんぐんと速度が落ちる。

 窓からは指揮官の帰りを待っていたのか、艦船達が今か今かと待ち構えているのが見えた。

 演習や委託から帰ったばかりであるのか、艤装を展開したまま者も見受けられる。

 

「じゃあ、帰ろうか。みんなが待ってるみたいだ」

 

 エアステアを降ろしてもらい、指揮官は機外に出る。

 

「指揮官! おかえりなさい!」

 

 他の艦船よりも早く指揮官の下へ走る者が一人、パタパタと艤装を着けたまま走るローンに対して、指揮官は笑顔でこれを受け入れる。

 後ろの艤装も指揮官を見つめたまま、指揮官に近づきじいと見つめ、指揮官の持っているブリーフケースを咥えて器用に頭の上に置いた。

 

「わたし、なんとかして帰ってきた指揮官を癒やしたくて……だから、その……

 ハグ、していいですか?」

 

 普段から時折、委託から帰投してきた駆逐艦に対して労いを込めてハグする事があった彼女だが、まさか自分もされるとは思って見なかったようで、指揮官は驚いた表情をみせた。

 が、それも束の間、指揮官は笑みを浮かべて、両腕を広げて受け入れる体勢のローンへ身体を預けた。

 

「ただいま、ローン」

 

「おかえりなさい、指揮官」

 

 がっちりと腕を指揮官の背中に回し、指揮官の言葉に応えるローン。深く抱きしめ合う形で指揮官は彼女の表情は見えなかったが、その声色からはとても嬉しそうだと感じた。

 

――しかし、実際はそうではない

 

(ああ、わたし……指揮官を独り占めしてる! 他の娘がわたしに嫉妬してる……ああっ!)

 

 ローンと指揮官の行動に驚愕を見せる艦船達に対して、彼女は勝ち誇った笑みで彼女達を見ていた。

彼女の蛇のような艤装は砲口を向けて、もしも邪魔立てするならば容赦はしないといった様子で威嚇している。

 

 古参勢の嫉妬からくる視線を浴びて、彼女は萎縮するどころか、高揚とした感覚を得ていた。

 

「指揮官、お願いしてもいいですか?」

 

 火に油を注ぐべく、甘えるような声で指揮官に話しかける。

 

「どうした?」

 

「私もギュッとして欲しいです。それで頭も撫でて欲しいです」

 

「ええと……これでいいのか?」

 

 指揮官は腕を彼女の背中と後頭部に回す。その動きは少しばかりぎこちないものの、彼女の頭を撫でる。

 

「はい、ありがとうございます」

 

 さらに増す嫉妬の視線を浴び、満足そうにしてローンは視線を向ける。

 その視線の先には一段と嫉妬を帯びた視線を向ける艦船がいた。

 

(……許せない! あのカエル女(サン・ルイ)、この前、指揮官が優しいからって抱きついてた)

 

 殺意すら籠もった視線を向けるサン・ルイに対し、ローンは満足した表情を浮かべ、指揮官を開放したのであった。

 




鬼ごっこ(ガチ)シチュエーションについて完全に同意なので初投稿です

自由になった途端、開発艦をぶち込む畜生の図
仕事が忙しくなって困る

初期プロットではサン・ルイとギスギスやろうと思いましたが、モナークの開発始めたのでせっかくだから独仏英でやりたいので後回し

ローンの何がポイント高いって委託やタッチとかの一部ボイスがすごいまともなのがポイント高い。好感度が大きくなると殺戮よりも指揮官に寄せてくれてからのケッコンボイスとかほんとすき。アニメ版エルフェンリート最終話のルーシーのシーンぐらいすき
というわけで、ローンはこんな感じになりました。
うーん、作中の人数増やそうかな?できるだけ少なくするままでいいかなぁ……?

ヒンデンブルグとライオンに関しては戦艦少女のアレ
デザインくっそ好きなんじゃ

どうでもいいけど小生は艦これ、戦艦少女、アズレン掛け持ちです、ハイ
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