アズールレーンカッコカリ   作:文系グダグダ

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「ブルックリン、着任しました。よろしくおねがいします」

 

「ああ、よろしく頼む。

 率直に言えば、この母港も立ち上がったばかりで、何もかも足りない状態だ。

 何かと不便や苦労を掛けると思うが、よろしく頼む」

 

 無事に大本営からの支援として艦船と物資が届いたことに内心で安堵しながら、指揮官は応えた。

 指揮官に与えられた権限は艦船少女達を指揮する他にも、支援物資・艦船の要請が行える。

 この指揮官の母港となる基地はまだ立ち上がったばかりで、資金や建造を行うための物資が心もとなく、やむを得ず支援要請を活用した。

 ただ、これらの支援要請は無制限に行える筈もなく、大本営と指揮官との間に置いて、勲章という仮想通貨を用いた取引が必要になる。

 

「ではこの書類を確認してください。以上の品目で間違いないでしょうか?」

 

 ブルックリンは支援要請についてこの母港に送り届けられた物資の詳細が書かれた書類を指揮官に渡す。

 品目については各種設計図をメインとしており、他にも強化・改修パーツや食料も記載されている。

 ブルックリン自身もその品目であり、支援要請に従って、この指揮官のもとに着任する形となった。

 

(私の命令はこの母港での業務……そして、指揮官の調査。

 民間からの特殊な事情により戦時徴用された彼はその情報の割にあまりにも不可解な点が多すぎる。

 指揮官に隠された内情を暴いて、我々に対する脅威を消し去らねば……)

 

 支援要請に従って着任する際に、大本営の上層部より直接の命令書が彼女に渡されていた。

 曰く、彼は民間からの戦時徴用での着任であるが、不審な点が多数見受けられた。

 

 例えば、着任から間を置かず艦船専用の寮舎やドックを大きく改築したこと、これらは拡張させる為にダイヤとコインを言う擬似的な通貨を必要とするはずだが、改築するためには時間をかけて集める必要があり、この指揮官はあまりにもそのスピードが早すぎるという点。

 次に、艦隊の拡充度の度合が挙げられる。

 立ちがって間もない母港ではあるが委託や任務をこなすのは必要なことである。勿論この指揮官も規定に従い仕事を行っているが、委託艦隊や任務の遂行速度と艦隊の拡充速度が釣り合わないという疑惑がある。

 

「ああ、問題ない。支援要請に応えたことに感謝する」

 

(そして、勲章の数もこの基地の活動に対して釣り合っていない……

 指揮官、貴方は一体何モノなのか? 無能か有能か確かめると共に、その化けの皮を剥がさなくては……)

 

 ぐっと右の拳を握りしめ、ブルックリンは使命に燃えていた。

 

 その時、ブルックリンの視界がぐるんと揺れて、暗転する。

 本人がそれを自覚する間もなく、場面はビデオテープを早送りするかのように移り変わった。

 

 ブルックリンの着任後しばらく経ってから行われた、新規に着任した指揮官のお披露目も兼ねた観艦式と航海演習。それに参加できるのは新任指揮官やベテラン問わず、上層部によって選別された優秀な指揮官である。上層部擁する大本営に選ばれた彼らは、期待と共に出世への街道が開かれたと言っても過言ではなかった。

 

 ――指揮官が無能か有能か判明する機会は意外なことに早く訪れた。

 

「指揮官、ヘレナから連絡が来ました。無事に当母港の艦隊は観艦式会場となる海域に到着したようです」

 

「そうか、各艦に持ち場につくように、それと装備も故障や異常がないか再度確認を取らせろ」

 

「了解しました」

 

 指揮官はブルックリンにそう指示を出して執務室での作業を続けた。

 

(無能では無いものの、観艦式に選別されるほど優秀でもない……現実は味気の無いものだ)

 

 上層部直々に警戒されてるとなると、当初はこの指揮官は余程の怪物なのか……と憂慮していたが、事実とは異なる結果に内心で落胆するブルックリン。

 指揮官は上層部の望みに適った人材でないと選別され、観艦式には招待されず、母港にて執務を執り行っていた。

 しかし、場の賑やかし程度に観艦式を行う海域への出撃命令は届いており、艦隊を送り込んでいる。

 指揮官は黙々と情報端末と書類に視線を行き来させる中、秘書艦としてブルックリンもその補助にあたっていた。

 

(しかし、この指揮官が行っている行為についてはある程度の考察は完成しつつある。

 内政型の人間であるが、どう考えても彼の背後には民間が立っているとは思えない)

 

 ブルックリンはこの指揮官の調査を進めると共に様々ことがわかってきた。

 そのうちの一つはこの母港に入ってくる物資の量。軍の支援物資や必要な軍需物資の他にも民間から注文された民需品が軍用輸送機から多数送り込まれている。

 民間からの品物は嗜好品や喫食として食料の他にも、それぞれの陣営に合わせた食器・生活雑貨が存在している。軍需物資の注文も民間からの購入も軍資金を使うことは出来るものの、嗜好品や生活雑貨等の明らかな私物品となりうるものに関しては規制が引かれている。

 しかし、この指揮官は規定内に存在する機密費の制度を上手く使うことでこれらの物資を多く購入している事がわかってきた。

 

(機密費は確かに指揮官の権限なら使う事もできるし、購入物品や物資の購入も具体的な情報は隠せる。だからこそ実際の運用と書類の運用には差異が出来るのはわかる。

 しかし、その額があまりにも多い。指揮官は一体どのようなコネクションを活用したのだ?)

 

 秘書艦をする中でわかっている事実としては、指揮官宛に送られてくるメールの中に、時折どこから送られてくるか一切わからない物が存在している事が判明している。それが一種の手がかりになるかとブルックリンは考察するものの、それを手中に収める機会は中々無かった。

 

(そして委託。これは盲点であった)

 

 次にこの母港での委託業務の内容についての詳細が判明していた。

 細かな書類の中に埋もれてはいたが、この母港での委託について、平時では科学研究・自主訓練・戦術課程・資材整理・対抗演習・貨物輸送を行い、緊急時に要請された委託では要人護衛と休暇護衛を行っていることがわかった。

 

(どれも時間はかかるものの、報酬にダイヤや艦船を強化するために必要な経験が効率よく稼げる……

 どうやらこの指揮官はそういった情報部署や護衛を行うための外交部署にいる人間から優先的にこれらの委託を調達している)

 

 この指揮官は明らかに民間人ではなく、軍の人間……分類として分けるなら、恐らくは軍政官僚型の人材であり、かなり機密性の高いセクションに所属していたであろう人間である事は彼女が考察した結論上ではそう確定していた。

 

「ん? 電報……? 指揮官!」

 

 突如、電報が飛び込む。読み込んだ内容は観艦式が何者かによって襲撃を受けたことであった。

 

「なんだ? どうした?」

 

「大変です! 観艦式が襲撃されました!」

 

「そうか、とうとう来たか……ッ!

 ブルックリン! そこの棚、C-7にある海域図を出してくれ!」

 

 突如舞い込んだ凶報に対して、指揮官はうろたえるどころかブルックリンに海域図を取らせる。

 幸か不幸か突然の出来事にブルックリンは焦った所作か、指揮官の指示を出す前に呟いた言葉を聞いていなかった。ブルックリンは書類や資料から収める棚から海域図を引っ張り出し、指揮官は情報端末を用いて、大判プリンターを起動させ、透明なフィルムを用いて印刷する。

 

「持ってきました!」

 

「応接机に置いてくれ。艦隊に連絡はかけられるか?」

 

 ブルックリンは半ば投げ込むように海域図を応接机に置いて、艦隊指揮用に執務室に設備として設置された通信端末で艦隊に連絡を試みる。指揮官はまずはじめにシートを応接机に敷き、その後海域図を応接机に広げ、その上に大判プリンターから印刷されたフィルムを敷く。フィルムには碁盤の目状に線が引かれており、色んな場所に点が打たれていた。その点は形が2種類あった。

 

「指揮官! 連絡、繋がりません!」

 

「広域帯のコールに切り替えろ」

 

 指揮官は箱から兵棋演習で用いるような赤と青の軍隊符号を持ち出すと、フィルムの点に対応した軍隊符号を置いた。

 

「ふむ、初期位置はこの辺か……」

 

 そう呟くと、おもむろにブルックリンのいる通信端末に向かう。

 

「どうだ?」

 

「まだ繋がりません!?」

 

「辛抱強くコールをかけ続けるんだ、いいな?」

 

「はい!」

 

 未だに出撃した艦隊に繋がらず、焦るブルックリンを宥めながら、指揮官は通信設備の別の端末を使う。

 

「この時刻なら、あの辺にいるはずだ……」

 

 おもむろに指揮官は懐から携帯型の情報端末を出して通信端末に繋げる。

 そして、周波数やチャンネルを確認して、通信を試みた。ある人物にかけられたコールはいともたやすく繋がり

、指揮官は自分の所属を階級、そして名前を申告した。

 

「やあ、どうもどうも。お元気そうで」

 

 開幕早々に会話の主導権を握るために皮肉を飛ばす指揮官を他所に、隣りにいるブルックリンは誰に連絡をつなげたのか気になり耳をすませるものの、辛うじて聞こえるのは女性の声だけである。

 

「今、貴女相手とはいえ遊んでいる暇はない。

 今から現地にいる私の艦隊が包囲網と護衛艦隊の一角を突破、後方へ浸透し、指揮系統を叩く。

 貴女には私では出来ないことを2つやってもらいたい。

 1つは現地にいる他の指揮官と連携して反撃の準備に取り掛かってもらいたいことと。

 もう1つはすぐ隣で救援要請を出しているであろう元帥達上層部に追撃戦で必要になる機動部隊の要請を出してもらう事だ」

 

 相手の反応であろう声に、渋い表情をして口角を歪めながら話を聞く指揮官。

 

「できるだろう。先の戦争で勝利に導いたユニオンの大英雄である老将軍。

 その人の孫である貴女の声になら、元帥殿も無碍には出来ないはずだ。

 

 難儀な生まれの貴女には同情はするが、私は勝つためにわざわざ手札を見せてまでお願いをしているのだ。

 その配慮をムダにしないで欲しいものだ」

 

 そう言い捨てると、指揮官は通信を切る。思わずブルックリンは熱のこもった視線で指揮官をみた。

 

 ――なるほど、私の考察に間違いはなかった。

 

 この指揮官はコレ(・・)を見越して、母港に留まっていたのだ。

 無能有能どころではない、正真正銘の化け物だ……

 

 ――もし、こんな人の下で外交官として力をふるえるのならば……

 

 そう思慮した直後、ブルックリンのコールに感が入る。

 

「指揮官! ヘレナに繋がりました!」

 

「よし!」

 

 指揮官は携帯型の情報端末で、システムを起動させた。

 応接机に初めに敷かれたシートが発光し、ホログラムを出現させる。

 ある青い軍隊符号の近くに、ヘレナを始めとした指揮官の艦隊が表示される。他の青い軍隊符号にはそれぞれ友軍が、各指揮官の秘書艦にしている艦船のホログラムが浮かび上がる。

 続いて、赤い軍隊符号にはデフォルメされた各種艦船が表示される。

 

「ヘレナに変わってくれ、これから忙しくなるぞ……」

 

 そう指揮官が言うと、それに合わせてブルックリンの視界が揺れる。

 しばしの暗転の後、舞台はいつもの執務室に戻った。

 

「……明晰夢?」

 

 ここに来て初めて、今自分は夢であると自覚しながらも、夢を見ている事に気づく。しかも過去について夢だと……

 となれば、ブルックリンは直ぐにカレンダーをみた。

 

(あった、この日は……指輪を貰った日)

 

「ブルックリン、今日は急に呼び出して済まない」

 

 直後、ブルックリンが振り向くと、いつもの執務机に指揮官が座っていた。

 

「私になんのご用件でしょうか? 本日は演習でご用事あって動けない指揮官の代理として私が艦隊を率いて赴くはずですが?」

 

 ブルックリンは無意識に言葉を紡いでいた。この言葉は過去で言った言葉と寸分違わず同じものであった。

 

「ああ、そうだ。少し頼みがあってな」

 

 指揮官は執務机から何かを取り出して立ち上がると、ブルックリンの側に近寄った。

 その手にはリングケースが掴まれており、彼女の目の前に立つと指揮官は片膝を着いてリングケースを開ける。

 

「近いうち、大本営に会議に行くこととなった。ブルックリン、艦隊の外交官として、君の力を借りたい。

 向こうでは指輪の無い艦船に対して引き抜きを行う等、あまり良い噂を聞かないが、色んな指揮官とその秘書艦に接触できる。君にはその情報収集を任せたいと思っている。

 勿論、嫌ならそれでも構わないし、ここより待遇が良い基地や指揮官に仕官したいと思うなら……行って貰っても構わない。

 が……私は、君にここに居て欲しいと思っている。

 

 …………だから、もし君が良ければ。これ(誓いの指輪)を受け取って欲しい。」

 

 ――とんだ不意打ちであった。

 

 既に過去、起こった事であっても、何の因果か夢で再びこの場面に遭ったブルックリンではあるが、やはりと言うか……わかっていても思わず面食らってしまう。

 わざわざケッコン届を出さないと指輪を用意しない指揮官が、自分の為だけに用意する。そこまでして自分を欲しているとわかる、それがたまらなくブルックリンには嬉しいことであった。

 

「……わかりました、よろこんでお受けいたします」

 

 ブルックリンはそんな指揮官の言葉に対して、拒否する理由など無かった。

 

 

 

   ■   ■   ■

 

 

 

「ん……夢か」

 

 うしろ髪惹かれるような、郷愁に駆られるような感覚から昔の夢を見ていたとおぼろげながら覚えていた。

 

「懐かしい」

 

 母港を支援するための物資・人員として、そして大本営に指揮官の情報を送るためにこの母港に派遣された頃にはこんな事になるとは思ってもいなかった。

 

「指揮官にはより多くの利益を……より強大な権力を握って欲しい」

 

 指輪を見つめそう呟いた後、自室の作業机に目をやる。そこには書類の紙束がまとめられており、指揮官に探りを入れたり、正規・不正規を問わず機密を守るよう指示された命令書や他所の母港の艦船から得た不正行為の証拠となる書類が置かれていた。

 

 指揮官に先日指輪を貰ったことで、これらの書類を渡す決心がついたのだ。

 これらの行為は完全に大本営の意向に背く形であり、指揮官側につくという意思表示でもある。

 

「私……指揮官専用の外交官にも、秘書にもなりたい」

 

 おそらく向こうも彼女の出自からある程度は察してはいるだろう。

 しかし、これらの手土産を見てどういった反応を示すのか? 指揮官はどのような表情を見せるのか気になってしまう彼女であった。

 

「だから……交渉をはじめよう、指揮官」

 




評価とお気に入り両方の自動推薦にアズールレーンカッコカリがオススメされていたので初投稿です

セントルイスホノルルもいいけど、ブルックリンとヘレナに挟まれたい派
モントピリアとデンバーに挟まれるとかにも興味ありますね(食い気味)

色々とネタ回収や細かいネタを仕込めて満足です、はい。
指揮官萌えが出そうで不安だけど
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