平塚先生に出会いたかった
静『はあ……比企谷、君は本当に捻くれているなあ。読ませてもらったがなんだこの作文は』
八幡『ふん、うっせ。あの教師が「思ったことを書けばいい」って言うからその通りにしただけだっつの』
静『だとしても限度があるだろう。ったく、変なことを書かないようにと監視を命じられた私の身にもなってくれ』
八幡『はあ……だからさっきから帰っていいって言ってるだろ、学級委員長さん』
静『そうはいかないさ。一度引き受けた依頼は最後までやり遂げるのが筋ってものだよ』
八幡『そうかよ』
静『ほら、無駄口叩いてないでさっさと終わらせろ。早くしないと最終下校時刻になってしまうぞ』
八幡『お前から話しかけてきたんだろうが……』
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静『比企谷、君はもう少し他者とコミュニケーションをとってみたらどうだ?』
八幡『別に俺は他の連中とコミュニケーションをとりたいとも思わないし、そもそも友達なんていたことないからな。つか突然なんだよ』
静『いやなに、この前の作文といい、普段の君といい、君は将来どんな人間になるんだろうと不安になってな』
八幡『なに勝手に失礼なこと考えてくれちゃってんの……』
静『ははは。まあまあ、学級委員長としてのお節介とおもってくれたまえ』
八幡『それを言うなら平塚もガサツで暴力的だから結婚とか出来なさそうじゃ……』
静『衝撃のぉぉぉぉぉ!!!』
八幡『ちょっ!?やめっ!?そういうとこだよ!うあぁぁぁぁあ!?』
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八幡『教師?』
静『ああ。なりたいんだ。最近は特にそう思うよ』
八幡『ほーん』
静『そ、それだけかね?』
八幡『いや、結構想像つくというか、似合うというか』
静『そ、そうか』
八幡『でも似合うとは確かに思うんだけど、何でまた教師なんだ?』
静『何か問題を抱えていたり、道を踏み外しそうになったりしている子達の手助けをしたいんだ』
八幡『ほう、そりゃ殊勝な心がけなことで。意外と熱血なんだな、問題児を更生させたいなんてよ』
静『誰かさんを見てるとそう思ってきてな』
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静『おらぁ比企谷ァ!!ゲーセン行くぞゲーセン!!くそったれ!!私の何が駄目なんだようわあああああああん!!』
八幡『ちょ!?何だよお前また振られたのかよ……』
静『やめろ言うな!何も言うな!』
八幡『つか俺じゃなくて他の女子とかと行けよ……』
静『クラスの奴含めてまともに格ゲー出来るのがお前しかいないんだよ!いいから来い!』
八幡『ぐえ!?わ、分かったからネクタイ引っ張るな!』
静『ちくしょー!どいつもこいつもイチャイチャしやがって!私だって彼氏作ってイチャイチャしてやるもん!まだ終わらんよ!次は隣のクラスの○○にアタックだ!』
八幡『っ……』
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八幡『なあ、何で平塚は俺なんかに話しかけてくるんだ?』
静『なんだね突然』
八幡『いや、平塚は他の奴らから人気で友達も多いし、クラスでいつも中心にいる。対して俺は友達なんて居ないぼっちだし、そもそも他の奴らが俺の存在を認識してるのかどうか怪しいような日陰者だろ?だから……その、気になってな……』
静『ふむ……。君を見てると面白いからかな。他の者達が思い付かないようなことも君は簡単に思い付く。まあその中身が褒められたものでは無いかもしれないがな。ふふ。……あと、たまに君を見てると危なっかしく思う時があるからな。放って置けないのかもしれない』
静『それと、友達が居ないなんて言わないでくれよ。これまで何度もお互いに拳を交えた仲じゃないか』
八幡『格ゲーの中でだろ……』
静『私はとっくに友達と思っていたが、私が友達では不服かね?』
八幡『っ……さあな……』
静『ふふ、手厳しいな』
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八幡(ん……)
静『……』
八幡『……』
静『ん?比企谷、どうした?』
八幡『……手伝う』
静『え?ああ、これのことか。いや、これは私の仕事だからな。さすがに申し訳ないよ』
八幡『そんな書類の山一人で片付けてるの見てそのまま帰っちまったら後味悪いから。ほれ、半分よこせ』
静『そうかい?すまないな、なら頼むよ』
八幡『あいよ』
静『……』
八幡『……』
静『ふふ、君は変わったな』ボソッ
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静『比企谷、ほれ。バレンタインだ』
八幡『は?え……お、おう。サンキュ』
八幡『……。……○○にはもうあげたのか?』
静『ん?ああまだだよ。はは……。柄にもなく緊張してしまってね。その時に告白もしようと思ってるんだが、なかなか勇気が出なくてね……』
八幡『……。……平塚は、良い奴で優しいし美人だから……○○も気持ちに応えてくれると、思うぞ……』
静『なっ!?か、からかうんじゃない!で、でもまあ、そうだな。うん!ありがとう比企谷!じゃあちょっと行ってくる!』
八幡『おう』
八幡『……からかうな、か』
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静『比企谷、卒業おめでとう』
八幡『おう。って、お前もだろ』
静『ははは、そりゃそうだ。……なあ比企谷、君は……、ううん、君の高校三年間はどうだった?』
八幡『……そうだな。高校二年までは特に何も感想はない。機械のように事務的に学校に来て、授業受けて、帰るだけだったからな』
静『……そうか』
八幡『でも……』
静『でも?』
八幡『この一年間は……平塚と同じクラスになって、こんな俺なんかに関わってくれて、その……何だ……悪くなかった』
静『……ふふ、最後まで捻くれてるなあ』
八幡『ちょ……頭を撫でるな……』
静『私もとても楽しかったよ。ありがとう』
八幡『……おう』
『静ー!写真とろー!』
静『ああ、すぐ行くよ!』
八幡『……』
静『じゃあ、私は少し抜けるよ』
八幡『おう』
これで良いのだろうか。
八幡『……』
だんだん平塚の後ろ姿が小さくなっていく。
八幡『っ……』
八幡『ぐっ……』
平塚、俺さ……。
八幡『ひ、平塚!』
静『ん……?』
八幡『その……』
静『どうした?』
八幡『お、俺……平塚……』
静『……』
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八幡「……!?…………はあ」
……とても懐かしい夢を見た。もう十年近くも前の、まだ高校生だった頃の夢。
八幡「……」
再び眠ろうかと思ったが、目を瞑るとあの頃の記憶が嫌でも蘇る。折角の休日だが、仕方無く起きる事にした。
簡単な朝食を作り、コーヒーでそれらを流し込む。何か物足りないと思ったら、ポストから今日の新聞を取ってくるのを忘れていた。
ポストを開けると、新聞と一枚の葉書が入っていた。差出人の名前を見て心臓が跳ね上がった。葉書の表側には写真がプリントされており、久々に見るその子は、あの頃より更に魅力的だった。
あの日、あの時、結局俺は言えなかった。自分の気持ちを。君への想いを。
八幡「……なあ平塚」
もしあの時さ
俺がお前に告白してたら
少しは違ったのかな
八幡「……なんてな、はは」
渇いた笑いを漏らし、写真に視線を戻す。視界が酷く滲む。
知らない男性と一緒に、仲睦まじく、幸せそうに笑う、好きな人…否、好きだった人。そして今までの人生で出来たたった一人の友達へ。心の中で祝福した。
おわり