豪雷使いと嘘猫のウィズ   作:ミシェール

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続きました。
あと、題名が原作のクエスト名と完全一致だったのでタイトルはあとで少し変えます。


出会い

行き倒れたと思ったら未確認生物に話しかけられているエーファです。

お腹が空いて死にそうですが人間、非常時にはなんとかなるものですね。

皆さんは日々きちんとご飯を食べられているでしょうか。

もしそうならきちんと作ってくれる農家の人に感謝して残さずに食べるんですよ。

エーファさんとのお約束です。

 

 

 

 

「よっ」

 

目の前の猫?は片手をあげて挨拶をしてくれました。

……挨拶で合ってますよね?

高位の魔物の中には人の言葉を喋るものがいると聞きますから、きっとその類いなのでしょう。とてもそうは見えませんけど。

とりあえず意志疎通を図ってみましょう。

 

「ええと、助けてくれてありがとうございます。……私の言葉は通じていますか?」

 

「…………。」

 

エーファの言葉を聞いてもウィズは微動だにしない。

あれ? もしかして通じてない?

だとするとどうしてこの猫(仮定)は人間の言葉を……はっ。なるほど分かりましたよ。

さてはこの猫は使い魔か何かなのですね。術者が代わりに喋っていたのなら目の前の様子にも納得です。

むしろそっちの方がよっぽど自然ですよ。こんな猫?が自分で人の言葉を話すなんてあるわけないですよ!

 

「通じてるニャ。」

 

通じてるんかい!

いやいや、落ち着きましょう。猫に感情むき出しで怒るなんて大人げないことです。

魔術師は冷静に冷静に。考えてみれば今のも術者と使い魔とのラグなのかもしれませんし。

しかし、見れば見るほど腹の立つ顔をしています。この顔立ちの猫を選んだ人はとても性格が捻くれているのでしょう。

 

ぐぅ~…

 

せっかく冷静になれたのに冷静になれないお腹に赤面するばかりです。

とはいえ実際に限界なのも事実。2日も飲まず食わずなんて先生との訓練以来ではないでしょうか。

普段からそこまで訓練付けではないですしね。

 

「とりあえず、ついてくるニャ。」

 

そんな様子を見てか猫?は踵を返して歩き始めた。

どんな人が待っているかは分かりませんが、とにかく行ってみましょう。

正直足はふらつきますが目の前にご飯があると思えばささいなことです。

 

 

 

 

5分ほど歩いたところにあったのは川の近くに建てられた如何にも旅用というようなテントだった。

しかし、私の目はそんなものより目の前のご馳走に釘づけだった。

 

「チミはお腹が空いているニャ? だったらこれを食うニャ。」

 

そういって猫?は猫らしくテントから持ちだしてきたらしい魚の干物を差し出してきた。

 

「い、いいんですか!」

 

「アタイ、嘘はつかないニャ?」

 

それを聞いてひったくるように魚の干物をとって貪るように食べ始めた。

もぐもぐもぐもぐ。

うう……魚に染みついている塩気が絶品です。

多分、普通の魚の干物なのでしょうが、極限状態にある今だとどんなご馳走にも勝りますよ!

喉がかわくという問題も近くの川のおかげで無事解決です。

 

生きててよかった・・・。

 

干物を残さず食べて人心地つく。

しかし、5分歩いた程度の距離にある川とはこれ如何に。こんなものがあればいくら極限状態だからって、いや極限状態だからこそ気付きそうなものなのですが。

それに覚えている地図と頭の中で比べてみても近くにこんな川は流れていなかったはず……。

まさかこの猫が運んだ? いやいや、ないですよ。あり得ないです。

それにこんな拠点があるならむしろこっちまで運んだ方がいいですしね。

頭を捻っていると、食べてる間は微動だにしなかったウィズが突如目を見開いた。

 

「……食べたニャ?」

 

「え……?」

 

「全部……、食べたニャ?」

 

「く、くれるんじゃなかったんですか……!?」

 

雰囲気も合わせて鑑みると怒ってるらしい。表情の変化が無さすぎて逆に怖い!

というかつい何も考えずに食べてしまいましたが、この猫?基準で考えると一食分ではなかったのかもしれないことに気付きました。

 

「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。」

 

「働かざる者食うべからず、という言葉が人間にはあるニャ?」

 

猫の癖に慣用句を使うとは。などと見当違いな突っ込みを心の中で入れる。

 

「なるほど、代わりの魚を捕ってこい、と。」

 

それならなんとかなりそうです。

こう見えて元野生児ですからね。特に魚捕りは大得意です!

こういうときは雷属性の魔術が使えてよかったと思います。

 

「ぶぶー。不正解ニャ。」

 

いざ魚捕りに向かおうと振り返った瞬間にそんな言葉が投げ掛けられた。

 

「正解はちょっとアタイのお願いを聞いて欲しいニャ。」

 

フーー。フーー。

 

鼻息を荒くして猫?はそう言い放った。

 

 

 

 

「それで、お願いがあるってことですけど……。それならまずは面と向かって話をしませんか?」

 

結局今の今になるまで術者は現れなかった。

よほど警戒心が強いのかもしれない。

多少は名が売れている自覚もあるし、もしかしたら私のことも知っているのかも……。

そう考えてエーファの警戒が一段階あがった。

場に緊張感が漂い始めた中、目の前の猫はそれを無視するかのように口を動かし始めた。

 

「やれやれ。アタイを使い魔扱いとはナメられたものだニャ。」

 

「え? ということは……アナタは猫じゃない……?」

 

正直、目の前の存在を猫と認めたくはなかった。

猫とは自由気ままであるが顔は可愛いし愛嬌がある。

見た瞬間に現実逃避を始める出すようなインパクトはなかったはずだ。

 

「アタイが何なのか、と言われたらこう答えるしかないニャ。アタイは……」

 

どうやら答えてくれるらしい。

もしかしたら何か特別な存在なのかもしれないが、よくよく考えなくても目の前の存在は普通ではない。

エーファは素直に聞く態勢に入った。

 

「四聖賢のウィズニャ。」

 

聞いてもそれが何なのかさっぱり分からなかったが。

 

 

 

 

 

「シセイケン……?」

 

とりあえず聞いたことのない単語を訪ねてみる。

恐らく称号か役職だろうけど、少なくとも私のいたソルデイア王国を含め周辺の国にはなかったはず。

 

「そうニャ。」

 

「ええと、称号か何かなのでしょうか? 寡聞にして存じ上げないのですが……。」

 

とりあえず下手に出て聞いてみる。

役職を持っているのだ。いかに目の前の顔がふざけているとはいえ、それに実力が連動するわけではない。

むしろ突出した力を持っているのだろう。

 

 

はぁ~……。

 

 

そんな私の態度にウィズはあからさまに溜め息をついた。

ちなみに今のウィズの立ち位置は地べたに座ったエーファの目の前である。

溜め息はエーファに直撃し、野生の獣特有の口臭がエーファを襲った。

ぶっちゃけ、臭い。先ほどまでは枯れたいた涙が出てきた。

 

「やれやれ。不勉強な弟子だニャ。でも大丈夫ニャ。そんな弟子を導くのも師匠の役目ニャ。」

 

なんとか臭いから立ち直ったエーファだったが、耳から入ってきた言葉を理解するために再び動きを止めた。

え?弟子?

誰が?誰の?

 

「……弟子、ですか? ええと、私が……?」

 

嘘だと言って欲しい。

 

「嘘ニャ。」

 

ほんとに言った!

え?嘘なの?

いや、確かに私がウィズの弟子でないのは確かだけど、だとしたらどうしてそんな嘘を。

 

「チミが嘘と言って欲しそうな目をしているからそう言っただけニャ。」

 

嘘!? そんなに分かりやすかったんでしょうか……。

 

「これも嘘ニャ。」

 

なんなんですかもう!

いくら恩人、いや恩猫?でも人をからかっていいことにはならないんですよ!

 

「それで、結局"シセイケン"って何なんですか?」

 

不機嫌な態度を隠せずおまけに声にまで出てしまった。

でも謝りませんよ。ええ、謝りませんとも。

 

「ンフーーー。ンフーーー。」

 

などと自己弁護している隙にウィズは鼻先にまで近づいてきていた。

近い!鼻息が当たってる!というか鼻息が荒いです!

 

「よく見るニャ。これが四聖賢の力ニャ……。」

 

「とりあえず離れて。」

 

耐えきれずエーファはそう言って後ずさった。

後ずさったエーファに示された四聖賢の力はエーファをして驚くものだった。

 

「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……」

 

それは銀行の通帳だった。

エーファは持つどころか見たこともないようなゼロの羅列がそこにあった。

ずいぶん貯め込んでいるようだった。

これだけあればどんな生活ができるか……。エーファは夢想を止めることが出来ない。

 

「見たかニャ?これが、四聖賢の力ニャ……。」

 

そんなエーファの様子に満足したかのようにウィズは満面のニヤケ面をしていた。

 

 

 

 

「話が逸れましたが、結局お願いとは何なのでしょうか?」

 

目の前の猫?もといウィズは言動共にふざけた存在であるが、恩があること事実だった。

奇妙なことは節々にあるがそれでも命を助けられたといっても過言ではない。

そのため、エーファはよっぽど変なお願いでなければ聞く気でいた。

 

「うむ。その前に一つ聞きたいニャ。チミはこの辺りにダンジョンがあることは知っているニャ?」

 

「ダンジョンですか……? いえ、この辺りにあることは知らなかったですね。というかここがどこかもいまいち分かってないのですが。」

 

正直未知の場所と言っても過言ではない。

そういえばこの辺りにテントを張っているならウィズはどうして自分を見つけられたのだろうか。

 

「じゃあそのダンジョンが百層以上ある大型ダンジョンということも知らないニャ?」

 

「ひゃ、ひゃく、ですか……。」

 

規模としてはかなり大きい。

というか国レベルで最大規模だろう。

 

「お願いというのは他でもないニャ。アタイと一緒にそこに挑戦して欲しいのニャ。」

 

 


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