尾形と杉元♀がヒロアカ世界に転生して幼馴染する話   作:ゆめ子

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序章

昔からどこか違和感があった。

どこかと言われてもどうとも言えずにむず痒く感じていた「何か」。

それが氷解するのは一瞬の出来事だった。

 

 

その日は、「ボク」と「さっちゃん」がいつも遊んでいた公園で、いつもと変わらずに「さっちゃん」が「ボク」を引っ張って行って他のみんなと鬼ごっこやかくれんぼやヒーローごっこをして遊んだ。

 

「ボク」はみんなと一緒に遊ぶのが余り好きではなかったけど、「さっちゃん」がニコニコ笑いながら「ボク」の手を引いてみんなの輪の中に入っていくので「ボク」は何も言わずにみんなと遊ぶようになった。

 

「さっちゃん」はとてもかわいい女の子だ。

綺麗な黒髪を肩まで切りそろえている。

いつもニコニコ「ボク」に笑いかけてくれるのがとても嬉しくて好きだった。

お母さん同士が仲が良かったからか、産まれる前からボク達は幼馴染だったらしい。それも嬉しく思う。

 

でも「さっちゃん」の顔を見ていると、何かが足りないと感じてしまう奇妙な感覚に陥ることが多々あった。

「さっちゃん」の綺麗で整った顔にはホクロひとつ、シミひとつ、「傷」ひとつ無い。それが「ボク」には何故か奇妙に思えてしまった。そう感じるのはおかしいと分かっていたので何も「さっちゃん」に言ったことはなかったけれど。

 

「ボク」と「さっちゃん」の共通点は2人ともまだ「個性」が出てないことだった。

もう小学校に入学しそうな年になったのに、未だに「個性」が出てこない。4歳の頃不安になったお母さんに連れられてお医者さんに見てもらったけれど、「無個性」ではないらしい。

「さっちゃん」もそうだって言われたみたいだけど、何故「個性」が発現しないのかは分からないともお医者さんに言われた。

でも「個性」が無くても別に困らないし、「さっちゃん」とお揃いなら別に個性が現れなくても構わないと思った。

「さっちゃん」はオールマイトに憧れてるから早くかっこいい個性が欲しいって言っていたけれど…。

 

周りからは「無個性」って思われてるみたいだけど、「さっちゃん」も居るからいじめられたり仲間はずれにされたりはしなかった。

でもきっと周囲の大人達の間では「ボク」と「さっちゃん」が「無個性」だと噂になってたんだと思う。

 

「さっちゃん」と「ボク」はみんなが帰った後も二人で公園で遅くまで遊んでいた。

「さっちゃん」のお母さんはまだ帰ってこないし、「ボク」のおじいちゃんとおばあちゃんもまだ帰ってこないから、良く二人で遅くまで公園で遊んでるのが日課だった。

だからその日も遅くまで遊んでいた。

 

 

「君たち仲が良いね〜」

 

突然大人から声を掛けられて驚いた。

笑顔で近づいてきたけれど、目が笑ってないように思えて不気味だった。

「さっちゃん」も怪しんだのか訝しげに相手を見ていた。

 

「2人とも何ていう名前なのかな?おじさんに教えて欲しいなあ〜」

 

突然そんなこと聞かれても答えるほど「ボク」と「さっちゃん」は警戒心が無いわけでは無かったため、答えなかった。

 

「あれー警戒してるのかな〜?大丈夫だよ〜怖くないよ〜?」

答えなかった「ボク」達に構わずその不審者は更に近づいてきた。

 

「ところで無個性の子供2人って君たちで合ってるのかなぁ?」

猫なで声で聞いてくる内容に二人で驚いた。何故この男が、正確には違うが自分たちを「無個性」だと知っているのか、嫌な予感がして「ボク」は「さっちゃん」の手を引いて逃げ出そうとした。

 

しかし、時は既に遅く、その不審者以外にも2人も知らない大人にいつの間にか背後を取られていた。

 

「さっちゃん!!」

「ひゃくちゃん!!」

 

二人で何とか逃げ出そうと足掻いたけれど、「個性」も発言していない子供が抵抗しても無駄で、不審者達に捕まりそいつらの個性なのか口に手を当てられ、もがきながらも意識が遠のいっていった。

 

 

 

…何時間経ったのか分からないけれど、気づいたら薄暗い小汚い部屋に閉じ込められていた。

ここはどこなのか分からず不安と恐怖に押しつぶされそうになったが、「さっちゃん」が居ないことに気づき、まず「さっちゃん」がどうなったか気になって仕方なくなった。

 

縛られた手足でモゾモゾと部屋の中を見渡す。何か手足を縛る紐を切るものが無いか探す。奇跡的に棚の上に斧っぽいものが見えた。何とか落とせないかと不自由な身体で渾身の体当たりをする。ぐらりと大きな音を立てて落ちてきた。大きな音であの不審者達が来ないかヒヤヒヤしたけれど来なくてホッとした。

 

手早く手足を縛っている紐を切り、自由になる。大きくて重く持つのがやっとだけれど武器を捨てていくことは出来ない。斧を持ち、ドアノブに手をかける。

 

(ああ、こんな斧じゃなくて銃があれば…)

 

銃など撃ったことも無いのに、何故かこの時は銃があれば良かったと思ってしまう自分を不思議に感じた。こんなこと考えてないで早くあの子を探しに行かなければ…。

手足を縛っていたからかドアに鍵は掛けられていなかった。

 

 

早く「さっちゃん」を探さないと。

知らない建物の中を忍び足で隠れながら探す。

結構広い建物のようだ。何故あの不審者達は自分たちをこんな所に連れてきたのだろうか…答えは出ない。いや、今はそんなことはどうでもいいことだ。今は一刻も早く「さっちゃん」を見つけないと。もしかしたら「さっちゃん」も自分を探して無茶なことしてるかもしれない。急がないと。

 

何部屋か調べたが、「さっちゃん」は見つからなかった。数部屋は「ボク」達を拐った犯人達の仲間と思える男達を何人か見かけた。

幸いにも見つかって捕まるという事はなかったが。

 

ふと耳を澄ましたら小さいが声が聞こえてきた。何か大人の男が怒鳴りあってるような声だ。「ボク」は嫌な予感がして素早く足音を立てずにその部屋へと近寄った。ドアは半開きになっていて中をそっと伺うことが出来た。

 

「てめえ何商品に傷つけてんだ!!あぁ!?分かってんのかこれ、売りもんなんだぞ!?」

 

「うるさいなぁ…ちょっと顔に傷付けただけだよ?」

 

「ちょっと!?これのどこがちょっとなんだよ!!でけぇ傷つけやがって!せっかくの上玉が台無しじゃねえか!!てめえは顔が綺麗な女が来るとそうやって傷つけやがって、自分の仕事分かってんのか!?ああ!!??」

 

「わかったわかった。もうやらないし、また前と同じように傷を綺麗に治せばそれで文句無いでしょ?」

 

二人の男達が話してる足元に、ぐったりと横たわっているのは「さっちゃん」だった。

顔はこちらを向いてなくて確認出来なかったけど、あれは間違いなく「さっちゃん」だ…!

 

「ボク」は冷静じゃなくなった。2人が出ていくのを確認して後で隙を見て入れば良かったのに、2人の会話から「さっちゃん」が傷つけられたと分かり頭に血が上ってしまった。

 

「さっちゃんから離れろ!!!!」

 

「アア?なんだぁ??」

 

「あれ?あのガキ何で…?手足縛っといたのに」

 

斧を握り威嚇するように突き出して部屋の中に入った。

犯人の2人は手足が自由になってる「ボク」を見て驚いたようだ。しかしすぐに向こうは冷静になってしまった。

 

「おい、ガキ、痛い目にあいたくなきゃその斧捨ててこっちに大人しくこい。手間かけさすんじゃねえ」

犯人の1人が心底面倒くさそうに言ってきた。あの怒鳴っていた方だ。

まるで「ボク」の抵抗を子供のわがままのように扱ってるみたいだった。実際子供が駄々を捏ねているように思ってるのだろう。

 

「こっちにゃ銃もあんだぞ。その重たそうな斧で俺たちを切りつける前にこの銃ぶっぱなしゃあお前が死ぬだけだぞ?」

 

銃!あったら良かったと思っていた銃がまさか犯人達が持ってるとは思わなかった。

犯人の言葉に勇気がみるみる萎んでいくのを感じた。

どうしたらいい…そう焦っていた自分に小さな小さな声が届いた。

 

「ひゃ、く…ちゃん、に、げ…て…」

 

「さっちゃん」の弱々しい声だった。こちらを向こうにも向けずに身体が痙攣している様だった。明らかに弱った声に、怒りが爆発した。

 

「うあああああああああああ!!!!!」

 

斧を振りかぶって犯人に特攻した。

 

「ウグッ!!」

がら空きだった胴に思い切り犯人の蹴りが入り、吹っ飛ばされる。

やはりどんなに意気込んでも大人には勝てないのか。ゲホゲホと咳き込んでいると頭を鷲掴みにされ床に何度も叩き付けられ、顔面が血に染まる。

 

「うーん、君はあんまり興味なかったんだけど、さっきの表情は良かったから、君にも傷を付けてあげよう」

顔を無理やり上げされられるともう1人の犯人が血にまみれたナイフを持ち上げてこちらを覗き込んでいた。

 

「おい、さっき傷つけるのは最後だって言っただろ!?」

 

「いーじゃんこんな生意気な子、もう反抗しないようにしとかなきゃいけないんだしさ、これでほんとに最後最後!」

 

「…チッ、ちゃんと後で傷消しとけよ…」

 

頭上でのそんなやり取りを朦朧とした意識で聞いていた。すると顔を無理やり上に向かせられる。

 

「はーい、じゃあちょっとザックりいくよ〜!うーん君はどういう風に傷をつけて上げようかなあ…?よし!決めた!君は猫っぽいから両頬に猫のヒゲみたいな傷を付けてあげよう!」

理解したくない言葉を一方的に投げつけられ呆然としてると今度は顎を鷲掴みにされる。

 

「はい、動くと危ないからね〜痛くなーい痛くなーい」

そんなわけが無い言葉と共にナイフが顔に近づけられそして…

 

「あああああああああああ!!!!」

顎の両側を深く斬られた。焼けるような痛みに意識が更に遠のく。

傷をつけて興味を失ったのか、手を離されそのまま床に激突する。

荒い呼吸をして痛みに耐える。痛い。痛い。

ああ、こんな痛み、昔どこかで感じたことがあった気がする。痛すぎておかしな考えまで出てくる始末だ。

犯人たちがまだ何か喋っていたが何も耳に入らない。

床に倒れ伏していたら、同じように倒れている「さっちゃん」が目に入った。

いつの間にかこちらを向けたのか、やっと「さっちゃん」の顔を見ることができた。

 

「さっちゃん」の顔には縦に二筋、横に一筋の大きな大きな傷が出来ていた。

「さっちゃん」の綺麗な顔に醜悪な傷が出来た。でもそれはとても自然なものに感じた。

いや、これで正しいとすら思える。

何故、何故、そう考えるのか。

 

 

 

「さっちゃん」と目が合った瞬間、全ての記憶が弾けた。

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