尾形と杉元♀がヒロアカ世界に転生して幼馴染する話 作:ゆめ子
「おい、尾形、緊急時だから教師の許可なしのいきなりの発砲には目をつぶってやるが、ヒーローになりたいんなら例え敵相手でも最初からヘッドショットは一応やめておけ。お前の腕なら頭狙わなくても無力化出来るだろ。」
俺が黒い霧の渦から出てきた手男相手にヘッドショットをぶちかましたら(阻止されてしまったが)、担任の相澤から、敵を警戒しながらもそんな注意が飛んできた。
やはり腐ってもヒーローか。例え緊急時で殺気を漲らせた敵相手だとしても最初から殺人に直結する攻撃は咎められたか。分かっていたことだが、これは全く面倒な足枷だ。
こちらを殺す気満々の犯罪者相手だ。殺されても文句は言えんだろうと俺は思うが、現代の倫理観とヒーロー観ではそれは許されないのだという事も分かっている。
俺は小さく舌打ちをして、相澤に短く「了解です。」と伝えた。
そうこうしている内に、敵が黒い霧の中からゾロゾロとお出まししてきた。
先程まで呑気に演習かと思っていたようだった切島は「敵ンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」と叫んでいた。
まあ確かに敵に堕ちる様な落伍者共の集まりだ。愚かなのは確かなのだろうが、この建物にあるはずだろう侵入者用センサーも反応せず、こちらの予定を知っていた素振りを見ると、これは用意周到に仕組んだ襲撃なのだろう。何かしらの「勝ち目」があると信じて侵入してきたはずだ。
それに、あの脳みそ丸出し野郎は、こちらの狙撃にも反応し、己の肉体を盾にし銃弾を食らった上でピンピンしているような化け物だ。
舐めて掛かれば誰かしら死ぬだろう。
俺がそう考えていると、相澤は13号と牛山に生徒達の避難と外部への連絡を試すように指示を出てきた。
どうやら相澤は1人で戦うことにしたようだ。
1人だけでの正面戦闘を心配する緑谷達に「一芸だけじゃヒーローは務まらん」とだけ残し、相澤は飛び出して行った。
その言葉に嘘は無いようで他対一にも関わらず、相澤は敵達を次々と片付けていった。
相澤の「個性」で消せるのは発動系や変化系のみで、異形型には効かないようだが、筋骨隆々の異形型の敵を近接格闘ですぐさま地に沈めていた。単純に肉弾戦にも秀でている事が見てて分かった。
相澤を心配して見ていた緑谷も感心している。
戦闘は相澤に任せ、13号と牛山は生徒達を逃がすため、出口に引き換えそうと引率し、生徒達の前を13号、後ろを牛山が守っていた。
しかし、引き付けていた相澤の一瞬の隙をついたのであろう。あの黒い霧の渦を生み出した敵が目の前に立ちはだかった。
大勢の敵を出現させたのと、ここまでの距離を一瞬で現れたのを見るに、こいつの「個性」は「ワープ」で間違いないだろう。全く、便利な「個性」で嫌になるぜ。
現れた黒い霧の男は悠長に自己紹介を始めた。
この襲撃を行ったのは「敵連合」と言う名の組織であり、雄英に侵入した目的は、平和の象徴であるオールマイトに息絶えてほしいからということだった。
なら、オールマイト1人でいる所を狙えばもっと可能性あがるだろう馬鹿が、とも思ったが、もしかしたらそれだけが目的じゃないのかもなと考えた。
黒い霧の男はそう伝え終えると、何かをコチラに仕掛けようとする素振りを見せた。
後ろにいた俺や杉元は攻撃を仕掛けようかと思ったが、その前に何かしようとした13号が見えたので咄嗟に攻撃を中止する。
しかし、爆豪と切島が13号が動く前に黒い霧の男に対して攻撃を仕掛けてしまった。
だが、攻撃を受けた黒い霧の男は身体中から出ている黒い霧が揺らめくのみで、ダメージは全く負っていないようだった。
黒い霧の男は「散らして、嬲り、殺す」と宣言して、身体中から発している黒い霧を一気に広げ、俺たちを包んだ。
「散らす」と言うからにはコイツの「個性」からして俺たちをどこか別々の場所に移動させる気だろう。
杉元も気づいたのか、「尾形!!!!」と叫んで俺の腕を掴んできた。
杉元の掴んできた手の体温を感じながら、視界が黒く塗りつぶされる。
次の瞬間、俺と杉元は炎上している市街地に放り出されていた。
「うわっ!!熱っちい!!!!なんだここ!?」
杉元が俺を掴んでいるからすぐ近くで騒ぎ出す。うるせえ。
とりあえず、俺を掴んだ杉元の腕を外しながら「恐らくここは火災現場の救助訓練を行う場だろう。」と杉元に伝えてやった。おかしな場所に飛ばしやがってあの黒い霧の男。ヒーローコスチュームのおかげで服の上から少し炎で炙ったくらいでは火は通さないだろうが、全く暑い上煙たくてかなわん。
「訓練場か…言われてみれば人が居ないからそうだろうな。」
そう杉元は判断したようだが、少し違ったため、訂正をする。
「いや、人は居るだろう。ほら、ゾロゾロやってきたぞ。」
倒壊し炎上している建物の陰などから、ワラワラと敵共が湧いて出てきた。
頭やら身体の一部から炎を出してる敵も多く見かける。「個性」が炎に関係する奴や、炎に強い「個性」を持ってる敵達なのだろう。周到な事だ。
「へへへ、来た来た。」
「わりいけど、命令だからな。お前達には死んでもらうぜ。」
「はは、まだそんなに若いのに可哀想にな。」
敵共が口々に好き勝手喋ってくる。
「おい、尾形。早くコイツらぶっ倒して元の場所に戻んぞ。」
「ああ、分かった。ならさっさと出口を見つけるぞ。」
「みんな無事だと良いけどよぉ…クソっ…。早く戻らねえと。」
「おい!!てめえら何俺たちを前にしてシカトしてんだゴラァ!!!!ぶっ殺してやる!!!!」
無視して喋っているのが気に食わなかったのであろう敵共が俺達に特攻してくる。
杉元は向かってきた敵の1人の武器を素手で破壊し、その敵の手首を掴むと杉元に向かってきていた敵2、3人に向かって軽いものでも振るうかのように投げ飛ばした。その近くにいた敵共も多く巻き込んでいる。
俺も向かってくる敵数人に対して足を狙い素早く弾丸を打ち込んだ。あの脳みそ丸出しの化け物と違い、打たれた奴らは誰一人大丈夫では無いようで泣き叫んでいる。
残った奴らは俺達の戦闘能力に対してビビってしまったのか、酷く焦っているようだった。
あの脳みそ丸出しの化け物クラスはここには居ないようで一先ず大丈夫そうだ。
というか、コイツらは全然雑魚だ。散らばった生徒達の先を囲っているであろう敵共もこの程度であれば、戦闘力がそれなりにある生徒ならば容易く撃退出来そうだ。
「おい、こっちは急いでいるんだ。あんたら来ないんならこっちから行くぞ。」
完全にビビってしまっていて、こちらをこれ以上襲おうとしてこない敵共に対して、杉元はそう言いながら進もうとする。
が、大きな地響きの様な音が聞こえた為、杉元は歩みを止める。
「なんだぁ?」
地響きは大きくなってコチラに近付いてきた。
ドオオオオン!!!!と大きな音を立てて、近くにあった炎上している廃車が吹っ飛ばされる。どうやら何者かに思い切りタックルされたらしく、放物線を描いて敵共が多く居る場所にその廃車は降ってきた。敵共が怒号や叫び声泣き声をあげている。
「おい、お前ら無事か!?…て、なんだ杉元と尾形、おめぇらか。」
そう言って、炎上していた廃車を吹っ飛ばした原因…いや、張本人がやってきた。
あの地響きもコイツが走っていた音だったのだろう。
「杉元、尾形、早くこんな場所出て他の奴らと合流するぞ。ここに居る敵共は俺が何とかするから少し待っていろ。あ、教師命令だからちゃんと待っていろよ。お前らも一応大事な生徒だからな。ガハハ。」
「ちょ、おい、牛山!!」
そう言って俺達の返事を待たず、この場にまだ残っている敵共を倒しにまた走り出した。
背中に吊るしていた1人の生徒を置いて。
「尾形君に杉元さんもこの火災ゾーンに居たんだね。俺と牛山先生もここから少し離れた場所に出されてたんだ。」
そう言ったのは、毛皮の付いた柔道着に大きな尻尾を生やしている男子生徒…コイツの名前は何だったか…。
「そうだったのか、それでお前の方は大丈夫か?えーと………。」と杉元は少し困っている。何せ入学してから結構経つのだ。名前を覚えていなくて気まずいのだろう。俺もコイツの名前は覚えていないが…。
「あー、尾白だよ。尾白猿夫。」
「ああ、悪い尾白。入学して結構経つのに…。」
「いや、良いよ大丈夫。俺って影薄いから…ははは…。」
と尾白は引きつった笑を浮かべた。
確かになんだか地味だなコイツは。俺がコイツの名前を覚えていなかったのも仕方ないことだろう。
「でも牛山先生に加勢しなくて良いのかな……………と思ったけど牛山先生全然大丈夫そうだね…。」
尾白が言った通り、牛山は危なげなく残った敵共を戦闘不能にして行った。手助けは不要だろう。まさにちぎっては投げ、と言ったところだ。
牛山が残りの敵を無力化して戻ってきた所で、牛山も「ここ火災ゾーンは出口から1番遠い。早くUSJ出入口の所まで戻るぞ。13号と相澤、残りの生徒達が心配だ」と言ってきた。
だが、その前にやることが有るだろう。俺は近くに倒れてボロボロになっている敵1人を仰向けにして銃を突き付けた。
「おい、お前達の目的は本当にオールマイトを殺すことだけか?答えろ。痛いのは嫌だろう?」と軽く脅迫したら敵はペラペラ喋り出した。
「し、知らねえよ!俺達はオールマイトを殺せる算段がついたって聞いたから着いてきただけで詳しい事は聞いてねえよ!!」
「チッ、じゃあオールマイトを殺せるっていうその自信の算段ってのはなんだ。早く答えろ。」
「か、改造人間が居るんだよ!オールマイトもぶっ殺せる力を持ったっていうな!実際すげえぜあれは。は、はは、お前らもアレに殺されちまえ!」
「そーかよ。」
「がぁっ!!」
俺は聞きたいことを聞くと銃でぶん殴って尋問していた敵を昏倒させた。
「オールマイトを殺せる力を持った改造人間ねえ…ほんとにあの人倒せちゃうほど力を持ってるんだか…。」
他の奴らも聞いていたようだ。杉元が疑問を呈している。確かにあのオールマイトを殺せる力を持つ等と眉唾のようにも思えるが、あの反射速度と弾丸を撃ち込まれても何ともない様な態度…信憑性はあると言って良いだろう。
ここにはもう用がないので、牛山を先頭に全員で急いで火災ゾーンを後にし、一先ず建物の出入口まで走ることにした。