尾形と杉元♀がヒロアカ世界に転生して幼馴染する話 作:ゆめ子
俺達が無事に雄英入試を突破して合格をもぎ取り、じいちゃんばあちゃんと杉元の母親に祝われささやかな祝賀会が開かれたあと、俺達がまずしたことと言えば中学3年間の総復習と高校の予習だ。
杉元は凄く嫌がっていたが、筆記試験をギリギリでパスした奴が悪い。寧ろ懇切丁寧に教えてやる俺に感謝すべきだろう。
勉強と共に、日課の訓練や組手も欠かさない。(組手は相変わらず勝てんが…)
そんなこんなを過ごしているうちに、雄英高校入学日となった。新しい制服に腕を通し、家を出た。すぐ近くの杉元の家に行き、杉元を迎えにいく。
杉元が慌てて出てきた。杉元も当然だが新しい制服姿になっている。ブレザーの胸元がとても窮屈そうだったが、それなりに似合っている。やはり今世の女の杉元は、顔の傷に目が行きがちだが、よく見れば(そして黙っていれば)美少女の類だ。
「おい、尾形、ジロジロ見んじゃねえよ。見物料取るぞこらぁ。」
おっと、つい見すぎてたみたいだ。
「いや、悪いな。その制服良く似合ってるぜ。可愛いぞ杉元。」
感じた通りの感想を述べると、杉元は真っ赤になった。
「か!可愛いとか馬鹿じゃねえの!?勇作くんを見習えとは言ったけど、薄ら寒いお世辞なんてすんじゃねえよクソ尾形!!!!」
折角褒めてやったのに、杉元はお世辞と捉えたのかへそを曲げてしまった。
杉元は今世の自分の容姿の良さに気づいてないのか、この手の褒め方をしても謙遜するか怒るかだ。まあ、今の所はその方が何かと都合が良いので訂正はしないがな。
「分かった分かった。いいからもう行くぞ。このままだと遅刻する。」
「うおっほんとだもうこんな時間じゃねえか!初日に遅刻とか洒落にならん。かーさーん!!いってきまーす!!」
杉元は玄関から大きな声でいってきますと言うと、奥の方から行ってらっしゃいと聞こえてきた。
「よし、急ぐぞ尾形!!」
「言われなくても。」
俺たちは入試の時と同じ様に電車で雄英に向かった。
雄英に着いた。やはり馬鹿でかい。
無駄に広い敷地を突っ切って自分たちのクラスの教室を目指す。
俺と杉元は幸い同じクラスだ。杉元を抑えるのには別クラスだとやりずらいため、この采配はありがたかった。もしかしたら中学の教師達から俺と杉元の聞き取り調査なんてもんがあってそれで同じクラスにしたなんて事も有り得るがそれは考えすぎだろう。
指定された教室まで何とか始業前に着けた。教室のこれまた馬鹿でかいドアの前にもじゃもじゃ頭の男子が1人佇んでいた。
「おい、入るんならさっさと入ってくれ…。」
「ひょわっ!?あ、すす、すみません…。」
俺が声を掛けるとその男子は驚いたのか変な声を上げた。うん?コイツどこかで見たな…。
「あー!あの入試の時コケそうだった人!」
杉元がでかい声で言った。ああ、そう言えばこんなやつ居たな。俺も思い出したぜ。
「ああ!あなたは入試の時の2人目の良い人!!」
男子の方も思い出したのかよくわからん事を杉元に言った。
「お前も受かったんだな〜!良かったな!!」
「は、はい。あなた達も受かったんですね。凄いです。」
「ははは、凄いって受かったお前もじゃん。」
などと杉元と男子はドア前で褒めあった。
「おい、褒め合うのは良いが、いい加減教室に入らないか?」
俺が呆れて教室へ入るのを促した。
「あ、そうですね。すみません!入ります!!」
そう言って男子は慌ててドアを開けた。
「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」
「思わねーよてめーどこ中だよ端役が!」
ドアを開けるとガラの悪いチンピラみたいな男子生徒と真面目っぽいメガネの男子生徒が言い争っていた。
ドアを開ける前から「山猫」の聴力で誰だかが言い合ってるのは聞こえていたが、しょうもない事で言い合っているなと思った。
高校生に俺達も上がったが、周りはまだまだ子供と言える。これは高校でも友人と呼べる相手は作れないだろう(作りたいとも全く思わないが)。
もじゃもじゃ頭の男子が小声で「ツートップ」と言っていた。なんだ?嫌なヤツらツートップって事か?
ドアを開けた事でこちらに気づいたらしい言い合っていた真面目っぽい方の男子がこちらに近づいてきた。
というかこの男子も、入試の実技試験説明の時俺達を「イチャついてる」と注意してきた奴ではないか。
「俺は私立聡明中学の…」
「聞いてたよ!あ…と、僕緑谷。よろしく飯田くん…。」
もじゃもじゃ頭もとい緑谷が自己紹介をした。
「あ、俺は金神中学の杉元佐一。杉元でいいぜ。んで、そっちのが幼馴染の尾形。これからよろしくな!」
杉元がつられて自己紹介をした。ついでに俺を紹介するな。
「ほう、2人は幼馴染なのか。幼馴染揃ってこの難関校に受かるとはすごいな。」
「へ、へえ…幼馴染か…仲のいい幼馴染で羨ましいよ…」
早速俺達が幼馴染だと杉元のお陰でバレた。いや、別に隠したいわけではないから別に構わないのだが…。
確かに傍から見ればただの幼馴染2人が揃って雄英に受かるのは珍しいことなのだろう。
だがこっちは雄英受験対策に数年掛けているのだ。受からなければ嘘だろう。
「そう言えば緑谷くん、君はあの実技の構造に気づいていたのだな。俺は気づけなかった…君を見誤ってたよ!!悔しいが君の方が上手だったようだ!」
メガネの飯田がそんなことを言い出した。
実技の構造とは伏せられていた救助ポイントの事だろう。アレに気づけるやつはまああまり居なかっただろう。
緑谷は驚いたような顔を浮かべている。果たして本当にコイツ気づいていたのだろうか?
「あ!そのモサモサ頭は!!地味目の!!」
教室のドアからまた新しい生徒が入ってきた。
緑谷の事を指しているのだろう。こいつもあの入試の時、転けそうになっていた緑谷を宙に浮かせて助けてた奴だ。
その女子生徒ははしゃぎながら緑谷に話しかけている。
「おい、杉元、そろそろ教師が来る頃だ。着席しておいた方が良いだろう。」
「あ、確かにそうだな。えーと席はどこだー?」
そろそろ教師が来る時間だ。話に盛り上がってる緑谷と女子を無視して杉元に着席を促す。
黒板に書かれてる席順を確認する。あいうえお順での席次らしいが、俺は廊下側の1番後ろで、杉元は一番前の上に教卓の真ん前だった。
杉元はこれじゃサボれねえとかブツブツ言っていたが、勉強しやすいという点ではいい席を引き当てられただろう。しかし杉元と席が離れるのは痛いな。コイツが暴れたら誰が抑えられるのか。
「てか尾形1番後ろかよ。ずっりぃ!」
「日頃の行いの賜物だろうな。」
「そんなわけないだろ!!」
そんなどうでもいい会話を杉元としていたらまたしても嫉妬のような視線を複数感じた。美人な杉元と親しげに話している事を羨む男子生徒でも居るのだろう。勿論どうでもいい事なので素知らぬ顔をしておく。
そうこうしているうちに、始業の鐘の音が鳴った。杉元との話はやめにして自分の席に向かい、黙って前を向いていたら声が聞こえた。
「お友達ごっこがしたいなら他所へいけ。」
低い声だ。廊下の外から聞こえたが、騒いでいた緑谷達の声が止んだ。
「ここはヒーロー科だぞ。」
飲むゼリー飲料を吸いながらその教師は言った。教室に入ってきた教師は、教師にしては無精髭なんぞはやして小汚い感じがしたが、動きに隙がない。雄英の教師は全てヒーローと言うからにはこの男もまたヒーローなのだろう。
「はい、静かになるまで8秒掛かりました。時間は有限。君たちは合理性に掛けるね。」
静かになるまでが8秒なら、このクラスは随分「いい子」が多いのだろう。
「担任の相澤消太だ。よろしくね。」
やはり教師で合っていたか。この無精髭の男が担任ということでザワついてる奴らも居るみたいだ。
「早速だが体操服を着てグラウンドに出ろ。」
何をやらせるのかは知らんが、入学早々にめんどくさい事をやらされそうで俺はため息をつき、着替えるため席を立った。