日ノ本、全国で三番目に大きな駅、千代田駅が一体のカバネリにより、壊滅したという情報は瞬く間に広がり、当然総武城へもその情報は届いていた。確かに大事件で、決して無視出来る内容ではないのかもしれないが、総武城の乗組員の殆どの人間からしては、気の毒だなと思うだけで、自分達には関係の無い話であった……ただ1人の少女を除いては。
「千代田駅が壊滅したって本当何ですか!?」
そう叫ぶのは、総武城に乗組員の中で唯一総武城との関係がある一色いろはという少女である。一色いろはは、総武城の最高責任者である、平塚静に叫び声を上げていた。
「ああ、残念な事に、千代田駅は本当に壊滅した」
嘘の情報である事を願っていたいろはは、静の言葉、表情から千代田駅の壊滅は本当の事だと痛感し、先程から目元に溜めていた涙をとうとう流した。
「そんな……あそこには、千代田駅には、私の、私の家族が……」
顔全体で、表情で絶望を表し、ため間なく涙を流しているいろはの肩に手を置き、静はこう告げた。
「一色、確かに千代田駅は壊滅したが、新たな情報によると生存者は思いのほかいるようだ。そしてこの総武城には生存者の救出へと向かうよう指示された。まだ希望は捨てるな。だが希望を持ちすぎるのもいけない。ほら、君は葉山達の所に行きなさい」
静の言葉を黙って聞いていたいろはは、頷き、静かに立ち上がり、葉山達のいる広場へと歩みを進めた。それを見届けた静は放送室へと向かい、今後の総武城の方針を城内の乗組員へと告げる。
「総武城、最高責任者の平塚静だ!皆ももう知っているとは思うが、千代田駅がカバネリにより壊滅させられた!これは実に由々しき事態である!そして先程新たな情報が入ってきた!千代田駅は壊滅してしまったが、生存者は多数いるそうだ!上からの命令という形であるが、これより総武城は千代田駅へと向かい、生存者の救出を行う!総員!直ちに武装し、カバネとの戦闘に備えよ!」
静の放送により、総武城は騒がしくなった。あるものは自分の獲物を取りに、あるものは救急用具の準備へ、皆がそれぞれの準備を始め、千代田駅へと発車した。
静の放送を聞いていた八幡は、陽乃と自室で会議をしていた。それは、千代田駅への生存者救出の会議ではなく、千代田駅を壊滅させたカバネリの正体を模索する会議だ。
「八幡、君はどう思う?今回の事件。幾ら何でも 只のカバネリには千代田駅を壊滅出来るとは私には思わないけど」
「自分もそう思います。この事件は十中八九、海田の仕業です」
八幡の確信をもった意見に、陽乃は意外な事に首を傾げていた。
「八幡?」
「はい?」
「海田って誰?」
陽乃の質問で、自分は海田の話をしたのは、静にだけだったと思い出し、八幡は陽乃に海田についての情報を提示した。ついでに自分の事も。
「な〜るほど!要するに海田っていう科学者は、八幡にとっては復讐するべきもの……ね、やっと八幡が誰に復讐するのか分かったよ」
キスまでした中にも関わらず、二人は互いにお互いのことをあまり把握していない。二人の関係については今後に期待と言ったところだろう。
「まぁそう言う訳で、この事件の首謀者は海田だと思います。でも海田にはもう研究室は無いはず、なので誰かと結託して事件を起こしたんじゃないですか?」
八幡の推理に、陽乃は思案顔で頷き、そして何か合点がいったのか、八幡に対して自分の意見を言い始めた。
「八幡は知らないと思うけど、これまでにもカバネリは結構存在してきたの、それでもかなり少ないけどね。だから私達は君の存在を聞いても驚きはしても、警戒はしなかった。まぁ君がまだ子供だってのもあるけど。まぁそれで今までのカバネリは対して力は無かった。カバネの身体に普通の人間の頭脳、確かに手強かったけど、それ程脅威ではなかった。でもカバネリは自然には殆どならない。殆どが人工的に作られた存在。それで海田って人はカバネリの存在は知っていたけど、カバネリを所有してはいなかったんでしょ?」
「はい、海田が使っていたのは、完全にカバネでした。カバネの再生力を生かして、脳内に何万通りもの電気信号を発するチップを埋め込むことで、動きを操っていると。海田との戦闘ではカバネリは一体も現れませんでした。」
八幡の回答を聞いて、陽乃は確信を持って告げた。
「やっぱり、八幡の考えは合ってるよ。この事件の首謀者は二人、1人はカバネリの製造、そして海田はカバネリを操り人形にして、肉体改造、実に非人道的だけど、この考えで間違いないと思う」
二人の話し合いは、陽乃のまとめにより、終了した。
「まぁとりあえずは、千代田駅での生存者救出だね!」
「そうですね、幾ら考えた所で海田の居場所が分からないんじゃどうしようもない、今は仲間を増やす事を考えますか」
そう八幡は言うと、陽乃と武器庫へと向かい、千代田駅での生存者救出に向けて、準備進めるのであった。