やはり俺がカバネリなのは間違っている。   作:ガタオガタ

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第十一話

千代田駅に着いた総武城のメンバーは、捜索活動に入った。

 

 

「これは……ひどいな」

 

今酷く顔を歪めている爽やかイケメンは葉山隼人。あまりこいつについては知らないが、葉山の俺を見る目は普通ではない気がする。

 

キマシタワー!!

 

謎の声は無視するのが良いと陽乃から習った。皆も無視するように!

 

「葉山、千代田駅が壊滅したと聞いた時から想像はできただろ。とりあえず生存者を探すぞ」

 

現在総武城から駆り出された班は六班存在する。俺の班は第四班で、主に瓦礫などの下を捜索する力仕事に分類される捜索班だ。ほんと嫌になる。

 

「だいたい、この班のメンバー決めは誰がやったんだ?」

 

「まぁまぁそんな事言わずに探そうよ、ヒキタニ君」

 

「葉山…お前さっきまでこの光景に呆気にとられてた癖に」

 

「貴方達、いつまで話し込むつもりかしら?さっさと作業に戻りなさい」

 

そしてこの偉そうな女は、雪ノ下雪乃。雪ノ下と話す事はあまり無かったが、意外と良い奴だと思った。毒舌だけど。すげー毒舌だけど。あと俺はこいつのギャップには正直悶えてしまった。だってこいつ、捜索作業中に居なくなったと思ったら猫と戯れていたんだぜ?誰だって悶えるだろ!

 

「そうだよ!ヒッキー!早くしないと助かる人も死んじゃうかもしれないじゃん!」

 

そしてこの如何にも馬鹿そうな女は、由比ヶ浜結衣。由比ヶ浜を一言で表すなら犬。だって俺には見えるんだもん、尻尾が。ほら、今も注意してる癖に構ってもらえると思ったのか俺が振り向いた瞬間に回り始めたよ。ただ由比ヶ浜から溢れでる母性が時々判断を鈍らせる。視覚的にも、感覚的にも母性の塊だよ、ほんと。

 

「いや、お前ら何もしてないじゃん。ほんとこの班のメンバーには疑問を隠しきれないぞ、俺は」

 

俺の班には葉山、由比ヶ浜、雪ノ下、俺とあと一人いる。今の所そいつは葉山にぴったりだがどんな奴なんだろうか?

 

「仕方ないじゃない。平塚さんが決めたんだから。私だってこんな菌と一緒に作業なんてしたくないわ。近寄らないでくれる?伝染るわ」

 

「誰が菌だよ。誰が好きこのんで極寒の地獄へと向かうかっつーの。何故かお前の周り寒いんだよ」

 

いやほんと寒いからね?雪ノ下の近くで作業してると凄い寒気が俺を襲うんだよ。

 

「あら?それは貴方が菌だからじゃないの?」

 

「いや関係ないだろ。そもそも菌じゃないし」

 

そんなふうに俺達が言い合っているともう一人の班のメンバーが話しかけてきた。何気に声を聞くのは初めてだ。

 

「雪ノ下せんぱーい?さっき葉山先輩には作業するように言ったのに自分はそこのゾンビとお喋りですかー?」

 

おおう。なんと間延びした声だろうか。明らかに媚を売る声だと言うのが分かる。というか先輩と言ってるから後輩か。雪ノ下相手に意見を言えるのはいいが、俺をゾンビ呼ばわりしたのはおかしいと思います。なんだあの後輩。

 

「一色さん?私はお喋りなんかしてないわ。ただの除菌活動よ。貴方もバイオテロには遭いたくないでしょう?」

 

「確かにそうですねー。でも一旦除菌活動は中止して捜索活動に力を入れてください!私達の班だけ明らかに作業が進んでいません!」

 

なんとこの二人はこの後普通に作業に戻りました。おかしい。どう考えてもおかしい。俺あの二人になにかしたっけ?

 

「たははー。ゆきのんもいろはちゃんもヒッキーの扱い酷いね」

 

どうやらさっきの後輩は一色いろはと言うらしい。第一印象は最悪だ。

 

「由比ヶ浜、そう思うならどうして止めてくれなかった」

 

「あーなると二人共満足するまで止まらないから。特にゆきのん。それに私じゃ止めれないしね!それより大丈夫?ヒッキー」

 

「これくらいなんともなーよ。俺達も作業しようぜ」

 

「うん!そうだね!」

 

作業前からとても精神を消費したが、まぁいいだろう。とりあえず生き残りを探さなければ。

俺達は捜索活動を開始してから30分たってやっと本格的な捜索活動を開始した。

 

 

 

総武城六班による捜索活動は6時間にも及んだ。しかし情報にあった生存者は今の所一人も見つかっていない。何処を見渡しても瓦礫や死体の山が転がっているだけだ。もう少し頑張るかーと思った所で、何やら地下への階段らしきものを発見した。

 

「おい葉山、平塚さん達呼んでもらえるか?」

 

「どうしてだい?」

 

「地下への階段を発見した。ここに生存者がいるかもしれない」

 

そういうと、葉山は驚き、そして力強く首を縦に振った。

 

「分かった。俺が平塚さん達を呼んでくるけど、くれぐれも一人で入るなよ?」

 

「わーってるよ、さっさといけ」

 

ったく。そんなの言われなくても分かってるっつーの。

 

葉山が平塚さん達を呼びに言って大体五分くらいだろうか?それぐらいで総武城の捜索班は六班すべてこの地下への階段前へと集合した。

 

「先ほど全班から報告を受けたが、生存者のいる可能性があるような場所はこの他には存在しないそうだ。なので班活動はここまでとする。これからは全員で地下へと向かう。ただカバネりがいないという保証はない。皆各自武器の準備をするように!その間に休憩も挟む。30分後にまたこの場所に集合だ!では解散!」

 

はっ!という総武城の掛け声を合図にみな総武城へと走っていく。因みに俺の武器は刀だ。それ以外に使ったことあるの薙刀くらいだし。それなら刀がいい。

 

それから30分の休憩を皆各々に過ごし、地下階段へと集まっていた。

 

「ではこれより、地下階段へと突入する!生存者を発見次第、総武城へと誘導する!救護班は怪我人を発見した際には第一優先で手当するように!では、行くぞ!」

 

オー!!!!!

 

みんなして武器を頭上へと掲げている。あの陽乃までもが掲げている。これはもしかしら総武城での儀式みたいなものなのかもしれない。そう思い俺も頭上へと刀を掲げる。周りを見渡してみるが皆引き締まった顔をしている。その中で一色だけ表情が皆とは違い、とても焦っている様に見えたのは間違いではなかったと思う。

ただ俺は特に気にしなかった。その事に後悔するなんてこの時の俺は思ってもいなかった。

 


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