死闘の果てに…
「はぁはぁ…はぁぁあ」
やっとの思いで着いた駅には何も無かった。今までの死ぬ思いでしてきた行動は、すべて無駄だったのか、そんな風に考えていると、遠くから蒸気機関車の汽笛の音が聞こえてきた。
きた!やっと総武城に乗れる!これで小町を…
総武城がきた安心感からか、俺の体は遂に異常をきたし、その場に倒れ込んだのだった。
「ふっ八幡君!君の力はこんなものか!だから大切な妹を失うんだよ!もっと呪え!この僕を!もっと悔やめ!自分の力の無さを!」
くそっ!くそっ!くそっ!殺してやる!殺してやる!殺してやる!絶対に殺してやるぞ!
「かいだぁぁぁぁああ!!!!」
「うおっびっくりしたぁ」
「目が覚めたかね?傷だらけの少年よ」
目が覚めた?あっ今のは夢か…この人は誰だ?
えらく美人だが…
「あの、すいませんここはどこで、あなたは誰ですか?」
「ふむ、人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗るのが常識じゃないか?」
「…すいません。自己紹介が遅れました。比企谷八幡と言います。それで?ここはどこですか?それに自分が抱えていた妹は?」
「私の名前は平塚静、この総武城の指揮を執っている。君達の町の駅に、君と君の妹が倒れていたのでな、私達総武城の者で回収させてもらった。それと…言い難いのだが、妹さんは、もう…」
「分かっています。俺にとって、小町の死なんか関係ありません。死んでいるからって置いていく事は俺には出来ません!」
そう俺が言うと、平塚静と名乗る女性は何か言いづらそうにしながらこちらを見ていた。
「あの…なにか?」
「ん?いや、なに。妹さんが死んだんだ、普通は泣き喚いてもおかしくない歳にも関わらず、強くあろうとしている姿から君の覚悟を感じ取ってな…それが本心なのか少し疑っていたんだよ」
そんな事は当然だろう。人は人を簡単に信じてはならない。皮肉な事にも海田から教わった事だ
「だが、君の姿を見れば何故か信じれるよ」
「は?それはどういう事ですか?」
「君は今の自分の姿に違和感は無いのか?今の君は全身傷だらけ、右脚は折れていて、左手首は逆に曲がっているんだ。かなりの修羅場をくぐってきたのだろう。それに痛みを感じていないようだ。痛覚がないんだろうな、だが安心していいぞ、完璧に治療してあるから後は完治を待つのみだ。後で治療してくれた城廻に礼を言っておけ」
「はぁ分かりました。ありがとうございます」
まじか…ってえ?まじ?確かに全体包帯巻かれてるし、左手首は変な方向向いてるけど痛みは感じない。痛覚というより触覚が機能してなくねぇかこれ?小町、お兄ちゃんは本物のバケモノになったよ。グスン
「そうそう、君が起きたら聞こうと思っていたんだ、それだけの傷はカバネに襲われただけじゃ付かない。君は何と戦いそんな傷を負った?もし良かったら聞かせてくれ」
「…かなり酷い話ですよ?それでも聞きますか?」
「酷いかどうかは聞いた上で私が判断する。君は子供なのだから子供らしく大人に泣き言を言えばいい」
俺はもう人を信じれない。この人を信じることは出来ないけれど、話してやろう。これは俺だけの問題じゃなくなったんだ。俺の願望のためにも利用してやろうじゃねぇか
こうして俺は何故この様な状態なのかを語りだした。
「これから話すことは自分だけの問題では無くなりました。覚悟して聞いてください。あれは3時間程前のことです……」
「うぉおおおおおお!!!」
小町が死んだ…俺が人を信用したばっかりに俺の目の前で死んだ。小町を殺したこいつは絶対に許さいない。しかも何故だか力のが漲ってくる。今ならカバネにも勝てる気がする
自分での理解できない力が体の奥底から溢れ出し、初めての事なのに今迄使いこなしていた力かの様に頭に使い方が浮かんでくる。まずは脊髄から右腕に電流を流すイメージで、右腕に力を溜めていき、一気に解放した。
ゴォォォォオン!!!!!!
「!!なんだその力は!人間の腕力でなるような現象じゃないぞ!これは!君は何者なんだ八幡君!!!!!!」
「うるせぇよ…俺が何者かなんてどうでもいいだろ…黙って俺の拳で破裂しろ!!!!」
そう言いながら八幡の右ストレートは海田の顔面へと吸い込まれていく…と思われたが突如としてカバネが海田を庇うような形で割り込み、八幡の拳をカバネ特有の心臓で受け止めた。
「くそっ!邪魔なんだよゾンビ擬き!!」
なんてタイミングが悪いんだ…こんな時にカバネなんて、ん?カバネ?海田はカバネは人間にも反応するけど血に良く反応すると言ってたな…まさか!
「お前ら邪魔なんだよ!俺の小町に手を出すんじゃねぇ!!!」
突如として現れたカバネから原因を導き出し、その原因が小町であると気づいた八幡は小町の死体へと向かっていたカバネをアッパーで殴り飛ばしていた。そのとき、
ヒュッ!ズサッ!
「ぐわぁ!痛てぇじゃねぇかくそ海田!!!」
「戦闘中によそ見をする方が悪いんじゃないかい?それに何か勘違いしてないかな?今の攻撃は僕であって僕じゃないんだよ」
「どういう事だよ」
「言っただろう?僕は天才だと。会ったばかりの時にはこう言った。僕は実家の地下室でやり過ごしていたと、これは実は少し違うんだよ。別にカバネから逃げる為に地下室にいた訳じゃないのさ。まず僕がカバネから逃げる必要はない、何故なら僕はカバネを操る事が出来るからね」
「カバネを操る…だと?そんな事が出来るわけない!出鱈目言ってんじゃねぇぞ」
「残念な事に、出鱈目でもなんでもないんだよ、証拠としていま僕達がこうして会話をしているのにも関わらず、カバネ達は襲ってこないだろう?この町にいるカバネはすべて僕の管理下にあるんだよ、八幡君が信じたく無くてもこれが現実だ。」
海田に言われて、慌てて周りを見渡すと、2、30体程のカバネが俺達を取り囲んでいた。にも関わらずカバネは俺達をただただ見ているだけで襲ってはこない。しかし、どこか抵抗する様な動きを見せるのは何故だろうか?まずカバネをどうやって操っている?もし本当に操っているとするならば、平和だったこの町に何の前触れもなくカバネが襲ってきたのは、海田の仕業という事なんじゃないのか?いや、それよりも町をカバネに襲わせて町の住民をあらかた殺し終わってからカバネ達を操っているのきもしれない。そもそも俺が考えた所で何も分かるはずは無いな
そう俺は結論を出し、海田に問いかけた。
「じゃあどうやってカバネを操っているんだよ?カバネは死体だぞ。操るって言うからには催眠術かなんかだと思うがそんなの効くはずない」
「なぁに簡単な事だよ。カバネはね心臓以外を傷付けても切り落としたりしない限り、直ぐに再生するんだよ。僕はその特性を利用して、カバネの頭に小さな機械を埋め込む事にしたんだ。その機械から何万通りもの電気信号が送られて、カバネの体を操るのさ。これでカバネは僕の操り人形となったのさ」
「自分で天才だと言ってたのは本当だったんだな、まぁ関係ねぇよ、お前がいくらカバネを操れようと俺はそのすべてを殺してやる」
「そうかい。それじゃあ戦闘再開だ!」
そう海田が叫ぶと、前後左右、全方位から八幡
へとカバネが攻撃を開始した。全方位からのカバネによる時間差攻撃、普通の人間ならば一体めで死んでいてもおかしくないのだが、八幡は全てのカバネを処理してみせた。謎の力により八幡は爆発的に飛躍した筋力を見せつけ、カバネの銃弾や刀ですら跳ね返す鋼鉄被膜で覆われているのにも関わらず、拳で胸に風穴をあけた。
「…!!ほんとになんなんだその力は…とても気になるな…君は僕のいい研究材料だよ!八幡君。ここから僕は君を連れて帰る為に容赦はしないよ。様子見はもう終わりだ」
海田がそう言うと、先ほどまで2、30体ほどしかいなかったカバネが100以上になり、一つに集まりだした。
「なんだ…これ。カバネの集合体だと…?」
「正確には融合群体だよ、さて、君にこいつが倒す事が出来るかな?」
まじでなんだこれ、化物じゃねぇか。融合群体だと?そんな物を作るなんて、まじで天才だな…
海田が作り出したのは、沢山のカバネを一体の母体に中心に合体させ、巨大な化物にする物だった。本来ならもっと多くのカバネが必要なのだが、八幡1人相手ならという事で、少ない数で小さな融合群体を作り出した。海田が融合群体を作りだしてから、八幡は一方的な攻撃を受けていた。
ドカッ!!バキッ!!グシャ!!
「ぐわぁぁああ!!!」
「はははっ!どうだい!一方的に蹂躙される気分は!辛いだろう!もう君に出来ることはない!死ぬ間際まで痛み付けてあげるよ!」
どれくらい時間がたっただろうか、八幡は融合群体に痛め続けられ、全身を見渡しても、傷が無いところを探す方が困難な状態になっていた。しかし、どういう訳かどこも骨が折れる事はなく、一番ひどい傷は左脚の太腿の肉が削げ落ちている事だった。
「カハッ!くそ…俺は…俺は…」
八幡は自分の力の無さを嘆いていた。自分にもっと力があればこいつを倒せるのにと、海田を殺せるのにと、神にも願いがけをする程、追い詰められていた。そんな時、八幡の心臓部分が発光し始めて、体が若干だが、変色し始めた。
「…!君はカバネリだったのかい!八幡君」
そう八幡は海田の言う通りカバネリだったのだ。カバネリとは本来、後天的になるものだが、八幡は生まれた時から、カバネリなのだ。
本体、腹に赤ちゃんを身ごもった状態でカバネに攻撃を受けたら、母体がカバネとなり、赤ちゃんが産まれる事は無いのだが、極稀に、赤ちゃんがカバネのウイルスをすべて吸収し、完全なるカバネリとして産まれる事がある。八幡はまさにその極稀に産まれる完全なるカバネリで、命の危機を本能的に感じ、死なない体へと、体組織を変化させたのである。今まさに、カバネリへと変化した八幡は完全なるカバネリだからこそ出来る力で、融合群体を倒そうと、立ち上がっていた。
「俺がカバネリ…?そんなのはどうでもいい。俺がここで勝たないと!小町は誰が連れていく?小町はここに置いていく訳には行かない!俺が責任をもって連れていく!」
八幡はそう高らかに叫ぶと、左腕に力を込め、体を腰から左側へて捻った。
「かいだぁぁあ、これで最後だ!俺の全てを込めた拳を受けやがれ!!!!!!」
八幡は先ほど捻っていた体を高速で戻しつつ、左拳を融合群体の心臓部目掛けて突き出した。
ゴォオオオオオオオ!ドゴォン!
「ホォアアアアアア!!」
融合群体は八幡の拳から放たれた、衝撃波により母体を覆っていたカバネが粉々になり、母体は衝撃波に乗り、海田の方へと向かって至った。
ヒューー!ドゴォン!
「くっ八幡…君。君は僕達の作ったカバネリよりも優秀だ。僕は絶対に君を手に入れて見せるよ。その為に此処は引かせてもらう。僕の事は忘れないでくれよ。僕への怒りを糧にもっともっと強くなり、僕を楽しませてくれ」
八幡の放った衝撃波により、融合群体ごと、決して軽くはないダメージを負った海田は、一時撤退を選び、新たに呼んだカバネ、ワザトリの肩に乗り、その場を立ち去っていった。
「はぁはぁはぁ。くそっ殺せなかった。これだけの力を手に入れてもまだ海田は殺せないのか…反省は後だ、とりあえず小町を連れて、駅へ向かわないと…」
こうして八幡と海田による戦いは幕を閉じた。
「……っていう事がありました。」
「…そうか。」
この子供はとんでもない。カバネリだとかそんなのは関係ない。とても子供とは思えない強靭な精神を持っている。それに海田とかいうやつは確かにこの子だけの問題ではないな。カバネを操るなど意味不明だな…まさに人間の敵。そいつを倒す為には確実にこの子、比企谷八幡の力が必要になる。この子には此処に残って貰って、あらゆる武術を覚えさせよう。
「比企谷、君はこの総武城で武術を学びなさい」
「は?」
「これは決定事項だ。異論反論質問抗議口答えは認めない。では、怪我が治り次第、特訓を開始する」
「え?ちょっ、まってく…」
ガチャ…バタン
八幡の怪我の原因を聞いた平塚静は今後の戦いの為に、八幡を鍛えようと心に決め、八幡の了承を得ること無く、総武城のメンバーに約束を取り付けるのであった。こうして比企谷八幡も英雄譚は幕を開ける