静の拳が八幡の腹目掛けて唸る。
「抹殺のぉ!ラストブリットォーーー!」
ドゴォォン!!!
「がはっっ!」
静の拳が八幡の腹を捉え、八幡は後ろの壁へと飛ばされた。
「ふぅ中々やるじゃないか、比企谷」
「ゴホッゴホッ…死ぬかと思いましたよ…」
満足気に頷きつつ、八幡にそう言った静に、八幡は目元に涙を溜めて、痛みに耐えながら返事をなんとか返していた。
「いやいや、まさか衝撃のファーストブリットに撃滅のセカンドブリットが躱されるとは思わなかったよ」
「家の剣術が主にカウンター系なんで、避ける事に関しては自信があったんですが、最後のは何も抵抗出来ませんでした」
関心したように、目を瞑りながら頷く静に対して、八幡は静が最後に放った技を思い出し、青ざめていた。
「抹殺のラストブリットか…本当は使いたくなかったんだがな、使わなければ君を倒せなかった。いくら威力が高かろうと当たらなければ意味がない。そして君はとことん躱していく。なら奥の手を使うまでだよ」
苦笑い気味に告げた静は、八幡に手を伸ばし、頭を撫でた
「比企谷…君は多分、いや、確実にこの総武城で一番の強者になる素質がある。しかしまだ足りない、君には力が足りない。技術が足りない。センスだけで戦っているから決定打をうてない。明日からも私が君の稽古に付き合う。体を鍛えるとともに、技術を身につけなさい」
優しく告げた静は、八幡に聞いた話を思い出していた。
(この子は恐らく復讐のために技術を何が何でも身につけるだろう。妹さんを目の前で殺されたにも関わらず、理性で気持ちを押さえつけて、極めて平常心を偽って修行に取り組んでいる…もし限界が来た時には気持ちが爆発するだろう。もしかしたら死人が出るかもしれん、その為にも何が何でもちからの扱い方を身につけさせよう)
「…分かりました。力が無ければ、海田は殺せない…雪ノ下さんに平塚先生、二人と戦わせて貰いましたけど、どちらにも勝てませんでした。もし今海田と戦えば絶対に自分が死にます。明日からよろしくお願いします!今日はもう戻ります、ありがとうございました」
八幡は自分の力の無さを改めて突きつけられ、拳を握りしめながら、嘆くように静にそう言い、部屋を出ていく姿を静は悲しそうに見つめていた。
稽古部屋を出ていった八幡は1人、自室へと戻っていた。
「やっほー!比企谷君」
「…雪ノ下さん。どうしたんですか?」
突然現れた陽乃の驚きもせずに、八幡は陽乃に問いかけた
「静ちゃんとの稽古、どうだった?」
「自分に足りない部分が良く分かりました。小町の為にも、やはり俺は稽古を積まなければならないみたいです」
陽乃からの問いかけに、八幡は苦笑い気味にそう言った。しかし、八幡の目には業火の炎が灯っており、それを見た陽乃は自分でも気づかないうちに冷や汗をかいていた
「…そっか、ならこれから頑張らないとね!」
陽乃は何かを誤魔化すように八幡にそう言い、八幡の頭に手を伸ばしていた。その時…
キャアアアアア!!
カバネダァァァ!!!!
「…っ!比企谷君!カバネが…」
突如上がった悲鳴に反応し振り返っていた陽乃は、八幡の方に振り向こうとしたその横を、八幡がとてつもない早さで駆けていった
「はっや…って追いかけなきゃ!」
八幡のあまりの早さに呆然としていた陽乃は慌てて、八幡を追いかけ始めた。
八幡が駆け始めて五分…陽乃は目の前で止まっている八幡を不審に思い、後ろから話しかけた。
「比企谷くーん、なんで止まってるの?」
「……」
しかし、八幡からの返事は無く、無視された事にムカついた陽乃は八幡の前に回り込み、八幡の顔を見て驚愕した
「…こ…まち?」
八幡の顔は先程までの静かに怒り狂った様は無く、完全に絶望しきった顔になっていた。その時、
「由比ヶ浜さん!カバネを発見したわ!くちくするわよ」
「わ、わかったよゆきのん!」
二人の美少女が現れ、八幡の前にいたカバネに切りかかろうとしていた。
「…っ!やめろ!」
八幡の横を通り過ぎようとしたいた美少女の1人を八幡は裏拳で後方へと吹き飛ばしていた。
「あぐっ!」
「ちょっ雪乃ちゃんになにするの比企谷君!」
「ゆきのん!!!」
カバネに対して背を向け、陽乃と二人の美少女に対して向き直った八幡は3人からの鋭い目線を無視した、静かに告げた
「あのカバネには手を出すな…あれは俺の妹だ。だから俺が責任を持って殺す…だから手を出すな」
言い終わると八幡は3人からの返事を聞きもせずに、いつの間に奪ったのか、雪乃ちゃんと呼ばれた美少女の刀を奪っており、構えた
「…小町。ごめんな。俺が弱いばっかりに…」
ホォアアアアア!!
「絶対に敵を取るからな…敵取ったらおれもすぐ行くから…待っててくれよ。じゃあな、小町」
そう言うと八幡は、刀を立て、カバネと化した小町の心臓目掛けて一突き、一撃で絶命させた。カバネになった小町は何故か微笑みながら地面へと倒れ、その上に被さるように八幡も倒れ込んだのだった