魔法科高校の魔改造ほのか 作:nyanco
翌日、昨日のことは引きずっていない様子のほのかはホームルームで席に座っている雫と世間話をしていた。
「おはようございます」
ふと透き通る声が聞こえ、クラスが一瞬でざわつく。その様子からほのかは司波さんがやってきたのだと気付いた。ホームルームの扉の方を見ると司波さんが学内用カードを片手に持ちながら徐々にこちらに近づいてきているのがわかる。
「あ、司波さん私の後ろかもしれない」
彼女は北山なので、司波の前ということも充分あるだろう。そんな雫をうらやましく思いながらこちらにやってくる司波さんに挨拶しなくてはと意気込む。
「司波さん!おはようございます!
私、光井ほのかです!よろしくお願いします!」
勢いのある突然の挨拶に深雪は驚いたがすぐ微笑みほのかが差し出してきた手を握る。
「司波深雪です。光井さん、仲良くしてくださいね」
「こちらこそ!」
ほのかはそれはもう満面の笑みでハンドシェイクする。完全に放置されていた雫もほのかの隣に立つ。
「すいません司波さん。この娘ちょっと猪突猛進なもので
私はほのかの幼馴染の北山雫です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします北山さん」
そう言ってほのかと同じように握手をしようとする深雪を見て、雫は少し恥ずかしげに握手を返す。
「ほのかは試験会場で司波さんに一目惚れしてから司波さんのすごいファンらしくて」
「ちょ、やめてよ恥ずかしい!」
入試後に雫と深雪の話をしたことを暴露され、恥ずかしい思いをしながらも、憧れに似た思いを抱いていた彼女と仲良くなれて喜んでいた。
『ただいまよりオリエンテーションを開始します。生徒の皆さんは席についてください』
「じゃあ、私は席に戻るね!」
「あとでねほのか」
「では後ほど」
ホームルームに放送が入ったため、一人離れた席に戻るほのか。やはり寂しく、席の近い二人をうらやむがしょうがないと割り切り、ホームルームに入ってきた指導教官に注意を向けた。
オリエンテーションの説明が終わり、自由に見学できると聞きざわめくクラスの中、ほのかは二科生に対する同情の意見や一科生であることに優越感を感じているであろうざわめきが耳につく。
(司波さんは心なしか表序が険しいような……)
二科生に兄をもつ深雪に注目するとほのかの想像していた通り深雪は周囲のざわめきを不快に感じているように思えた。
(私が元気付けなくちゃ!)
ほのかは深雪に対して謎の義務感を覚えると既に周囲を男子生徒に囲まれていた深雪の元へ向かう。
「雫!司波さん!授業見学行きましょう!」
ほのかは周囲の男子生徒を完全に無視して深雪の腕をとる。
「そうですね、光井さん、北山さん、行きましょうか」
実は囲まれてかなり困っていた深雪はこれ幸いとその場を離脱する。
午前の授業見学も終わり、昼休憩に入った。相変わらず深雪人気は高いようで深雪とともにいた二人まですぐに囲まれ次々と声をかけられてしまった。
「司波さんお昼はどうされます?」
「学食に行くつもりですが……」
「ご一緒してもいいですか?」
「席が空いていれば……」
「では埋まらないうちに急ぎましょう!」
困った表情をしている深雪を完全に無視して話しかける回りの生徒に急かされ、食堂へと移動していく一行。それについていく中、ほのかは少し自己嫌悪をしていた。
(もしかして、私が司波さんに挨拶したときもこんな感じで司波さんを困らせていたのかな?)
「ほのか、どうしたの?」
暗い顔をしていたせいか雫に心配をかけてしまったらしく心配そうにほのかの腕をとる雫がいた。
「ううん、なんでもないよ!私たちも食堂行こ!」
後悔に囚われていたほのかは雫の声で我に返り、やはり人垣となってしまっている深雪集団を追いかけた。
食堂はかなり広々とした空間であることがわかるが、それに比例して生徒数もすごく、とてもではないがこの集団が一緒に座れるようなスペースは残されていなかった。
「深雪ーっ
こっちだよー!」
どうしようか少し迷っていると活発そうな女子が深雪に声をかけた。
「エリカ!美月!お兄様!」
先ほどまでの困り顔とは打って変わって晴れやかな顔で深雪は呼ばれた方へ近づいていった。その結果当然集団もそれについていくことになってしまう。ほのかはその集団の中に深雪の兄を見つけて舞い上がるが明らかに席は足りず、先ほど覚えた罪悪感もあり、同席は諦めようと考えた。
「おいキミたち、ここの席を譲ってくれないか」
その直後、深雪集団の中でもなぜか仕切りたがっていた男子生徒が、深雪の兄たちに対してそのような声をかけ唖然とする。
「二科は一科のただの補欠だ
授業でも食堂でも一科生が使いたいといえば席を譲るのが当然だろう?」
ほのかはその完全に相手を見下した態度に嫌悪感を覚えたがどうやら周囲を見るにほのかと雫、そして深雪以外の一科生はこの意見に対して何も疑問は持っていないらしいことに気づく。
「実力行使をしてもいいんだが、学内ではCADの使用は禁じられているからな」
「わかった、俺はもう終わったから行くよ」
深雪の兄は理不尽な要求に逆らうことなく席を立ってしまう。
「いい心がけだ、他の三人も見習ってほしいものだ……
さ、司波さん空きましたよ」
「え……でも
私はお兄様と一緒に……」
「それはいけない、ウィードはしょせんスペア
一科生と二科生のけじめはつけないと……
みんなもそう思うだろ?」
途惑う様子の深雪を無視して饒舌で垂れる彼に周囲の一科生は同意する。
「そうだ!自重しろよウィード!」
「僕たちは深睦を深めないといけないんだ!」
あまりの自分との価値観の違いにほのかは混乱した。
「アホらし、私たちも行こ」
「ああ」
まだ残っていた他の二科生も席を立つ。
「雫、司波さんをお願い」
立ち去っていく集団を見てほのかは雫に告げ口をしながらその場を立ち去る。
先ほど、ほのかは自分が彼らのように深雪に迷惑をかけていたんじゃないかと自己嫌悪した。しかし食堂でのやりとりを見て確信する。自分が深雪と、深雪の兄を選民思想をもつ一科生から守らなくてはならない。ほのかはまたしても謎の義務感が働いていた。
食堂を抜け出したほのかは追いかけていた深雪の兄たちと距離を詰める。
「あの!司波さんのお兄さん!」
声をかけると皆振り向き、一人、先ほど深雪を呼んだ活発想な女生徒が前に一歩出る。
「さっきの一科生?まだ何か用があるってわけ?」
喧嘩腰な態度にそれも仕方ないと思いつつほのかは頭を下げた。
「先ほどは私のクラスメートがみなさんに不愉快な思いをさせて、すいませんでした!」
突然の謝罪に喧嘩腰だった彼女も驚き、唖然とする。
わずかな間沈黙が流れるが、頭をあげる気配のない彼女に、彼女に呼ばれた本人が前に出る。
「頭をあげてほしい、俺は特に思う事もないし、君が謝ることでもない」
「お兄さん……」
ほのかは顔をあげ、見上げる。そこには話したいとずっと思っていた彼が優しげな微笑みを浮かべ、こちらを気づかってくれていた。
「同学年なんだ、お兄さんはやめてくれ
俺は司波達也だ、妹とかぶるだろうから達也でいい」
「私は1-Aの光井ほのかです。私もほのかって呼んでください!」
「私は千葉エリカよ、さっきはごめんなさいね」
「私は柴田美月です。よろしくねほのかさん」
「俺は西城レオンハルト、レオでいいぜ」
ほのかの態度に他の一科生とは違う事がわかったためか、皆自己紹介をしてくれた。
「皆さんよろしくお願いします。今度また同じようなことがあったら、私がなんとかします!」
「そんなに気負わなくてもいいぞ、だいたい他の生徒の責任まで持つ必要はない」
なんとなくほのかの性格を察した達也は本当になんとも思っていないことを示したかったがほのかの決心は変わらなかった。