罪の王がダンジョンに居るのは間違っているだろうか?-リメイク!   作:ユーリ・クラウディア

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#3

正直な話し、自身が異常である事は分かって居た。

逃避していたそれを先日の酒場での一件で認めざるを得なくなっていた。

 

自身の身体能力は大丈夫だ。確かに尋常ではない身体能力だが王の権能がある分常人よりは身体能力が高いというだけだ。

がしかし、自身の技量が普通ではない。半年でかなり上がったと言った事があったが、その程度の話しではない。日を追うごとに上書きされるかの如く技量が上がっていく。まるで最初から出来たかのように…。

 

何となく原因に心当たりはあった。しかし、それは認めたくない事象。

自身が他の何かに置き換えられていくかのような錯覚を覚える。

今では、恐らく純粋な技の技量だけで言えばオラリオでもトップを争うレベルだろう。その証拠にレベル5の一戦級冒険者の【凶狼】を下してしまった。

勿論、色々なハンデを意図的に負わせてかなり有利な状況での勝負だったからこそだが。

以前から異常になれて居る自身すら驚愕する事実だ。

あの一瞬の攻防はそれ程までの神業だった。

 

「…ハァ」

 

あの騒動から既に数日が経過してた。

今日は怪物祭りという事でかなり街がにぎわっている。

祭りの日くらい休もうかとも思ったが、どうしても気が急いて居るようで、足は自然とダンジョンの方へ向いて居た。まあ、ホームを出た時点でフル装備だったから最初っから休む気など全くない事は自覚していた。

それでも、悪あがきにと街を歩いて出店を冷かしている。

 

「ダメだな…、諦めてダンジョン行こ」

 

もう、自身の焦りを抑えきれないと悟った集は足を完全にダンジョンに向けた。

 

 

と、その時である。道の向こうからモンスターが数体集の居る広場に押し寄せて来た。

 

「街中にモンスター、まさか檻から逃げ出してきたのか!?」

 

怪物祭りと言うだけあって、この祭りはダンジョンで捕獲したモンスターを闘技場で調教師テイムする見世物がメインイベントとなる祭りだ。ダンジョンから出て来るという事は殆ど有り得ないので考えられるのは折からの脱走。

そして、モンスターの扱いに関しては随一であるガネーシャファミリアが管理している事を考慮すると人為的に逃がされた可能性が高い。

街の雰囲気がかなりピリついて居る事に今更ながら気づいた集は此れだけの情報で此処まで推理できることに再び自身の異常を認識し苦笑いが零れる。

かなり被害が出ているようで、モンスターと一緒に負傷した冒険者が後退して来た。

 

取り敢えず剣を抜いて構える。

見た所全てレベル1相当のモンスターしかいない。ソロでも何とかんなる程度だ。これがレベル2~3相当以上になればヴォイド無しでの勝利は不可能に近くなる。武器次第ではレベル2も相手にできない事は無いが、レベル1に合わせた通常兵装では武器の刃が通らないのでジリ貧になって最後はスタミナ切れで敗北する事になる。

先日【凶狼】を下した技も人型限定な上に非殺傷技なので、現状殆ど意味を成さない。

 

現状の装備は第三戦級武装。残念ながら駆け出しを抜けた冒険者が使うようなド三流の安物だ。まあ、半年でこれならかなり優秀な部類である。普通なら未だにギルドの支給品を使っていても不思議ではない時期だ。

 

 

―――スゥゥ…、っと深く息を吸う。

 

剣を抜き放ち思考をクリアにする。

 

擦って居た息を止め身体の力を入れ一歩踏み出す。

 

そして、一気に駆けモンスターの首に剣を押し当てようと剣を振った。

 

 

 

がしかし、モンスターはその剣が当たる前に霧散した。

 

 

 

「―――アイズ・ヴァレンシュタインか。」

 

そう、剣を当てる直前に彼女が周囲のモンスターを一気に切り伏せたのだ。

頭上の死角からの強襲、更には魔法なのか風を纏って高レベル帯の俊敏にかなりのブーストを掛けた高速戦闘。

 

「それにしても僕が斬りかかって居るのに気づかずに攻撃を放った?あのアイズ・ヴァレンシュタインが?」

 

強烈な違和感を感じる集

 

「何かを焦って居る…?いや、考えても答えは出ないか。」

 

しかし、他者の思考を読む事などできるはずもなく直ぐに考えるのを止めた。

 

 

思考を切り替えた集は周囲の音を頼りに他に被害が出ていないかを確かめながら街を歩き始めた。

 

すると二か所程戦闘音が止まない場所がある。

一か所はダイダロス通りと言う迷路のような一種のスラム街、もう一か所は此処からさほど遠くない街の広場

 

「…アイズ・ヴァレンシュタインが仕留めきれないモンスター?」

 

ある種有り得ない事象だ。事モンスター戦に関しては現状自身が及ぶべくもない程の強者であるはずのアイズ・ヴァレンシュタイン、先程介入してきたことから考えて広場で戦っているのはアイズ・ヴァレンシュタインで間違いない。それも音からして複数で戦っている様子さえあるのに倒せる気配がない。詰まりはレベルで相当すると高くて6クラス、装備が十分ではない事と双方拮抗している事から低くても4クラスだと推測できる。それも斬撃特有の切り裂く音が余まり聞こえてこない事を考えるとアイズ・ヴァレンシュタイン以外は素手の可能性がある。と言うか先程から生身の殴り合い特有の生々しい打撃音が聞こえてくるあたり戦闘に参加している殆どが素手での戦闘になって居る可能性が高い。

話しが逸れたがその無いが有り得ないかと言われれば、そんな高レベル帯のモンスターは地上に出てこないし捕獲もしないからだ。

今回の祭りでも使われて居るのは精々がレベル1最上位まで、それも祭りの締めを飾る為に1体居ればいい位である。

にもかかわらずレベル4以上のモンスターが居る?どう考えても異常なのは明白である。

 

 

一方のダイダロス通りは恐らく通常のレベル1相当のモンスターだろう。アイズ・ヴァレンシュタインが狩りきる前に入り込んだのだろう。詳しい事は流石に分からずそこに居るという事しか分からない。しかし不幸中の幸いとでも言おうかあそこは逃げるのにはもってこい、現地民も事逃げる事と隠れる事に長け、怪我人が出たり建物が多少壊れるくらいの被害で済むと考えられる。

 

増援に行くならば広場だろう。

 

まあ、レベル1の自身が行った所で足手まといなのは明白であるが。

 

「それでもまあ、ただのレベル1じゃないし、行かない理由にはならないかな?」

 

 

 

******

 

 

 

「ああッ、もう!何なのよこいつ等!?」

 

「新種な上に強い…こっちは武器すらない。レフィーヤ、起きなさい!」

 

モンスター討伐をしていたロキ・ファミリアのティオナ、ティオネ、レフィーヤの三人だったが突然現れたレベル4相当のモンスターによりレフィーヤが負傷し戦線離脱、残り二人も純粋に祭りを楽しんでいた為、武器を所持しておらず素手での対応を余儀なくされた。

 

モンスターの外皮は堅く素手ではあまりにも分が悪い、頼りはレフィーヤの魔法だが胆力の無いレフィーヤには荷が重かった。

 

「アイズ!」

 

そこへアイズ・ヴァレンシュタインが参戦し一刀両断する。

 

「レフィーヤ、大丈夫?」

 

「―――ァ、アイズ…さん」

 

 

がしかし、此れでは終わらなかった。

 

 

「っな!?まだ出て来るの?」

 

更に同じモンスターが3体出現

アイズの剣は整備中で今持っている剣は代替品、代2線級程の安物である。つまりは…

 

「っあ」

 

アイズが魔法を付与し突きを放つ

しかし硬い外皮との衝突に加え魔法付与での威力上昇分の衝撃に耐えきれるわけがなく砕け散る。

 

この時点でロキ・ファミリアの面々はレフィーヤを除いてモンスターを討伐し切るだけの火力を失った。

 

そして更に事態は悪化してく。

一般人の少女が屋台の裏側に隠れていたのだ。

 

ティオネ、ティオナの二人は触手に捕まり身動きが取れず、アイズも魔法で牽制しヘイトを集中させていた為早々に捕捉され身動きが取れなくなった。

 

そうなると、次に狙われるのはおのずと決まって来る。

レフィーヤだ。更にはレフィーヤの近くには負傷した彼女を助けようとしているギルド職位が二人。

状況は正に最悪に近い。一つ希望を上げるとするならば、レフィーヤの意識が戻り覚悟が決まりかけている事である。しかし時間が足りていない。そして、詠唱中に彼女を守る前衛も居ない。

 

 

 

最早ダメかと思われた時である。

 

 

「――3戦級のガラクタでこの状況は少し厳しいかな?」

 

レフィーヤの前に一人の少年が割って入った。

 

「オ…オウマ君!?」

 

「ああ、エイナさんこんにちは」

 

「え、ええこんにちは…って違う違う!どうしてこんな所にオウマ君が!?早く逃げなさい!レベル1の君じゃ危険すぎるわ!」

 

ギルド職員の片割れ、エイナ・チュールの担当冒険者、シュウ・オウマであった。

 

「非戦闘員のエイナさんに言われたくないですよ。それよりそこのエルフさん、魔法は詠唱できそうですか?」

 

「え…ええ、出来るけど」

 

レフィーヤは行き成り声を掛けられたことに若干の戸惑いを覚えながらも返事を返す。

 

「じゃあちょっとお願いします。僕が時間を稼ぐので」

 

「は、はい…ってちょっと!?」

 

意味が分からなかった。ギルド職員曰く彼はレベル1、その癖に遥かにレベルが高い憧れのアイズ・ヴァレンシュタイン達でも対処し切れなかった相手に時間を稼ぐ?

そんなことできる訳がない、それが常識であり普通と言う物だからである。だがしかし、此処で一つの事柄が脳裏を走り抜けた。先日の遠征の宴での出来事である。ロキ・ファミリアの団長フィンをして戦慄せしめた出来事。その当事者が目の前の少年である事を思い出したのだ。

 

レフィーヤには本当に彼がレベル1なのか、それとも実はもっと高いのか。全く見当もつかない。がしかし彼が只者でない事だけは理解した。

だからこそ先程までしていた思考、つまり覚悟を決める為の思考を再開、既に9割方終わって居たのもあり。直ぐに立ち上がった。

 

「訳が分からない…でも、私だってロキ・ファミリアの一員。オラリオで最も強く、誇り高い眷属(ファミリア)の一員なんだから。こんな所で二の足を踏んでいる暇はないの!」

 

 

 

******

 

 

 

「…」

 

集の目の前に居る植物型のモンスター。しかしそんな事はどうでもよかった。

そのモンスターのとある特徴、それが集の冷静さを少しずつすり潰していく。

 

「――その身体の結晶、何処でくっつけて来たんだ?」

 

そう、その身体の1/4程が見覚えのある結晶で出来ていた。

集にとって関り深く、切り離せぬ半身のようなそれが、モンスターにみられる。これが何を意味するか。今解る事は少ない。しかし、幾つか確信できることはある。

確実にいのりがダンジョンに居て、更にそれを薄汚いモンスターが利用している…。いや、此の人為的に起こされたであろう騒動にこの手のモンスターが引っ張り出されて来たという事はまず間違いなくこの事件の黒幕にも利用されている事が分かる。

その事実が集の心をどうしようもなく凍てつかせ憎悪の炎がくすぶり始める。

 

「―――モンスター風情に意思疎通が出来る訳もないか。」

 

口調が乱れ、普段の温厚さは見る影もなくなっている。

 

「ならお前に用はない、だから早く退場してくれ。」

 

集は一歩ずつ歩み始める。するとどうだろうか、モンスター達は怯えるような素振りを見せ始める。

 

「――灯火よ」

 

胸元にかざした右手から蒼い炎が灯る。集が唯一保有する魔法、浄化の灯火。その応用である。本来常時発動型であり自身に宿るそれを抑え込む魔法である。その常時発動しているそれを意図的に自身から切り離し体外に顕現させる。本来柔軟な使用が出来ないハズの魔法であるが、説明欄にも効果以外全く何も書かれて居なかった為縛りが無いと推測し、試したところ出来てしまったと言う何とも言えない技であった。それに自身以外に使い道ができるとは全く考えていなかったので、その心境は少しだけ複雑でもあった。

 

その灯により一層の恐怖を感じたのかモンスター達は捕獲していた三人を投げ捨て無差別に暴れ始める。幸い逃げ遅れていた少女もギルド職員によりレフィーヤの後方まで避難できていた。投げ飛ばされた三人も代1線級の高位冒険者。問題はない。

後はレフィーヤが居る方へ攻撃を届かないようにすればそれで勝利である。

 

左手で器用にベルトについて居る鞘を外して剣を抜き逆手で持つ。

 

権能で自身の身体能力を限界まで上げる。五感が研ぎ澄まされ少しずつ時間を置き去りにしていく。

それもそのはず、エンドレイブ搭載の小型マイクロミサイルの最大速度は500m/s、それを生身で切り落とす事も度々あれば、エンドレイブ標準装備のマシンガンの弾丸もライフル弾より遥かに早かったが一発だって当たったことは無かったのだから。

つまりはそう言う事である。

事動体視力や思考スピード、と言った部類については集はオラリオ史上最高位である。

まあ、高位冒険者であれば可能であろう。しかし集がそれをやって居たのは恩恵を貰う以前の話しである。

更に恩恵の付与に伴い更にそれに拍車がかかって居る今、レベル4程度のモンスターなら攻撃を見切るのは造作もない事である。既に集の視界は全て止まったかのようにゆっくり動いている。

 

規則性も無い只乱雑に攻撃してくる触手を剣を側面に割り込ませ押しいなす。ガリガリと剣身が削れ一度で刃がすべて持っいかれる。恐らくこの戦闘が終わる前に砕け散るだろう。だがそれも構わない、もとより攻撃するための武器としてではなく耐える為の防具として手に取ったのだからそれでもいい。

左手の剣を攻撃に合わせて正眼、袈裟、突き、逆手、右左と構や持ち手を変えていなし続ける。

やがて剣は砕け付けていた籠手でいなし始める。

しかし攻撃を完全に流しきれずに少しづつ身体が傷ついていく。皮膚は割け、骨は軋み、目が霞んでいく。

だが一歩としてその場を引かない、モンスターは何時まで経っても恐怖が抜けない様で何時までも狂乱状態でいる。

 

「やっぱりこの灯が怖いのか?その力の源の一つが淘汰だと言うならそれは僕の罪、僕の業なのだから。返してもらうよ。」

 

集は向かってくる触手の一つを右手で捕まえる。

 

「―――灯火よ」

 

 

 

大量の触手をいなし続ける集を見ての反応は様々だ。

エイナ・チュールの場合は有り得ない物を見る目で混乱する。

ティオネ・ヒリュテの場合は集と集が灯す火に怯えるモンスターを訝しむように睨みつける。

ティオナ・ヒリュテの場合はその戦闘を興奮するように目を輝かせる。

レフィーヤ・ウィリディスの場合は悔しさを感じさせる目線を、しかしどこか安心するその後ろ姿に思考は落ち着きを見せている。

アイズ・ヴァレンシュタインの場合は彼の力が何処から来ているのかが気になるのかチラチラと視線を向かわせる。

 

 

そして視線を向けていると集が触手を右手で捉えた。

それと同時にモンスターの本体が更に暴れ始めた。体の結晶が徐々に引いて行く。

それがどういう事なのか思考する前にレフィーヤの詠唱が完了する。

 

 

「【ウィン・フィンブルヴェルド】!!」

 

集はそれに合わせて回避行動に移る。

と言っても敢て横なぎの攻撃を受けて吹っ飛ばされる事で回避する荒業だが…。

幾ら思考スピードや動体視力が高かろうが身体能力的に考えて詠唱が完了した後から、あの大規模魔法を回避するのは流石に無理だからである。

 

何はともあれ、モンスターは全て魔法の餌食となり、凍り付き霧散した。

 




マイクロミサイルの速度云々はオリジナルで考えました。集の思考速度は本当に化け物レベルのチートです。でも体が付いて行かないので周りと一緒に自分の動きも置き去りにしてしまうので集の動きが早くなるわけではありません。
集がマシンガンの弾道を目で追って躱していた訳じゃねぇってのは置いておいてください。ミサイルはマジで目で追って切ってたでしょ!
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