罪の王がダンジョンに居るのは間違っているだろうか?-リメイク! 作:ユーリ・クラウディア
「知らない天井だ。」
目を覚ますとそこには知らない天井、別に混乱や記憶障害も無く。オッタルとの戦闘で気を失ってしまったという事に直ぐ気が付いた。
「此処は何処だ?」
記憶にない部屋、ダンジョンで意識を失うと言う致命的ミスを犯しながら自身が五体満足なのに違和感を覚える。
全身の傷も綺麗さっぱり消えており、頭もスッキリしている。不可解な事に思考を巡らせていると、部屋に来客が訪れた。眼帯を付けた隻眼の男だ。
「お、やっと目ぇ覚めたか。」
「…此処は?」
取り敢えず直近で最も重要な事を問いかける。現在地が分からないとどうしても不安を覚えてしまうのは心理的にも正常な感情だろう。
「ああ、此処は18層のセーフティエリアだよ。全くガレスの野郎に言われてなけりゃテメェなんぞさっさと叩き出してるんだがな。」
「取り敢えず僕が気を失ってから何があったかご存知でしたら教えてもらえませんか?」
「まあ、ガレスから幾つか頼まれたし今説明してやるから取り敢えず落ち着きな。」
彼曰く、僕が気を失った後、戦いの途中から見ものしていたロキ・ファミリアの一団によりオッタル共々保護されお互いが所持していたエリクサーで身体の傷を回復、18層のセーフティエリアで知り合いだった彼の所に僕を預けロキ・ファミリアは遠征に旅立ったという事だ。何やらそのガレスと言うロキ・ファミリア幹部のドワーフが僕達の戦いで大層感動したそうで見物の礼として此処の場所代と同行していたヘファイストス・ファミリアの腕の立つ鍛冶師に僕の武器のメンテナンスを頼んでくれたらしくかなり至れり尽くせりな状態になっているそうだ。
まあ、そんなこんなで意識を失った既に3日の時間が過ぎているそうだ。
虎の子だったエリクサーを思わぬところで消費してしまったのは誤算だった。そもそもオッタルと遭遇してしまったのが運の尽きと言う所である。
「―――そうでしたか、場所を貸していただき有難うございます。」
「金は貰っている。後は起きたならさっさと出てってくれればそれでいい。ああ、最後にガレスから手紙を預かてる。何でもお前とやりあってた奴からの伝言なんだとよ。」
「はい、お世話になりました。」
挨拶した後に手短に準備を済ませ。建物を出る。
右手に持った手紙に目線を向ける。
――次会った時こそは、決着をつける。――
その一行だけ、の簡素な文章だったが、気持ちが痛い程伝わってくる気がする。何やらオラリオ最強に完全にロックオンされてしまったようだ。困った。神に目を付けられるよりましだと思うが、フレイヤに嫌われているような事をオッタルが言っていたからもう殆どアウトな気もする。これは色々ヤバいな、早くいのりを見つけないと…。
一度ダンジョンを出て態勢を立て直そうかとも思ったが、エリクサーを失った以外では殆ど被害は無い。武具も防具もガレスさんと言う人が何とかしてくれたらしいし。
集は、少し考えてからダンジョンアタックを続行する事を決めて、進むことにした。
「待ってていのり…もう少しできっと、君に届くから。」
*****
ロキ・ファミリアの遠征隊は一部のヘファイストス・ファミリア団員も含め圧倒的な士気の高さから順調に階層を下へ下へと進んでいた。
その理由が、ロキが目の仇にしている犬猿の仲であるヘスティア・ファミリアの団員である事は、皮肉と言えるだろう。団長のフィンを筆頭にリヴェリアですらその闘志に当てられている程の士気、ベートやアイズ、アマゾネス姉妹は完全に自身の漲る闘志を抑える事が出来ずモンスターに吶喊していく。ガレスも今にも突っ込みそうな雰囲気を放っているが流石は古参の幹部と言うべきか、自身の役回りと後続の育成と言う観点から自粛し出来ていた。
「ガレス、何かあったのかい?」
「それはこっちのセリフでもあるぞ?」
二人はニヤニヤしながらお互いの高ぶった気を当て合っていた。
「フフ、ちょっと面白子が冒険をしててね。若いって言うのはああいう事を言うんだね。」
「ハッハッハ!こっちも面白い小僧が冒険をしててな!アレは見ただけで気が高ぶるのも当たり前だな!」
フィンは一応ガレス達が何を見たのか知っていた。それを見た団員達がこぞってその話をしていれば耳に入らない訳がない。
「…オッタルが追い込まれていたと言うのは本当なのかい?」
真剣な表情でそうガレスに問う。
「ああ、勝負はほぼ引き分けに近い。最後の最後まで意識があったのはオッタルだったが、そのオッタルもボロボロで身動きが取れる状態じゃ無かった。最後にお互い立ったまま動きが取れなくなるほどに消耗しておったわ。アイツ等がお互いにエリクサーを持っておらんかったら直らないような重症が至る所にあったわい。」
「それがあの酒場の一件の青年だと言うのだから世の中と言う物は分からいね。」
「椿の奴も興奮していたよ。ともすれば自ら売り込みにこうと考える程に。」
「それはまた入れ込んでるね。」
「最強の名を欲しいままにする完全な格上のオッタル相手にあと一歩まで追いすがる強者だ。ワシが鍛冶師だったとしても是非武器を打たせてくれと言うな。あの目は本物だったわい。」
「そう言えば、怪物祭でも家の団員が助けられたって報告が上がっていたね。確かレフィーヤの詠唱時間を稼ぐために体を張って稼いでいたってティオネが言っていたね。」
「本当に読めん奴じゃな。」
彼らは集の実力を計り兼ねていた、そもそも低レベルにも関わらず上位冒険者に喰らい付く異様なフィジカル、オッタルと拮抗出来るだけの技量、そのどれもが異質だった。
「さて、取り敢えず此処のモンスターの処理も終わった。セーフティエリアまでもう少し、取り敢えず今はその事は置いておこう。此処から先は僕らも死力を尽くす必要が出て来る。」
「おうとも」
******
レフィーヤ・ヴィリディスは考えていた。敬愛する憧れの先輩であるアイズ・ヴァレンシュタインが気にする二人の冒険者の事について。
片やアイズとの交流は殆ど無いものの時折自分達の目の前に現れ、レベルに見合わない圧倒的に実力を持って周囲を騒然とさせる。アイズの会って手合わせしたいランキング№1の青年。片やレベル以上の事は余り仕出かさないもののアイズがその圧倒的成長速度で最も気に掛けている少年。
青年を最初に見たのは遠征後の打ち上げをやっている時だった。ベート先輩が酔って醜態をさらしている時で、急にその背後に現れベート先輩に水を浴びせたのです。驚愕したと同時に何だかスカッとしたのを覚えている。でも怒ったベート先輩を見て彼がヤバいのではないかと直ぐに顔の血が引いて行きました。でも結果はどうでしょう?全く見えませんでしたが彼はベート先輩に勝ってしまいました。見た所左手が折れているようでしたがそれも気にしない様子で去って行きました。団長と少し話して行きましたが、レベルが1だと言うのは嘘だと思いました。
次に会ったのは見たのは怪物祭、自身がピンチだった時に颯爽と現れて時間を稼いでくれました。最後の方はボロボロだったのが目に移って居ましたが魔物を倒した後は気が抜けてしまって意識を外してしまい、気づけば何処かに行ってしまっていました。お礼ぐらいは言いたかったです。
そして次に見たのは数日前、ダンジョン17階層のボス部屋だった。彼とゴライアス、そしてオラリオ最強の冒険者、オッタルの三つ巴の地獄。誰一人として全く譲らない一進一退の攻防、最後の僅か十数秒の交差、自分との圧倒的なまでの差を見せつけられた。
少年については今は少し落ち着いている。憧れの先輩を横取りされたようで確かに嫉妬したし今もしている。でも彼は努力しているのが分かる。憧憬を燃やし、アイズ・ヴァレンシュタインと言う高見を必死に追い求めていると言うのが少しだけ分かったから。だから少しだけ認めてやらないことは無い。
いや、やっぱなし、先輩は私の物だ。アイツにはやらんし認めない。
何より重要なのはどちらも私が出来損ないであると言うかのように此方を圧倒してくることだ。力で、技量で、成長速度で、そして尊敬する先輩方の関心の全てを持っていくその在り方に、私は、レフィーヤ・ヴィリディスは今まで以上に劣等感に苛まれていた。
****
「上手く行かない物だね…」
「全くじゃ。次から次へと飛んだ予想外もあったもんじゃな。」
「仕方あるまい、だがそれでこそ冒険であろう?」
ロキ・ファミリアは未踏破エリア59階層へと足を運んでいた。過去此処まで辿り着けたのは今は無きゼウス・ファミリアのみであり、その記録からこの階層は氷雪エリアだという事が分かって居た。
しかし、彼らの目には雪一つ映らず気温も常温程度、見渡す限り青紫色の結晶体に埋め尽くされていた。モンスターの影も殆ど見えず、唯一地平線の彼方に一体だけ明らかに階層主レベルのモンスターが居るだけであった。そしてその背後には天井にまで届く太く高い結晶の柱が一本。
勿論そこまで消耗していなかった面々が取ったのはそのモンスターの討伐であり、駄目でも威力偵察くらいはしたかったのもあり、戦闘に移った。
それがおよそ10分前の事である。モンスターの強さは圧倒的の一言に尽き。攻撃の殆どが効かず。限界が来ていた。勿論かなり早い段階で相手が規格外なのが分かった為撤退しようとした。しかし其れを許してくれる程優しい相手ではなかった。結晶に包まれた身体、人の形を模したような上半身、周囲の結晶を操り変幻自在に攻撃してくる手数の多さ、そして高位の呪文を高速で詠唱し圧倒的な火力を叩き込んで来る。
防戦一方、既にラウルが戦闘不能一歩手前、椿も若干の余裕があるようだが時間の問題なのは目に見えていた。他の面々もかなり限界に近い。
最初に倒れたのは意外や意外、アイズであった。敵を前にして焦りを見せる癖がある彼女の精神性が仇となり、最初に狙い撃ちされたのだ。
そして次がアマゾネス姉妹、アイズを助けようとした所を返り討ちにあう形で戦闘不能に成っていた。幸い全員意識はあるが身動きが上手くとれていなかった。
絶望的な状況下にて誰一人として諦めの顔を見せないのは流石と言えるだろう。だがしかし諦めなければ何とかなる、と言う規模を完全に超えていた。そして、地力で最も劣るレフィーヤの体力がついに限界を迎えた。反応が遅れ吹き飛ばされるレフィーヤ、しかし彼女の目は死んでいなかった。最後のせめて一矢報いようと血反吐を吐きながらも魔法を詠唱する。
だが矢張り相手はそれを許さない。結晶を操りレフィーヤ目掛けて振りかざす。
しかし、それはレフィーヤに当たる直前で何の前触れもなく止まる。
困惑するファミリアの面々、レフィーヤも驚愕に詠唱を止めてしまう。それもそのはずだ、何せあそこまで苛烈だった攻撃がピタリと止まり、静けさが階層を支配しているのだから。そんな中やけに響く足音、そして彼らロキ・ファミリアの面々の遥か後方に目線を釘付けにしているモンスター、そしてその目線に釣られ目を向ける。そこに居たのは――
――淘汰の終息点、その縮図を見せられている気分だ。
例外中の例外、罪の王にして救世の英雄。シュウ・オウマである。
ストックが…切れた!?
はいと言う事で最近投稿する暇もない位忙殺されておりましたがやっと投稿出来ました。そして此れにてストックが無くなり更新速度が一気に落ちます。余談ですがたった此れだけですが、此処まで書くのに半年以上の時間を消費していますので更新速度はお察しw
因みにオッタル戦で集の右腕のヴォイドにヒビが入ったって書いたけど、実は裏技でそれも修復できています。方法等はその内記述しますのでお待ちください。
誤字報告や感想、評価待ってます。どしどしどうぞ。(誤字報告が実は一番切実だったりするw