TSしたら友人がおかしくなった   作:玉ねぎ祭り

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一章
寝てる間に潰した?


 朝目覚めると女になっていた。

 

 何を馬鹿なことを言っているというなかれ。俺が一番混乱しているのだ。

 その日の目覚めは特別何か変化があったわけではなかった。

 七時にセットしたスマホのアラームを無視する。罪悪感と共に二度寝を強行しようとしたところで兄貴にたたき起こされた。寝ぼけ眼を擦りながら洗面所へと向かい、洗顔を済ませ、トイレに入ってそこで気が付いた。 

 なにかいつもと違うとは思っていた。 

 お袋と妹が怒り狂うので、俺、兄貴、親父を含めた男勢は用を足すときは基本座って致す。下品な話小便が飛び散るからだ。 

 俺はいつものようにパンツと共にスウェットを下ろし、どっかりと便器に腰を下ろした。 

 股がすーすーする。

 初めの違和感はこんなもんだった。 

 寝ている間夢精でもしてしまったかと焦りながら自分のパンツと股間を目で確認した。

 パンツは特に問題なかった。

 股間は問題大有りだった。 

「……ん?」

 ついていない。

 何がではない。ナニがだ。

 たっぷり十秒ほど意識が遥か彼方へと飛びさった。

 だが俺の意識がどう飛ぼうと生理現象はどうしようもない。意志とは無関係に排泄行為は完了された。 

 怪我をしているわけではないらしい。などと、混乱した頭で安心しているとトイレの扉を乱暴に叩かれた。二つ上の兄貴だ。 

「遅え。いつまで気張ってんだよ糞野郎」

 あんまりな物言いだがこれがうちの兄貴だ。外見も言動も粗野でどうしようもないが、家を空けがちな両親に代わって家事全般を担当しているので発言力は強い。

「すぐ出る。ちょっと待って」

「早く出て飯食えよ。後窓開けて換気しとけよ」

 そう言うと兄貴は妹を起こしに扉から離れていった。少しして二階から妹の悲鳴が響いた。

 取り敢えず俺はトイレから出ると自室に戻った。

 混乱の極致にあったが、現状を知る覚悟があったらしい。スウェットをパンツごと引き下ろした。

 小便をした時、排泄口の違和感はあったが痛みはなかった。切り傷や腫れ傷といった怪我ではないと信じたかった。

 中学校の時買ってもらった姿見の前に立つ。ゆっくりと埃除けに使用しているシーツを外し、姿を現していく自分の股間を見逃すまいと、じっと目を凝らした。

「……うん?」

 最初何がなんだか理解が追い付かなかった。

 額から脂汗がとめどなく吹き出し、脇汗が二の腕をつーっと伝い、肘までやってきた雫がカーペットにシミを作る。

 おかしい。俺は目が悪くなったのだろうか。

 あり得ない現実に目を逸らそうと頭が必死で警戒音を鳴らす。だがそれが現実逃避であることは時間がたっても変化の起きない自分の体が嫌というほど教えてくれる。 

「おう、お、おー?」 

 どこへ行ったのだ、俺のちんこ。

 太腿の裏や尻に移動したのではないかと何度もくるくる回って確認するが、見慣れたあいつがどこにもいなくなっている。

「え、寝てる間に潰した?」

 あとで思い返すと明らかに混乱した発言だが、この時の俺は本気でそう思った。

 とっさに兄貴を呼ぼうと思った。だが問題が起きているのは俺の股間だ。性器だ。同性とはいえ相談を持ち掛けることに躊躇いを覚えてしまった。

 親父やお袋もここ数か月は仕事で海外に行っており頼ることはできない。妹に相談なんて論外だ。

「お、お、おぉぉ……」

 俺は絶望のあまり崩れ落ちた。

 ちんこがもげた。

 事がもっと大ごとだと知ったのはもう少し後になってからだった。

 

 

 

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