TSしたら友人がおかしくなった   作:玉ねぎ祭り

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久しぶりに投稿です。多分4話くらいかなあって思います。よければ見てやってください。


柊亜衣の思い出話 ①

 

「亜衣って裕子たちとはいつ出会ったの?」

 対面でカフェオレをちびちび舐める友人の言葉に、私はふと顔を上げた。

 彼女、綾峰公麿は私の言葉を待つようにカップを両手に挟んでちらちら伺ってくる。

 時は十二月。

 冬休みの前に迫りくる期末試験を控えた日曜日の事であった。

 

 その前にどうしてマロちんが今当たり前のように私の部屋で座っているのか。その経緯を説明する必要があるだろう。

 

 突然だけど、私はあまり勉強が得意なほうじゃはない。テストでは赤点と言わないまでも、結構やばい感じ。大学進学を考えるならばそろそろ本腰を入れて勉学に励まなければどこにも引っかからないだろうという危うさ。公麿ことマロちんを家に招待するきっかけとなったのがその『勉強を教えてもらう』ところからだった。

 

 マロちんを始めて部屋に呼んだのは先月の事。

 一時期大変な事になっていた彼女の問題がとりあえず落ち着いた頃を見計らって、思い切って声を掛けてみた。

 彼女が私のアパートの部屋に来ること自体は初めてではない。だがその時は隣に舞衣がいたし、呼び出す理由も一応あった。なんの用事もなく誘うことは私にとってはとても勇気のいることで、断られたらどうしようという気持ちがあっただけになかなか声が掛けられなかった。

 もともと私はマロちんともっと仲良くなれたらなという気持ちが強かった。というのも、どことなく私は彼女にシンパシーを感じていたからだ。舞衣もボスも自分というものを強く持っている為、どこか堂々とした態度で物怖じしない姿勢を示す。初対面や目上であっても失礼にならない程度に(舞衣は時々失礼な時もあるけど)自分の意見をはっきり主張するし、あけすけにものを言う。敵を作ることもあるけれど、自分というものをしっかり持っている二人に私は少し気後れした気持ちを抱いているのも確かだった。

 マロちんが自分を持っていないとかじゃない。でも常にあの二人に挟まれていた私にとってみれば、彼女は私とかなり近い感性を持っていると感じてしまった。男の子に肌を見せるのは恥ずかしいし、学食で上級生に割り込みをされても文句をいう事に躊躇ってしまう。これを小さなことと見るか大きなことと見るかは判断する人によると思うけれど、こうした些細な点で二人にはできることが自分にはなかなか難しいものがあった。

 できることが正しいことだとまでは言わない。でも出来ない自分が情けなく感じることも多かった。そんな仲間が出来たら共感を覚えるのは自然なことと思う。

 だからってすぐに私は彼女と親しくなれたかというとそういうわけではなかった。他人がどう思っているのかは分からないけど、私は積極的に人に絡みに行けるタイプではない。舞衣が初対面でもぐいぐい行くので誤解されがちだけど、私は友達でも仲良くなれたとある種の確信が生まれるまでは話しかけるのにも勇気を有する人間だ。

 それゆえマロちんに対しても仲良くしたいのになかなか二人きりで話しかけるきっかけが掴めず、五月や六月に舞衣にそのことで相談した記憶がある。

 そうしていたら事件が起こった。

『私マロちんとデートしちった』

 六月某日、舞衣がさらっと抜け駆けをした。この時ばかりは舞衣を恨んだものだ。

 舞衣は私やボスと隠れてこっそりマロちんと二人で買い物に行った。言ってしまえばそれだけなのだが、その日以降マロちんの舞衣に対する態度が極端に軟化した。彼女を知る今なら分かるが、マロちんは一度気を許すととことん相手に甘くなる。警戒心が薄れる。一言で言って彼女はちょろい。

 当時マロちんとまだ薄い壁があった私にとってそれは歯痒すぎる出来事であった。

 

 それから数か月がたち、ようやく家に誘う事が出来たという次第である。私にここまでの勇気を与えた舞衣には深い恨みと共に感謝も抱いている。

 とはいってもそれまでにかなりの時間を私と彼女は共にしていたので、家に呼ぶ呼ばないという以前にかなり親しくはなっていた。だがこの出来事を境に彼女の方から家に遊びに行っていいかと連絡が来ることも増えたので、結果上々だと言える。

 

 この勉強会、普段ならここにボスや舞衣が加わるのだけど今回はあえて二人は呼ばなかった。理由は単純明快。勉強にならないからだ。舞衣がいると私もつい調子に乗ってふざけて遊んでしまう。前回なかなか悲惨な点数を取ってしまっただけに挽回しなければいけないという切実な思いが私にはあった。ボスを呼ばなかったのは二人きりだと怒られるし、マロちんを入れた三人だと舞衣だけ仲間外れにしているようでちょっと嫌だなあと思ったからだ。

 

 彼女を家に呼ぶときは大体いつもお菓子作りをだしに使う。私が単純に作りたいって言うのもあるけど、これを言うとマロちんの断る確率がぐっと減るからだ。今のところ100%の確率で家に来ている。今日はテスト勉強がメインだけど、その前にとシフォンケーキに挑戦してみたところだ。焼きあがってからが勉強開始。焼いてる間に小休止しているのが今だった。

 

 

 くるくるとスプーンで底を掻きまわす彼女の所作を見つめる。

「どしたの? 急に」

 私はなんと答えようか迷い、ひとまず相手の真意を掴もうとした。どういう意図の質問なのだろう。

「いや深い意味はないんだけどさ。ほら、亜衣って舞衣とはすごく仲がいいじゃん? でも裕子って二人とは結構タイプ違うって言うか」

「あー、そういう事ね」

 相手が何を聞いているのか理解できた。彼女の疑問は尤もだと思ったからだ。

 私には目の前に座る友人の他に、中学の頃からの特別親しい友人が二人いる。そのうち一人とは普段から常に一緒に行動することが多く、傍から見るとペアのような扱いを受けることもままあるが、もう一人とは少し距離がある様に見える、と言われることはこれまでにも確かにあった。

 自慢ではないが、私たちのグループは教室の中でも結構目だつ方だと思う。

 ボス、荒神裕子の存在感がそうさせているという面もあるのだけど、単純に私以外の二人の容姿が優れているからだと思っている。私は二人に挟まれることでなんとなく雰囲気可愛いく見えている感じで立ち位置が微妙なのだがそれは今はいい。何が言いたいかというと、容姿が優れている、有体に言うと美少女集団内の友人関係なんて話題に飢えた高校生にとっては格好のネタであり、それも最近になって私たちの集団に加わった彼女からすると他のクラスメイト以上に関心が高い事だろうということは想像に難くないということだった。

 とりわけ彼女が私たちと一緒に行動するようになった経緯も特異だ。

 彼女自身の問題や人間関係のごたごたで今までなんとなく流していたが、改めて私たちの関係の歪さ、というとネガティブな意味を含みそうだけど、距離感、これが気になったことはある意味当然とも言えた。

 私は自分のカップを置くと、さてそれにしてもなんと答えればいいだろうかと頭をひねった。何分私たちの事を説明するにはやや長くなる。

「あ、別にどうしても聞きたいわけじゃないって言うか、言いにくかったら別にいいんだけど」

 私が黙ったのを敏感に察したのか、彼女は両手を振って必死で訴えかけた。そう言われると逆に言わなければいけない気になって来る。ただなあ、別段面白い話でもないし、若干話を引っ張った手前わざわざ話すことなのか? と思わなくもない。

「やー、でも正直マロちんが期待するほど大したことじゃないんだよね」

「え、あ、うん、そか。それなら、別にいいや……」

 駄目だ。こんな言い方したら詮索するなと言っているようなものだ。

 私は必死で頭を回転させ、彼女を傷つけない答えを探す。

「あー、えっと。その、なんだろ。私にとってはちょっと恥ずかしい部分でもあるんだけど、で、なおかつ結構長くなるかもしれないけど、聞く?」

 迷った結果正直に白状する。落ちもなければ山もない。そして昔話をする都合上、私がちょっと恥ずかしい思いをする。

 できれば興味ないって答えが欲しいところだけど、目の前で興味津々に目を輝かせる彼女を見るとそうも言えない。

 息を一つ着く。仕方ない、語るとしようか。

 できる限り正確に。でもちょっと盛り上がる様に脚色して、私は彼女に話し始めた。

 

 

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