サードニクスのスーパー短編集   作:さわたり

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天地優介さんの読者参加企画「オメガ・ワールド」(現在は募集終了)の外伝です。そんな長くないです。


オメガ・ワールド外伝「幸せは悲しみを抱いてやってくる」

「おーーらああ!!」

 

ドルチェの投げるブーケが舞う。

ガヤガヤと騒ぐ中、何となくキャッチしたのは威。

全員の。特にガッヴァーナからのお前かよと言う視線が送られ、彼はやっと自分が何をしたのか理解する。

彼がやっちまったという顔を見せると、式場は笑いに包まれた。

 

オーストラリアでのドルチェとジークの結婚式。特務機動部隊結成の六年前の出来事である。

 

 

 

「結婚式結構豪華になったね」

 

「あたしとジークさんで結構ブッ込んだっすからね。一生の思い出なんで!」

 

式の後は食事会だった。ドルチェの両親とドルチェとジークの四人で囲んだ席でこれまた豪華なディナーを食べる。

 

「そうだね。と言うか君がヒール履くと僕を越しちゃうんだよね。君本当に日本人なの?お父様譲りっぽいけど」

 

「私の家系は代々日本の武士なのだけどね。まあ移住者の血が入っていないと言い切れるわけでもないし」

 

「隔世遺伝ってやつ?まあ黒髪とか黄色い肌はどう見ても日本人じゃないっすか」

 

ケラケラと笑いながら楽しく食事を続ける。忙しい毎日を忘れていられる珍しい瞬間でもある。

 

 

「じゃあ私達はこれで帰るよ」

 

「元気するのよ?孫の顔早く見せなさいよ?じゃあね!」

 

ドルチェの両親は少しの観光と結婚式ののちすぐに日本に帰っていった。他の招待客達はそれぞれ街へ出たり、ホテルの一室で寝ていたりと、好き勝手していた。

 

「親父とお袋も見送ったことだし・・・どうします?夜九時・・・まだ寝るには早いっすよね」

 

「そうだね。少しお酒でも飲もうか」

 

そして、妙な気遣いで、ドルチェとジークは同じ部屋である。しかもベッドは一つ。ハナから()()()()だったが、あちらからスタンバイされるのはどうも気恥ずかしいものだった。

 

 

「あたしお店行ってきます」

 

酒を買うためにドルチェはホテルのエントランスにあるショップへと降りた。

 

パチモン臭い日本酒達の横にひっそりと置かれたasahiのビールを買う。いくら日本で売れていてもあまり関係はないようだ。

 

 

 

 

「ジークさんってビールの飲むのかね」

 

エントランスでエレベーターを待ちながらの独り言。27階まであるため、その待ち時間は長い。

 

ビービー!

 

突如、ドルチェのスマートフォンに緊急のに連絡が入る。ただごとではない。携帯のボタンを押し、通信を始めた。

 

「どうした?爆発でもしたか?」

 

『そちらに!そちらに!敵機体が向かっています!他の方々と一緒に早く逃げてください!』

 

「・・・はぁ?いや、今日何月何日か知ってる?」

 

『四月馬鹿ではなく!!』

 

「ええ・・・まじかよ。じゃあなんで避難勧告とか出ねえんだよ」

 

変わらず半信半疑のドルチェ。状況を聞き出すためにさらに話を続けた。

 

『ステルス機です・・・』

 

「見つけたんだろ?情報を・・・」

 

『アンチステルス探知機は我々開発部の秘密技術です!存在を知られるわけには!』

 

「チッ。だったらあたしらで完結させるしかねえのか。しかし他の人たちに理由はともかく逃げろと言って逃げてくれる気がしねえ。説得にも時間がかかるし・・・」

 

溜息をつき、考え込む。が、そんな暇はないとすぐさま会話に戻る。今の一瞬で決意を固め、目の色が変わる。

 

「・・・クローザーで行く。手配してくれ」

 

『日本から飛ばすとなりますと・・・』

 

「いや、ハワイにあるだろ?あれで行く」

 

『・・・・・・分かりました。操作パスコードは』

 

「浪漫の塊。全部ローマ字だ」

 

最後にそれだけ残し、スマホの画面を閉じる。自分の顔を叩き、気合を入れて外に出た。

 

 

 

人型ロボットが突然キャンベラに現れた。無論オーストラリア中が騒ぎとなっており、ニュース番組のキャスターと野次馬と軍隊で人混みが出来上がっていた。

 

『退け!踏み潰すぞ』

 

機体からの声に、捌けるように人が避けていく。目的地は間違いなく駐留軍基地・・・の、先にある。件のホテル。連合軍の軍人達が居ることは分かっているらしい。テレビもラジオもそう騒いでいた。駐留軍が時間を稼ぐが、あまり効果はなさそうだ。

 

 

「駐留軍は!?全滅!?・・・まずい。あんな敵意むき出しのやつが・・・」

 

「姉さん!連絡はいいから避難して!」

 

引っ張るアナ・スイを振り払い、逆に敵機に近づくように走った。

 

「君だけ避難して!私は駐留軍に機体を借りる!大丈夫。アルキメデスなら乗ったことあるから!」

 

そう言ってバイクで基地に出発。目の前なので到着にあまり時間はかからなかった。置かれていた機体、ユークリッドに乗り込み、すぐさま発進した。

 

『弱い弱い!』

 

白い未確認機体は潰したアルキメデスやアリストテレスと言った、量産機の残骸の上に立っていた。コックピットに限らず四肢や頭部を狙い、一部の逃走を許しているところを見ると、目的は別にあるようだ。

 

「その声・・・カズキ・イザベラか。凄腕日雇いパイロットの」

 

『そう言うあんたはガッヴァーナだっけ。連合の凄腕パイロット。果たしてその腕と量産機で・・・俺に勝てるかな!?』

 

飛び込む機体に蹴りをかまし、すぐさまユークリッドのビームガンで近接射撃。さらにナイフを頭部に刺さんと振り下ろす。迷いがなく、荒々しい。それがガッヴァーナのスタイルである。

 

この一瞬で決着は付いたと思われた。だが、そのナイフはついに頭部には刺さらず、硬いアーマーに跳ね返されてしまった。

 

(おかしい・・・なぜここに首アーマーが?)

 

異変を感じて飛び退いたのは正解だった。機体の首が伸びているのだ。ロクロクビ。それがこの機体の名前だ。

 

「なんじゃそら!」

 

繰り出した攻撃をとっさに避ける。が、目から放たれたビームを肩部にくらい、腕が機能停止。今だと言わんばかりにロクロクビの首がユークリッドを締め上げる。

 

「まずい・・・」

 

どんどん強くなっていき、彼女を押しつぶすように威力が上がる。

 

『機体の弱さが命取りだったな!あんたは敵に回すと面倒だ。ここで殺す!』

 

上半身と下半身に分かれるのではないかと言わんばかりの圧力。エアーバッグなど無意味だった。彼女の吐いた血がモニターを染め、死を覚悟したその時。ロクロクビに何が激突し、ユークリッドの拘束を解く。

 

「待たせたな!」

 

『その声・・・機体・・・ドルチェ・・・?』

 

真っ赤なモニターにうっすら見える親友の顔を確認すると安心した顔で目を閉じた。

 

ロクロクビにぶつかったのは茶色の巨大戦闘機。ビームで出来た羽が特徴的なそいつは、ロクロクビの周りを回るように飛行していた。

 

プラネットクローザー チューンプルートである。

 

『くらえ!』

 

ロクロクビの手に仕込まれたライフルがプラネットクローザーを狙う。だが、そのサイズに似合わない速度と軌道でかわして行く。苛立つカズキの射撃は荒くなる一方で、当たる様子はない。

 

『落ち着け・・・目的が目の前に居るんだ・・・焦るな俺!』

 

一息つくと、再び銃を向ける。だが、その暇を許すほどドルチェは甘くない。気づけば、無数のブレードがロクロクビを囲んでいた。

 

一枚一枚がロクロクビを狙う中で攻撃もできず、ただ防戦一方だった。

 

『ならば・・・』

 

が、突然動きを変え、刀を抜いてクローザーへ突撃。前方から舞う刃は避け、後ろから追わせる状況に。追いつかれない最大速でクローザーに近づき、刀を振り下ろす。

 

すんでで避けるが、追撃は続く。

 

『どうやらその戦闘機・・・近接は出来ねえようだな!』

 

「ははっ。あたしの趣味を知らねえ奴は・・・見くびってくれるから楽だぜ!いいか。あたしが機体に求める三つの要素は・・・変形!合体!デザイン!強さは四番目だ!」

 

その言葉通り、プラネットクローザーが変形を始める。避けようとするロクロクビを、飛び出た左腕で掴み、右腕でパンチを叩き込む。舞っていた計12枚のブレードがスカートとなって腰部に合体。チューンプルートの先端はシールドとして左腕に保持。最後に後光のようなビームリングが背中に現れ、水色の機体、プラネットクローザー チューンウラヌスが完成した。

 

「おらああ!」

 

背中から鎖鞭、『クローザーウィップ』を抜き、ロクロクビへ叩きつける。そして再びブレード、『クローザースライサー』 を飛ばして追撃を与えた。

 

『こいつ・・・動きがはええ!』

 

だが、ギリギリで避け、再び刀で攻撃。クローザーも再び避けるが、あまりクローザースライサーは効果的ではないらしい。

 

「こうなりゃ・・・!」

 

クローザーウィップとクローザースライサーが合体。蛇腹剣、『クローザーカッター』に変化した。

 

「単純近接で行かせてもらうぜ!」

 

叩きつけるように、切る。どんどん破壊されていき、地上に墜落。クローザーも降りて追撃を行った。

 

『こうなりゃ・・・!!』

 

ロクロクビの首を伸ばし、絡みつく。勝った。そう思った時には、すでにロクロクビの頭は地に落ちていた。

 

『なに!?』

 

「このリング飾りじゃねえんだよ。いや、飾りでもあるけど」

 

『ブレードか!?』

 

「ご明察!」

 

ロクロクビを踏みつけ、クローザースライサーで攻撃。一部業界ではご褒美だが、そうも言っていられない。必死に抜け出そうとするが、途中でそれを諦める。

 

「ありゃ。やめんの?じゃあこいつぶっ壊してあんたはブタ箱行きだぜ!」

 

『バカめ!』

 

腕を大きく振り上げたクローザーに、ロクロクビの頭部が突進・・・するも、クローザーの裏拳で叩き落とされ、踏みつけられる。

 

「そっくりそんまま返すぜ。バカめ!予想してないと思ったのか?もう一度言う。バカめ!」

 

『この・・・』

 

「サッカーしようぜ!お前ボールな!」

 

言葉通り頭部へキック。今起き上がった胴体にぶつかり、再び転ぶ。そして頭部を踏み潰し、ロクロクビへトドメを刺そうとするが、止める。

 

「生命反応がねえ・・・死んだとは考えづらいな。逃げたか」

 

戦いが終わったと、フっとため息。そしてクローザーの腕がもげた。

 

クローザーの腕がもげた。

 

クローザーの腕がもげたのである。

 

「は?」

 

そのまま倒れこむように機能停止。今度は深いため息の後、機体を降りた。

 

 

 

ーーーーーーー

実戦報告

ダメだこいつ。耐久性に難がありすぎる。コンセプトからミスってた。装甲をそぎ落としすぎた。以降プラネットクローザーの本格開発は進むことはなさそうだ。

ーーーーーーー

 

 

「お酒を買うのに随分時間をかけたね。ご苦労様。怪我はないよね?」

 

脅威は去ったとして、全員ホテルへと戻ることになった。被害は駐留軍の一部兵士と、事故の被害者に留まった。

 

「はい。ビール、飲みます?」

 

「僕、そんなビール好きじゃないんだ。ごめんね」

 

「じゃああたし飲んじゃいます」

 

ブシュッ

 

飛び出たビールがドルチェの顔や服に飛び散る。当然だ。戦闘中にはとんでもない振られ方をしていたのだから。

 

「ふふ・・・」

 

「あっはっはっはっは。どうせ脱ぐ予定ですし・・・下着で失礼」

 

Tシャツを脱ぎ、ブラのみの状態で乾杯。戦いの後の緊張感を少しほぐしてくれたビールに、ドルチェは少し感謝していた。

 

 

 

「どう言うことですか!アナスイが・・・空が!!」

 

「落ち着いてくれたまえガッヴァーナ君・・・彼は・・・目を離した隙に・・・あいつの起こした事故に巻き込まれ・・・」

 

「嘘だ!!」

 

激昂のあまり上司である人事管理官の男の襟を掴む。アナ・スイの死亡。彼女に届いたのは、あまりにも残酷な知らせだった。

 

「・・・わ、私はそれ以上のことは知らないんだ!裏はあるかもしれないが・・・私は関わっていない!君自身でどうにかしてくれ!」

 

「分かりました・・・私が・・・真相を明かしてやりますよ。絶対に許さない・・・」

 

乱暴に扉を開け、出て行く。

 

ドアの外の静寂。それまで抑えていた涙が急に溢れ出す。立ってもいられないような空しさと悲しみが彼女を襲う。

 

「空・・・君は・・・誰よりも優しかった・・・この目的は・・・絶対忘れない。だから・・・君の一部を私に。いや、ボクに・・・貸してくれ。復讐を果たすまで・・・」

 

誰に言うわけでもなく呟く。今一度決意を確かめ、涙を拭う。

 

 

 

 

「つまり・・・誘拐には失敗したと?なんのためにロクロクビを渡したと思ってるんだ」

 

『でもよ・・・誘拐って俺に依頼することか?』

 

「まあ、雇い兵士は誘拐なんか頼まれないか・・・まあいい。報酬金はなし。これで君と私の関係は白紙だ。感謝するよ」

 

『一応覚えておくぜ。茨木』

 

その言葉を最後に通信を切断。振り出しに戻ったと、大きなため息をついた。

 

「ウエストウッドと呼べと言った気がするが・・・やはり私自身動かねばならないか・・・」

 

ガサガサと設計図を広げる。二体の機体が描かれた改造機の設計図だ。

 

「デバイスアヤカシ、モノノケ・・・まずはこいつの完成だな」

 

 

闇の中でうごめく闇。動くべき時を、今かと伺っていた。




『プラネットクローザー』
【Mサイズ】
【概要】
シャドウクローザーに変わる機体の試験機。製作中でドルチェの趣味が爆発&考案が深夜に行われたの理由で、よくわからん方向に振り切った機体となっている。スターナイトの原案はこの頃よりあったため、合わせて冥王星と天王星モチーフ。どうでもいいが冥王星はプラネットではない。

チューンウラヌス
水色の人型形態。背にスターゲイザーみたいなリングが浮いており、カッターにできる。浮いてる必要もなければ、背中についてる意味もないが、そこはロマンとのこと。スピードに全てを振っており、連合一(自称)の速さだが、防御は紙。当たらなければ理論を地で行く機体。

チューンプルート
茶色の飛行形態。こちらもスピードに振ってはいるが、前面がシールドなので突進とかもできる。基本は中距離を保っての銃撃である。バックパックに変形し、他の機体に合体して飛行形態となる。ユピトールサテライトと同じく様々な機体と対応するが、必要とされる場面が少ないため使う機会は少ない。

【武装】
『クローザーウィップ』
鎖でできた鞭。痛そう。

『クローザースライサー』
意思に反応して動く小型ブレード群。合計12個ある。クローザーウィップとの合体で、グニャグニャ曲がる剣にできる。不規則な動きが相手を惑わせる。

アルキメデス、アリストテレス、ユークリッドはオーストラリアの駐留軍の量産型です。それ以上の設定はございません。

とにかくガッヴァーナが可哀想な回。本編で救われてくれ・・・いや、逆に死んじゃう展開も話を加速させそう・・・まあ何がおきても私は喜びます。サードニクスはそう言うやつです。さらっとアナ・スイの本名出しました。苗字はそのうちガッヴァーナのフルネームが本編で出てくると思うのでそん時に。
あと、海堂とジークお借りしました。問題あれば報告お願いします。では。多分この短編集の更新は年レベルで空きます。忘れるレベルの気長さで待っててね♡
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