Game of Vampire   作:のみみず@白月

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それぞれの出発

 

 

「あのね、リーゼお姉様。少しお話があるの。」

 

紅魔館のリビングで荷造りをしていたアンネリーゼ・バートリは、急に現れた可愛い妹分に話しかけられていた。フラン? 朝のリビングに? 思わずビクってなっちゃったぞ。

 

隣では咲夜も荷造りを進めていたが、珍しくリビングまで上がってきたフランに驚いてその手が止まっている。無理もあるまい。そのくらい珍しいことなのだ。

 

「なんでもないよ、咲夜。荷造りを続けてて。」

 

「えっと、はい。」

 

首を傾げる咲夜に優しく言葉をかけてから、フランは目線で私を廊下へと誘ってきた。なんだ? 今のフランと話すのは、なんというか……ちょっと怖いぞ。ブラックの件で怒られたりしないだろうな?

 

内心でビクビクしながら廊下へと出ると、リビングへのドアをパタリと閉めてからフランが口を開く。……さり気なく退路が断たれてしまった。

 

「えっと、シリウスのことなんだけど……。」

 

「あー……その件はレミィの担当だよ。私は、うん、あんまり関わっていないんだ。分業体制なのさ。」

 

そらきた。すぐさま逃げの一手を口にすると、フランはちょっとだけ苦笑しながら首を振ってくる。ふむ? 怒ってる感じじゃないな。

 

「そうじゃなくって、んー……ずっと隠してたことがあるの。ハリーを守ってるリーゼお姉様には伝えておこうと思って。」

 

「隠してたこと?」

 

意外な展開だ。予想とは違う言葉に安心して問い返してみれば、フランはちょっと言いづらそうにしながらも秘密とやらを語り出した。

 

「実はね……シリウスはアニメーガスなんだよ。まあ、もちろん無許可の。」

 

「アニメーガス? つまり、マクゴナガルと同じように動物に変身できるのかい?」

 

「そうそう。シリウスの場合は大きな黒い犬だけどね。」

 

それは……かなり重要な情報ではないか? 犬の状態になって逃げていると考えれば、レミリアたち魔法省の執拗な追跡をかわし続けているのにも説明がつく。アズカバンからの脱獄にもひょっとしたらそれを利用したのかもしれない。

 

困ったようにモジモジするフランに、首を傾けながら問いを放つ。

 

「どうしてそんな重要なことを黙ってたんだい? ……いや、怒ってるわけじゃないよ? 何か訳があったんだろう?」

 

フランはあの日以来、ジェームズ・ポッターたちのことを多くは語ろうとしないのだ。コゼットとアレックスのことは咲夜によく話しているようだが、それ以外の悪友たちについては彼女にも話していないらしい。

 

フランがハリーを大事に想っているのは重々承知している。そのハリーに危険が及ぶ可能性がある以上、黙っていたのには訳があるはずなのだが……。

 

私の質問に、フランはちょっと申し訳なさそうな顔をしながら答えを口にした。

 

「えっとね、一つはジェームズとピーターのためかな。二人もまあ、アニメーガスだったんだ。無許可のアニメーガスってのは結構な犯罪でしょ? 二人の名誉を汚したくなかったんだよ。……シリウスがアニメーガスって分かれば、気付く人は気付くだろうから。」

 

動物もどきを登録するのは悪用を防ぐためだと聞く。無許可でいるというのは、重犯罪とはまた違ったベクトルで不名誉なことなのだ。確かに旧友の名誉を貶めたくないというのは分からなくもない。

 

そこで一度だけ言葉を切って、フランは悲しげな表情になりながらももう一つの理由を語り出した。

 

「もう一つは……シリウスのため。私、どうしても納得できないんだ。シリウスがジェームズを裏切る? ピーターを殺す? そんなの……全然信じられないよ。どうしても、どうしても私にはそうとは思えないの。」

 

「だが、実際にブラックは──」

 

「わかってる。よくわかってるよ、リーゼお姉様。そうとしか思えないのはよく分かってるんだ。だからずっと考えないようにしてたの。それでも、私は……。」

 

後半を尻すぼみにして、フランは悲しそうに俯いてしまった。むう、これはあんまり見たくない光景だ。この子のこういう表情は相変わらず心にくるものがある。

 

肩に手を当てて顔を覗き込みながら、なるべく優しい声で語りかける。

 

「私はブラックを知らない。だからフランがどうしてそう思うのかは分からないが……そういうことなら、気には留めておこう。なるべく魔法省にバレないように捕縛して、事情を聞いてみようじゃないか。」

 

「……うん。ありがとう、リーゼお姉様。レミリアお姉様には……話しても大丈夫かな?」

 

「ま、問題ないと思うよ。レミィはキミに甘々だからね。上手いこと手を回してくれるさ。」

 

上目遣いで言ってやれば完璧だろう。あの姉バカ吸血鬼は今なおフランに激甘なのだ。魔法省と愛する妹との板挟みになりながらも、どうにか上手くやるに違いない。

 

私の言葉に安心したらしいフランは、ちょっとだけ元気を取り戻しながら口を開いた。

 

「そうだね、レミリアお姉様にも話してみるよ。それと……一つだけ確信があるんだ。シリウスはハリーを傷付けたりはしないはず。私、ちゃんと覚えてるもん。シリウスがハリーの一歳の誕生日のとき、どんなに嬉しそうにしてたかを。自分がプレゼントした玩具の車で遊んでるのを、どんなにはしゃいで見てたかを。だから……絶対にハリーを傷付けたりはしないよ。それだけは約束できる。」

 

真っ直ぐな目で言うフランに、苦笑しながらもそっと頷く。実に矛盾している言葉だ。リドルに秘密を密告した可能性が高いブラックが、ハリーを傷つけない? きっと魔法界じゃ誰一人として信じまい。

 

だが、この館の住人だけは別だ。私はブラックなど欠片も信じていないが、フランの言葉ならば信じるだけの価値がある。……いや、勿論油断するつもりはないが。一つの指針にはなるだろう。

 

「わかったよ。ブラックがどう動くかは分からないが、とにかくハリーは安全なわけだ。今年はどうやら楽ができそうだね?」

 

ちょっと戯けて言うと、フランはクスクス笑いながら頷いた。

 

「一年生も二年生も大変だったんだから、今年くらいはゆっくりしないとね。……もしもシリウスが姿を見せたら、ピックトゥースの知り合いだって言ってあげて。きっと話を聞かせてくれるはずだから。」

 

「分かった、覚えておこう。」

 

私が了承すると、フランは満足そうにうんうん頷きながら地下室の方へと……おや? 振り返って再びこちらに近付いてくる。

 

「ふふ、これは先払いのお礼だよ。頑張ってね、リーゼお姉様。」

 

言うと、あー……頰にキスして去っていった。おいおい、小悪魔の入れ知恵か? それとも本で覚えちゃったのか? 過保護な姉バカがまた激怒するぞ。

 

なんにせよ、報酬は貰ってしまったようだ。それならきちんと働かなくてはなるまい。……これに見合う働きをするのは結構難しそうだが。

 

頰に残る柔らかな感覚に苦笑しながら、アンネリーゼ・バートリはフランが将来悪女になることを確信するのだった。

 

 

─────

 

 

「……むむ。」

 

入りきらない。トランクへとぎゅうぎゅう詰めになった荷物を眺めながら、咲夜は困り果てていた。

 

もう一度ぎゅうっと押し込んでみるが……ダメだ。計算では完璧に入りきる予定だったのに。……もう空間を弄っちゃおうかな。

 

濫用はするなというパチュリー様の忠告を思い出して苦悩していると、妹様と話していたはずのリーゼお嬢様が部屋に戻ってきた。何故かちょっとだけ苦笑を浮かべている。どうしたんだろう?

 

「リーゼお嬢様、妹様のお話はなんだったんですか?」

 

「んー……まあ、任務の話さ。それより荷造りは終わったのかい?」

 

むむむっ、また私には内緒のお話のようだ。絶対にハリー・ポッターに関するお話に違いない。仲間外れにされるのにちょっとだけ残念さを感じながら、トランクを指差して返事を返す。

 

「全然入りきらないんです。空間を弄っちゃダメですか?」

 

「危険だからあまり使うなってパチェに言われているだろう? どれ、見せてごらん。最悪拡大呪文でも使えばいいのさ。」

 

言いながら私のトランクを調べ始めたリーゼお嬢様は……徐々に呆れた顔になってしまった。何故だ。呆れられるようなことをしてしまっただろうか。

 

思わず姿勢を正す私に、リーゼお嬢様は苦笑しながら話しかけてきた。

 

「……咲夜、メイド服は置いていきなさい。それにティーセットもいらないし、料理の道具も不要だと思うよ。」

 

「でも、リーゼお嬢様に御付きするんですから、絶対に必要になるはずです!」

 

「非常に嬉しい提案だが、メイド服の少女を侍らしている生徒ってのはあんまりいないかな。私はそんなことで注目されるのは嫌だよ。」

 

かなり呆れた表情で言うリーゼお嬢様に従って、渋々それらを取り出していく。必要だと思うのだが……。安物のティーセットはお嬢様方に相応しくないし、お料理だって私が作った方が口に合うはずだ。

 

私が取り出しているのを苦笑して見ながら、リーゼお嬢様が優しい口調で話しかけてきた。

 

「咲夜、キミは生徒としてホグワーツに行くんだ。使用人でもないし、私の手助けのためでもない。キミが学び、キミが楽しむのが一番大事なんだよ?」

 

「んぅ……それならやっぱりリーゼお嬢様の御付きをしたいです! 私にとって一番楽しくて、一番幸せな時間はお嬢様方に仕えている時なんですから。」

 

私が手を挙げて元気に言い放つと、リーゼお嬢様は苦笑を強めながら首を振る。

 

「キミは本当に……まあ、いいさ。好きにやりたまえ、咲夜。キミが望むことなら、私は反対しないよ。」

 

「はい!」

 

やった! 許可をいただけたぞ。後はグリフィンドールに入るだけだ。組み分けがあるらしいが……絶対に入ってやるからな。能力を使ってでもだ。

 

ふんすと鼻を鳴らしながら決意を固めて、再びトランクへと向き直る。かなり余裕ができたトランクを閉じたところで、リーゼお嬢様が立ち上がって私を促してきた。

 

「それじゃあ、行こうか。アリスは魔理沙を案内するってことだし、駅で合流だね。」

 

「はい、行きましょう!」

 

私も立ち上がってその背へと続く。そうだ、勉強も頑張らねばなるまい。なんたって魔理沙に負けるわけにはいかないのだ。

 

リーゼお嬢様のお世話に、勉強と能力の鍛錬。中々やることの多い学校生活に想いを馳せながらも、咲夜はゆっくりとホグワーツへの一歩を踏み出すのだった。

 

 

─────

 

 

「そりゃないぜ。」

 

マーガトロイド人形店の二階にある生活スペースで、霧雨魔理沙は情けない顔を浮かべていた。耐え難い話だぞ、それは。

 

「規則よ。一年生は箒を持っていけないの。」

 

これが理由だ。ここ数週間ですっかり世話になっている先輩魔女が言うには、私は相棒を学校に持っていけないらしいのだ。それは困るぞ。すっごい困るぞ。

 

「でもよ、私の知り合いは一年生でも選手になれたらしいぜ? 箒も無しじゃ選手なんて夢のまた夢だろ? 私もクィディッチをやりたいんだ。」

 

「まあ、そういう特例があったのは知ってるけど、基本的にはダメなのよ。」

 

「それは、不公平ってもんじゃないか?」

 

艶やかな相棒を握りながらがっくりと項垂れると、アリスがとりなすように語りかけてきた。

 

「それなら、飛行訓練で実力を見せればいいじゃない。その特例の子だってそうしたんだし、貴女だって実力が確かならチームに入れるはずよ。箒はそれから送ってあげるわ。」

 

こちらを覗き込みながら優しく語りかけてくるアリスに……仕方ないか。ゆっくりと頷いた。

 

ハリーは充分にチームでやっていける実力があると言ってくれたのだ。もしもグリフィンドールに組み分けされたなら、チームのキャプテンに話を通してくれるとも。今はその言葉を信じるしかない。

 

「分かったよ。でも、絶対にチームに入ってやるからな。その時はちゃんと送ってくれよ?」

 

「はいはい、楽しみに待っておくわ。」

 

クスクス笑うアリスを見ていると、なんだか自分が酷く子供っぽいことを言っているような気分になる。……くっそ、なんか小っ恥ずかしいぜ。

 

ちょっと赤くなった顔を背けてトランクに向き直り、残りの荷物を改めてチェックする。ローブ、よし。教科書、よし。望遠鏡に薬学の器具、よし。着替えもちゃんと入ってるし、あとは……。

 

「ほら、ふくろうは? それに安全手袋も。」

 

「おっと、忘れてた。」

 

アリスの指摘に、慌てて買い物袋に仕舞ったままの安全手袋を取り出して、寝室のポールハンガーにかけて置いたふくろうのカゴを持ってくる。

 

「えーっと、これで大丈夫だよな?」

 

「冬用のマントは? ちゃんと入ってる?」

 

おっと、またしても忘れてた。苦笑するアリスを尻目にマントを持ってきて……よし、今度こそ完璧だ。

 

「出来たぜ。完璧だ。」

 

「うーん、魔理沙はちょっと忘れっぽいわね。心配だわ。」

 

「あー……うん、それに関しては反論できんな。昔からなんだ。」

 

調合手順だの儀式魔法の準備だのは失敗しないのに、何故かこういう単純な場面でいつもポカをやってしまうのだ。我が頭ながら複雑怪奇だな。魅魔様にもよく怒られてたっけ。

 

頭を掻きながら言う私に苦笑したアリスは、急に優しげな表情を浮かべながら机に頬杖をついた。私を見つめるその瞳は……なんでか母親を思い出す瞳だ。ずっと前に死んでしまった母親を。

 

「……ねえ、魔理沙。ホグワーツは楽しみ?」

 

「そりゃあ楽しみさ。私はその為に来たんだしな。」

 

「そっか。」

 

んん? 特に意味のあるような質問じゃなかったと思うが、何故かアリスは満足そうに微笑んでいる。何かを懐かしむような柔らかい笑みだ。

 

「なんだよ、アリス。急にそんな雰囲気になっちゃって。」

 

「んー、魔理沙もきっと分かる日が来るわよ。ホグワーツを卒業して、何十年も経ったらね。あの学校に誰かを送り出せる気持ちが。」

 

「む……よく分からんぜ。」

 

「うん、今はそれでいいの。貴女ならきっと大丈夫よ。」

 

クスクス笑いながら言ったアリスは、立ち上がって大きく伸びをした。謎かけみたいな台詞だが、悪いことじゃないってのだけは理解できる。……何十年後か。考えたこともなかったな。

 

私は目の前に立つ魔女のようになれるのだろうか? 魅魔様の誇れるような魔法使いに、リーゼと対等に喋れるような魔法使いに。……参ったな。自分の目標が酷く遠く感じられてきたぞ。

 

下を見ても何にもいやしないってのに、上を見上げれば顔、顔、顔だ。ちょっと考え込んでしまった私に、アリスが困ったように笑いながら声をかけてくる。

 

「あら、今更不安になってきたの? 眉間にシワが寄っちゃってるわよ。」

 

「いや、ちょっとな。立派な魔法使いになれるかって、心配になってきたんだ。……アリスはどうだった? やっぱり色々苦労したのか?」

 

私の抽象的な問いかけに、アリスは顎に人差し指を当てながら宙を見上げた。

 

「んー……私はやりたい事があって、応援してくれる人もいたから。飛びっきりの師匠もいたしね。いつの間にかこんなところまで来ちゃってたわ。」

 

「才能あったのか? 私は……どうかな? アリスみたいな魔女になれると思うか?」

 

幻想郷では魅魔様と二人っきりでの修行だったが、ホグワーツじゃ同じような見習いは腐るほどいるのだ。その中には、私なんかよりもよっぽど才気溢れるヤツがいるのだろう。

 

……才能って言葉は私にとってのトラウマだ。その言葉を体現しているような友人がいるのだから。常に追い風を背に受け、ただの一つも失敗しない。一切の努力なしに、私を軽々と追い抜いていく友人が。

 

紅白の彼女を幻視する私の視界を、アリスの優しげな顔が塗り替えた。いつの間にか覗き込まれていたらしい。

 

「あのね、魔理沙。魔女は才能でなるものじゃないわ。努力で至るものよ。知識を積み上げて、意思でそれを支えるの。何度も何度も崩れるけど、その度に積み上げ直してね。その知識の上に立って新たな景色を見るために。……どうかしら? 貴女にはそれだけの努力ができる?」

 

「……出来るぜ。努力だけは得意なんだ。」

 

「それなら貴女は至れるわ。私は貴女の師匠じゃないけど、一つだけ教えてあげる。魔女に『終わり』は無いの。探求し続けなさい、魔理沙。全てを始まりだと思いなさい。あらゆる終わりを疑い続けなさい。……そうすれば、いつの間にか辿り着いているから。」

 

……今はっきりと理解できた。アリスは『本物』の魔女なんだ。私を覗き込む青い瞳には、途轍もない深さの知識が沈んでいるのが見える。きっと彼女が長い年月をかけて積み上げ続けてきた知識が。

 

遠い。遠いが……隔絶されてはいない。きっとこれは私にも辿り着ける場所なのだ。諦めずに積み上げ続ければ、きっと。

 

「ん。心に刻むぜ。」

 

「うん、結構。……参ったわね。教師の癖が残っちゃってるのかも。他人の生徒に口出しするのはこれくらいにしとかなきゃ。」

 

「私としては教われるなら教わりたいんだが……ダメなのか?」

 

そりゃあ私の師匠は魅魔様だが、イギリスにいる間だけアリスから教わるってのも魅力的な選択肢なのだ。流派的なのがあるんだろうか?

 

問いかける私に、アリスは首を振りながら答えを放った。顔には困ったような苦笑を浮かべている。

 

「ダメよ。私のやり方だと貴女は魔女になっちゃうわ。『本物』の魔女にね。」

 

「それは……いけないことなのか?」

 

「魔女にしか見えないものがあるように、人間にしか見えないものもあるの。私の師匠は魔女の道を選んだけど、私の恩師は人間としての道を選んだわ。どちらも比較できないほどに偉大な人物よ。……こればっかりは部外者が決めていいことじゃないの。私もきちんと自分で選ばせてもらったしね。だからこれは貴女と、貴女の師匠でよく話し合って決めなさいな。」

 

「んー、よく分からん。」

 

アリスの言い方だと、人間と魔女は全く違う生き物みたいな感じがしてくる。人間が基盤にあって魔女になっていくわけじゃないのか? ……やっぱりよく分からんな。魅魔様はそもそも人間じゃないし、その辺の話は詳しく聞いていないのだ。

 

首を傾げる私に、アリスは肩を竦めながら話を打ち切ってきた。

 

「ま、何れにせよ早すぎる話だわ。貴女はまだ一年生にもなってないんだから。先ずはホグワーツでの生活を楽しみなさい。」

 

「そりゃそうだ。とりあえずは授業についていかないとな。」

 

「そうそう。きちんと勉強を……ヤバいわね。ちょっと話に夢中になり過ぎたわ。急ぎましょう。」

 

急に焦り始めたアリスの視線を追ってみれば……わお、確かにヤバいな。既に予定していた出発の時間を大きく過ぎている。

 

「ほら、トランクを持ってきて頂戴。煙突飛行で行くわよ。」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。煙突飛行ってのは初めてだぞ。練習なしでもちゃんと出来るのか?」

 

「魔女は度胸よ、魔理沙。」

 

慌ただしくトランクを引っ掴みながらも、霧雨魔理沙はホグワーツへの一歩を踏み出すのだった。

 

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