Game of Vampire   作:のみみず@白月

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灰かぶりとのクリスマス

 

 

「アリスからの手紙が届いたわよ、リーゼ。」

 

ボソリと目の前の本に呟き、パチュリー・ノーレッジは読書を再開した。声はリーゼの耳元まで飛んでいくだろう。そうなれば、ブーメランのようにリーゼ本人が飛んで来るに違いない。

 

本に目を通しながら机の上のペンを魔法で操り、魔法陣に修正を加える。妹様の……すっかり美鈴の言い方が移ってしまった。妹様のための結界は、ようやく完成に近付いている。

 

問題はこの結界を以ってしても、妹様が紅魔館の中から出ることは叶わないという点だ。先日ついに図書館魔法を完成させ、リーゼからは『動かない大図書館』などと揶揄されるほどに図書館に籠りっぱなしで作業しても、この問題を解決する糸口すら見つからない。

 

まあいい、きっと段階を踏むべきなのだ。少なくともこの結界は今のものより強力だ。内側も、外側も。これさえ完成すれば、不測の事態に備えてスカーレットさんが紅魔館に常駐する必要はなくなる。そうなれば、取り得る選択肢は大幅に増えるはずだ。

 

「パチェ、手紙が届いたんだって?」

 

リーゼが優雅に歩いて来るが、背中の翼がパタパタと動いているのが見える。本人は知らないようだが、これはリーゼが嬉しい時の癖だ。長い付き合いの中で発見した。無論本人には教えてやらない。面白いからだ。

 

「ええ、ほら……これよ。」

 

本に目を向けながら、届いた手紙をリーゼの手元に飛ばす。当然未開封のままにしてある。以前先に読んだら、しばらく拗ねていたのだ。子供か。

 

「ふむ……自寮にも他寮にも友達がいるらしいね、どうだいパチェ? 現時点でキミの学生生活を追い抜いたようだよ?」

 

「……そのようね。まあ、当然でしょう。どこかの吸血鬼さんと違って、あの子は性格が良いもの。」

 

くつくつと笑いながら、リーゼが読み終わった手紙を差し出してくる。目を通すと……まあ、悔しいがリーゼの言う通りだ。私などよりよっぽど学生らしい生活を送っているらしい。

 

「クリスマス休暇には帰ってくるみたいね。」

 

「今年のパーティーはこっちで開ければいいんだがね。紅魔館にはアリスが行けないし、こっちにはレミィが来られない。ままならないもんだ。」

 

「そうでもないかもよ。」

 

言って机の上を指し示せば、リーゼが驚いたように魔法陣を確かめる。

 

「おいおい、もう完成しかけてるじゃないか。やるな、パチェ。さすがは私が育てた魔法使いだ。」

 

「いびった、の間違いね。こあ! 貴女も読みたいでしょう?」

 

リーゼと軽口の応酬をしつつ、遠くで本の整理をしていた小悪魔を呼ぶ。あの子も手紙が気になっているはずだ。アリスにはよく、お姉さんぶって世話を焼いていたのだから。

 

「あっ、リーゼ様、お疲れ様です。」

 

ふよふよとこちらに飛んで来ながらリーゼに挨拶をした後、手紙を受け取る。嬉しそうだ。やはり気になっていたらしい。

 

「これでレミィも自由に動けるようになるわけだ。盛り上がりなく延び延びになっているゲームにも、ようやく方が付くかもしれないね。」

 

「っていうか、まだ続いてたのね。」

 

正直リーゼは飽き飽きしているようだ。もうこっちの勝ちでいいじゃん、という気分らしい。しかし、残念ながらスカーレットさんは未だに敗北を認めないでいる。キングが残っていれば、他に駒が全てなくなっても負けてはいないと主張しているようだ。

 

「かなり譲歩したんだがね、どうしてもダンブルドアと直接闘わせないと気が済まないらしい。まあ、レミィの今までの努力を思えば涙ぐましい要求だよ。」

 

「運命、だったかしら? それを読んでみるのは無理なの? せめて闘いが実現するかどうか分かれば、まだマシなんじゃない?」

 

「嘘か真か、『実現する』とレミィは主張しているがね。時期も、場所も、勝敗も、個人か集団かも不明だよ。フランは時間稼ぎだと言っているし、美鈴もそう思っているらしい。」

 

「あら? 貴女はどうなのかしら? その言い方だと、リーゼはスカーレットさんのことを信じてるみたいね。」

 

聞くと、リーゼは苦笑しながら答えてくれる。

 

「そうあって欲しい、という感じかな。このままズルズルと終わるくらいなら、たとえ負けてもいいから壮大なラストが私の好みなのさ。」

 

壮大なラスト、ね。大軍のぶつかり合いか、もしくは死力を尽くした決闘あたりがリーゼの望みなのだろう。

 

「ま、私には関係ない話ね。とにかく、この魔法陣が完成すれば状況は動くでしょう。ゲームも、妹様もね。」

 

「そうだね。キミだけが頼みの綱だよ、私の魔女さん。」

 

「そのお軽い口もどうにかしてあげましょうか?」

 

気障な台詞をばっさり切り捨てて小悪魔の方を見れば、ニコニコ顔で手紙を読んでいる。

 

「嬉しそうね、こあ。」

 

「はい、パチュリーさま! アリスちゃんが帰ってくれば、また楽しくなりそうですから。」

 

「おや? 普段の我が屋敷は、偉大なる小悪魔殿にとっては退屈な場所なのかな?」

 

「ひゃっ、そんなことありません! 言葉の綾です!」

 

リーゼが標的を変えて小悪魔を苛め始める。どうやら、あの子にはまだリーゼの軽口は荷が重いらしい。助けてやった方がよさそうだ。

 

「私の使い魔をあまり苛めないで頂戴。ほら、こあ、作業に戻りなさい。リーゼと話してると性格の悪さが移っちゃうわよ。」

 

「はいっ! あの、失礼します!」

 

「キミも段々と口が悪くなっているよ? 気付いてないのかい? パチェ。」

 

なんということだ、既に私は感染済みだったらしい。そういえばそんな気がしないでもない。

 

「ま、まあ、別にいいでしょ。私は誰と話すわけでもないんだから。」

 

「ふーん。まあ、アリスに嫌われないように気をつけるんだね。」

 

捨て台詞を残してリーゼが図書館を出て行く。アリス? そうか、あの子がいたか。アリスに邪険にされているところを想像してみる……むう、これは心にくるな。

 

そっと目の前の本を閉じながら、パチュリー・ノーレッジは先達の知識に助けを求めるため、役立ちそうな本を探しに歩き出すのだった。

 

 

─────

 

 

「ただいま、パチュリー。」

 

駅のホームでアリス・マーガトロイドは目の前に立つパチュリーにそう告げた。

 

ホグワーツの生活もそろそろ四ヶ月になりそうな冬の日、クリスマスの休暇をムーンホールドで過ごすためにロンドンに帰ってきたのだ。

 

「ええ、お帰りなさい、アリス。行きましょう、リーゼが待ちくたびれてしまうわ。」

 

言いながら歩き出すパチュリーに続いて、私も駅に設置してある暖炉へと向かう。

 

結局、レイブンクローに組み分けされた私のホグワーツでの暮らしは、中々充実したものになってきたところだ。ルームメイトとも気軽に話せるようになったし、グリフィンドールのテッサやスリザリンのリドルとの交友も続いている。

 

クリスマスプレゼントに何を送ろうかと考えながら、パチュリーの後に続いて暖炉に入った。

 

「ムーンホールド!」

 

煙突飛行ですぐさまムーンホールドに到着する。ホグワーツ特急なんかよりこっちの方が早いのに。まあ、このご時世だ。侵入経路に過敏になるのは当然かもしれない。

 

「アリス、お帰り。」

 

「お帰りなさい、アリスちゃん!」

 

ムーンホールドの暖炉の前ではリーゼ様と小悪魔さんが待っててくれていた。挨拶を返しながら、みんなでリビングへと向かう。

 

「さて……それで、どうだい? ホグワーツでの生活は?」

 

「はい、楽しいです。 お友達も沢山できました!」

 

リビングのソファにゆっくりと座り、お茶の用意を始める小悪魔さんを眺めながら聞いてきたリーゼ様に答える。色々と苦労することもあったが、授業も寮生活も概ね満足している。

 

「そうか、それは良かった。パチェとは雲泥の差のようでなによりだよ。」

 

「しつこいわよ、リーゼ。アリス、授業のほうはどうなの? 何か分からなかったことがあるなら教えるわよ?」

 

「えーっと……実は、魔法薬学が苦手で。あんまり上手く作れないの。パチュリー、教えてくれない?」

 

他の授業では上位の成績を取れているのだが、魔法薬学だけは何故か上手くいかないのだ。大体、教科書に書いてあることが曖昧すぎる。『種を弱めの力でゆっくりと潰す』なんて書かれても、抽象的過ぎてよく分からない。

 

おまけに、スラグホーン先生がそれにも増して抽象的な説明をしてくるのだ。いくら優秀な先生だと分かっていても、あれにはうんざりしてしまう。

 

「魔法薬学ねぇ……ま、いいわ、教えてあげる。いくつか役立ちそうな本もあるしね。」

 

その役立ちそうな本とやらには正確な分量が載っていることを祈りつつ、小悪魔さんの淹れてくれた紅茶に口をつける。ホッとする味だ、やっぱりホグワーツの物よりおいしい。

 

「他の授業はどうなんだい? 杖での魔法なら私が教えてあげられるよ。」

 

「貴女に魔法を教えたのは私だけどね。」

 

リーゼ様に鋭い突っ込みを入れたパチュリーが睨まれているのを見ながら、どうしようかと思考する。杖を使った呪文は今のところ完璧だが……リーゼ様は自分も何か教えたさそうだ。無下にするのも何か悪い気がする。

 

「ええと……それなら、先の呪文を予習しておきたいです。」

 

「ああ、任せておいてくれ。私が完璧にマスターさせてあげよう。」

 

胸を張るリーゼ様の翼がパタパタと動いている。それを見たパチュリーが急に笑いを堪え始めた。どうしたんだろう?

 

「どうした? パチェ。気でも狂ったのかい?」

 

「な、なんでもないわ。それより、クリスマスの予定を教えてあげなさいよ。」

 

「変なヤツだな……まあいい。アリス、クリスマスにはレミィ……レミリア・スカーレットが来る予定なんだ。小さなパーティーをするから、そのつもりでいてくれ。」

 

なんと、有名人がクリスマスパーティーに来るらしい。友人なのは知っていたが……どうしよう、ドレスローブなんて持ってない。

 

「分かりました。あの、でも……私、フォーマルな服は持ってません。」

 

「ん? ああ、いつもの格好で構わないさ。アリスが思っているほど大したヤツじゃないからね。……ただまあ、一着くらい持っておくのは賛成だ。そのうち買いに行くとしよう。」

 

「その時はついでに私の研究材料もよろしくね。」

 

「さすがは『動かない大図書館』だね。太るよ? パチェ。」

 

「お生憎様、もう体型は変わらないわ。永遠にね。」

 

リーゼ様とパチュリーの会話を聞きながら、小悪魔さんと目線を合わせてくすくす笑い合う。家に帰って来たのだという実感が湧いてきた。

 

体がポカポカと温かくなるのを感じながら、アリス・マーガトロイドは笑みを顔に浮かべるのだった。

 

 

─────

 

 

「さあ、行くわよ美鈴! はやくはやく!」

 

テンション爆上げのお嬢様の声を聞きながら、紅美鈴は久々に取り出すお嬢様のお出かけセットの準備に手間取っていた。

 

もう夜になるから日傘は抜いて、日焼け止めクリームも要らないし……なんだこれ? 葉巻まである。しかし、このセットを引っ張り出すのは少なくとも半世紀振りのはずだ。葉巻って期限とかあるのだろうか?

 

「めーりーん! まだなのー?」

 

ええい、置いていこう。どうせ従姉妹様のパーティーに出るだけなのだ。幼児退行したかの如くはしゃぐお嬢様の限界は、そろそろリミットを迎えるはずだ。

 

「今行きますよー!」

 

大声でエントランスに向かって叫んでから部屋を出る。パチュリーさんの結界が完成して、一番喜んでるのは間違いなくお嬢様だ。もっとも、結界の強度を確認したら妹様を館の中限定で部屋の外に出せるようになるらしいので、そうなれば妹様が首位を奪うことになるだろう。なんたって四百年くらい地下室生活なのだ。出られるのが館の中だけでも大喜びするはず。

 

エントランスではお嬢様がぴょんぴょん飛び跳ねながら待っていた。これは……本気で幼児退行してるんじゃないか?

 

「おっそいわね! さ、行きましょう。」

 

後ろにはエントランスにわらわらと集まって、ハンカチを振っている妖精メイドたちが見える。悪ノリをさせれば彼女たちに敵う存在はいない。

 

「はいはい。それじゃあ、行きましょうか。……行き先を叫ぶんですからね?」

 

「そのくらい知ってるわよ! とっとと先に行きなさい!」

 

蹴り飛ばされて暖炉の中に入れられた後、煙突飛行粉で炎を緑色に変える。……なんか順番が違う気がするが、まあ構いやしないだろう。

 

「ムーンホールド!」

 

ぐるんぐるんと回りながらムーンホールドの暖炉へ一瞬で移動する。私は実はこの移動法が好きだ。……残念ながら従姉妹様もパチュリーさんも同意してはくれなかったが。

 

ムーンホールドの暖炉に出ると、従姉妹様にパチュリーさん、小悪魔さんに……あれがアリスちゃんか。全員が勢揃いだ。後ろにはエマさんやロワーさんの姿もある。

 

思わず手を振ろうとすると、いきなり頭上からお嬢様が降ってきた。

 

「ぐえっ。」

 

「ふぎゅ!」

 

転んでしまったではないか。頭に激突したお嬢様が変な声を出したのを聞きつつ立ち上がる。身体中灰だらけだ。

 

「うぐぅぅ……おいコラ、美鈴! 痛いじゃないの!」

 

「お嬢様のせいですよ! 普通はもっと時間を置くんです!」

 

私の名誉のためにもお嬢様に反論しておく。続けて煙突飛行をする時は、間を空けるのが魔法界じゃ常識だ。

 

「しっ、知らないわよそんなの! ぇほっ、灰が舞うから、ぇほっ、動かないでよ!」

 

「くふっ、レミィ、私を、ふふっ、笑い殺すつもりかい?」

 

従姉妹様がお腹を抱えて笑っている。当然だ、こんなもん私でも笑うだろう。パチュリーさんは顔を背けているが絶対笑っているだろうし、小悪魔さんとアリスちゃんは必死に俯きながら堪えているのが見える。

 

「失礼いたします。」

 

トコトコとロワーさんが歩いてきて、指をパチンと鳴らすと私とお嬢様の纏っていた灰が消え去る。というか、ロワーさんは無表情だ。あれを見ても表情を変えないとは……使用人の鑑である。

 

「ふふっ、残念だったね、レミィ。灰だらけのままだったら、王子様が迎えにきてくれたかもしれないのにね?」

 

「うっ、うるさいわよ! ……んん、っこほん、ご機嫌よう。お招きにあずかった、レミリア・スカーレットよ。」

 

お嬢様が何事もなかったのように言い始めるが……いやいや、いくらなんでも無理があるだろう。パチュリーさんはとうとう突っ伏して、声を殺して笑っている。

 

「あ、案内はどうしたのかしら? リーゼ、リーゼ? おいコラ! いつまで笑ってんのよ!」

 

「しっ、失礼したね。んふっ、では行こうか。」

 

先導する従姉妹様と一緒にその場の全員が歩き出す。妖精メイドにもこれを練習させるべきだろうか? まあ……無駄か。

 

パーティー会場はこじんまりした部屋だった。身内だけのパーティーだからだろう。いや、それでも充分広いが。

 

「さて、グラスも行き渡ったみたいだし、始めるとしようか。今日は無礼講だ。好きに飲んで食べてくれたまえ。では……乾杯!」

 

従姉妹様はお嬢様と違って、長々とした挨拶はしないらしい。私としてはこっちのほうがいい。呪文みたいな挨拶をされても、お腹は膨れないのだ。

 

それぞれに歓談しているのを眺めながら、とりあえず手当たり次第に食いまくる。『腹が減っては何も出来ぬ』。昔とある大妖怪に聞いた言葉だ。座右の銘にしている。

 

大きなローストチキンにそのまま齧り付いていると、従姉妹様がアリスちゃんを連れてやって来た。

 

「やあ、満足してくれているかい? 美鈴。知っているだろうが、この子がアリスだ。アリス、こっちは紅美鈴。紅魔館の……あー、管理をやっている妖怪だ。」

 

「アリス・マーガトロイドです。よろしくお願いします。」

 

「んぐっ、はいはい、話はよく聞いてますよ。紅美鈴です。よろしくお願いしますね。」

 

肩口までの金髪をさらりと零しながら、アリスちゃんがぺこりとお辞儀してくる。対する私はローストチキンを片手に持っての挨拶だ。食いしん坊キャラとして認識されてしまったかもしれない。

 

「あの、美鈴さんはとっても長生きな妖怪さんなんですよね? やっぱり凄くお強いんですか?」

 

「んー、西暦が始まる前から生きてはいますけどねぇ……上には上がいるもんですよ。妖怪なんかは種族差も大きいですからね。」

 

答えるとアリスちゃんはびっくりしている。まあ、長生きしたからってどうということはないのだ。実際、お嬢様や従姉妹様と本気でやり合ったら負けちゃうかもしれない。

 

「西暦が始まる前、ですか。なんだか、スケールが大きすぎて実感が湧かないですね……。」

 

「おいおい、そこまでとは思わなかったよ。普通に大妖怪じゃないか。」

 

「大陸だと珍しくないんですけどねー。私が生まれた頃から大妖怪って呼ばれてるのもいますし。」

 

「ま、あまり畏まらずに接することだよ、アリス。正直なところ百年くらいを区切りに、そこから先はあんまり年齢を当てにするもんじゃないのさ。」

 

それには私も同意する。長く生きすぎると色々と忘れちゃう上に、あんまり成長しなくなっていくのだ。確かに最初の百年くらいが区切りかもしれない。

 

「そ、そういうものなんですか。」

 

「そうですねー。長生きってのは、実はそんなに自慢にならないんですよ。私を見れば一目瞭然でしょう?」

 

どう反応すればいいのかと困っているアリスちゃんの後ろから、ロワーさんに傅かれてご満悦なお嬢様がやってくる。

 

「あら、リーゼ。可愛い人形師さんに、私のことも紹介してくれないかしら?」

 

「ああ、そうだね。アリス、こっちが我が愛しのコウモリ友達、レミリア・スカーレットだよ。」

 

「あっ、はい。アリス・マーガトロイドです。よろしくお願いします。」

 

「ええ、妹が貴女の人形をとても気に入っているようなの。伝言を頼まれていてね。『いつも可愛いお人形をありがとう』だそうよ。」

 

最近の妹様は常にアリスちゃんが作った人形を連れて歩いている。間違いなく実の姉よりも大切に思っているだろう。本人には言わないが。

 

「それは……とっても嬉しいです。今作っている子が完成したら、すぐに届けますね。」

 

「それはありがたいわ。きっとあの子も喜ぶことでしょう。……それと、今日は貴女にちょっとした頼みがあるのよ。」

 

「はい、何でしょうか?」

 

お嬢様が懐から一枚の手紙を取り出す。胸がないと、ああいう場所に仕舞うのに苦労しなさそうだ。

 

「これをアルバス・ダンブルドアに渡して欲しいの。」

 

「ダンブルドア先生に、ですか? そのくらいなら勿論構いませんけど……。」

 

「普通に送ればいいじゃないか。別に問題ないだろう?」

 

従姉妹様の言う通りだ。普通にふくろうで送りつけてやればいいのに。まさかダンブルドアがふくろう恐怖症ということはあるまい。

 

「貴女が……というか、ホグワーツの生徒が渡すことに意味があるのよ。」

 

「えっと、渡すだけなんですよね?」

 

「ええ、普通に渡せばいいだけよ。」

 

どうもまた何かを企んでいるらしい。ゲームのことだろうか? まあ、あのゲームが終わってくれるなら、私としても喜ばしい限りだ。伝書ふくろうみたいな真似をさせられるのは、もううんざりなのだ。

 

「おいおい、アリスを妙なことに巻き込まないでくれよ?」

 

「心配性なのね、リーゼお母さん?」

 

「やめてくれ、レミィにそんな呼び方をされると鳥肌が立つよ。」

 

お嬢様と従姉妹様のやり取りを眺めつつ、テーブルの上にある食事に向き直る。そうだ、話などしている場合ではない。この量だとどうせ余ってしまうだろう、それなら私が食べたほうがきっと料理たちも幸せなのだ。

 

話を楽しむ面々を尻目に、紅美鈴はひたすら料理を口に運び続けるのだった。

 

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