Game of Vampire   作:のみみず@白月

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魔法省へ

 

 

「違うのよ、アーサー。あれは自動ドアじゃなくて改札なの。チケットが無いと通れないのよ。」

 

真っ赤なランプが点灯している改札を押し通ろうとするアーサーを止めながら、アリス・マーガトロイドは護衛の人選を後悔していた。リトル・ウィンジングからここまで来るのだって一苦労だったが、これから始まる地下鉄の旅はバスのそれよりもトラブルが多くなりそうだ。

 

七月三十一日。今日はハリーの十五歳の誕生日であり、同時に懲戒尋問が執り行われる当日である。魔法の不正使用を咎められている以上、大法廷に付け入る隙を与えないためにも、一切魔法を使わない方法でハリーを魔法省まで送り届けるということになったのだ。なったのだが……ええい、『群れ』からはぐれるんじゃない、ブラック!

 

「ブラック、そこを決して動かないように。私が全員分のチケットを買うわ。」

 

「いや、私は飲み物を買おうとしただけですよ。ほら、ハリーも喉が渇いているだろう? 私が買ってあげよう。」

 

「あー……シリウス、それは飲み物を買う機械じゃないよ。それが券売機なんだ。つまり、地下鉄のチケットを買う機械。」

 

ガーメントバッグを持ったハリーの言葉を受けて、典型的魔法使い『その二』が驚いたように券売機を眺め始めた。……一事が万事これなのだ。うんざりするぞ。何故ブラックはマグル学を取らなかったんだ? お前のような魔法使いにこそ必要な学問だろうに。

 

護衛として選ばれたのはアーサー、ブラック、ルーピン、そして私とリーゼ様だ。この面子の中で『常識』を理解しているのは私とルーピン、そして護衛対象たるハリーだけである。アーサーはあらゆる電化製品に尋常ではない興味を示し、ブラックは名付け子の前でカッコつけたいんだかなんだかで知ったかぶりを繰り返す。そしてリーゼ様は──

 

「おや、これは美味そうじゃないか。……ただまあ、野菜はいらないね。明らかに余計だと思うよ。」

 

ジャンクフードやらお菓子やらに興味を惹かれて、ふらふらとその辺を歩き回ってしまうのだ。今も駅構内のハンバーガーショップの店員に、野菜抜きバーガーが無いのかを聞き始めてしまった。

 

「ああもう……ルーピン、チケットを任せるわ。私はリーゼ様をハンバーガーから『救出』してこないと。」

 

「ええ、分かりました。……ハリー、シリウスを捕まえておいてくれ。パッドフット、次に妙なことをしたら首輪をつけるぞ。」

 

「うん、見ておく。それと、ウィーズリーおじさん、そこは硬貨を入れる場所じゃないですよ。お釣りが出てくる場所です。」

 

「なんと、驚きだ。……裏に人が居るのかね? それともまさか、これも自動で? だとすれば凄い。気になるな。なんとか覗き込めそうなんだが……。」

 

アーサーの『奇行』を止めるハリーの声を背に、嬉しそうにハンバーガーを注文しているリーゼ様の方へと歩き出す。……うーむ、こんなことを思うのは失礼かもしれないが、今日のリーゼ様は凄まじく可愛らしいな。翼なしでマグルの服を着ていると、どう見ても小さな女の子にしか見えないぞ。バーガーショップの店員も営業ではない本気の笑顔を浮かべている。

 

「それと、肉をもう一枚追加することは出来るかい? ついでにベーコンもだ。」

 

「はいはい、出来ますよ、お嬢ちゃん。それじゃあ、ちょっと待っててくださいね。」

 

「ああ、楽しみに待っていようじゃないか。」

 

「……リーゼ様、困ります。いくら時間に余裕があるとはいえ、早めに到着しておかないと。」

 

ニコニコ顔でバーガーを準備しに行った女性店員を横目に、背伸びしてカウンターに乗り出しているリーゼ様に声をかけた。背伸び姿もグッとくるな。もう翼なんか無い方が良いとすら思えてきたぞ。

 

「なぁに、平気だよ。たっぷり時間は余ってるんだ。……それより、アリスもどうだい? このチェーンのバーガーは美味いって美鈴が言ってたぞ。」

 

「いえ、私は結構です。」

 

ううむ、不思議だ。何が重要な要素なのだろうか? 翼を消しているリーゼ様は何度も見ているが、別段子供っぽいと思ったことはないし……やはりマグルの服の所為か? 普段との一番大きな違いはそこのはずだ。

 

黒いパーカーにデニムのショートパンツ、そして白のキャップ。シンプルが故に『普通』っぽく見えるのが素晴らしい。くそ、失敗したな。カメラを持ってくればよかった。失態だぞ、アリス。大失態だ。

 

もしくは、この駅の雰囲気なんかがそう思わせるのかもしれない。リーゼ様がマグル界に居るってのが重要なのだろうか? 吸血鬼らしからぬ要素が大事ってことか?

 

……まあいい。何にせよ、素晴らしいことを発見してしまったようだ。今度また機会があったら絶対に同行しよう。当然、今度はカメラを準備して。

 

完全なるポーカーフェイスを保ちながら、抱きしめたくなる後ろ姿を見つめていると……手早く紙袋に商品を詰めた店員が戻ってきてしまった。残念、背伸び姿は見納めらしい。

 

「はい、お嬢ちゃん。ご注文の品ですよ。」

 

「おや、早いね。ご苦労様。」

 

うーん、確かに早いな。マグルの食文化もどんどん進歩しているようだ。嬉しそうに支払いを済ませるリーゼ様を堪能してから、二人で券売機の方に戻ると……何だ? 券売機が警告音を発しているぞ。今度は何をやらかした?

 

「何をしているのかしら? ブラック。何もしないことがそんなに難しいの? ただ立っているだけで充分なのよ?」

 

「あー……どうも、この機械が故障してしまったようでして。」

 

「故障『させた』の間違いでしょう? 英語は正しく使いなさい。……それとアーサー、貴方はここに居るの。ここに、このタイルの上に。」

 

駅員に謝っているハリーとルーピンを尻目にブラックを叱ってから、再び改札に吸い込まれて行くアーサーを引っ張って止める。リーゼ様が居てよかったな、バカ二人。癒しが無ければとっくにキレちゃってるぞ。

 

そのままルーピンの買ったチケットでアーサーを制御しつつ改札を抜け、電車が来るまで地下のホームで待っていると、バーガーをペロリと平らげたリーゼ様が話しかけてきた。いつもながら豪快な食べっぷりだ。

 

「しかし、何だってマグルは地面の下に列車を走らせるんだろうね? 穴を掘る労力を考えれば、むしろ高い場所に造ったほうが楽じゃないか?」

 

「事故があった時に危険だからじゃないですか? 建物に突っ込んだりとかで。あとはまあ、天候の影響とかも受けないで済みますし。」

 

「私としては地下の方がよっぽど不安だけどね。……んー、やっぱり翼がムズムズするな。服に穴を開けちゃダメかい? 透明にはしておくから。」

 

「ダメです。」

 

穴を開けるだなんてとんでもないことなのだ。勿体ないのだ。神妙な顔で言ってやると、リーゼ様は若干引きつった顔でコクコク頷いてくれた。

 

「知っているかね? シリウス。ここの列車は蒸気ではなく、『気電』で走っているんだよ。きっとプラグがあるに違いない。『気電』を伝える穴のことだ。絶対にどこかに……。」

 

「それより、私はここが崩れないかが心配だ。どう見ても支えの柱の数が足りないぞ。爆破呪文などを使われたら……私の側を離れるなよ、ハリー。」

 

おバカ二人の会話を聞きながら思考を回す。聞くところによれば、イギリス魔法使いのマグル文化への理解度は世界的に見ても低いらしい。新大陸では上手く融和してその技術を取り入れているようだし、フランスに行った時もある程度の理解はなされていた。

 

これは魔法界そのものの成立が古いからなのだろうか? あるいは成立した経緯なんかも影響しているのかもしれない。……今度パチュリーに議論を吹っかけてみるか。あの図書館の魔女ならば、何かしらの答えを出してくれるだろうし。

 

「ほら、来たわよ。全員離れないようにね。」

 

内心の疑問に決着をつけたところで、ようやく到着した車両へと乗り込む。……やっぱり朝だけあって混んでるな。護衛し難いったらないぞ。はしゃいでいる『マグル探究家』や『ポンコツ動物もどき』も本来の目的は忘れていないようで、季節外れのジャケットに手を突っ込みながらハリーの周囲を囲み始めた。私と同じく、中にある杖を握っているのだろう。

 

「んむっ……奴隷船もかくやという場所だね。マグルは被虐趣味があるらしい。」

 

「ロンドンは人口密度が高いので、他に取り得る手段がないんですよ。車も混んでるでしょうし、地上の方の電車も混んでるんです。いわゆる出勤ラッシュってやつですね。」

 

私の胸のあたりにぽすんと収まったリーゼ様に、苦笑いで返事を返す。……落ち着け、アリス。変に興奮した顔になったら引かれちゃうぞ。ポーカーフェイスだ。

 

「少し奥の方に行こう。出入口の近くは混むんだ。」

 

ふむ? ルーピンの声に従って移動してみれば……まあうん、こっちは多少マシだな。席こそ空いてないものの、身動きできるスペースは残っているようだ。何だってドア付近に固まるんだろうか?

 

私がドアの守護者たちを眺めているのを他所に、犬用シャンプーの広告を見ているブラックを引っ張りながら、ちょっと心配そうな顔のハリーがルーピンに声をかけた。

 

「降りる時は大丈夫かな?」

 

「降りるのは中心街だから、人の流れに従っておけば大丈夫さ。到着の少し前に移動すれば問題ないよ。」

 

「随分と慣れてるのね。よく使うの?」

 

離れてしまったリーゼ様を名残惜しく思いながら聞いてみると、ルーピンは草臥れたような苦笑いで返事を放ってくる。

 

「マグルの日雇いの仕事をよくしていましたから。現場に移動する時にはよく使うんです。……最近は例の制度のお陰でご無沙汰ですけどね。」

 

「良いことだわ。今は人材を遊ばせておく余裕なんてないもの。」

 

ルーピンが言っているのは、『有事における魔法戦士緊急雇用制度』のことだ。この件に関しても魔法省内では一悶着あったようだが、レミリアさんやアメリアがゴリ押しして通したらしい。

 

簡単に言えば、『一定以上の戦力を有する魔法使い』に警備や緊急時の助力を要請するための制度である。魔法省の二階にある登録センターでの審査を通過した魔法使いには、偽装防止呪文と変幻自在術がかかった認識票が渡され、そこに仕事の内容が表示されるという仕組みだ。

 

まあ、身も蓋もない言い方をすれば『民兵』とも言えるだろう。少なくとも日刊予言者新聞はそう批判していた。……とはいえ、危険が伴う仕事だけに給金もいいし、魔法戦士協会の中ではかなりウケのいい制度になっている。よく仕事を頼まれるヤツなんかは評価されて鼻高々なのだ。平和な時代は余程に暇だったらしい。

 

そしてダイアゴン横丁での襲撃事件があって以来、一般の……つまり、戦闘とは何の関わりもない普通の仕事をしている魔法使いたちの登録も徐々に増えてきた。その多くは前回の戦争を経験した者たちで、そして今は家庭を、守るべきものを持つ者たちだ。

 

前回とは違うぞ、リドル。今のイギリスはきちんとお前に立ち向かおうとしている。復活を否定している連中だって、心のどこかでは認めているからこそムキになっているのだろう。遠からず目を覚ます時が来るはずだ。

 

車窓に流れる暗闇の風景を見ながら考えていると、アナウンスを聞いたルーピンが声を上げた。いつの間にか到着していたようだ。

 

「次の駅だ。少し移動しておこう。」

 

言葉に従って、周囲を警戒しつつ移動する。再び混み合うドア付近で、滅多に触れないリーゼ様の髪の感触をこっそり手の甲で楽しんでいると……むう、タイムアップか。ドアが開いて人の流れと共に押し出されてしまった。

 

「おお、この駅には『エスカベーター』があるぞ! 素晴らしい発明だ。階段を動かそうとするだなんて……マグルは本当に凄いことを考える。うん、本当に凄い。」

 

「エスカレーターだよ、ウィーズリーおじさん。」

 

新たに登場した機械に嬉々として突っ込むアーサーの背に続き、エスカレーターを抜けて改札の方へと進んで行くと……うーむ、さすがに中心街だけあってさっきの駅より広いな。色とりどりの店舗たちがリーゼ様を魅了して止まないようだ。

 

「アリス、クレープがあるぞ。物凄い種類だ。」

 

「……買いましょうか。ハリーはどれがいい?」

 

「あの、いいんですか?」

 

「当たり前でしょう? 少し脳に糖分を回しておきなさいな。これから尋問があるわけなんだから。」

 

アーサーやブラックには強く言えるが、リーゼ様を止めるのは私には不可能なのだ。いつもだってそうなのに、この格好の彼女を前にしては止める気すら起きない。諦めてさっさと購入しちゃった方が早いだろう。

 

リーゼ様がラズベリーとブルーベリーのクレープを、ハリーがチョコバナナを、そして何故かブラックがキャラメルのを買った後に、六人で再びエスカレーターを使って地上へと出ると……魔法界よりずっと慌ただしいロンドンの風景が見えてきた。相変わらず、忙しない街だな。

 

「えーっと……向こうの裏路地だったかな?」

 

「確かそうだったはずだけど……誰かマグル側の入り口を使ったことはある?」

 

アーサーに答えた私の呼びかけには、誰一人として反応を返さなかった。そりゃそうか。遥かに便利な移動手段があるのに、わざわざこんな面倒な方法を選ぶ者などいまい。そもそも『マグル側』の入り口を使っているヤツがいるのかすら謎だぞ。

 

「参ったわね、景色が昔と全然違うわ。あのビルは前からあったはずだから……こっちかしら?」

 

「多分、そのはずです。……自信はありませんが。」

 

私とアーサーのぼんやりした記憶に従って、ふらふらと路地から路地へ移動していると……あれかな? ロンドンの繁栄に取り残されたかのような寂れた一角に、赤い電話ボックスがポツリと立っているのが見えてきた。

 

「あれよね?」

 

「ああ、そうです! 見つかってよかった。それじゃあ……誰がハリーと乗りますか?」

 

「私とリーゼ様が乗るわ。スペース的にも戦力的にもそれが一番でしょうし。」

 

「それでは、我々は『潜った』のを見たら姿あらわしで移動します。」

 

重要なのは『ハリーが』魔法無しの手段で到着することなのだ。それで問題ないだろう。アーサーに頷きを返して、胡乱げに電話ボックスを見つめるハリーと一緒に中へ入る。そこにリーゼ様まで入ると……ぎゅうぎゅう詰めだな。ハリーを囲む形だからリーゼ様を楽しめないし、さっさと終わらせた方が良さそうだ。

 

「えーっと……6、2、44、2、と。」

 

記憶を頼りに古ぼけた電話のダイヤルを回すと、電話ボックスの中に声が響いた。感情の感じられない、落ち着き払った女性の声だ。

 

『魔法省へようこそ。お名前とご用件をおっしゃってください。』

 

「懲戒尋問に出席するハリー・ポッターと、その付き添いのアリス・マーガトロイドとアンネリーゼ・バートリよ。」

 

『ありがとうございます。外来の方はバッジをお取りになり、ローブの胸にお着けください。』

 

言うと、本来釣銭が出てくるべき場所からバッジが三つ転がり出てくる。『ハリー・ポッター、懲戒尋問』と『アリス・マーガトロイド、付き添い』、『アンネリーゼ・バートリ、付き添い』と書かれたバッジだ。……何だこれ? こんなもん着けたことないし、着けてるヤツを見たこともないぞ。

 

『魔法省への外来の方は杖を登録いたしますので、守衛室にてセキュリティチェックをお受けください。守衛室はアトリウムの一番奥にございます。』

 

その声をきっかけに、電話ボックスは地面の下へと降下し始めた。……守衛室? 魔法省には何度も来ているが、セキュリティチェックがあるのも初めて知ったぞ。エレベーター横のあの部屋は物置じゃなかったのか。

 

「魔法省って、地下にあるんですか?」

 

ガタガタ揺れ動く電話ボックスの中、不安そうに聞いてきたハリーに答えを返す。

 

「その通りよ。マグルの目から隠すために地下に建設したんだけど……地下鉄が通る時は酷い騒ぎだったらしいわね。」

 

「十九世紀の半ばくらいかい? その頃は私もレミィも魔法界とはあまり関わってなかったな。積極的に関わり始めるほんの少し前だね。」

 

リーゼ様が何気なく言った台詞に、私とハリーは揃って微妙な表情を浮かべる。こういう言葉を聞くと、吸血鬼の長命っぷりを改めて実感してしまうな。ロンドンに地下鉄が建設され始めた頃だなんて、パチュリーですら生まれていないはずだ。

 

その頃のロンドンはどんな場所だったのだろうか? 私が本や写真を通してしか知れない風景を、その目で直に見れることに少しだけ羨ましさを感じていると……到着か。電話ボックスに再び光が射し込むと同時に、ガタンという大きな振動と平坦な女性の声が響いた。

 

『魔法省です。本日はご来省ありがとうございます。』

 

電話ボックスのドアがひとりでに開き、三人揃ってそこを出る。うーむ、ここからの景色は初めてだな。どうやらアトリウムの一番端っこに出たようだ。

 

磨き抜かれた真っ黒なエボニーの床と壁。天井に煌めく金色の幾何学模様。左右に立ち並ぶ暖炉の先には、魔法族の和の泉が見えている。初めて見る魔法省に感動しているらしいハリーに微笑んでいると、少し離れた場所からアーサーたちが小走りで近付いてきた。

 

「ここまで来れば安全だ。行こう、ハリー。」

 

「はい。」

 

アーサーの案内で一行が歩み出すが……そういえば、リーゼ様は来たことがあるのだろうか? 特に興味深そうな表情じゃないし、初見というわけではないようだ。

 

しかし、いつ来たんだろう? 少なくとも私には思い当たる節がないぞ。首を捻りつつもエレベーターの方へと歩いて行くと、ハリーが立ち並ぶ暖炉の隙間にポツリと立っている真っ白な大理石を見て質問を放ってきた。

 

「あれは?」

 

「……慰霊碑よ。『ハロウィンの悲劇』の犠牲者たちのために建てられたの。」

 

真っ黒なアトリウムに不釣り合いな白い大理石。滑らかな板状の表面には、あの日犠牲になった魔法使いたちの名前がズラリと刻まれている。いつ見ても花が供えてあるその場所を見ながら、ハリーが少し悲しそうな表情で呟いた。

 

「それじゃあ……サクヤの両親の名前も?」

 

「そうね。他にも知り合いの名前は沢山あるわ。……嫌っていうほどに沢山。」

 

イギリス魔法省に残された消えない傷。あれは教訓であり、警告なのだ。決して忘れてはいけない過去であり、もう二度と同じことを起こさないための決意でもある。

 

親友と、名付け子。そして数多くの友人たち。多くの見知った名が刻まれたその石碑を、アリス・マーガトロイドは静かに見つめるのだった。

 


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